![]() ![]() *** 科目 *** 数Ⅰ・A数Ⅱ・B数Ⅲ高卒・大学初年度 *** 単元 *** 式と証明点と直線円軌跡と領域三角関数 指数関数対数関数微分不定積分定積分 高次方程式数列漸化式と数学的帰納法 平面ベクトル空間ベクトル確率分布 ※高校数学Ⅱの「式と証明」について,このサイトには次の教材があります.
この頁へGoogleやYAHOO ! などの検索から直接来てしまったので「前提となっている内容が分からない」という場合や「この頁は分かったがもっと応用問題を見たい」という場合は,他の頁を見てください. が現在地です. ![]() ![]() ↓多項式の割り算 ↓割り算の原理 ↓複雑な無理数の代入 ↓分数式の約分 ↓分数式の和差 ↓繁分数式 ↓オイラーの分数式・繁分数式 ↓恒等式 ![]() ↓等式の証明 ↓不等式の証明 ↓絶対不等式 ↓相加平均・相乗平均 2乗比較 |
○ 恒等式とは 文字を含む等式(=がついている式)は,大きく分けて2種類ある. (1) 1つは, 2x−10=0 …(A) x2−5x+6=0 …(B) のように,特定の x の値についてのみ成立し,他の x の値については成立しないもので,方程式と呼ばれている.
(1次式)
上の(A) の解は,x=5 で,この方程式が成立する x の値はただ1つである. 一般に,1次方程式の解は多くとも1個である.(解が存在しないときを0個と数えると,0個または1個になる.)
解が1個の1次方程式の例:2x+4=0
(解はx=−2だけ)
解が0個の1次方程式の例:0x+3=0(xに何を入れても成り立たない)
これに対して,2個以上の異なる x の値について成立する1次の等式は,実はどんな x の値についても成立し,以下に述べる恒等式になる.
解が2個以上ある1次方程式の例:0x+0=0
(2次式) 上の(B) の解は,x=2 , 3 で,この方程式が成立する x の値は2つである. 一般に,2次方程式の解は多くとも2個である.(解が存在しないときを0個と数え,重解を1個と数えると,2次方程式の解は,0個,1個または2個になる.)
解が2個の方程式の例:x2−5x+6=0
(解はx=2, 3)
解が1個の方程式の例:0x2+2x+4=0(解はx=−2だけ)
解が0個の方程式の例:0x2+0x+1=0(xに何を入れても成り立たない)
これに対して,3個以上の異なる x の値について成立する2次の等式は,実はどんな x の値についても成立し,以下に述べる恒等式になる. 解が3個以上ある2次の等式の例:0x2+0x+0=0 (2) もう1つは, 2x+3=2(x+2)−1 …(C) (x+3)2=x2+6x+9 …(D) のように,どんな x の値についても成立するもので,恒等式と呼ばれている. 展開や因数分解など,式の変形で得られる等式は恒等式である. 【方程式の例】
2x−10=0
x2−5x+6=0 左辺を変形すれば右辺になるような場合が恒等式.恒等式はそこに登場するxの(他の文字の場合もある)値についてでも成立するので解を求めるようなことはめったにない.何かの都合で,実際には恒等式となっている等式について解を求めようとすると,「解は無限にある」ことになる. 恒等式について,「解を求めよ」という形で問題が出されることはめったになく,恒等式となるように「係数を定めよ」という形の問題が出される. 【恒等式の例】
3(x+5)=3x+15
(x−1)2=x2−2x+1 |
(次の定理は当然の話のように見えるが,この定理を覚えていないと実際に問題を解くときに困る.)
(1)は(1)’の特別な場合に過ぎない.すなわち,(1)’において a’=b’=0 とした場合が(1)で,(1)’:一般,(1):特別の関係にある.したがって,(1)’が成立すれば(1)が成立するのは当然である.■定理I 【 恒等式となるための条件I 】(係数比較法に使う) ![]() (1) ax+b=0 が恒等式 ⇔ a=b=0 (2) ax2+bx+c=0 が恒等式 ⇔ a=b=c=0 (3) ax3+bx2+cx+d=0 が恒等式 ⇔ a=b=c=d=0 ![]() (2)’ ax2+bx+c=a’x2+b’x+c’ が恒等式 ⇔ a=a’ , b=b’ , c=c’ (3)’ ax3+bx2+cx+d=a’x3+b’x2+c’x+d’ が恒等式 ⇔ a=a’ , b=b’ , c=c’ , d=d’ ここでは,(1):特別から(1)’:一般が証明できる点,すなわち,特別な場合が一般の場合と同値になっている点が興味深い. |
【例】 (1) (a−1)x+(b−2)=0 が恒等式 ⇔ a−1=0 , b−2=0 ⇔ a=1 ,b=2 (1)’ 3x+b=cx−2 が恒等式 ⇔ c=3 , b=−2 (上の定理の証明) (1) [←] は明らか. [→]は次のようにして示される. どんな x についても成立するならば,x=0 , 1 のときも成立する.(必要条件) x=0 のとき 0a+b=0 ⇔ b=0 …(A) x=1 のとき a+b=0 …(B) (A)(B)より,a=b=0 (2)(3)も同様にして示される. (1)’ [←] は明らか. [→]は次のようにして示される. ax+b=a’x+b’ ならば (a−a’)x+(b−b’)=0 ここで(1)の結果より,a−a’= 0 , b−b’=0 が成り立つから,a=a’ , b=b’ (2)’(3)’ も同様にして示される. |
【例題1】
3x2+ax+4=bx2−2x+c が恒等式となるように係数 a,b,c の値を定めよ. (答案) 両辺の係数を比較すると a=−2 ,b=3 , c=4 …(答) 次のようにやってもよい. 3x2+ax+4=bx2−2x+c より (3−b)x2+(a+2)x+(4−c)=0 3−b=0 , a+2=0 , 4−c=0 より a=−2 ,b=3 , c=4 …(答) ※ 係数比較法の定理(3)と(3)’は同値なので,どちらで解いてもよい.移項して解く方法は(3)を使っていることになるが,どちらと意識することなく,やりやすい所で係数比較に移ればよい. |
【例題2】
a(x+1)2+b(x+1)+c=2x+1 が恒等式となるように係数 a,b,c の値を定めよ.
(答案) (左辺)=a(x2+2x+1)+b(x+1)+c=ax2+(2a+b)x+(a+b+c) だから,係数を比較すると ![]() 2a+b=2 a+b+c=1 これより,a=0 ,b=2 , c=−1 …(答) |
[係数比較法で解け] [ 第1問 / 全2問中 ] |
■定理Ⅱ
【 恒等式となるための条件II 】(数値代入法に使う) ○ n次式の値が異なるn+1個の x について等しい ⇔ x の恒等式 【例】 異なる2個の x について,1次式 ax+b=0 が成り立つ ⇔ ax+b=0 は x の恒等式 …(1) 異なる3個の x について,2次式 ax2+bx+c=0 が成り立つ ⇔ ax2+bx+c=0 は x の恒等式 …(2) ⇔ ax+b=a’x+b’ は x の恒等式 …(1)’ 異なる3個の x について,2次式 ax2+bx+c=a’x2+b’x+c’ が成り立つ ⇔ ax2+bx+c=a’x2+b’x+c’ は x の恒等式 …(2)’ |
※ほとんどの問題は,係数比較法で解ける.ただし,数値代入法を用いる方が簡単になる場合がある. また,恒等式ということが明示されていないときでも,方程式の次数よりも多くの値について成立するときは,実は恒等式であるといえるので,すべての x について成り立つと言える. (上の定理の証明) (1) [←] は明らか. [→]は次のようにして示される. 異なる2つの値 x1≠x2 について, ![]() ax2+b=0 …(B) が成立するとき,(A)-(B) より a(x1−x2)=0 ここで,x1−x2≠0 だから a=0 これを(A)に代入すると b=0 (必要条件:つまりこれ以外はないということ.) (1)’ [←] は明らか. [→]は次のようにして示される. 異なる2個の x について,1次式 ax+b=a’x+b’ が成り立つ → (a−a’)x+(b−b’)=0 が成り立つ.(1)から a= a’ , b=b’ が成り立つ. (2),(2)’ など次数の高い式についても同様に示される. |
【例題3】
x3=ax(x−1)(x−2)+bx(x−1)+cx+d が恒等式となるように係数 a,b,c,d の値を定めよ. (答案) (係数比較法でもできるが,式の形から x=0,1,2 を代入すると簡単に求まる値があるので,これを利用する.) x=0 を代入すると d=0 x=1 を代入すると 1=c+0 → c=1 x=2 を代入すると 8=2b+2 → b=3 x3 の係数から a=1 |
【例題4】
ax(x−1)+b(x−1)(x−2)+cx(x−2)=x が恒等式となるように係数 a,b,c の値を定めよ. (答案) (係数比較法でもできるが,式の形から x=0,1,2 を代入すると簡単に求まる値があるので,これを利用する.) x=0 を代入すると 2b=0 → b=0 x=1 を代入すると - c=1 → c=−1 x=2 を代入すると 2a=2 → a=1 |
問題2 次の式が恒等式となるように定数 a , b , ... の値を定めよ. [数値代入法で解け] [ 第1問 / 全2問中 ] |
○ 分数式の恒等式 分数式についても恒等式を考える.例えば,次のような問題を考えてみる. ![]() ![]() ![]() が恒等式となるように,係数 a,b の値を定めよ. このような問題では,通分して分子について係数比較を行えば多項式についての恒等式のときと同じように解くことができる. すなわち, ![]() ![]() より,(a+b)x+(−2a−b)=−x となり a+b=−1 ,−2a−b=0 より a=1 , b =−2 が求まる. ※ よく考えれば,分数式は「分母が0となるようなの値については定義されない」ので,「すべての x について成立する」とは言えないのではないかとも考えられるが,
分母が0となる値以外のすべての x について成立するとき,分数式の恒等式という.
(一般に,その式が定義できる範囲で等しければ,恒等式といってよい.類似の事柄は,無理式 ![]() |
【例題5】
![]() ![]() ![]() が恒等式となるように係数 a,b の値を定めよ. (答案) ![]() ![]() 分子を比較すると,a(x+1)+bx=1 …(2) → (a+b)x+a=1 → a+b=0 , a=1 → a=1 , b=−1 (別解)・・・こみ入った話 この問題を数値代入法で解くとき,(1)の段階で x=0 ,−1 を代入するのはダメであるが,(2)の段階で x=0 ,−1 を代入するのはよい. (2)で x=0 を代入すると a=1 (2)で x=−1 を代入すると - b=1 → b=−1 ※ 『「分数式の恒等式は分母が0となる値以外の・・・」という話は,どこへ行ったのか#』と問われそうだ.結論としてはこれでよいのだが,危ない値(x=0,-1)だけで勝負を済ませてしまうズルさについて,スマートな言い訳の仕方をなかなか思いつかない. |
問題3 次の式が恒等式となるように定数 a , b , ... の値を定めよ. [ 第1問 / 全5問中 ] |
○ 2文字以上についての恒等式 2つ以上の文字があるときに,どの文字についても恒等式であるという条件は,順に考えていけば分かる.
例
ax2+bxy+cy2=0 が x , y についての恒等式であるように,定数 a , b , c の値を定めよ. (答案) まず,x について恒等式だから, 次に,後の2項がyについて恒等式だから b=0 , c=0 結局 a=0, b=0 , c=0 …(答) |
【例題6】
(2x+y)a+(x+y)b+(y−2x)=0 が x , y についての恒等式であるように,定数 a , b の値を定めよ. (答案) x(2a+b−2)+y(a+b+1)=0 となるから, ![]() ![]() a+b+1=0 を解いて,a=3 , b=−4…(答)
【※例題7】
(2k+1)x+(1−k)y−(k+2)=0 がどんな k の値についても成立するように,x , y の値を定めよ. (答案) (これは1文字 k についての恒等式という問題なので,混同しないこと) k(2x−y−1)+(x+y−2)=0 が k についての恒等式となるには, ![]() ![]() x+y−2=0 より,x=1 , y=1…(答) |
問題4
[ 第1問 / 全4問中 ] |
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■[個別の頁からの質問に対する回答][恒等式について/18.8.20]
(1)の定理の証明でxに0と1を代入して証明していますがこれだけでは「←」が示されたとは言えないと思います。全ての実数についてこの定理が成り立つような証明をしてもらいたいです
■[個別の頁からの質問に対する回答][恒等式について/18.3.6]
=>[作者]:連絡ありがとう.「←」は,明らかだから明らかと書いているのです.証明は不要です.(0+0が0になることを証明する必要はない) ワークにこのような問題が乗っていて、↑の例題を見ても解き方がよく分かりません。お手数ですが、解答いただけると嬉しいです。
「 x^2=ax(x-1)+bx(x+1)+c(x-1)(x+1) が x についての恒等式となるような、定数 a、b、c を求めよ。 」
というものです。
よろしくお願いします。
■[個別の頁からの質問に対する回答][恒等式について/17.4.14]
=>[作者]:連絡ありがとう.PC版では,下に解説がありますのでそれを読んでください. 問題を解いてしまうとあなたのやるべき問題がなくなってしまいますので,類似問題で答えます. 2x2+4=ax(x−1)+bx(x+1)+c(x−1)(x+1) が恒等式となるように,定数a, b, cの値を定めよ. (定数比較法による答案) 右辺を展開して係数を比較する 2x2+4=(a+b+c)x2+(−a+b)x−c ![]() 0=−a+b 4=−c この連立方程式を解くと,a=3, b=3, c=−4 - - - (代入法による答案) どんなxについても成り立つならば,x=0, 1, −1のときにも成り立つ.(この値は,右辺の係数が2つずつ消える都合の良い形をしているから,それに合わせて選んだもの) x=0を代入すると4=−c x=1を代入すると6=2b x=−1を代入すると6=2a したがって,a=3, b=3, c=−4が必要条件になる. しかし,2次式が異なる3つの値に等しいなら,恒等式であるから,十分条件も満たす.よってこれが解答. 例題2の係数比較している部分が違うような
■[個別の頁からの質問に対する回答][恒等式について/17.4.11]
=>[作者]:連絡ありがとう.確かに途中経過に怪しい式がありましたので訂正しました. 例題3で、x=0、1、2を代入するのは式を見てdがある、(x-1)がある、(x-2)があるからでしょう
か? それは恒等式となるための条件Ⅱで解説してあるならば、その説明は判りにくいです。
■[個別の頁からの質問に対する回答][恒等式について/17.1.11]
=>[作者]:連絡ありがとう.未知数がa,b,c,dの4個あるので,異なる4個の値を代入して4個の連立方程式を作らなければなりません.x=3,4,5,6などとするのも自由ですが,やってみるとx=0,1,2以外では煩雑になるという勘が働くはずです.条件Ⅱは必要な方程式の「個数」について述べており,あなたが判ろうとしているかもしれない「xに代入する値」のことはそもそも書いてありません. 「次の問題」のボタンに「忘れずに!」の吹き出しが重なっていて押しにくいので、もう少しずらしてほしいです。
=>[作者]:連絡ありがとう.昔はなかったブラウザのEdgeが昨年あたりから増えてきて,上下方法のずれ方がFirefoxと同じになるようです.対応しました.(この問題は「忘れずに!」の吹き出しがあるどの頁でも起こりますが,頁数が多過ぎて前もって訂正できませんので,要望が出た頁を直すようにします) |
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