【はじめに】
○高校の教科書では,「数列の極限」を先に学習し,その後しばらくしてから「関数の極限」を学習するように教材が並んでいます. ○関数の極限では のように 「
のように
※高校の数列は また,nは整数しかないので ![]() |
【収束するとは】
【例1】nを限りなく大きくすると,anの値が限りなくある値αに近づいていくとき,数列 {an} はαに収束するといい で表す.このときαを数列 {an} の極限値という. 【例2】
高校の数学では,「限りなく近づく」とはどういうことかということを厳密には証明せず,直感的に理解するものとします.
(1) nが10, 100, 1000, ...と限りなく大きくなるとき, のように, これが【例1】の意味です.この式は今後何度も登場しますので確実に答えられるようにしておきましょう. ![]() (2) nが10, 100, 1000, ...と限りなく大きくなるとき, のように, だから, になります.【例2】 この極限は,上で示した(重要)を使えば とすることもできます.
【無限大とは】
有限の値でなく「無限大に発散する」場合数列 {an} が「有限確定」の値に収束しないときは発散するといいます. 正の無限大 負の無限大 【例3】 【例4】
高校の数学では,「無限大」とは何かということを厳密には定義せず,直感的に理解するものとします.
有限ではあっても「振動して値が確定しない」場合も,数列は発散するといいます.また, さらに, nが10, 100, 1000, ...と限りなく大きくなるとき,n+1も限りなく大きくなるということを,単に と書きます.【例3】 高校の数学では,無限大の厳密な定義(εδ論法)を要求しませんので を証明せよとは言いません. だから とするまでです. 同様にして,無限大になる式の定数倍も無限大と書きます. ただし,符号が逆の場合は負の無限大になります. 【例5】 ![]() 【例6】 ![]() 【例7】 ![]()
【ここまでの要約】
【例1,2】 有限確定の極限値に収束するもの 【例3】 正の無限大に発散するもの 【例4】 負の無限大に発散するもの 【例5】 有限であるが振動するもの 【例6】 絶対値が無限に大きくなって振動するもの 【例7】 振動するが振幅が0に近づいて収束するもの |
【問題1】 下の選択肢のうちで正しいものをクリックしてください.
(1) 一般項が次の式で表される数列の極限を求めてください.
数列 {
nが限りなく大きくなるとき,2n (>n)も2n+3 (>2n>n)も限りなく大きくなる
(2) 一般項が次の式で表される数列の極限を求めてください.
数列 { だから
(3) 次の極限を求めてください.
だから
(4) 次の極限を求めてください.
n=1, 2, 3, 4, ...と増えていくとき
1, −1, 1, −1, 1, ...と振動するから 極限なし
(5) 次の極限を求めてください.
だから
(6) 次の極限を求めてください.
n=1, 2, 3, 4, ...と増えていくとき
と絶対値が限りなく0に近づくから,振動していても極限値がある. |
【ここから後の要約】
(1) 多項式形の数列の極限 【変形】 次数が最大の項でくくる(→解説1) 【結果】 次数が最大の項だけで決まり,次数の低い項は影響しない(→解説2) (2) 分数式形の数列の極限 【変形】 分母と分子の各々を次数最大の項でくくる(→解説3) 【結果】 次数が最大の項だけで決まり,次数の低い項は影響しない (分母の次数)>(分子の次数)なら「0」になる(→解説4) (分母の次数)=(分子の次数)なら「次数最大の項の係数の比」になる(→解説5) (分母の次数)<(分子の次数)なら「∞または−∞」になる(→解説6)
(解説1)
多項式の形の数列の極限で これに対して, のように次数最大の項でくくると, となるので,次数の低い項は結果に影響していないことが分かります. (解説2) 上の解説1のように変形すると,つねに となって,次数が最大の項だけを見れば結果が得られますが,いろいろな応用問題にも対応できるように「最大項でくくる」という変形方法も覚えておく方がよいでしょう. (解説3) これに対して, はじめに「分母と分子の各々を次数最大の項でくくり」,次に「最大項同士を約分すると」結果が見えます. とできます. (解説4,5,6) 上記の解説3のように「最大項でくくる」をキーワードに変形していくと,分母,分子とも次数の低い項は結果に影響せず などと最大項と最大項の比になり,約分すれば結果が見えます. ![]()
【要点】
多項式でも分数式でも,「次数最大の項でくくれば」なんとかなります. |
【問題2】 次の数列の極限を求めてください.(下の選択肢のうちで正しいものをクリック)
(1)
次数が最大の項2nでくくると
ここで だから
(2)
次数が最大の項−3n2でくくると
ここで だから
(3)
分母を次数最大の項2n2でくくり,分子を次数最大の項3nでくくると
ここで だから ※分母の次数が分子の次数よりも高いとき,極限値は0になる.
(4)
分母を次数最大の項2nでくくり,分子を次数最大の項3nでくくると
ここで だから ※分母と分子の次数が等しいときは,極限値は最大項の係数の比になる.
(5)
分母を次数最大の項2nでくくり,分子を次数最大の項−3n2でくくると
ここで だから ※分子の次数が分母の次数よりも大きいとき,極限は正または負の無限大になる. |
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