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【用語】
(#1つ目の落とし穴) 「無限級数」と「無限級数の和」の対応関係は,「数列」と「数列の和」の関係と同じではない. 結論から言えば,無限級数が収束するときその値を無限級数の和という.無限級数を「さらに足す」訳ではない. 無限級数が収束しないとき,無限級数は発散するという. (#2つ目の落とし穴) 今の高校の教科書では,級数という用語は無限と言う用語と一緒に使われる.(無限等比級数という用語はある) しかし,高卒では「テイラー級数」「フーリエ級数」「超幾何級数」のように級数だけで用いられる用語も多数ある.内容的に,これらはすべて無限級数を表している.要するに,級数と言えば無限級数のことになる. (#3つ目の落とし穴) 小学校以来,足し算はどの順に加えてもかまわないという暗黙の前提を使って計算してきた.実際,有限数列の和を求めるときは,どの順に加えても同じ値になる. しかし,無限が入ってくると事情が一変する.無限個のものの和は足す順序によって変わることがあり,無限級数の和を求めるときに,足し算の順序を勝手に変えてはいけない.
【足し算の順序を変えてはいけないことを示す例】
求めたいもの:1−1+1−1+1−1+··· ■2つずつ先に足すと:(1−1)+(1−1)+(1−1)+··· =0+0+0+···=0…① ■先頭以外の2つずつを足すと: 1+(−1+1)+(−1+1)+(−1+1)+··· =1+0+0+···=1…②
①②のように足す順序を変えると異なる値になる.(後で詳しく述べるが)正しくは次のように行う.
■1/2になるようなインチキ答案も書けます:S1=1 , S2=1−1=0, S3=1−1+1=1, S4=1−1+1−1=0 , … となるから,奇数番目まで足すと1になり,偶数番目まで足すと0になるので,どこまで行っても1つの値に近付かないから,「発散する」「和はない」 S=1−1+1−1+1−1+···とおくと (↑↑これが間違い:実はこの和は定数にならない) 1−S=1−(1−1+1−1+1−1+···) =1−1+1−1+1−1+···=Sとなるから 1=2S ■別の例であるが,次の例はもっと異常さが目立つので,注意を促せる. S=1+2+4+8+···…④とおくと (↑↑初めから間違っている.この和は定数にならない) 2S=2+4+8+···…⑤ ④−⑤ −S=1 S=−1(正の数ばかり足しているのに,和が負) |
【無限級数の和】 無限級数 a1+a2+a3+···+an+··· …(1) の第n項までの和 Sn=a1+a2+a3+···+an …(2) を「第n部分和」(教科書では,「第n項までの部分和」)という.
S1=a1
このようにして作った第n部分和の数列(2)が収束するとき,その極限値Sを無限級数(1)の和という.S2=a1+a2 S3=a1+a2+a3 … … Sn=a1+a2+a3+···+an 第n部分和の数列Snが収束しないとき,無限級数(1)は発散するという. 次の記号を用いる.
≪第n部分和≫:(2)式
≪無限級数の和≫:(1)式 または
(1.1)では末項を表す文字nとΣ記号の内部変数とがもつれないように,n以外の文字:例えばkを使って内部変数を表す.
(1.2)ではΣ記号の初項(1),末項(∞)とも定数・記号で,変数がもつれるおそれはないから,一般項の変数としてnが使える.もちろん, |
高校数学Ⅲ大手3社(S社,T社,K社)の教科書には,次の例1,例2の問題が全く同じように出ています(解説文は少しずつ異なります).これらの問題は「第n部分和が式として示せる」「収束する例と発散する例の2つ示せる」という点で,入門段階で取り上げるには実に最適な問題だと考えられます. 当教材にこれらの問題をそのまま転記すると,著作権的にどうなのかというグレーゾーンの疑いが脳裏をよぎりますが,昭和30年代の参考書(当時の数ⅡB)から見ても長い間解説用に重宝されてきたことがうかがえるので,当教材でも例として使います.(これ以上やさしい例を他に見つけにくいので,解説の語句で独自性を目指します.管理人は理屈っぽい性格らしい)
【例1】 次の無限級数の和を求めてください.
(解答)第n部分和は
第n部分和(有限数列の和)では,どの順に足したり引いたりしても結果は変わらない
だから したがって,この無限級数は収束し,その和は1である.
【要点】
■いきなり無限を考えるのは無理 ■必ず「第n部分和の式」を確定してから,その極限を求めること ![]() |
【例2】 次の無限級数の和を求めてください.
(解答)第n部分和を求める だから,第n部分和は
第n部分和(有限数列の和)では,どの順に足したり引いたりしても結果は変わらない
したがって,この無限級数は発散する. |
【問題1】 次の無限級数の収束・発散について調べ,収束するときはその和を求めなさい.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)
|
(2)
|
【無限級数の性質】
【Ⅰ 無限級数が収束するための必要条件】
(1) (2)
※(1)は必要条件ではあるが,十分条件ではないことに注意.すなわち
【Ⅱ 収束する無限級数の和差,実数倍】
(1) (2) (3)
※ 有限数列の和とは異なり,無限級数の和を求めるときに,足し方の順序を勝手に変えることはできない.
これに対して,上記のⅡ(1)(2)(3)は,「収束する無限級数」の和差,実数倍に限って,順序の変更は「何でもあり」だということを示している. 「収束しない無限級数」や「収束するかしないか分からない無限級数」では,そんなことはできない. |
(解説) Ⅰ(1) ←
8両連結の列車の前に,7両連結の列車を止めると
無限級数![]() n両連結の列車の前に,n−1両連結の列車を止めると ![]() が成り立つ.(右図参照) 第n部分和が収束するとき とおくと も成り立つから これにより,無限級数が収束するのは,数列が0に収束する場合だけであることが証明できた. ![]() Ⅰ(1)の対偶をとると,数列 ![]() |
【例3】 次の無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)は0に収束しないから,元の無限級数は発散する.…(答) ![]() |
【例4】 次の無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)数列の第n項は ア) nが奇数のときn+1は偶数だから イ) nが偶数のときn+1は奇数だから nが限りなく大きくなるとき,どこまで行っても偶数と奇数が登場するから, したがって,無限級数は発散する.…(答) (別解)第n部分和を使って証明する方法(このページの先頭に書いている) 第n部分和は だから ア) nが奇数のとき イ) nが偶数のとき nが限りなく大きくなるとき,どこまで行っても偶数と奇数が登場するから, したがって,無限級数は発散する.…(答) |
なお 【例1】 【例2】 のように, Ⅰ(2)は, ![]() |
(解説) Ⅱ(1)(2)(3) ← (1) (2) (3) ここで覚えておくべきことは,上記のように収束する無限級数については,(1)のように足し算の順序を変えて,分けて計算してもよいということ (2)のように引き算の順序を変えて,分けて計算してもよい (3)のように実数(定数)を掛けてから足しても,足してから掛けてもよい ⇒ 要するに,1つずつが収束する無限級数の和差,実数倍については,計算の順序の入れ換えは「何でもあり」ということです. ⇒ これに対して,1つずつが収束するとは限らない無限級数の和差,実数倍の順序を勝手に入れ変えると,正しい変形という保証がなくなります.この場合は,原則通り「第n部分和」を作って,その極限を考えるのみです. |
Ⅲ【無限等比級数の和】 無限等比級数 の収束・発散一覧
|
(解説) ア) となるから,無限級数は収束し,その和は0になる. イ) 第n部分和は
(その1)
(その2) は,初項
数学Ⅱで習うときは,等比数列の和は,分母分子ともrの次数の高い項を前にして
とするが,この式は分母分子にそれぞれ1を掛けた次の式に等しい 場面に応じて,使いやすい方を使う
その i)
その ii) その iii) その iv)
※
無限等比数列 の収束条件は 無限等比級数 の収束条件は のところだけが 異なる |
【例5】 次の無限級数の収束・発散を調べてください.
(解答)第n部分和 は,初項 ![]()
【例6】 次の無限等比級数が収束するような
(解答)初項 すなわち のとき収束する.このとき和は |
【問題2】 次の無限級数級数の収束・発散について調べ,収束するときはその和を求めなさい.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(1)
|
(2)
一般には,無限級数の和を求めるときに,計算の順序を勝手に変えることはできないが,それぞれが収束する無限級数については,求めた結果の差に等しいⅡ(2)
したがって,次のように計算できる. (別解) 第n部分和から求めると,有限数列の和になるから,和差の順序を入れ換えても等しい. 各々,初項 および初項 に収束する …(答) |
【問題3】 次の無限等比級数が収束するような
(1)
初項
ア)初項 イ)初項 ア)より イ)より ![]() (2)より ![]() (2.1)は,判別式 (2.2)より 以上から,ア)イ)の範囲を合わせると |
(2)
初項
ア)初項 イ)初項 ア)より イ)より ![]() (2)より 以上から,ア)イ)の範囲を合わせると |
【まとめの問題】 総合復習
無限級数の和を求めるには(再掲)
■いきなり無限を考えるのは無理 ■「第n部分和の式」を確定してから,その極限を求めること
【Ⅰ 無限級数が収束するための必要条件】(再掲)
【問題4】 次の無限級数の収束・発散を調べ,収束するときは和を求めてください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)(1) (2) ※収束しないことは,簡単に示せることがある.
(1)
第n部分和を
したがって, ア) イ) 正負の値を交互に取りながら,絶対値の大きな値になるから,「振動する(発散する) …(答) この問題では,数列の第n項が |
【問題4】 次の無限級数の収束・発散を調べ,収束するときは和を求めてください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(2)
かっこの中は先に計算しなければなりません.したがって,第n項にはかっこn個分(分数2n個)まで入ります.
第n部分和を (参考) もし問題が, ≪第n部分和から求める場合≫ ア)nが奇数のとき, イ)nが偶数のとき, 一致しないから,無限級数は収束しない(振動して発散) ≪数列の第n項から発散を示す場合≫ ア)nが奇数( イ)nが偶数( 数列が0に収束しないから,無限級数は収束しない |
【問題4】 次の無限級数の収束・発散を調べ,収束するときは和を求めてください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(3)
|
【問題4】 次の無限級数の収束・発散を調べ,収束するときは和を求めてください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(4)
|
Ⅲ【無限等比級数の和】(再掲)
【問題5】 次の無限等比級数の収束・発散を調べてください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)無限等比級数 の収束・発散
(1)
初項
ア)初項 イ)初項 ア)より イ)より ![]() (2)より(分母 ![]() (2.1)(2.2)はいずれも判別式<0の絶対不等式で,つねに成り立つ. 以上から,ア)イ)の範囲を合わせると, したがって,無限等比級数はつねに収束する …(答) |
【問題5】 次の無限等比級数の和を求めてください.(選択肢の中から正しいものを1つクリック)
(2)
|
【Ⅱ 収束する無限級数の和差,実数倍】
【問題6】 次の無限級数の収束・発散について正しいものを選んでください.(1) (2) (3)
(1)
|
(2)
|
【
Ⅰ(1)(2)により, これに対して, 第n項がnの累乗となっている級数については ア) イ)
【例】
ウ)
【例】
|
(解説) 1) のように正負の項が交互に登場するときは,増減が相殺されて収束する可能性がありますが のように正の項ばかりであるときは,増える一方なので無限大に発散するかのように見えますが,そうとは限りません. 2) たとえば,今までに登場した例で では数列の第n項 3) そこで,正の項ばかりを足していく級数において, ア)の証明 以下の解説は,数学Ⅲの定積分の知識を必要とします. ![]() 辺々加えるたとき,左辺は1からn+1までの定積分でつながるから ここで だから
【追い出しの原理】
※ならば |
イ)の証明 ア)を使えばイ)は簡単に証明できます.
分母が小さいと分数は大きくなる
だから したがって ここでア)により だから 個別のkの値に対しては,上記のような定積分を用いなくても,数列の知識だけで証明できるものがある. 【例】 【例2】で登場したもの だから 左辺は無限大に発散するから,右辺も無限大に発散する. ウ)の証明 ウ)を高校数学で証明するのは難しい.(リーマンの 次の式も高校数学では証明できないが,「ほんとに収束するんだ!」と眺めるだけでよい. |
![]() ![]() *** 遘醍岼 *** 謨ー竇�繝サ�。謨ー竇。繝サ�「謨ー竇「鬮伜穀繝サ螟ァ蟄ヲ蛻晏ケエ蠎ヲ *** 蜊伜� *** 隍�エ�謨ー蟷ウ髱「莠梧ャ。譖イ邱�蟐剃サ句、画焚陦ィ遉コ縺ィ讌オ蠎ァ讓� 謨ー蛻励�讌オ髯�髢「謨ー蟆朱未謨ー荳榊ョ夂ゥ榊�螳夂ゥ榊� 陦悟�1谺。螟画鋤 窶サ鬮俶�。謨ー蟄ヲ竇「縺ョ縲梧焚蛻励�讌オ髯舌阪↓縺、縺�※�後%縺ョ繧オ繧、繝医↓縺ッ谺。縺ョ謨呎攝縺後≠繧翫∪縺呻シ�
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