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■ド・モアブルの定理
【ド・モアブルの定理】
nを整数とするとき
(cosθ+i sinθ)n=cos(nθ)+i sin(nθ) …(1)
【例】
(1)(cos+i sin)3=cos+i sin
(2)(cos+i sin)4=cosπ+i sinπ

(定理の解説)
 正式には,次の公式を数学的帰納法で示すのがよいが,ここでは具体的に順を追って示してみる.
ア) n>0のとき
 次の公式を使う.
(cosα+i sinα)(cosβ+i sinβ)=cos(α+β)+i sin(α+β)
n=2のとき
(cosθ+i sinθ)2=(cosθ+i sinθ)(cosθ+i sinθ)
=cos2θ+i sin

だから,(cosθ+i sinθ)2=cos2θ+i sinが成り立つ.
n=3のとき
(cosθ+i sinθ)3=(cosθ+i sinθ)2(cosθ+i sinθ)
=(cos2θ+i sin2θ)(cosθ+i sinθ)
=cos(2θ+θ)+i sin(2θ+θ)
=cos3θ+i sin

だから,(cosθ+i sinθ)3=cos3θ+i sinが成り立つ.

n=kのとき
(cosθ+i sinθ)k=(cosθ+i sinθ)k−1(cosθ+i sinθ)
=(cos(k−1)θ+i sin(k−1)θ)(cosθ+i sinθ)
=cosnθ+i sin

だから,(cosθ+i sinθ)k=cos kθ+i sinが成り立つ.
イ)n=0のとき
(cosθ+i sinθ)0=1
cos0+i sin0=1
だから,(cosθ+i sinθ)0=cos 0θ+i sinが成り立つ.
ウ)n<0のとき
 次の公式を使う.
=cos(α−β)+i sin(α−β)
n=−1のとき
(cosθ+i sinθ)−1==
=cos(0−θ)+i sin(0−θ)=cos(−θ)+i sin(−θ)
だから,(cosθ+i sinθ)−1=cos(−θ)+i sin(−θ)が成り立つ.
n=−2のとき
(cosθ+i sinθ)−2==
=cos(0−2θ)+i sin(0−2θ)=cos(−2θ)+i sin(−2θ)
だから,(cosθ+i sinθ)−2=cos(−2θ)+i sin(−2θ)が成り立つ.
n=−kのとき
(cosθ+i sinθ)−k==
=cos(0−kθ)+i sin(0−kθ)=cos(−kθ)+i sin(−kθ)
だから,(cosθ+i sinθ)−k=cos(−kθ)+i sin(−kθ)が成り立つ.
以上により,nが正の整数であっても,負の整数であっても,n=0の場合でも成り立つ.
よって,nがどんな整数であっても
(cosθ+i sinθ)n=cos(nθ)+i sin(nθ) …(1)
が成り立つ.
(証明終り)■


(参考)
 高校では扱わないが,次のオイラーの公式を使えば,ド・モアブルの定理は簡単に導かれる.
【オイラーの公式】e=cosθ+i sinθ
を使うと
(cosθ+i sinθ)n=(e)n=einθ=cosnθ+i sin

【問題1】
 次の複素数を求めてください.(正しい選択肢をクリック)
(1)(cos+i sin )3
_
(2)(cos+i sin )4
_
(3)(cos+i sin )−2
_
(5)(1+i)8
_

【1のn乗根】
nを正の整数とするとき,1n乗根は
cos(×k)+i sin(×k) (k=0, 1, 2, ..., n−1) …(2)
1の虚数n乗根のうちの1つを
ω=cos()+i sin()
で表すとき,上記の1n乗根は
1, ω, ω2, ω3,.., ωn−1 …(3)
に等しい.

(解説)
(2)←
n=5として15乗根を例にとって解説する.
 方程式x5=1の解は5個あるが,これらを15乗根という.
1) (cos+i sin)5
=cos2π+i sin2π=1
だから
x=cos+i sin
は,方程式x5=1の1つの解となる.(右図のように偏角の5倍がちょうどとなって1に等しくなる.)
2) (cos+i sin)5
=cos4π+i sin4π=1
だから
x=cos+i sin
は,方程式x5=1の1つの解となる.(右図のように偏角の5倍がちょうどとなって1に等しくなる.この場合は,円を2周して1に一致する.)
3) 同様にして
x=cos(×3)+i sin(×3), cos(×4)+i sin(×4)
も各々方程式x5=1の解となる.(3周もしくは4周して1に一致する.)
4) これら4個の他に,x=1すなわち
x=cos+i sin
x5=1の解となる.
 以上により,
cos(×k)+i sin(×k) (k=0, 1, 2, ..., 4)
の5つの複素数はx5=1の解となる.
(3)←
ω=cos+i sin
で表すと
ω2=cos(×2)+i sin(×2)
ω3=cos(×3)+i sin(×3)
ω4=cos(×4)+i sin(×4)
となるから,1, ω, ω2, ω3,.., ω4x5=1の解となる.
【例】
○ x2=1の解は,
cos()+i sin()=1
cos()+i sin()=−1
の2個になる.
 このとき,2つの解x=1x=−1とは,複素数平面上での単位円を2等分する位置にある.

○ x3=1の解は,
cos()+i sin()=1
ω=cos()+i sin()
ω2=cos()+i sin()
の3個になる.
 このとき,3つの解
1
ω=cos()+i sin()
ω2=cos()+i sin()
は,複素数平面上での単位円を3等分する位置に並ぶ.

○ x4=1の解は,
cos()+i sin()=1
i=cos()+i sin()=i
i2=cos()+i sin()=−1
i3=cos()+i sin()=−i
の4個になる.
 このとき,4つの解
1
i=cos()+i sin()
i2=cos()+i sin()
i3=cos()+i sin()
は,複素数平面上での単位円を4等分する位置に並ぶ.


aのn乗根】
○  aの極形式をa=r(cosθ+i sinθ) r>0
とするとき,xn=a nは正の整数)の解は
{ cos()+i sin() }(k=0, 1, 2, ..., n−1)
(解説)
{ cos()+i sin() }をn乗すると
絶対値はrになり,
偏角はθ+2kπになるから,
r(cos(θ+2kπ)+i sin(θ+2kπ))=r(cosθ+i sinθ)=aが成り立つ.
{ cos()+i sin() }

{ cos(+)+i sin(+) }
と分けてみればわかるように,
絶対値はrのn乗根になり,
偏角はa=r(cosθ+i sinθ)のn分の1から始まり円周をn等分する点となる.(次図参照)


【例1】
 方程式x2=−1の解を求めるには,
1) 右辺を極形式に直す.
cosπ+i sinπ
2) 1つの解は
cos+i sin=i
3) 他の点を円周を2等分した角に置く.
cos+i sin=−i

【例2】
 方程式x3=iの解を求めるには,
1) 右辺を極形式に直す.
cos+i sin
2) 1つの解は
cos+i sin=
3) 他の点を円周を3等分した角に置く.
cos(+)+i sin(+)=
cos(+)+i sin(+)=−i
【例3】
 方程式x3=2(−1+i)の解を求めるには,
1) 右辺を極形式に直す.
2( cos+i sin )
2) 1つの解は
{cos+i sin }=1+i
3) 他の点を円周を3等分した角に置く.
{cos(+)+i sin(+) }
=(cos+i sin )

{cos(+)+i sin(+ )}
=(cos+i sin )

後ろの2つは三角関数の加法定理を用いれば根号などで表すこともできる.

【問題2】
 次の方程式の解を複素数平面上で図示したものを下の図から選んでください.

(1)x2=i


(2)x2=−i


(3)x3=−8


(4)x3=8i


(5)x4=−16


(5)x4=16i



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■[個別の頁からの質問に対する回答][ド・モアブルの定理について/17.4.10]
ド・モアブルの定理のイでcos0+i sin0=1のθが抜けてるため等号が成り立たなくなっています
=>[作者]:連絡ありがとう.確かに読みにくいかもしれませんが,どんな値θに対しても,0θ=0が成り立つ.これは「抜けている」のではなく「消える」のです.(中学校の常識:0a=0 を思い出してみよう!)