2. 収束半径の求め方
整級数について,次の極限値が存在する
証明は,このページにあります.とき,は収束半径である.(は∞や0になることもある) (1) ←ダランベールの判定法 (2) ←コーシーの判定法 概して(1)のダランベール方式が簡単に計算できる.(2)はのような形になっている場合に使うとよい.
上記の(1)もしくは(2)を使えば,ほとんどの整級数について「収束半径」を求めることができる.これに対して,「収束域を求めなさい」という問題では,となる値についても調べて答える必要がある.
例えば,【例1.1】で述べた の収束半径はと答えればよいが,収束域を求めよという問題に答えるには,…(*1),…(*2),…(*3),…(*4)のうちのどれが正しいかも述べなければならない:(*1)が正しい. 後で述べる【例4.4】のでは,収束半径に対して,収束域はになる. |
【例2.1】
整級数の収束半径を求めてください.だから 【例2.2】
整級数の収束半径を求めてくださいだから 【例2.3】
整級数の収束半径を求めてくださいだから |
【例2.4】
整級数の収束半径を求めてください
先頭の項としてを使う.
(1)の方法で求めるなお,なので,先頭の項は1である だから
この整級数は,指数関数のマクローリン級数展開になっており,
の収束半径がである.すなわち,この級数はどんな実数値に対しても収束する. 【例2.5】
整級数の収束半径を求めてくださいだから ここで であるから (別解) この問題のように,の形をしているものは,(2)の方法が有効であることが多い. だから |
【例2.6】
整級数の収束半径を求めてくださいだから ここで であるから (別解) この問題のように,の形をしているものは,(2)の方法が有効であることが多い. だから 【例2.7】
整級数の収束半径を求めてくださいだから 【例2.8】
整級数の収束半径を求めてくださいだから 【例2.9】
整級数の収束半径を求めてくださいだから |
【例3.1】
整級数の収束半径を求めてくださいのとき収束するから, すなわち,収束半径は 【例3.2】
整級数の収束半径を求めてください
この級数は
(解答)という形で,のマクローリン級数展開を表しており,この級数の収束半径を求めるということです. のとき収束するから, すなわち,,になり,この級数は任意の実数に対して収束する. |
【例3.3】
整級数の収束半径を求めてください のとき収束する. すなわち, |
【例4.1】
関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
だから 萩L号を使って書けば 収束半径は次のように求められる.(前述の例2.4の再掲) だから |
【例4.2】
関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
(4の倍数で1周する) 萩L号を使って書けば 収束半径は次のように求められる.(前述の例3.2と類似) のとき収束するから, すなわち,,になり,この級数は任意の実数に対して収束する. |
【例4.3】
関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
だから 萩L号を使って書けば (参考) 通常,例4.1に示したのマクローリン展開は,何度も見るから覚えてしまうことが多い.その結果からスタートすると,即答可能になる. だから 収束半径は次のように求められる. だから |
【例4.4】
関数のマクローリン展開,およびその収束半径を求めてください.
だから 萩L号を使って書けば 収束半径は次のように求められる. だから |
【例4.5】
関数のマクローリン展開をの項まで求めてください.
だから |
【例4.6】
が十分小さいとき,の2次の近似式を求めてください.
だから |
(マクローリン展開の応用) 【例5.1】
マクローリン展開を利用して,次の極限値を求めてください.(1) (2) (3) (1) だから |
(2) だから (3) だから
これらの問題は,ロピタルの定理を用いても解ける.どちらの方法も微分を利用する.微分を使わずに解くのは難しい.
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(その他,マクローリン展開と収束域の例) **三角関数** (5.1) ・・・(5.1A) ・・・(5.1B) (5.2) ・・・(5.2A) ・・・(5.2B) (5.3) Bnはベルヌーイ数
3以上の奇数に対するベルヌーイ数は0になるので,偶数項かつ正の数で考えた
をベルヌーイ数とする書物もある. |
(5.4) (5.5) (5.6) Enはオイラー数
奇数に対するオイラー数は0になるので,偶数項かつ正の数で考えた
をオイラー数とする書物もある. |
**逆三角関数** (6.1)
二重階乗の記号を使うと,もう少し簡単に書ける.
二重階乗とは, (1) ある数が偶数であるとき,その数以下の正の偶数を掛け合わせたもの ただし,は別途定義する. (2) ある数が奇数であるとき,その数以下の正の奇数を掛け合わせたもの この二重階乗の記号を用いると |
(6.2) のとき, すなわち が成り立つから,(6.1)から次の式が得られる. (6.3) |
**双曲線関数** (7.1) (7.2) |
(7.3) Bnはベルヌーイ数 |
**指数関数** (8.1) (8.2) (のマクローリン展開の結果にを代入すればよい) (8.3) (のマクローリン展開の結果にを代入すればよい) (8.4) (のマクローリン展開の両辺にを掛けるとよい) |
(8.5) (※一般項を求めて萩L号で表すことは,かなり骨の折れる作業になる) (8.6) (8.7) (8.8) (8.9) |
**対数関数** (9.1) (9.2) (※一般項をnの式として示し,の極限を計算するという手順を踏まなければ,収束半径は求められない[以下の問題も同様]) |
(9.3) (9.4) (9.5) |
**無理関数** (10.1) (10.2) |
(10.3) (10.4) |
**分数関数など** (11.1) (11.2) 分母が2次以上の場合でも,理屈上は と求めて行けば,マクローリン展開が得られますが,元の分数式のまま微分していくと,しばしば計算が煩雑になります. 分母が因数分解できる場合は,部分分数分解を利用することにより,上記の(11.1)(11.2)などの和差に帰着できることがあります. (11.3) |
(11.4) 分数式の取り扱いとして,分数を商と余りに分けて,分子の次数が分母の次数よりも小さくなるように変形してから,マクローリン展開を考えます.(数研の参考書で「分数式は富士の山」と呼ばれる前処理を行っておきます) (11.5) 分母が因数分解できない場合(D<0)でも,3乗の形を利用できることもあります. (11.6) |