← PC用は別頁
■二項定理,多項定理○ 二項定理
【要点】
○(a+b)n を展開したとき, an−rbr の係数はnCrになる.(nCr を二項係数という.) ○すなわち,一般項はnCran−rbrになる.(r=0〜n) ○展開式を全部書くと (a+b)n=nC0an+nC1an−1b+nC2an−2b2 + ··· + nCkan−kbk + ··· + nCn−1abn−1+nCnbn ○展開式をシグマ記号を用いて書くと 【例】 (a+b)7 を展開したとき,
例えばa5b2 の係数は 7C2==21 になる.
一般項は 7Cra7−rbr (0≦r≦n)になる. 展開式を全部書くと
(a+b)7
=7C0a7+7C1a6b+7C2a5b2+7C3a4b3 +7C4a3b4+7C5a2b5+7C6ab6+7C7b7 =a7+7a6b+21a5b2+35a4b3 +35a3b4+21a2b5+7ab6+b7 展開式をシグマ記号を用いて書くと ※ (第一印象で悩みそうな箇所) なぜ an−rbr の係数を求めるのか? なぜ arbn−r にしないのか? nCr=nCn−r が成り立つので,どちらで考えてもよい.ただし,多くの教科書や参考書では,上に書いた形(b の係数が増える順)に書いてある. |
(二項定理の解説) 通常,式の展開は次のような順序で,「総当たりで」掛けると考えることが多いが,二項定理,多項定理の解説はこの方法では分かりにくいので,「代表選手の選び方」で解説してみる. 右図のように各々の( )からどちらか1つの項 a , b を選んで取り出し,合計 2 個からなる文字の組を考える. ○「同じものがあるときの順列」で考える方法 (a+b)n を展開したときの an−rbr の係数を考える. 各々の( )からどちらか1つの項 a , b を選んで取り出し,合計 n 個からなる文字の組を考える. そこで,abb···ab など n 個の文字のうち,a が n−r 個,b が r 個ある順列を並べ替えてできる順列の総数を数える. 全部異なるものが n 個あるときは,並べ替えてできる順列は n! 個あるが,a は同じものなので,その内部交換でできる (n−r)! 通りは別のものができないから, n! 個とすると (n−r)! 倍だけ数え過ぎで,正しくは 通り. 同様にして,b も同じものなので,その内部交換でできる r! 通りは別のものができないから,上のように 通りとすると r! 倍だけ数え過ぎで,正しくは 通り. 結局,a が n−r 個,b が r 個,それぞれ同じものがある合計 n 個の文字 abb···ab を並べ替えてできる順列の総数は, 通りだから,上のように代表の組を作るとan−rbr は 回登場する. これらの同類項をまとめると,係数は になる. 例えば (a+b)5 を展開するとき,左図のような選び方をすると,abbab という項が1つできる.これは,a2b3 になる. しかし,a2b3 になるのはこれだけではない.a2b3 になるものを全部並べると,次のようになる. abbab , abbba baabb , babab babba , bbaab bbaba , bbbaa ○ 組合せで考える方法 a が n−r 個,b が r 個,それぞれ同じものがある合計 n 個の文字 abb···ab を並べ替えてできる順列の総数を,図のように1〜nのn個の番号札をあらかじめ用意しておき,b の行き先の番号札をもらう方法で考える. (a の行き先の番号札を n−r 個もらうと考えてもよい.) 上の図のように,2,3,・・・,nの札をもらったとき,その場所に b が入ると決めておく( a の場所は,自動的に決まり,残りの n−r 個の場所となる.)と,b の行き先 r 個の番号札のもらい方が並べ方の総数に等しく,nCr すなわち 通りになる. an−rbr は 回登場するから, これらを同類項をまとめると,係数は になる. |
○ 多項定理
○(a+b+c)n を展開したとき,
apbqcr の係数は
になる.(p+q+r=n , 0≦p,q,r≦n) ○すなわち,一般項は apbqcr になる. (p+q+r=n , 0≦p,q,r≦n) ○展開式は (このΣ記号は,条件に合うものを全部加えることを示す.) 例 (a+b+c)6 を展開したとき, a3b2c の係数は になる. 一般項は apbqcr になる. (p+q+r=6 , 0≦p,q,r≦6) 展開式は (a+b+c)6 =a6+a5b+a5c+a4bc +···+apbqcr+···+c6 展開式をΣ記号で表わすと |
(多項定理の解説) 二項定理のときと同様に「同じものがあるときの順列」で考えると (a+b+c)n を展開したとき,apbqcr が登場する回数は, a が p 個,b が q 個,c が r 個それぞれ同じものがある合計 n 個の文字 abbc···ab を並べ替えてできる順列の総数になり, 通り apbqcr を同類項としてまとめると,その係数は ○ 組合せで考える方法 多項定理は,最近の高校の教科書では,組合せを2段階適用して解説されている. 1〜nまで合計n個の番号札をあらかじめ用意しておき,文字 a の行き先 p 個,文字 b の行き先 q 個,文字 c の行き先 r 個をもらう方法を数えると, a の札のもらい方は nCp 通り, その各々について,残り n−p 枚の番号札のうち b の札のもらい方は n−pCq 通り, (残りは自動的に c の札となる.) もらい方の総数は, nCp×n−pCq= = ここで,n−p−q=r であるから, に等しい. |
■例題1(二項定理)
(1) (2x−3)5 の展開式における x2 の係数を求めよ.
■解説(1) 一般項は 5Cr(2x)5−r(- 3)r=25−r(- 3)rx5−r x2 となるのは,r=3 のとき. このとき係数は,22(- 3)3=−1080 ※ この種の問題で,展開式を全部書くのは無駄が多いので,必要な項だけを書けばよい. ※ 文字の部分も付けて「一般項は」と書き始めるとうまくいく.
【重要】
二項定理の公式:
nCran−rbr において,an−r , br については ○「係数も何乗かする」ことが重要
(2) (2x2−)7 の展開式における x2 の係数を求めよ.
(2) 一般項は 7Cr(2x2)7−r(- )r=27−r(−)rx14−3r (右の囲み欄→) x2 となるのは,14−3r=2 より,r=4のとき. このとき係数は,23(- )4=
(数IIで習う指数法則)
一般に
=xn−m が成り立つ. 上の問題では,=x14−3r と変形するとよい. |
《問題》
選択肢をクリックすれば採点結果と解説が出ます.暗算では無理ですから計算用紙で計算してから答えてください.
解説
(1) 一般項は,5Cr(3a)5−r(- 2b)r
=35−r(- 2)ra5−rbr a2b3 となるのは r=3のとき. このとき係数は 32(- 2)3=9×(- 8)×10=−720 |
解説
一般項は 4Cr(x2)4−r(- )r
=(- 3)rx8−3r
x2 となるのは,8−3r=2 より,r=2のとき. このとき係数は,(- 3)2=9×6=54 |
解説
定数項とは,x0 となる項(実際にはその係数)のこと.
一般項は 6Cr(2x2)6−r(- )r =26−r(- )rx12−3r x0 となるのは,12−3r=0 より,r=4のとき. このとき係数は,22(- )4= |
解説
一般項は
(2x)p(−3y)qzr=2p(−3)qxpyqzr xy3z となるのは,p=1,q=3,r=1 のとき このとき係数は, 2×(−3)3=2×(−27)×20=−1080 |
解説
一般項は (x2)pxq2r=2rx2p+q
x5 となるのは,p , q , r が
(iii)により負にならない整数 p , q , r で,(ii)を満たすものは2p+q=5 …(ii) 0≦p , q , r≦5 …(iii) 【重要】3個(p , q , r)の未知数に対して方程式が2個( (iii)は不等式)であるため,p , q , r は解がただ一つに定まらない.むしろ,次のように「順に総当たりで調べる」と考えるとよい. [1] p=0 のとき,(ii)より q=5 → (i)より r=0 [2] p=1 のとき,(ii)より q=3 → (i)より r=1 [3] p=2 のとき,(ii)より q=1 → (i)より r=2 [*] p>2 のとき,(ii)より解なし 係数は[1]より,20=1 [2]より,21=40 [3]より,22=120 計 161 |
解説
一般項は
(x2)pxq(−)r=(- 2)rx2p+q−r
p+q+r=6 …(i)
(i)+(ii)より 3p+2q=9 …(iv)2p+q−r=3 …(ii) 0≦p , q , r≦6 …(iii) [1] p=0 のとき,q の整数解なし [2] p=1 のとき,q=3,r=2 係数は (- 2)2=240 [3] p=2 のとき,q の整数解なし [4] p=3 のとき,q=0,r=3 係数は (- 2)3=−160 [*] p>3 のとき,解なし 以上より 80 |
■あと一歩だけ進もう!■
【例題2】
(解答)(1) (x+2)3(x−3)4の展開式におけるx2の係数を求めよ. (x3+3x2×2+3x×22+23) ×{x4+4x3×(−3)+6x2×(−3)2+4x×(−3)3+(−3)4} のかっこを展開したとき,x2が出てくるのは,この式で赤−赤,青−青,緑−緑で示した組だけ(2次-0次,1次−1次,0次−2次の組合せだけ) その係数は 3×2×(−3)4+3×22×4×(−3)3+23×6×(−3)2 =486+(−1296)+432=−378…(答)
(2) (2x+3y)2(x−2y)5の展開式におけるx6yの係数を求めよ.
(解答){(2x)2+2×(2x)(3y)+(3y)2} ×{x5+5x4×(−2y)+...+(−2y)5} のかっこを展開したとき,x6yが出てくるのは,この式で赤−赤,青−青で示した組だけ その係数は (2)2×5×(−2)+2×(2)×(3)=−40+12=−28 …(答)
(3) (x+2y)4(x−3y)3の展開式におけるx2y5の係数を求めよ.
(解答){x4+4x3×(2y)+6x2×(2y)2+4x(2y)3+(2y)4} ×{x3+3x2(−3y)+3x(−3y)2+(−3y)3} のかっこを展開したとき,x2y5が出てくるのは,この式で赤−赤,青−青,緑−緑で示した組だけ その係数は 6×(2)2×(−3)3+4×(2)3×3(−3)2+(2)4×3×(−3) =−648+864−144=72…(答)
※すべての組合せが登場するわけではありません.
−432y7−432xy6+72x2y5+160x3y4 +5x4y3−21x5y2−x6y+x7 のようにx, yの次数が合計7になる項だけが登場します. |
■二項係数の性質 (※ 発展的な内容)
【主な公式】
nC0+nC1+nC2+···+nCk+···+nCn =2n ··· (1) nC0+nC2+nC4+···=nC1+nC3+nC5+··· =2n−1 ··· (2) nC1+2nC2+3nC3+···+knCk+···+nnCn =n·2n−1 ··· (3) 2·1·nC2+3·2·nC3+4·3·nC4+···+n(n−1)nCn =n(n−1)2n−2 ··· (4) 12nC1+22nC2+32nC3+···+n2nCn =n(n+1)2n−2 ··· (5) nC0+nC1+nC2+···+nCk+···+nCn = ··· (6) nC02+nC12+nC22+···+nCk2+···+nCn2 = ··· (7)
※ 高校ではこれらの公式を覚える必要はない.必要に応じて作ればよい.微分・積分を利用する証明が簡単である. (母関数 f(x)=(1+x)n から次々に導かれる.) 二項定理により, f(x)=(1+x)n =nC0+nC1x+nC2x2+···+nCkxk+···+nCnxn とおく x=1 を代入すると, f(1)=2n=nC0+nC1+nC2+···+nCk+···+nCn → (1) x=−1 を代入すると, f(−1)=0=nC0−nC1+nC2−···+(−1)knCk+··· +(−1)nnCn したがって,nC0+nC2+nC4+···=nC1+nC3+nC5+··· ところで(1)により,両辺の和は 2n だから, nC0+nC2+nC4+···=nC1+nC3+nC5+···=2n−1 → (2) f(x) を x で微分すると f ’(x)=n(1+x)n−1 =nC1+2nC2x+···+knCkxk−1+···+nnCnxn−1 x=1 を代入すると, f ’(1)=n·2n−1=nC1+2nC2+···+knCk+···+nnCn → (3) f ’(x) を x で微分すると f ”(x)=n(n−1)(1+x)n−2 =2·1·nC2+3·2·nC3x1+··· +k·(k−1)·nCkxk−2+··· n·(n−1)·nCnxn−2 x=1 を代入すると, f ”(1)=n(n−1)·2n−2 =2·1·nC2+3·2·nC3+··· +k·(k−1)·nCk+···+n·(n−1)·nCn → (4) 上の(4)のように単純に微分すれば x の次数が下がるため,k−1 が掛けられることになるが,両辺に x を掛けてから微分すると k を掛けることができる. xf ’(x)=nx(1+x)n−1 =nC1x+2nC2x2+···+knCkxk+···+nnCnxn 両辺を x で微分すると n(1+x)n−1+n(n−1)x(1+x)n−2 =12nC1+22nC2x+32nC3x2+···+k2nCkxk−1 +···+n2nCnxn−1 x=1 を代入すると, n·2n−1+n(n−1)·2n−2 =12nC1+22nC2+32nC3+···+n2nCn n(n+1)·2n−2 =12nC1+22nC2+32nC3+···+n2nCn → (5) \(\displaystyle\int_0^1 x^kdx\)=xk+1= に注意して, 区間 0≦x≦1 で f(x) の定積分を求めると, 左辺== 右辺=nC0+nC1+nC2+··· +nCk+···+nCn → (6) (1+x)2n を (1+x)n(x+1)n に分けて,各々 xn の係数を求めて比較する. (1+x)2n の展開式における xn の係数は,2nCn= …(A) (1+x)n=nC0+nC1x+nC2x2+···+nCkxk+···+nCnxn (x+1)n =nC0xn+nC1xn−1+nC2xn−2+···+nCkxn−k+···+nCn (1+x)n(x+1)n において,この式で上下に対応する項を掛けたときだけ xn となるから,その係数は nC02+nC12+nC22+···+nCk2+···+nCn2 …(B) (A)(B)は等しい. → (7) |
(携帯版)...メニューに戻る ...(PC版)メニューに戻る |
■[個別の頁からの質問に対する回答][二項定理,多項定理について/17.6.15]
大変参考になりました。
■[個別の頁からの質問に対する回答][二項定理,多項定理について/17.4.23]
=>[作者]:連絡ありがとう. 全然わからない。
=>[作者]:連絡ありがとう.できれば助けてやりたいと考えていても,どこがどう分からないのかを述べないと,助けようがありません. |