○この頁では,それぞれの問題の結果を暗記することはお勧めしない.
【要点】○いろいろな問題を処理する中で「考え方や変形の仕方を身に付ける」ことが目標です.
2つの複素数の商(割り算)を極形式で書くと
A(α)からB(β)へ移るときの「辺の長さの比」と「回転角」が分かる.
【例題1.1】
(解答)3点O, A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ. だから A(α)を原点の周りに左回りに45°だけ回転して,さらに 倍するとB(β)に重なる. したがって,∠OABが直角となる直角二等辺三角形
この問題に答えるためには,辺の比が1:
で,その間の角度が45°のときは,「1:1: の直角二等辺三角形になる」という中学校数学の基本が前もって分かっていなければなりません.このことに気づかない場合は, などと,AB間の距離も求める必要があります.
≪参考≫
そもそも,複素数で書かれた1つの等式は,実数で書かれた2つの等式と同値になります. ○1 実部,虚部で書けば
a+bi=c+di ←→
a=c
b=d ○2 極形式で書けば r1(cosα+isinα)=r2(cosβ+isinβ) (r1, r2>0, 0≦α, β<2π) ↓↑ r1=r2 α=β 直角二等辺三角形となるための条件は,実数(大きさ)を用いて |α|=|β|…(*1) |α|2+|β|2=|β−α|2…(*2) のように連立方程式で書いてもよいはずです.(問題の形によってはこの形の方が使いやすい場合もある) (*1)(*2)と(2)とは次のようにつながる. (*1)を(*2)に代入すると 2|α|2=|β−α|2 …(*3) (*1)(*2)←→(*1)(*3)であるが,(*1)(*3)は が原点を中心とする半径1の円周上にあり,かつ,点1を中心とする半径 の円周上にあるという2つの条件で表されることを示している. これは,上記(i)で述べた を2つに分けて述べていることになる.
※以下の問題では,画面上で答えやすいように選択問題にしていますが,計算用紙を使ってよく考えてから正しい選択肢をクリックしてください.
【問題1】なお,試験問題では単に「二等辺三角形」と答えるだけでは不十分で「AB=BCの二等辺三角形」などと答えなければなりませんが,選択肢は省略形になっています.詳しくは解説に書いたように答えるのが普通です.
3点O, A(α), B(β)を頂点とする△OABについて
が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ. と変形すると, ,∠AOB=60°になるから 「の直角三角形」…(答)
この問題に答えるためには,辺の比が1:2で,その間の角度が60°のときは,
「1: :2 の直角三角形になる」という中学校数学の基本が前もって分かっていなければなりません. このことに気づかない場合は, などと,AB間の距離も求める必要があります.
(2)
3点O, A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ. と変形すると, ,∠AOB=60°になるから 正三角形…(答)
この問題に答えるためには,辺の比が1:1で,その間の角度が60°のときは,正三角形になるという中学校数学の基本が前もって分かっていなければなりません.
このことに気づかない場合は, などと,AB間の距離も求める必要があります.
≪参考≫
そもそも,複素数で書かれた1つの等式は,実数で書かれた2つの等式と同値になります. 正三角形となるための条件は,実数(大きさ)を用いて |α|=|β|…(*1) |α|=|β−α|…(*2) のように連立方程式で書いてもよいはずです.(問題の形によってはこの形の方が使いやすい場合もある) (*1)の両辺を|α|で割ると …(*3) (*2)の両辺を|α|で割ると …(*4) (*1)(*2)←→(*3)(*4)であるが,(*3)(*4)は が原点を中心とする半径1の円周上にあり,かつ,点1を中心とする半径1の円周上にあるという2つの条件で表されることを示している. したがって,(*1)(*2)の2つに分けて述べている事柄は の1つで述べられる事柄と同じになる.(いずれも三角形ができるためには,α,β≠0が前提となっている) |
【例題1.2】
(解答)3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ. と変形すると,BCを点Bの周りに(時計回り,または反時計回りに)90°だけ回転する(長さは変えない)とBAに重なることが分かる. したがって,∠ABCが直角となる直角二等辺三角形 【問題2】
(1)
3点A(z1), B(z2), C(z3)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ.
(2)
3点A(z1), B(z2), C(z3)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ.
2つの辺のなす角を考えるとき,(ベクトルの用語でいえば)始点をそろえた方が図形をイメージしやすくなります.
z3−z1とz2−z3のままでは,始点がそろっていませんが, z1−z3とz2−z3にすると始点がz3にそろいます. だから,CA=CB,∠ACB=120°になる.(時計回りの場合と反時計回りの場合がある) ∠C=120°の二等辺三角形…(答)
(3)
3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ.
2つの辺のなす角を考えるとき,(ベクトルの用語でいえば)始点をそろえた方が図形をイメージしやすくなります.
α−βとβ−γのままでは,始点がそろっていませんが, α−βとγ−βにすると始点がβにそろいます. だから, ,∠ABC=45°になる. したがって∠C=90°の直角二等辺三角形…(答) (時計回りの場合と反時計回りの場合がある) |
【要点】 同様にして, に関する2次方程式を解の公式を使って解くと のように表せるから, の「拡大比と回転角」が分かり,三角形の形状について手がかりがつかめる.
【例題2.1】
(解答)3点O, A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ. 三角形だからα, β≠0, α≠β.両辺をα2で割ると OA=OB, ∠AOB=90°になるから ∠AOB=90°の直角二等辺三角形…(答) (A,O,Bの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある) 【問題3】
(1)
3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ.
∠OAB=90°の直角三角形
∠ABO=90°の直角三角形
∠AOB=90°の直角三角形
∠OAB=120°の二等辺三角形
∠ABO=120°の二等辺三角形
∠AOB=120°の二等辺三角形
正三角形
三角形だからα, β≠0, α≠β.両辺をα2で割ると
2次方程式の解の公式を使って解くと OA=OB, ∠AOB=60°になるから正三角形…(答) (A,O,Bの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある)
(2)
3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ.
三角形だからα, β≠0, α≠β.両辺をβ2で割ると
2次方程式の解の公式を使って解くと OA=2OB, ∠AOB=60°になる 「(∠OBA=90°)の直角三角形」…(答) (A,O,Bの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある)
(3)
3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ.
三角形だからα, β≠0, α≠β.両辺をβ2で割ると
2次方程式の解の公式を使って解くと OA=OB, ∠AOB=135°になる OA=OB, ∠AOB=135°の二等辺三角形…(答) (A,O,Bの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある) |
【例題2.2】
3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ.
上記の例題2.1では原点Oを中心とする回転・拡大を考えたが,この問題のように3点が与えられたときは,いずれか1つの頂点,例えばA(α)を中心とする回転・拡大を考えるとよい.そのためには,β, γの代わりにβ−α, γ−αを使って表せばよい.
(解答)γ2=(γ−α)2+2γα−α2 などを試してみるのも一つの手です. β2=(β−α)2+2βα−α2 γ2=(γ−α)2+2γα−α2 を代入すると α2+(β−α)2+2βα−α2+(γ−α)2+2γα−α2−αβ−βγ−γα=0 (β−α)2+(γ−α)2−(β−α)(γ−α)=0 三角形だからβ−α≠0.両辺を(β−α)2で割ると 解の公式を使って解くと AB=AC, ∠CAB=60°になるから正三角形…(答) (A,B,Cの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある) 【問題4】
(1)
3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ. 三角形だからα−β≠0.両辺を(α−β)2で割ると BA=BC, ∠B=90°になるから∠B=90°の直角二等辺三角形…(答) (A,B,Cの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある)
※このように変形しなければ問題が解けないということではない.αの回りの回転を調べて(γ−α):(β−α)で表した場合は
より となってAB:AC=1:の形で同じ結果が得られる. ,∠CAB=45°
(2)
3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCについて が成り立つとき△ABCはどのような形の三角形か述べよ.
∠A=90°の直角二等辺三角形
∠B=90°の直角二等辺三角形
∠C=90°の直角二等辺三角形
AB=AC, ∠A=120°の二等辺三角形
BC=BA, ∠A=120°の二等辺三角形
CA=CB, ∠A=120°の二等辺三角形
正三角形
三角形だからβ−α≠0.両辺を(β−α)2で割ると 解の公式を使って解くと AB=AC, ∠A=120°になるから∠A=120°の二等辺三角形…(答) (A,B,Cの向きは時計回りの場合と反時計回りの場合がある)
γを中心とする回転・拡大で考えても解ける.
と変形すれば となって,CA:CB=1:となる. ,∠BCA=30° |
【要点】
z≠0,a, bは実数)とすると
(ただし(1) ならばzは純虚数
a+bi=−(a−bi)ならば2a=0
(2) ならばzは実数a=0 となって,z=biとなるからである. (純虚数という場合,z=0は除外する)
a+bi=a−biならば2b=0
b=0 となって,z=aとなるからである.
【例題3.1】
(解答)3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ. 上記の【要点】(1)により ならば (bは0以外の任意の実数) とおけるから∠BOA=90°の直角三角形になる.
この問題は,この頁でここまで扱ってきた問題と少し違う点があることに注意.すなわち,ここまでの問題は「三角形の形が決まる」(大きさまでは決まらない)のに対して,この問題は三角形の形が完全には決まらない(不定の要素があります).
詳しくは次の備考で示すこととして, の関係が成り立つとき,△OABが直角三角形になることを「長さを使って==三平方の定理で」証明してみると次のようになります. ( のとき) …(*1) …(*2) (*1)(*2)を比較すると,
≪参考≫
【問題5】そもそも,複素数で書かれた1つの等式は,実数で書かれた2つの等式と同値になります. 中学校で習ったように三角形の決定条件は「3辺の長さが与えられること」「2辺とその間の角が与えられること」「1辺とその両端の角が与えられること」ですが,これらを表すためには,いずれも3つの等式が必要になります. このうち2つだけが決まる場合には「2辺の比とその間の角は分かるが,辺の長さまでは決まらない」のように形は決まるが大きさまでは決まらない,たとえば相似図形であるための条件が指定されていることになります. これに対して,(実数の内容として)1つだけ等式が与えられた場合には,さらに形も定まらないことがあります.
○例えば,3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて
|α|=|β| のように指定された場合,実数で1つの条件が与えられただけなので,二等辺三角形ではあるが細かな形は決まらず,大きさも全然決まらないことになります.
○例えば,3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて
|α|2+|β|2=|α−β|2 のように指定された場合,実数で1つの条件が与えられただけなので,直角三角形ではあるが細かな形は決まらず,大きさも全然決まらないことになります.
(1)
3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ.
とおく(△OABは三角形だからα,β≠0)
したがって a=1(bは任意の実数,ただしb=0ならα=βとなって三角形にならないからb≠0) 右図のようにOA:OB=1:の直角三角形になります. , ∠OAB=90° (別解)三平方の定理を使って証明する場合 ならば このとき だから∠OAB=90°の直角三角形 (別解)複素数を使って垂直であることを証明する場合 のとき は純虚数となるから OA⊥AB
(2)
3点O(0), A(α), B(β)を頂点とする△OABについて が成り立つとき△OABはどのような形の三角形か述べよ.
とおく(△OABは三角形だからα, β≠0)
したがって \(\beta=\frac{1}{2}\alpha+bi\times\alpha\) (OAの中点:\(\beta=\frac{1}{2}\alpha\)まで行ってから,\(\alpha\)に垂直な複素数\(bi\times\alpha\)を足す) (bは任意の実数,ただしb=0ならα=2βとなって三角形にならないからb≠0) 右図のようにOAの中点から垂直な直線上にBがあることになり,OB=ABの二等辺三角形になります. (別解)複素数の長さを使って証明する場合 ならば このとき だからOB=ABの二等辺三角形 |
■[個別の頁からの質問に対する回答][複素数平面の図形問題(三角形の形状問題)について/17.3.16]
問題5(2)の答えの選択肢が解説と相違しています。解説のOB=ABではなくOA=ABを選択しないと丸がつきません(T-T)
=>[作者]:連絡ありがとう.選択肢の番号を訂正しました. |
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