![]() ![]() *** 科目 *** 数Ⅰ・A数Ⅱ・B数Ⅲ高卒・大学初年度 *** 単元 *** 数と式不等式二次関数二次不等式三角比三角比と図形集合・命題・証明順列・組合せ確率整数の性質 ※高校数学Aの「整数の性質…2進法,N進法」について,このサイトには次の教材があります.
この頁へGoogleやYAHOO ! などの検索から直接来てしまったので「前提となっている内容が分からない」という場合や「この頁は分かったがもっと応用問題を見たい」という場合は,他の頁を見てください. が現在地です. ↓最大公約数,最小公倍数,互除法 ↓1次不定方程式の整数解 ↓センター試験.整数問題 ↓ペル方程式 ↓2進法,16進法,n進法⇔10進法 ↓2進数の演算 ↓N進法 ↓N進数の演算 ↓N進法の小数 ↓試験問題(素数,剰余類) ![]() ↓3n+1問題(コラッツ予想) ↓フェルマー予想,オイラー予想 連続整数の積 |
入試問題の学習の仕方(筆者の考え) ○基本(根)ができなければ,応用問題(枝)もできず入試問題(葉)は解けませんが,基本問題だけをやっていても入試問題が解けるようにはなりません. ○しかしまた,数学Aの整数問題という1つの単元に限っても,たとえば基本が10あるとして,これに対応する参考書の頻出問題はその10倍,入試問題はさらにその10倍というように膨大な数になるので,あらゆる入試問題を前もって練習しておくことはできません. ![]() ○このように,膨大な数の入試問題から,それらを貫いている基本を「串刺しにする」ように見通していくと,膨大な量の暗記にはならず,基本の確認に絞ることができ,数学Aの整数問題では1桁程度の「やり方を身に付ければ」何とかできるようになります.
【要点】
1.入試問題を解きながら,基本のやり方を思い浮かべる. 2.入試問題(葉)の数は多くても,基本(根)の数は多くない. |
【例題1】
(解説)a3−b3=65を満たす整数の組(a, b)をすべて求めよ. (京大2005年前期文系)
左辺を因数分解し,右辺を素因数分解すると (a−b)(a2+ab+b2)=5×13…(1) 可能な組み合わせは次の表の通り.
※方針が決まったら,体力勝負になってもやるしかない
(1)の場合,次の連立方程式を解く![]() a2+ab+b2=65…(1.2) (1.1)よりa=b+1 これを(1.2)に代入
3b(b+3)=64
(b+1)2+(b+1)b+b2=65と変形して左辺は3の倍数,右辺は3の倍数でないと述べてもよい 3b2+3b−64=0 この方程式の判別式はD=9+4×3×64=777=3×7×37となって平方数でないからbの整数解はない. (2)の場合,次の連立方程式を解く ![]() a2+ab+b2=13…(2.2) (2.1)よりa=b+5 これを(2.2)に代入
a,bは正の整数とは書いてない
(b+5)2+(b+5)b+b2=13次のようなものも解になる 43−(−1)3=65 3b2+15b+12=0 b2+5b+4=0 (b+1)(b+4)=0 b=−1のときa=4 b=−4のときa=1 よって,(a,b)=(4,−1),(1,−4) (3)の場合,次の連立方程式を解く
3b(b+13)=−164
と変形して左辺は3の倍数,右辺は3の倍数でないと述べてる方が大きな数字なるのを避けることができる ![]() a2+ab+b2=5…(3.2) (3.1)よりa=b+13 これを(3.2)に代入 (b+13)2+(b+13)b+b2=5 3b2+39b+164=0 この方程式の判別式はD=392−4×3×164=−447<0となってbの整数解はない. (4)の場合,次の連立方程式を解く ![]() a2+ab+b2=1…(4.2) (4.1)よりa=b+65 これを(4.2)に代入 (b+65)2+(b+65)b+b2=1 3b2+195b+652−1=0 3b2+195b+64×66=0 b2+65b+64×22=0 この方程式の判別式はD=652−4×64×22=−1406<0となってbの整数解はない. (1)(2)(3)(4)から結局,(a,b)=(4,−1),(1,−4)…(答)
【押さえておきたいポイント】
○因数分解と素因数分解により各因数に分けて調べる ○整数でないことの証明には(判別式)が平方数でないことや(判別式)<0も使える
*** この解き方の印象 ***
方針が決まれば,後は理詰めの体力勝負になる. 正解できても,後に爽快感・充実感はあまり感じられない.・・・得点したければ突き進むしかないという感じ
※(3)(4)の判別式の計算は相当な難行苦行になる.これを避けるには,次のような方法も考えられるが,試験会場の現場対応でどちらが早いかは微妙.
M(=65)が与えられたとき ![]() のとき,a,bが実数になるためのkの値の範囲を求めておくと から,bが実数であるためには判別式が0以上でなければならない k>0のとき,次の関係を満たすことがbの実数条件になる(aから計算しても同じ) (3)では (4)では このようにk3−4Mの符号を調べると,酷な計算を逃れられる (図解) ![]() すなわち b=a−k のグラフは右図の赤で示したように傾き45°の直線を表し,切片が−k (k>0)のとき,原点からの最短距離は もう一方の を 図の緑で示したように傾き45°の直線に垂直な傾き これら2つのグラフが交点(共有点)を持つには すなわち が条件となる. ※ kの値があんまり大きいとこれらのグラフは交わらない(共有点を持たない)ということです
【類題1】
参考答案を見るa3−b3=217を満たす整数の組(a, b)をすべて求めよ. (京大2005年前期理系)
左辺を因数分解し,右辺を素因数分解すると
(a−b)(a2+ab+b2)=7×31…(1) 可能な組み合わせは次の表の通り.
![]() a2+ab+b2=217…(1.2) (1.1)よりa=b+1 これを(1.2)に代入 (b+1)2+(b+1)b+b2=217 3b2+3b−216=0 b2+b−72=0 (b+9)(b−8)=0 b=−9のときa=−8 b=8のときa=9 よって,(a,b)=(−8,−9),(9,8) (2)の場合,次の連立方程式を解く ![]() a2+ab+b2=31…(2.2) (2.1)よりa=b+7 これを(2.2)に代入 (b+7)2+(b+7)b+b2=31 3b2+21b+18=0 b2+7b+6=0 (b+1)(b+6)=0 b=−1のときa=6 b=−6のときa=1 よって,(a,b)=(6,−1),(1,−6) (3)の場合,次の連立方程式を解く ![]() a2+ab+b2=7…(3.2)
M(=217)が与えられたとき
![]() のとき,a,bが実数になるためのkの値の範囲を求めておくと から,bが実数であるためには判別式が0以上でなければならない k>0のとき, 次の関係を満たすことがbの実数条件になる(aから計算しても同じ) 313>31×31>4×7×31となってbの整数解はない. (4)の場合,次の連立方程式を解く ![]() a2+ab+b2=1…(4.2) (3)と同様にk3, 4Mの大小を比較すると 2173>217×217>4×217 となってbの整数解はない. (1)(2)(3)(4)から結局,(a,b)=(−8,−9),(9,8),(6,−1),(1,−6)…(答) |
【例題2】
pを3以上の素数とする.4個の整数a,b,c,dが次の3条件 a+b+c+d=0, ad−bc+p=0, a≧b≧c≧d を満たすとき,a,b,c,dをpを用いて表せ. (京大2007年理系)
【考え方】
(解説)pが素数なのだから (因数分解)=(素数) の形を目指せば左辺の因数に分けて考えられます d=−a−b−cを代入すると a(−a−b−c)−bc+p=0 −a2−ab−ac−bc+p=0 a2+ab+ac+bc=p a(a+b)+c(a+b)=p (a+b)(a+c)=p ここで,右辺は素数で,a+b≧a+cだから次の組合せが可能
a+b=p → b=p−a
(2)のとき
a+c=1 → c=1−a d=−a−b−c=−a−(p−a)−(1−a)=a−p−1 a≧bだから
a≧p−a → 2a≧p →
b≧cだから
p−a≧1−a → p≧1 (仮定によりこれは成立する)
c≧dだから
1−a≧a−p−1 → 2a≦p+2 →
したがって
a+b=−1 → b=−a−1
以上によりa+c=−p → c=−a−p d=−a−b−c=−a−(−a−1)−(−a−p)=a+p+1 このときd=a+p+1>aとなって仮定を満たさないから,この場合分けからは解は出ない
【押さえておきたいポイント】
○素数pを含む式が主役:(因数分解)=(素数)の形にする ○脇役a+b+c+d=0は変数を減らす材料に使う ○a≧b≧c≧dは順序を入れ換えた組を重複して数えなくてもよいようにするための親切
これがないと1組の解に対して,順序を入れ換えた4!通りの答えを書かなければならない
※pを3以上としたのは何の役に立っているか
pが奇数になるから
※図形的な意味などを深く考えず,式の変形だけの問題と割り切る方がよい
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【類題2.1】
参考答案を見るpを素数とする.3個の整数a,b,cが次の3条件 a+b+c=0, ab+c+1=p, a≧b≧c を満たすとき,a,b,cをpを用いて表せ. (上記の例題を書き換えたもの)
c=−a−bを代入すると ab−a−b+1=p (a−1)(b−1)=p ここで,右辺は素数で,a−1≧b−1だから次の組合せが可能
a−1=p → a=p+1 b−1=1 → b=2 c=−a−b=−p−1−2=−p−3 a≧bだから
p+1≧2 → p≧1 (仮定によりこれは成立する)
b≧cだから
2≧−p−3 → p≧−5 (仮定によりこれは成立する)
(2)のとき
a−1=−1 → a=0
b−1=−p → b=1−p c=−a−b=p−1 a≧bだから
0≧1−p → p≧1 (仮定によりこれは成立する)
b≧cだから
1−p≧p−1 → p≦1 (仮定によりこれは成立しない)
したがって(2)を満たす解はない結局(1)より,a=p+1, b=2, c=−p−3…(答) |
【類題2.2】
参考答案を見る(i) a+b≧a2−ab+b2を満たす正の整数の組(a, b)をすべて求めよ. (ii) a3+b3=p3を満たす素数pと正の整数a, bは存在しないことを示せ. (早稲田大1999年)
※フェルマーの大定理の形をしているのでロマンがあるが,ここでは指数を3に限定し,さらに右辺に来る数を素数に限定すれば高校数学でも解けるという話になっている
(i) 2変数a, bの2次関数の取り得る値の範囲を求める基本は,まずbを固定してaの関数として頂点を求め,次にその各々についてbを動かして範囲を調べる.左辺の各項は2乗で0以上だから b=1, 2 ア) b=1のとき(1)に代入すると a2−2a≦0 a(a−2)≦0 0≦a≦2 aは正の整数だからa=1, 2 イ) b=2のとき(1)に代入すると a2−3a+2≦0 (a−1)(a−2)≦0 1≦a≦2 aは正の整数だからa=1, 2 以上より,(a, b)=(1,1), (1,2), (2,1), (2,2) (ii) a+b≧a2−ab+b2のとき(i)の結果から a3+b3=2, 9, 9, 16となっていずれも素数の3乗にはならない. a+b<a2−ab+b2のとき (a+b)(a2−ab+b2)=p3 のとき,右辺は素数の3乗だからこれを満たすa+b, a2−ab+b2の組合せは次の表のとおり
(2) ![]() a2−ab+b2=p2…(*2) (*1)よりb=p−aを(*2)に代入すると a2−a(p−a)+(p−a)2=p2 3a2−3ap=0 3a(a−p)=0 aは正の整数だから a=p このとき b=0となって仮定に反する. 以上から,a3+b3=p3を満たす素数pと正の整数a, bが存在すると仮定すれば矛盾を生ずるから,背理法により示された. |
【類題2.3】
参考答案を見るa4+a2b2+b4=pを満たす素数pと正の整数a, bをすべて求めよ. (筆者作成)
(a2−ab+b2)(a2+ab+b2)=p
と変形すると右辺は素数で,0<a2−ab+b2<a2+ab+b2だから ![]() a2+ab+b2=p…(2) (1)より したがって b=1 (1)より a2−a+1=1 a2−a=0 a(a−1)=0 a=0, 1 a>0だから a=1 このとき(2)より p=1+1+1=3 結局,a=1, b=1, p=3…(答) |
【例題3】
三角形ABCにおいて,∠B=60°,Bの対辺の長さbは整数,他の2辺の長さa, cはいずれも素数である.このとき三角形ABCは正三角形であることを示せ. (京大1990年前期)
≪具体例でイメージ作り≫
(解説)(a,b,c)の順に書くものとして, (A) 3辺が素数となる正三角形の例としては
(2,2,2), (3,3,3), (5,5,5), (7,7,7), (11,11,11), ...
がある.これは明らか.(B) a<cのときb2=c2+a2−caとなる三角形の例としては
(3,7,8), (5,7,8), (5,19,21), (7,13,15), (7,37,40), (11,31,35), (13,43,48), ...
があります.(B)グループの三角形では,aを素数とすると,cは素数にならない.(a, cの立場を入れ換えても同様.) したがって,a, cの両方とも素数とすれば(A)グループしかない. ∠B=60°だからcosB=1/2 余弦定理により b2=c2+a2−ca…(1) b2−a2=c2−ca (b+a)(b−a)=c(c−a)…(2) (A) c=aのとき
(2)式の右辺は0になるから,
(B) c>a…(3)のとき(b+a)(b−a)=0 ここでb+a>0だからb=a したがって,a=b=cとなり,正三角形になる.
b+a, b−aのどちらもcの倍数にならないことを示せばよい
(2)式の右辺でcは素数だから
(B') c<aのときも上記の(B)の場合と同様にして示される.b+a, b−aの少なくとも一方はcの倍数でなければならない. 三角形の成立条件から c<b+a…(4) b−a<c…(5) (1)より c2−b2=ca−a2=a(c−a)>0 c>b…(6) (3)(4)(6)より c<b+a<c+c=2c よってb+aはcの倍数でない. (2)(5)より 0<b−a<c よってb−aはcの倍数でない. 以上により,c>aのとき(1)が成り立つことはない. 結局,(1)が成り立つのは(A)の場合だけであるから,正三角形になる.
【押さえておきたいポイント】
○因数分解すると素数の倍数になっているかどうかを各因数に分けて調べることができる. ○三角形の成立条件など使えるものは何でも使う. |
類似問題を解く中で,どれだけ身に付いたかチェックしてみましょう.
上の具体例で
(a,b,c)=(3,7,8), (5,7,8), (5,19,21), (7,13,15), (7,37,40), (11,31,35), (13,43,48), ... を見てみると aが素数ならば,辺の長さはaが最小…(*1) になるのではないかと想像できます. aが最小ならば,aは素数(**1) と述べているのではありません.(**1)が成り立たないのは,次の例を見れば明らかです. (a,b,c)=(6,14,16), (10,14,16), (10,38,42), ... ※「aが素数ならば,辺の長さはaが最小になることを証明せよ」という問題にすると
cが素数という条件をなくしたことになります.
a=b=cの場合(正三角形)もあるので,a≦b≦cとなることを証明すればよいことになります.
【類題3.1】
参考答案を見る三角形ABCにおいて,∠B=60°,b, cは整数,aは素数である.このときaは3辺の長さ中で最小となることを示せ (上記の例題を書き換えたもの1)
∠B=60°だからcosB=1/2 余弦定理により b2=c2+a2−ca…(1) b2−c2=a2−ca (b+c)(b−c)=a(a−c)…(2) (A) c=aのとき
(2)式の右辺は0になるから,
(B) a>c…(3)のとき(b+c)(b−c)=0 ここでb+c>0だからb=c したがって,a=b=cとなり,正三角形になる.
(2)式の右辺でaは素数だから
(C) a<c…(7)のときb+c, b−cの少なくとも一方はaの倍数でなければならない. 三角形の成立条件から a<b+c…(4) b−c<a…(5) (1)より a2−b2=ca−c2=c(a−c)>0 a>b…(6) (3)(4)(6)より a<b+c<a+a=2a よってb+cはaの倍数でない. (2)(5)より 0<b−c<a よってb−cはaの倍数でない. 以上により,a>cのとき(1)が成り立つことはない.
a<bを証明すればできあがり
(1)よりb2−a2=c2−ca (b+a)(b−a)=c(c−a) (7)によりc>aだからb>a a<c, a<bだからaが最小 |
(a,b,c)の順に書くものとして,
b2=c2+a2+ca が成り立つ例として
(3,7,5), (5,19,16), (7,13,8), (7,37,33), (11,31,24), (13,43,35), ...
があります.bが最大になりますが,a,b,cとも素数となる組は先頭の1組だけのように見えます.そこでこれを証明しようという問題です
【類題3.2】
参考答案を見る三角形ABCにおいて,∠B=120°,Bの対辺の長さをb,他の2辺の長さを整数a, c(ただしa≦c)とするとき,a,cがいずれも素数となるものをすべて書け. (上記の例題を書き換えたもの2)
∠B=120°だからcosB=−1/2
余弦定理により b2=c2+a2+ca…(1) b2−c2=a2+ca>0 b2−a2=c2+ca>0 以上から, b>a, c 仮定と合わせると 0<a≦c<b…(2) (1)から b2=(c+a)2−ca (c+a)2−b2=ca (c+a+b)(c+a−b)=ca…(3) ここで,a≦cは素数だから積acを2つ(小さい順)に分ける方法は a, c…(4) 1, a×c…(5) の2通り (4)のとき ![]() c+a+b=c → a+b=0 これは三角形ができない (5)のとき ![]() c+a+b=ac bを消去すると 2c+2a=ac+1 ac−2(a+c)+1=0 (a−2)(c−2)−4+1=0 (a−2)(c−2)=3 0≦a−2≦c−2だから ![]() c−2=3→c=5 このとき(6)よりb=7 結局,a=3, b=7, c=5がただ1組の解になる…(答) |
【例題4】
2以上の自然数nに対し,nとn2+2がともに素数となるのはn=3の場合に限ることを示せ. (京大2006年前期理系)
≪小さい方から幾つか試して規則性をつかむ≫
(解説)
(1) n=3k(kは整数,k≧1)の場合
nは素数だからn=3
(2) n=3k+1(kは整数,k≧1)の場合このときn2+2=11も素数になる
n2+2=(3k+1)2+2=9k2+6k+3
(3) n=3k+2(kは整数,k≧0)の場合=3(3k2+2k+1) (≧18)は3の倍数で18以上だから素数でない
n2+2=(3k+2)2+2=9k2+12k+6
以上により(1)のn=3だけが題意に適する=3(3k2+4k+2) (≧6)は3の倍数で6以上だから素数でない
【押さえておきたいポイント】
○小さい方から幾つか試して規則性をつかむ. ○ある整数pの倍数になることを証明するには,pの剰余類(pで割ったときの余りで分類したもの)を使って n=kp, kp+1, kp+2, ... に分けて調べるとうまくいく
【類題4.1】
参考答案を見る2以上の自然数nに対し,nとn2−2n+3がともに素数となるようなnの値をすべて求めよ. (上記の例題を書き換えたもの1)
≪小さい方から幾つか試して規則性をつかむ≫
(解説)
※nが奇数ならn2は奇数,2nは偶数,3は奇数だからn2−2n+3が偶数になることは式を見ただけでも分かるかも
(1) n=2k(kは整数,k≧1)の場合
nは素数だからn=2
(2) n=2k+1(kは整数,k≧1)の場合このときn2−2n+3=3も素数になる
n2−2n+3=(2k+1)2−2(2k+1)+3
以上により(1)のn=2だけが題意に適する=4k2+4k+1−2(2k+1)+3 =4k2+4k+1−4k−2+3 =4k2+2=2(2k2+1) (≧6)は2の倍数で6以上だから素数でない
【類題4.2】
参考答案を見る2以上の自然数nに対し,nとn2+3n+5がともに素数となるようなnの値をすべて求めよ. (上記の例題を書き換えたもの2)
≪小さい方から幾つか試して規則性をつかむ≫
(解説)
(1) n=3k(kは整数,k≧1)の場合
nは素数だからn=3
(2) n=3k+1(kは整数,k≧1)の場合このときn2+3n+5=23も素数になる
n2+3n+5=(3k+1)2+3(3k+1)+5
(3) n=3k+2(kは整数,k≧0)の場合=9k2+6k+1+3(3k+1)+5 =9k2+6k+1+9k+3+5 =9k2+15k+9=3(3k2+5k+3) (≧33)は3の倍数で33以上だから素数でない
n2+3n+5=(3k+2)2+3(3k+2)+5
以上により(1)のn=3だけが題意に適する=9k2+12k+4+3(3k+2)+5 =9k2+12k+4+9k+6+5 =9k2+21k+15=3(3k2+7k+5) (≧15)は3の倍数で15以上だから素数でない |
【類題4.3】
参考答案を見るp, 2p+1, 4p+1がいずれも素数であるようなpをすべて求めよ. (一橋大2005年後期)
≪小さい方から幾つか試して規則性をつかむ≫
(解説)
※この問題文からは「3の剰余類で分類する」ということは全く透けて見えない.どこにも3と書いてない.完成度の高い問題だと思う.(筆者の感想) (1) p=3k(kは整数,k≧1)の場合
pは素数だからp=3
(2) p=3k+1(kは整数,k≧1)の場合このとき2p+1=7, 4p+1=13も素数になる
2p+1=2(3k+1)+1=6k+3=3(2k+1)は3の倍数(>3)だから素数でない
(3) p=3k+2(kは整数,k≧0)の場合
4p+1=4(3k+2)+1=12k+9=3(4k+3)は3の倍数(>3)だから素数でない
以上により(1)のp=3だけが題意に適する(備考) ※1 (2)で2p+1がダメなのだから4p+1の方は調べる必要はない.(3)の2p+1も調べる必要はない. ※2 pが素数であることが条件になっているから,pが素数である場合だけを調べたらよい. これがもし,「2p+1, 4p+1, 6p+1が素数になる」という問題になっていれば,p=1,2,3,4,5,...のようにすべての自然数について調べることになり,作業量が増える. ※3 2p+1, 4p+1の+1にはどんな意味があるのか?→2p, 4pなら当然素数にはならないから問題にならない.何らかの余り(±1, ±2など)が付いていないと問題にならない.
【類題4.4】
参考答案を見るq, 2q+1, 4q−1, 6q−1, 8q+1がいずれも素数であるようなqをすべて求めよ. (一橋大2005年後期)
≪小さい方から幾つか試して規則性をつかむ≫
(解説)
(1) q=5k(kは整数,k≧1)の場合
qは素数だからq=5
(2) q=5k+1(kは整数,k≧1 qは素数だから1ではない)の場合このとき2q+1=11, 4q−1=19, 6q−1=29, 8q+1=41も素数になる(○)
6q−1=6(5k+1)−1=30k+5=5(6k+1)は5の倍数(>5)だから素数でない
(3) q=5k+2(kは整数,k≧0)の場合
2q+1=2(5k+2)+1=10k+5=5(2k+1)は5の倍数(≧5)だからk=0, q=2のとき以外は素数でない
(4) q=5k+3(kは整数,k≧0)の場合q=2のときは2q+1=5, 4q−1=7, 6q−1=11, 8q+1=17も素数になる(○)
8q+1=8(5k+3)+1=40k+25=5(8k+5)は5の倍数(>5)だから素数でない
(5) q=5k+4(kは整数,k≧0)の場合
4q−1=4(5k+4)−1=20k+15=5(4k+3)は5の倍数(>5)だから素数でない
以上により(1)のq=5,(3)のq=2だけが題意に適する(備考) ※1 (2)(4)(5)において1つでも素数でないものが登場したら,他のものは調べる必要はない. ※2 偶数の係数2q+1, 4q−1, 6q−1, 8q+1ばかりが並んでいることの意味は?→奇数の係数,例えば3q+1のような式が登場したら,2以外の素数はすべて奇数だから,3qが奇数になり3q+1は偶数になり,素数ではない.このように奇数の係数の式3q+1などを出題すると,簡単すぎで受験生に失礼に当たるからかも |
【例題5】
n3−7n+9が素数となるような整数nをすべて求めよ. (京大2018年前期)
≪小さい方から幾つか試して規則性をつかむ≫
3の倍数は素数でないように見えるが,実は3の倍数の内で3だけが素数. したがって,分かり易くいえば「n3−7n+9=3となる整数nを求めよ」と言い換えることができる.
予備校の模範解答は,答案Bのように連続3整数の積が6の倍数になることを使って,スマートに決めているものが多い.
(答案A)しかし,(n−1)n(n+1)が見えないように,問題文が細工されているので,答案Aのように,素朴に楽しく書いてもよい. 以下においてkは整数とする. ア) n=3kのとき
n3−7n+9=27k3−21k+9=3(9k3−7k+3)
イ) n=3k+1のときは3の倍数になる
n3−7n+9=3N+1−7(3k+1)+9=3(N−7k+1)
ウ) n=3k+2のときは3の倍数になる
n3−7n+9=3N+8−7(3k+2)+9=3(N−7k+1)
以上のように,nが整数のとき,n3−7n+9はつねに3の倍数になる.は3の倍数になる そのうちで,素数となるのはn3−7n+9=3のとき
3次方程式n3−7n+9=3を因数分解によって解く.
(答案B)n3−7n+6=0 (n+3)(n−1)(n−2)=0 n=−3,1,2…(答) (n−1)n(n+1)=n3−nは連続3整数の積だから6の倍数 したがって n3−7n+9=(n3−n)+(−6n+9)=(n3−n)+3(−2n+3)は3の倍数になる. 以上のように,nが整数のとき,n3−7n+9はつねに3の倍数になる. そのうちで,素数となるのはn3−7n+9=3のとき
3次方程式n3−7n+9=3を因数分解によって解く.
n3−7n+6=0 (n+3)(n−1)(n−2)=0 n=−3,1,2…(答) |
【類題5.1】
参考答案を見るn5+n4+1が素数となるような整数nをすべて求めよ.
1の虚数3乗根ωについては,ω3=1, ω2+ω+1=0が成り立つから,ω5+ω4+1=ω2+ω+1=0,したがってn5+n4+1はn2+n+1で割り切れる.
割り算を行うと n5+n4+1=(n2+n+1)(n3−n+1) この式は因数分解されているから,これが素数となるためには, n2+n+1=±1…(1) または n3−n+1=±1…(2) が必要条件 (1)よりn=−1,0 (2)よりn=−1,0,1
n3−n+1=−1について:
ア) n=−1のとき,n5+n4+1=1は素数でないn3−n+2=(n−1)n(n+1)+2が2の倍数になることから,−1となることはない. イ) n=0のとき,n5+n4+1=1は素数でない ウ) n=1のとき,n5+n4+1=3は素数 以上により,n=1…(答) |
【類題5.2】
参考答案を見るn5+n2−n+1が素数となるような整数nをすべて求めよ.
虚数単位iについては,i2=−1, i3=−i, i4=1, i5=iが成り立つから,i5+i2−i+1=i−1−i+1=0になる.したがって,x5+x2−x+1はx2+1で割り切れる.
割り算を行うと x5+x2−x+1=(x2+1)(x3−x+1) すなわち n5+n2−n+1=(n2+1)(n3−n+1) この式は因数分解されているから,これが素数となるためには, n2+1=±1…(1) または n3−n+1=±1…(2) が必要条件 (1)よりn=0 (2)よりn=−1,0,1
n3−n+1=−1について:
ア) n=−1のとき,n5+n2−n+1=2は素数n3−n+2=(n−1)n(n+1)+2が2の倍数になることから,−1となることはない. イ) n=0のとき,n5+n2−n+1=1は素数でない ウ) n=1のとき,n5+n2−n+1=2は素数 以上により,n=±1…(答) |
■[個別の頁からの質問に対する回答][整数の入試問題1について/18.9.23]
[例題1]で(3)(4)の判別式を避ける方法の四角の中の上から10行目
(b+k)^2+(b+k)+b^2=M/kとなっていますが、
(b+k)^2+(b+k)b+b^2=M/kだと思います。
■[個別の頁からの質問に対する回答][整数の入試問題1について/18.6.15]
=>[作者]:連絡ありがとう.訂正しました.(ここまで読んでいる人がいるんだ!と,感心) n2+n+1=±1…(1)
または
n3−n+1=±1…(2)
プラス・マイナスですよねぇ
■[個別の頁からの質問に対する回答][整数の入試問題1について/17.10.5]
=>[作者]:連絡ありがとう.この質問の仕方は全然ダメです.どの問題か書かずに,「幾つかのページで...」などと書いてある質問と同様,「1日かけて全部見直してもらおうか!」というけんか腰の態度になっています.管理人は,具体的に提起された問題を,具体的に解決することを考えており,文学的に奥行きのある表現を好んでいるわけではありません. 長時間かけて【類題5.2】らしいと分かりましたが,(1)(2)のすべての場合がア)イ)ウ)にあれば何も問題はないと考えますが. 例題3のc<b+a<a+a<c+cの変形がおかしいと思います。b<aは成り立たないと思うのです。余弦定理b^2=c^2+a^2-acから、a<cのときb<cを示し、b+a<c+cとするのが正解と考えます。類題3.1についても同様の主張をします。
=>[作者]:連絡ありがとう.全体構想に気を取られてしまって細部の詰めに甘い箇所があったということで訂正しました. ※手ごたえ十分の鋭い指摘で,管理人も目が覚めたようです |
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