■三角不等式
【例題1】
 0≦θ<2πのとき,
.cos(2θ−.π3n)>..3√ni2nn
を満たすθの値の範囲を求めることを考えます.
(最後までたどり着けない答案)
 右上の図は,黒色がy=cosθのグラフ,緑色がy=cosのグラフです.
一般にy=cosのグラフはy=cosθのグラフを横方向にn倍に引き延ばしたものになるのではなく,n分の1に縮めたものになることに注意しましょう
 右中央の図は,緑色がy=cosのグラフ,青色が
y=cos(2θ−.π3n)すなわちy=cos2(θ−.π6n)のグラフです.
一般にy=cos n(θ−α)のグラフはy=cosのグラフを右にαだけ平行移動したものとなります.
(1) y=cos n(θ−α)のときに右にαだけ平行移動で,y=cos n(θ+α)のときは左にαだけ平行移動となることに注意しましょう.
(2) このとき平行移動する分量はy=cos n(θ−α)の形で判断し,y=cos(nθ−α)の形でそのまま読むと間違います.すなわち, y=cos(2θ−.π3n)y=cos
のグラフを右に.π3nだけ平行移動したものではなく
.π6nだけ平行移動したものになります.
 以上のようにして描いたものが3番目のグラフで青色で示した
y=cos(2θ−.π3n)のグラフで,赤で示したのがy=..3√ni2nnのグラフ
です.
 青と赤の2つのグラフから,cos(2θ−.π3n)>..3√ni2nnを満たす
範囲は2箇所あるということが分かりますが,実際の答案にまでまとめるのは大変困難です.
▲ 理屈の上では,このようにすれば解けるはずですが,現役の高校生がこの方法で答案をまとめるのは困難です.
▲ 第1の理由は,3番目のグラフを作るまでの作業が長くて,なかなかたどり着けないことです.
▲ 第2の理由は,3番目の青で示したグラフが正確に描けても,このグラフから条件を満たすθの範囲を読み取るのは困難だからです.

○ 他の解き方を考える方がよさそうです.
現在地と前後の項目

正の角・負の角/動径の表わす一般角/三角関数の定義 /(第2象限) /(第3象限) /(第4象限) /(まとめ)/弧度法の単位:ラジアン/三角関数の値(よく使う角度)/sin(π+θ)など/三角方程式 /三角不等式/三角関数のグラフ(sinθの平行移動)/(cosθの平行移動)/sin(θ-α)のグラフ(解説)/(振幅)/(周期)/(周期と振幅)/三角関数のグラフ(総合1)/三角関数のグラフ(総合2)/加法定理,倍角公式,3倍角公式,半角公式/加法定理の練習問題/2倍角公式.半角公式/加法定理の数値計算/積和.和積の公式/練習問題2/練習問題3/練習問題4/合成公式/三角不等式/三角関数(まとめ)/[センター]積和の公式/[センター]合成公式/三角関数公式一覧/三角関数公式プラス/三角形の証明・形状問題/センター試験.三角関数(2015年~)/
(答案)
 単位円を使って考える.
 0≦θ<2πのとき,t=2θ−.π3nとおくと
θ0→2π
t.π3n.11π3nnn


≪定義域の変換≫
 右図の青で示した円(重ならないように少しだけずらして示
している)は,.π3n≦t<.11π3nnnとなるtについての図とします.
 図から,cost>..3√ni2nnとなるtの値の範囲は
.π6n<t<.π6n…(1順目)
.11π6nnn<t<.13π6nnn…(2順目)
これをθの範囲に直すと
.π6n<2θ−.π3n<.π6n
.11π6nnn<2θ−.π3n<.13π6nnn
θについて解くと
.π12nn<θ<.π4n, .13π12nnn<θ<.4nn…(答)
○ このように単位円を使って解くときは,特に≪定義域の変換≫に注意しなければなりません.
○ 元のθが1周している場合でも,新しい変数tでは2周する場合もあります.(円が重ならないように描けばよいでしょう)
○ cosθ, costの値はx座標で調べます.sinθ, sintの値はy座標で調べます.
.π6nとか.11π6nnnのような角度
はどこから出てくるのか?
⇒重要な5つの角度の正弦・余弦の値は「覚えているから」できるのです.
(上下左右対称に応じてこれに符号を付けます)
【例題2】
 0≦θ<2πのとき,
.sin(2θ+.π4n)≦..2√ni2nn
を満たすθの値の範囲を求めてください.
(解答)
t=2θ+.π4nとおくと
0≦θ<2πのとき.π4n≦t<.17π4nnn…(1)
この範囲でsint≦..2√ni2nn…(2)を解く.
右図より
t=.π4n
.4nn≦t≦.4nn
.11π4nnn≦t<.17π4nnn
(1)(2)とも等号がある値は解に含まれる
θで表すと
2θ+.π4n=.π4n
.4nn≦2θ+.π4n.4nn
.11π4nnn≦2θ+.π4n<.17π4nnn
したがってθ=0, .π4n≦θ≦π, .4nn≦θ<2π…(答)

※正しい番号をクリックしてください.
問1 0≦θ<2πのとき,
.cos(2θ+.π2n)<−.12n
を満たすθの値の範囲を求めてください.
1.3nn<θ<.3nn, .3nn<θ<.10π3nnn
2.π6n<θ<.6nn, .13π6nnn<θ<.17π6nnn
3.π12nn<θ<.12nn, .13π12nnn<θ<.17π12nnn
4.11π12nnn<θ<.19π12nnn, .23π12nnn<θ<2π

問2 0≦θ≦πのとき,
.sin(3θ−.π3n)>..2√ni2nn
を満たすθの値の範囲を求めてください.
1.π4n<θ<.4nn, .4nn<θ<.3nn
2.12nn<θ<.13π12nnn, .31π12nnn<θ≦3π
3.36nn<θ<.11π36nnn, .29π36nnn<θ<π
4.36nn<θ<.13π36nnn, .31π36nnn<θ≦π

問3 0≦θ≦πのとき,
..12n<cos(3θ−.π6n)≦..2√ni2nn
を満たすθの値の範囲を求めてください.
1.π4n≦θ<.3nn, .3nn≦θ<.4nn, .4nn≦θ<.3nn
2.12nn<θ≦.6nn, .2nn<θ≦.23π12nnn, .29π12nnn<θ≦.17π6nnn
3.36nn≦θ<.18nn, .π2n<θ≦.23π36nnn, .29π36nnn≦θ<.17π18nnn
4.11π36nnn<θ≦.18nn, .3nn≦θ<.29π36nnn, .35π36nnn<θ≦π


【例題3】
 0≦θ≦πのとき,
.tan(2θ−.π6n)≧1
を満たすθの値の範囲を求めてください.
(解答)
t=2θ−.π6nとおくと
0≦θ≦πのとき.π6n≦t≦.11π6nnn
この範囲でtant≧1を解く.
右図より
.π4n≦t=2θ−.π6n<.π2n
.4nn≦t=2θ−.π6n<.2nn
θについて解くと,.24nn≦θ<.π3n, .17π24nnn≦θ<.6nn…(答)
【例題4】
 0≦θ≦πのとき,
.tan(2θ+.6nn)≦−.3√ni
を満たすθの値の範囲を求めてください.
(解答)
t=2θ+.6nnとおくと
0≦θ≦πのとき.6nn≦t≦.17π6nnn
この範囲でtant≦−.3√niを解く.
右図より
.2nn<t=2θ+.6nn.3nn
.2nn<t=2θ+.6nn.3nn
θについて解くと,.π3n<θ≦.12nn, .6nn<θ≦.11π12nnn…(答)
.tanθの値は,x座標やy座標ではなくそれらの比になります.
 すなわち,tanθ=.sinθcosθnnnnn=.yxnなので,m=tanθの値は原点
を通る直線y=mxの傾きmになります.
【重要】
○ この値を全部言えなければ問題は解けません.
○ 特に,.π2n, .2nnのところ(通俗的に言えば「北極」と「南極」
のところ)では,tanθの値は定義されないことに注意.

問4 0≦θ≦πのとき,
.tan(2θ+.π3n)<−.3√ni
を満たすθの値の範囲を求めてください.
1.π12nn<θ<.π6n, .12nn<θ<.3nn
2.π6n<θ<.π3n, .3nn<θ<.6nn
3.π4n<θ<.π3n, .4nn<θ<.6nn
4.π2n<θ<.3nn, .2nn<θ<.3nn


■[個別の頁からの質問に対する回答][三角不等式について/18.9.18]
いつも大変勉強させていただいております。 例題の解答で π12<θ<π4, 13π12<θ<15π12…(答) となっており約分されておりませんでしたのでお伝えします。敢えてなのかなとも思いましたが。
=>[作者]:連絡ありがとう.約分しておきました.
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