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==絶対値==

《解説》
■ ここでは,絶対値記号の処理について,応用範囲の広い2つの方法を紹介します.1つは,場合分けによって絶対値記号をはずす方法,もう1つはグラフを利用する方法です.

■1 場合分けによって絶対値記号をはずす方法

 [定義] 数直線上で,xが表わす点と原点との間の距離を|x|で表わします.

例1 上の図で|3|=3です.また,|−3|=3です.
 (正の数xについては,絶対値記号は「ただで取れます」.負の数は符号を変えます.)
《要点》

[?] 0は大きい方に含めなければならないか
==>

 そんなことはありません.|0|=0なので,0は正の数にまとめて取り扱ってもよいし,|0|=−0なので,0は負の数にまとめて取り扱っても成り立ちます.

答案作成の都合で,
(1) x>0のとき,|x|=x, 
(2) x≦0のとき,|x|=-x
 としてもかまいません.
もちろん,
(1) x>0のとき,|x|=x,
(2) x=0のとき,|x|=0,
(3) x<0のとき,|x|=-x
 の3つの場合に分けてもよいわけです.
ただし,(ここが重要)数学では「もれなく重複なく分類する方がよい」ので
(1) x≧0のとき,|x|=x,
(2) x≦0のとき,|x|=−x

とするような(0が両方にあるような)分け方は特別な必要(*)がない限り避けるべきです.

(*)例外:数学IIや数学IIIで習う定積分では,絶対値記号をはずすとき,0を両方に含めて
とします.

例(1) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 |x−1|
(準備) 
 x−1<0←→x<1
 x−1≧0←→x≧1

(答案)
ア) x<1のとき,−x+1
イ) x≧1のとき,x−1
### 実際にありそうなビックリ答案 ###
(間違い答案1)
ア) x<0のとき,−x+1
イ) x≧0のとき,x−1
・・・要点をそのまま写してもダメ.この問題に応じた場合分けに直すこと.


(間違い答案2)
ア) |x−1|<0のとき,−x+1
イ) |x−1|≧0のとき,x−1
・・・絶対値の中身の正負で分けます.ツイタテ| |ごと連れてきては分けられません.
《重要》
中身全体

中身全体が+,0になるか−になるかで分類します.

例(2) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 |x+2|
 
 
 

(答案)
ア) x<−2のとき,

−x−2
イ) x≧−2のとき,
x+2
(準備) 
 x+2<0←→x<−2
 x+2≧0←→x≧−2
### 実際にありそうなビックリ答案 ###
(間違い答案1)
ア) |x|<−2のとき,−x−2
イ) |x|≧−2のとき,x+2
・・・ツイタテ| |ごと連れてきては分けられません.シッカリしてや.


(間違い答案2)
ア) x+2<0のとき,−x−2
イ) x+2≧0のとき,x+2
・・・全くの間違いとは言えませんが,横着答案です.xの値で分類すべきです.

例(3) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 |3−x|

 
 

(答案)
ア) x≦3のとき,

3−x
イ) x>3のとき,
x−3
(準備) 
 3−x<0←→x>3
 3−x≧0←→x≦3
例(4) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 2|x−2|+1
 

 
 

(答案)
ア) x<2のとき,

2(−x+2)+1=−2x+5
イ) x≧2のとき,
2(x−2)+1=2x−3
(準備) 
 x−2<0←→x<2
 x−2≧0←→x≧2

例(5) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 |x+2|+|x−1|
 

 
 
 
 
 

(答案)
ア) x<−2のとき,

−(x+2)−(x-1)=-2x-1
イ) −2≦x<1のとき,
(x+2)−(x-1)=3
ウ) x≧1のとき,
(x+2)+(x-1)=2x+1
(準備) 
 |x+2|←→-2との大小で分ける
 |x-1|←→1との大小で分ける

では,2つともはずすには?


 

 

上図のように3つに分けます.
イのときはx≧−2かつx<1ですから
|x+2|=x+2,|x-1|=-x+1です

アが重要
x<−2ならば当然x<1なので
|x+2|=-x-2,|x-1|=-x+1です

ウも同様に
x≧1ならば当然x≧−2なので
|x+2|=x+2,|x-1|=x-1です

例(6) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 |x|+|x−2|

 
 

(答案)
ア) x<0のとき,

−(x)−(x-2)=-2x+2
イ) 0≦x<2のとき,
x−(x-2)=2
ウ) x≧2のとき,
x+(x-2)=2x-2
(準備) 
 |x|←→0との大小で分ける
 |x-2|←→2との大小で分ける
例(7) 次の絶対値記号を場合分けしてはずしなさい.
 ||−1

(答案)
ア) x<0のとき,
|−x−1|
 (その1) x<−1のとき
 −x−1
 (その2) -1≦x<0のとき
x+1
イ) 0≦xのとき,
|x−1|
 (その1) 0≦x<1のとき
 −x+1
 (その2) 1≦xのとき
x−1
(準備) 
 |x|をはずす←→0との大小で分ける
 次に|x|-1をはずす←→|x|-1の正負で分ける
※グラフを利用する方法参照↓

《問題》 次の空欄を埋めなさい.(半角文字で入力すること)(タブキーでも空欄移動ができます.)
(1)
 |x−2|−|x−3|の絶対値をはずすと
ア) x<のとき
−(x−2)+(x−3)=−1
イ) ≦x<のとき
(x−2)+(x−3)=2x−5
ウ) ≦xのとき
(x−2)−(x−3)=1
(2)
 −1<x≦1/2のとき,2|x+1|+|2x−1|
を簡単にすると
となる
(3)
 |x−a|+|x−a−1|の絶対値をはずすと
ア) x<のとき
−(x−a)-(x−a-1)=-2x+2a+1
イ) ≦x<のとき
(x−a)-(x−a-1)=1
ウ) ≦xのとき
(x−a)+(x−a-1)=2x-2a-1
(4)であることに注意して
x=m2+1のとき,次の式をmで表わしなさい.
ア) m<のとき
−(m+1)-(m-1)=-2m
イ) ≦m<のとき
(m+1)-(m-1)=2
ウ) ≦mのとき
(m+1)+(m-1)=2m

《解説つづき
例(8) 次の方程式を解きなさい.
 |2−x|=5

 

(答案)
ア) x≦2のとき,

2−x=5よりx=-3
イ) x>2のとき,
-2+x=5よりx=7
ア)イ)よりx=-3, 7
(準備) 
 2-x≧0←→x≦2
 2-x<0←→x>2
例(9) 次の不等式を解きなさい.
 |2x−4|<10

 
 

(答案)
ア) x≧2のとき,

2x−4<10よりx<7
ゆえに2≦x<7
イ) x<2のとき,
-2x+4<10よりx>−3
ゆえに-3<x<2




ア)イ)より−3<x<7
 

(準備) 
 2x-4≧0←→x≧2
 2x-4<0←→x<2
 
 


《問題》
(5) 次の方程式をきなさい.
 2|1−x|−2x=6


(答案)
ア)x≦のとき
  2(1−x)−2x=6
  x=
イ)x>のとき
  2(x−1)−2x=6
  −2=6 だから 解なし
ア)イ)より,x=・・・(答)

(6)
 2|x−2|=x+1の解のうち,小さい方の値はx=である.
(2000年度八戸工大入試問題の引用)


(答案)
ア)x<のとき
  2(−x+2)=x+1
  ・・・(中略)・・・
  x=
イ)x≧のとき
  2(x−2)=x+1
  ・・・(中略)・・・
  x=
ア)イ)より,小さいほうの解はx=・・・(答)

■2 グラフを利用する方法
《解説つづき
 ||はマイナスのものをプラスに変える(プラスのものはそのまま)ので,x軸よりも下にある部分を折り返す操作を表わします.これを利用して,絶対値が繰り返し適用されているような式のグラフを順に作ることができます.
  ■例 y=|||x|-1|-1|のグラフ
折り返す→ 下に1移動→折り返す→ 下に1移動→折り返す→



《問題》
■1
  ||x|-1|-1|=kの解の個数を調べなさい.
(答案)
次の図により,
ア) k<0のとき
イ) k=0のとき
ウ) 0<k<1のとき
エ) k=1のとき
オ) k>1のとき



■2
 関数f(x)=||x-4|-5|に対し答えよ.
(1) y=f(x)のグラフをかけ.
(2) t>0に対して,区間−t≦x≦2tにおける関数f(x)の最大値をg(t)とする.このとき関数g(t)を求め,そのグラフをかけ.
 
「2000年鳴門教育大入試問題」の引用
(1)
==>==>
==>・・・(答)
(2)
 
 右図のようになるのは,2t<4すなわち0<t<2のとき,最大値は
g(t)=f(2t)=

 



 右図のようになるのは,
2t≧4
かつ
−(−t)−1<5
すなわち2≦t<6のとき,最大値は
g(t)=f(4)=

 

 



 t≧6かつf(2t)<f(-t)のときは右の図のようになる.
 f(2t)<f(-t)←→2t-9<-(-t)-1←→t<8
 つまり6≦t<8のとき,最大値は
g(t)=f(-t)=

 

 



 右図のようになるのは8≦tのときで,このとき
 最大値は
g(t)=f(2t)=

 

・・・グラフ(答)


■3・・・(2次関数,2次不等式を習っていたらこの問題もしましょう)
 関数 f(x)=|x−3x|−xを考える.
(1) 実数の定数kに対して,y=f(x)のグラフと直線y=kとの共有点の個数を調べよ.
(2) 方程式 f(x)=2|x−1|の解は4個ある.それらの解x,x,x,x(x<x<x<x)を求めよ.
(1999年度近畿大学入試問題の引用)
答案
(1)
 y=f(x)のグラフは右図(赤線)のようになる.


 このうち区間0≦x≦3における正確な関数形は
y=−x+3x−x=−x+2x
=−(x−2x)=−(x−1)+1
 だから 頂点は(1,)  したがって,y=f(x)のグラフと直線y=kとの共有点の個数は

ア) k<−3のとき
イ) k=−3のとき
ウ) −3<k<0のとき
エ) k=0のとき
オ) 0<k<のとき
カ) k=1のとき
キ) 1<kのとき

 




ア) k<−3のとき0
イ) k=−3のとき1
ウ) −3< k<0のとき2
エ) k=0のとき3
オ) 0<k<1のとき4
カ) k=1のとき3
キ) 1<kのとき2
(2) 右の図により
各々途中計算を選びなさい↓
ア)x<0のとき,
(x−3x)−x=2(x−1)
(x−3x)−x=2(−x+1)
−(x−3x)−x=2(x−1)
−(x−3x)−x=2(−x+1)
より x=1−√3
イ)0<x<1のとき,
(x−3x)−x=2(x−1)
(x−3x)−x=2(−x+1)
−(x−3x)−x=2(x−1)
−(x−3x)−x=2(−x+1)
より x=2−√2
ウ)1<x<3のとき,
(x−3x)−x=2(x−1)
(x−3x)−x=2(−x+1)
−(x−3x)−x=2(x−1)
−(x−3x)−x=2(−x+1)
より x=√2
エ)3<xのとき,
(x−3x)−x=2(x−1)
(x−3x)−x=2(−x+1)
−(x−3x)−x=2(x−1)
−(x−3x)−x=2(−x+1)
より x=3+√7


■4・・・(次の問題の答案をまとめるのは大変.しかし,実際は穴埋め問題なので「まとめ」なくてもよい)

 aは実数とする.
関数F(x)=|x−2|+|x−a|+|x−6|

の区間[a−2,a+2]における最小値をm(a),最大値をM(a)として,区間I(a)=[m(a),M(a)]を考える.
次の問いに答えなさい.

(1) I(5)=[]である.
(2) aは正数でm(a)=14を満たすという.
 このときa=,M(a)=である。
(2000年度東北薬大入試問題の引用)
答案
(1) a=5のとき,3≦x≦7(図の茶色の区間)において,赤と緑で示したヒモの長さの和は,
 ア) 3≦x≦6のとき一定(4)だから青で示したヒモが最小のとき(x=5)最小値4となる.
 イ) 6<x≦7のとき,6よりも右で三重になっているから,x=6のときよりも長くなる
以上より,
m(5)= (x=5のとき)
M(5)= (x=7のとき)
(2)
 a≦8ではm(a)が14にならない.
 a>8のとき
 ア) a−2≦x<aでは赤+青が一定(a−2)だから,緑が最短のx=a−2で最小値
 (a−2)+(a−2−6)=2a−10をとる.
 イ) a≦x≦a+2ではaよりも右で三重になっているから,x=aのとき以上に長い
2a−10=14よりa=・・・(答)
このとき,M(12)はx=14で実現されるので,M(12)=・・・(答)
(1) m(5)=4, M(5)=8
(2) a=12, M(12)=22

《解説(つづき)》
■ 1次関数の絶対値は,符号が正になっても負になっても1次関数です.したがって,それらの和・差・定数倍は1次関数で,折れ線になります.このことに注意すれば,煩雑な場合分けをせずに節目(と両端の延長)を結んでいけばグラフを作ることができます.
■例10
 次の関数の最小値を求めなさい.
 y=4|x|−3|x−1|+2|x−2|−|x−3|
 
 

(答案)
x=−1のとき,y=4−6+6−4=0
x=0のとき,y=−3+4−3=−2
x=1のとき,y=4+2−2=4
x=2のとき,y=8−3−1=4
x=3のとき,y=12−6+2=8
x=4のとき,y=16−9+4−1=10
以上により,右のグラフとなり,最小値は−2(x=0のとき)


《問題》
次のグラフとx軸との共有点の個数を調べなさい.
y=2(|x−1|+|x−2|+|x−3|)−3(|x−4|+|x−5|)

(答案)
(0,-15),(1,-15),(2,-11),(3,-3),(4,9),(5,15),(6,15)を結ぶ折れ線になるから,x軸との共有点は

1個

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■[個別の頁からの質問に対する回答][絶対値について/17.5.27]
《問題》 (5) 次の方程式をきなさい イ)は 2(x−1)−2x=6 と書いてありますが、 本当は -2(x−1)−2x=6 ではないでしょうか。
=>[作者]:連絡ありがとう.まず初めに|1−x||x−1|に等しいです.だから,イ)の場合,2|1−x|−2x=62|x−1|−2x=6と考えて絶対値をはずすと,左側の答案のように,2(x−1)−2x=6になります.
同じ問題をイ)の場合に,2|1−x|−2x=6の絶対値をそのままはずせば,−2(1−x)−2x=6になりますが,これら2つは同じものです.
2つの表記を書いてしまったので,混乱したかも
■[個別の頁からの質問に対する回答][絶対値について/17.5.25]
間違えたときに答えを表示するようにしてほしいです。 なぜか、ここは答えが出ないので少し使いにくいです。
=>[作者]:連絡ありがとう.教材を作ったときは「ここまでお膳立てしてある場合に,答えが必要な生徒がいるとは思わなかった」というのが本音です.しかし,今考えてみるとWeb教材では,読者は中学生から老人まで,海外在住で日本語の教科書が入手できない人まで幅広いので,確認のために解答が必要な場合もあるようですので,そのうち解答を付けます.(付けました)
■[個別の頁からの質問に対する回答][絶対値について/17.1.1]
問題4、2000年度東北薬大の問題ですが、ヒモの長さで表されても分かりません。
=>[作者]:連絡ありがとう.その説明方法では分かりませんという形で前提を覆してしまう場合は,自分で他の方法を考えるしかなくなります.前提を覆してはいけません.(絶対値は符号のない数なのでひもの長さで考えることができるのです)

<参考>:目分量による合成の要点
■ y=x+1/xの略図を描くには

 y=xとy=1/xのグラフを描いておき,
正負の符号を考えながら幾つかの点で足します.
(絶対値の大きい方を元にして,絶対値の小さい
方を加えるのがコツです.)
= = >

■ y=x+1/xも同様です.

x=−1においては,−1+1=0となります.

■ y=|x−2x|+xも同様です.

区間0≦x≦2にある頂点の座標を正確に求めるには,
y=−x+2x+x=−x+3xを変形します.

■ も同様です.

x=−4のとき
 y座標:−4+0=−4です.
 傾き:垂直+何でも=垂直です.
x=0のとき
 y座標:4+0=4です.
 傾き:1+0=1です.
x=4のとき
 y座標:4+0=4です.
 傾き:垂直+何でも=垂直です.
==>

■ 足して2で割るときは中点を結びます.