確率分布表とは,大雑把にいえば度数分布表の度数をその総数で割って相対度数分布表に直したものですが,詳しく言えばそれだけではありません.
例えば,右の例1表1において各人数を総人数N=100で割って相対度数で表すと,表2になりますが,この表2はこの頁で取り扱う「確率分布表」にはなっていません.それは,血液型の欄が名義データ(文字データ)になっているからです. 同様にして,右の例2表3において,各当たりくじの本数をくじの総数N=100で割って確率で表すと,表4になりますが,この表4において「当たりくじ」と「確率」の組合せでできる表は確率分布表とは言えず,「賞金」と「確率」に組合せでできる表が確率分布表になります. すなわち,表4の水色の部分のように「数値で示される値X」と「その確率P」の対応が示されていることが重要です. ■用語と記号 ○
試行の結果によって値X=x1 , x2 ,..., xnとそれに対応する確率
P=p1 , p2 ,..., pnとが定まるとき,変数Xを確率変数という. ○
確率変数Xの値x1 , x2 ,..., xnとそれに対応する確率p1 , p2 ,..., pnとの対応関係を確率分布という.
○
確率分布は,次のような確率分布表で表されることが多い.
○ 確率分布表に登場する確率については,次の関係が成り立つ. p1≧0, p2≧0,..., pn≧0 …(1)
p1+p2+···+pn=1 …(2)
(解説)
(1)← 右の表5において,各変数xk (k=1,2,...,n)をとる度数(回数や個数)がfk (k=1,2,...,n)でその度数の合計がNであるとき 度数分布表において,すべての場合が「もれなく」「重複なく」数え上げられていて,かつ,合計Nのすべての場合が同様な確からしさで起る場合だけを扱っています.だから,各度数を合計Nで割ったものは確率になり, 度数xk (k=1,2,...,n)は0(回),1(回),...,0(個),1(個),...,といった正または0の整数だから,これを度数の合計Nで割った確率 pk (k=1,2,...,n)は0以上になります. (2)← f1+f2+···+fn=N だから ++···+= すなわち p1+p2+···+pn=1 になります. |
■例1 度数分布表
相対度数分布表
度数分布表
相対度数(=確率)に直したもの
=pnとおく 確率分布表
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〜くじの賞金を扱う問題〜
【例1】
(解答)
100本のくじの中に,金賞1000円が1本,銀賞500円が2本,銅賞100円が10本入っている(残りははずれになっている)とき,このくじの中から1本引くとき,賞金の確率分布を求めてください.
「確率分布を求めよ」という問題には,確率分布表を示せばよい.
度数分布表は次の表のようになる.
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〜当たりくじの本数を扱う問題〜
【例2】
(解答)
全部で5本の中に,当たりくじが3本入っているくじがある.このくじから同時に2本引くとき,その中に含まれる当たりくじの本数について確率分布を求めてください.
当たりくじの本数を確率変数Xとして,各々の確率との対応表で示せばよい.
合計5本のくじから2本引く方法の総数は,N=5C2=10通りあり,どの出方も同様に確からしい.ただし,当たりくじは全部で3本入っていますが,同時に2本しか引いていないので,当たりくじは多くとも2本までになります. なお,Aという種類のくじがa本,Bという種類のくじがb本,合計a+b=N本入っているくじから,同時にn本取り出すとき,Aがp本,Bがq本,合計p+q=nとなる確率は, で求められます. 当たりくじ3本からp本,はずれくじ2本からq本,合計2本取ってできる組合せは,3Cp×2Cq (p=0,1,2)通りだから
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正しい番号を選択してください.
【問題1】
(解答)全部で7本のくじの中に,当たりくじが2本入っている.この中から同時に3本引くときに含まれる当たりくじの本数について確率分布を求めてください.
1,, 2,, 3,, 4,, HELP
合計7本のくじから3本引く方法の総数は,N=7C3=35通りあり,どの出方も同様に確からしい.
当たりくじ2本から0本,はずれくじ5本から3本,合計3本取ってできる組合せは,2C0×5C3=10通り 当たりくじ2本から1本,はずれくじ5本から2本,合計3本取ってできる組合せは,2C1×5C2=20通り 当たりくじ2本から2本,はずれくじ5本から1本,合計3本取ってできる組合せは,2C2×5C1=5通り したがって,各々の確率は=, =, = →3
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【問題2】
(解答)全部で6枚のトランプのカードの中に,スペードが3枚,ハートが2枚,ダイヤが1枚入っている.裏返してよく切ってから,同時に3枚取り出すとき,取り出したカードに含まれるスペードの枚数について確率分布を求めてください.
1, 2, 3, 4, HELP
合計6枚のカードから3枚取る方法の総数は,N=6C3=20通りあり,どの出方も同様に確からしい.
スペード3枚から0枚,他の3枚から3枚,合計3枚取ってできる組合せは,3C0×3C3=1通り スペード3枚から1枚,他の3枚から2枚,合計3枚取ってできる組合せは,3C1×3C2=9通り スペード3枚から2枚,他の3枚から1枚,合計3枚取ってできる組合せは,3C2×3C1=9通り スペード3枚から3枚,他の3枚から0枚,合計3枚取ってできる組合せは,3C3×3C0=1通り したがって,各々の確率は, , , →4
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〜硬貨の表の枚数の問題〜
【解説】
見やすくするために,表を○で表し,裏を×で表すことにすると,5枚の硬貨A,B,C,D,Eのうち表が2枚出る出方は,次の表の通り.5枚の硬貨を同時に投げたときに,表が2枚出る確率
場合の数のときには区別できない物の数え方も登場しますが,確率の計算をするときは,「物は互いに区別できる」としなければなりません.
このことを明示的に書いている教科書にお目にかかったことはありませんが,数学のモデルとしては「物に区別がないとき」「物に区別があるとき」のどちらでも扱えますが,人に見えるレベルの大きさを持った物は,問題に書かれていなくても「互いに区別できる」として計算したモデルだけが実際の実験と合います・・・区別ができないような光子の世界とは違います. A,B,C,D,Eなんか問題文に書いてないじゃないかと思われる場合は,赤青黄緑黒,1,2,3,4,5などとしてもよい. 1枚の硬貨について,表(○)が出る確率はp=,裏(×) が出る確率もq=で,各々の硬貨は互いに独立に振舞うから 例えば,No.1のように出る確率は p×p×q×q×q=()2()3=()5 No.2のように出る確率は p×q×p×q×q=()5 …… No.10のように出る確率は q×q×q×p×p=()5 これらのどの出方も表(○)が2枚でるという条件を満たしているから,これらの確率を足せばよい.ところで,どの確率も ()5 になっているから,このような出方が何通りあるか(上記の表では10通り)を掛けたら答えになる. 異なる5枚の硬貨A,B,C,D,Eのうち,表を向く硬貨2枚を選ぶ方法は 5C2==10通り したがって,5枚の硬貨を投げたときに,表が2枚出る確率は 5C2()5==
一般に,1個の物についてあることが起る確率をp,そのことが起らない確率をq=1−pとするとき,互いに独立なn個の物について何らかの試行を行ったとき,そのうちのr個でそのことが起る確率は
nCr prqn−r
で求められます.
※この結果は,1個の物についてn回繰り返して試行を行う場合に成り立つ「反復試行の確率」の公式と一致します.
反復試行の場合には,1個の物が「以前にどんな結果が出たかを全く忘れて」「全く白紙の状態で」=「1回ずつ独立に」n回繰り返されるのに対して,上に示した解説ではn個の物が「互いの結果に影響されずに」=「各々独立に」1回だけ行われることになります. これらが同じ結果になるのは「互いに独立」だからです. |
【問題3】
(解答)5枚の硬貨を同時に投げるとき,表が出る枚数について確率分布を求めてください.
1,, 2,, 3,, 4,, HELP
表が0,1,2,3,4,5枚出る確率は順に
5C0()5=, 5C1()5=, 5C2()5== 5C3()5==, 5C4()5=, 5C5()5= →2
〜さいころの出た目の個数の問題〜
【問題4】
(解答)3個のさいころを同時に投げるとき,1の目が出るさいころの個数について確率分布を求めてください.
1, 2, 3, 4, HELP
1の目が0,1,2,3個出る確率は順に
3C0()0()3=, 3C1()1()2== 3C2()2()1==, 3C3()3()0= →4
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〜復元抽出の問題〜
【例3】
(解答)全部で10本のくじの中に,当たりくじが3本入っている.この中から1本引き,結果を見てから元に戻してよくかきまわして再びくじを引くことを繰り返す.全部で5回くじを引くとき,くじに当たる回数について確率分布を求めてください. 反復試行の確率は,上記の公式と一致します.すなわち
1回の試行であることが起る確率をp,そのことが起らない確率をq=1−pとするとき,この試行をn回繰り返したとき,ちょうどr回そのことが起る確率は
nCr prqn−r
この問題では,10本のくじの中に,当たりくじが3本入っているのだからで求められます. p=, q= 5回くじを引くのだから n=5 そこで,くじに当たる回数r=0,1,2,3,4,5回について,上記の公式にしたがって確率を求めます. r=0のとき5C0()0()5= r=1のとき5C1()1()4= などと順に計算します.この問題では小数の方が見やすいので,以下,小数で示すと
(参考)
この問題は,1個について当たりになる確率がp=,外れ になる確率がq=となっているくじを5個同時に引くときと 同じ結果になります.それは,くじが互いに独立だからです. 〜非復元抽出の問題〜
【例4】
(解答)袋の中に赤玉が3個,白玉が2個,合計5個の同じ大きさで手触りも同じ玉が入っている.この中から1個取り出して,玉の色を見てから再び玉を取り出すことを繰り返す.ただし,取り出した玉は元に戻さないものとする.2回玉を取り出すときに,赤玉が出る回数について確率分布を求めてください. 取り出した玉を元に戻さないような場合には,先に起った事柄の結果によって,後に起る事柄の確率が影響を受けます.このような取り出し方は非復元抽出と呼ばれ,その確率の計算には「従属事象の乗法定理」を用います. (1) 赤が0個の場合:白白の順に出る確率は ×= (2) 赤が1個出る場合:赤白または白赤の順に出る確率は ×+×= (3) 赤が2個出る場合:赤,赤の順に出る確率
結局,確率分布は次の表で表されます.
(参考)
このような「非復元抽出」の問題を問題の趣旨に沿って論理的に解けば, で計算することになりますが,その結果は で計算したものと同じになります. すなわち,この問題の場合,5個の玉から「同時に2個」取り出す場合の赤玉の個数と同じになります. 例えば,赤玉が0個となる確率を組合せで計算すると = 赤玉が1個となる確率を組合せで計算すると == となって,結果は一致します. そもそも,「2個同時に」取り出すなんてことはできない相談で,実際には図のように,どちらかが0.0001秒でも早く出ます.だから,同時に取り出したように見えても,必ずどちらかが先に出たのと同じことになります(出題者が問題の前提を覆してしまってどうするの?) ただし,選択問題や穴埋め問題では,これで十分ですが記述式答案の場合,「なぜ組合せで計算できるのか」という訳を説明しないと,数学採点者の"義務"として減点するでしょう. |
【問題5】
(解答)さいころを3回投げるとき,5以上の目が出る回数の確率分布を求めてください.
1, 2, 3, 4, HELP
さいころを1回投げたときに,5以上(5または6)の目が出る確率は
p= 5以上の目がでない(1,2,3,4のいずれかになる)確率は q=1−p= このさいころを3回投げたときに,5以上の目がr回出る確率は 3Cr()r()n−r となるから 0回→3C0()0()3= 1回→3C1()1()2== 2回→3C2()2()1== 3回→3C3()3()0= →3
【問題6】
(解答)袋の中に赤玉が4個,白玉が3個,青玉が2個の大きさが同じで感触も同じ玉が合計9個入っている.この中から1個取り出して,玉の色を見てから再び玉を取り出すことを繰り返す.ただし,取り出した玉は元に戻さないものとする.玉を3回取り出すときに,青玉が出る回数について確率分布を求めてください.
1, 2, 3, 4, HELP
青以外を他で表すものとする.
(1) 青が0回:他他他となるのは ××= (2) 青が1回:他他青または他青他または青他他となるのは ××+××+××= (3) 青が2回:他青青または青他青または青青他となるのは ××+××+××= 結局,確率分布は次の表で表されます.
→2
【問題7】
(解答)袋の中に赤玉が3個,白玉が2個,合計5個の同じ大きさで手触りも同じ玉が入っている.この中から玉を1個取り出して,白玉が出るまで玉を取り出し続ける.ただし,取り出した玉は元に戻さないものとする.取り出す回数の確率分布を求めてください.
1,, 2,, 3,, 4,, HELP
1回で白玉が出る確率は
1回目に白玉が出ずに,2回目に白玉が出る確率は
×= 1回目も2回目も白玉が出ずに,3回目に白玉が出る確率は ××= 1回目〜3回目まで白玉が出ずに,4回目に白玉が出る確率は ×××1= →1
※3回目まで白が出なかったときは,残り2個のうち2個とも白になるので,4回目には必ず白が出ます.
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■[個別の頁からの質問に対する回答][確率変数と確率分布について/17.3.20]
広告の位置がじゃまで、例2が見にくいのですが、消すor動かすっていうことってできますか?
因みにx印のない広告です
■[個別の頁からの質問に対する回答][確率変数と確率分布について/16.11.19]
=>[作者]:連絡ありがとう.確かにChromeで見たときだけ,〜くじの賞金を扱う問題〜の前までが,他のブラウザと全く違う表示になるようです.原因は解明できませんでしたが,応急処置をしておきました.リロードしてもらえば直っているはずです. いつも丁寧な解説と図を載せて下さり感謝しています。硬貨の表の枚数の問題のところで、異なる5枚の硬貨A、B、C、D、Eのうち、表を向く硬貨2枚を選ぶ方法が5C2=2!3!/5!になる理由が分かりませんでした。確かに解説にある通り最後の答えは10通りになりましたが、間にある階乗の式が自分の計算では何度やっても2×6/120=12/120=1/10になり、どうしても10にならなくてどのような意味があるのかが理解できませんでした。僕の計算が間違っているのか、誤植なのか教えてください。ちなみに自分は5×4/2×1になると思いました。中3で数検2級の2次が合格できるようにこのサイトを利用しています。本当に助かっています。
=>[作者]:連絡ありがとう.分母と分子が逆になっていましたので訂正しました. |