■関数の連続性
【連続の定義】
  1変数xの関数y=f(x)が,x=aにおいて連続であるとは,次の3つの条件が満たされることをいいます
(1) 関数値f(a)が存在すること
(2) 極限値f(x)が存在すること
(3) (1)(2)が等しいこと

右図の○で示した極限値
f(x)は,正確にはx
aでない値をとりながらaに限りなく近づくときの目標値を表しており,aの周辺での関数のグラフの様子に対応しています.この極限値は,関数値f(a)とは無関係に定義されるところが重要です.

右図の●で示した関数値f(a)は,xaを代入したときの値です.

これらの,○と●が一致するときに,x=aにおいてグラフが「つながる」ことになり,「連続」であるといいます.
【例】
(1) f(x)= x2x≠0のとき)
1x=0のとき)
によって定義される関数f(x)については,
(1) 関数値はf(0)=1
(2) 極限値はf(x)=x2=0
であるが,(1)(2)が等しくないのでx=0において不連続です.
(2) f(x)= x≠0のとき)
1   (x=0のとき)
によって定義される関数f(x)については,
(1) 関数値はf(0)=1
(2) 極限値はf(x)
==1

となり,(1)(2)が一致するのでx=0において連続です.

※正しい番号をクリックしてください.
平成16年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-3

関数f(x)= x≠0のとき)
a   (x=0のとき)
に関して,次の命題のうち正しいものはどれか.
1a=0のとき,f(x)は連続となる.
2a=1のとき,f(x)は連続となる.
3aの値にかかわらず,f(x)は連続となる.
4aの値にかかわらず,f(x)は連続でない.
5aの値にかかわらず,f(x)の連続性の判定はできない.

○この頁に登場する【問題】は,公益社団法人日本技術士会のホームページに掲載されている「技術士第一次試験過去問題 共通科目A 数学」の引用です.(=公表された著作物の引用)

○【解説】は個人の試案ですが,Web教材化にあたって「問題の転記ミス」「考え方の間違い」「プログラムの作動ミス」などが含まれる場合があり得ます.
 問題や解説についての質問等は,原著作者を煩わせることなく,当Web教材の作成者(<浅尾>)に対して行ってください.

【2変数関数における連続の定義】
  2変数x, yの関数z=f(x, y)が,(x,y)=(a,b)において連続であるとは,次の3つの条件が満たされることをいいます
(1) 関数値f(a,b)が存在すること
(2) 極限値f(x,y)が存在すること
(3) (1)(2)が等しいこと
ただし,(2)においてf(x,y)(x,y)(a,b)間の距離が0
に近づくときの極限を表すものとします.
近づき方によっては,極限が必ずしも一致しないので,どんな近づき方をしても一つの値に近づくときに極限値があるという.その判断は2点間の距離が0に近づく場合にどうなるかで行えばよい.
【例】
f(x,y)=によって定義される関数f(x,y)について
(x,y)(0,0)に近づくときの極限値を調べる.
(x,y)(0,0)の距離をrとおくと
x=r cosθ, y=r sinθ
f(x,y)==2cos2θ
(1) θ=0のとき(y=0, x=tのとき)f(x,y)→2
(2) θ=のとき(y=x=tのとき)f(x,y)→1
(3) θ=のとき(x=0, y=tのとき)f(x,y)→0
となるから,(近づき方の角度θによって極限が変わるので)
極限値f(x,y)が存在せず,
f(0,0)の値がどのように 定義されていても,関数(x,y)(0,0)において不連続となります.


平成17年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-8

 次の2変数関数f(x,y)に対して,f(0,0)=0と定義する.このとき,点(0,0)で連続とならないものはどれか.
1f(x,y)= 2f(x,y)=
3f(x,y)= 4f(x,y)=
5f(x,y)=

平成18年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-8

 極限__は,次のどれか.
10 21 32 4π 5

平成19年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-9

 極限__は,次のどれか.
1−1 2 30 4 51


εδ論法による連続の定義】
 任意のε>0に対して,適当なδ>0を決めると
|x−a|<δならば|f(x)−f(a)|<ε
となるとき,f(x)x=aにおいて連続であるという.
【記号で書けば】

となるとき,f(x)x=aにおいて連続であるという.
@:xが「限りなくaに近づく」ときに
A:f(x)が「限りなくf(a)に近づく」ならば
f(x)x=aにおいて連続という.」
この連続の定義について,εδ論法では,
Aのεとして「どんなに小さな(=0に近い)値を指定されても」,@の「δをうまく決めることができれば」「δを適当に選ぶことができれば」「δが存在すれば」連続であると定義する.
@のδはAのεの値を見てから,それぞれに応じた値を出せばよい,言わば「後出しジャンケン」のような決め方をしてよいところがポイントです.
「任意のεに対して」「すべてのεについて」「どんなεについても」は同じ意味で,Allの頭文字Aを上下に裏返した記号を使って,で表します.
「適当なδを決めると」というのは,今日の若者用語では「いい加減に決めると」と言う意味に解釈され勝ちですが,数学用語としての適当は「適切に」「うまい具合に」という意味に近いです.「δが存在する」というのも同じ意味で,Existの頭文字Eを上下に裏返した記号を使って,で表します.
は左から書かれた順に決められると解釈します.(カンマやコロンを使ったつなぎ方は書物によって,著者によってバリエーションがあります.)例えば,を自然数(正の整数)全体の集合とするとき

は正しい命題です.「どんな自然数を先に決めても,後からとなる自然数を決めることができる」(などと決めることができる:自然数には最大値はない)というのは本当だからです.
 これに対して

は間違った命題です.自然数の最小値は1なので,「ある自然数を先に決めると,後からどんな自然数を持ってきても,となるようにできる」というのは正しくない.(のとき,成り立ちません.)

のとき,成り立たないから,間違った命題です.

【例1.1】
 関数が,において連続となることを,ε-δ論法を使って証明してください.
(解答)
 どんなε>0に対しても(そのεの値に応じて),|f(x)−f(0)|<δとなるような値δを決めることができればよい.(存在すればよい)


より

だから

とすればよい.
 すなわち,任意に与えられたε>0に対して,とすれば,となるから,この関数は,において連続である・・・(答)
 において,が成り立てばが成り立つという関係があればよく,は「1つの十分条件」になっています.
 つまり,を求める計算において「正確な境界線を引かなければならない」というような窮屈な考え方をしなくても,大雑把に遥か彼方の安全な値を持ってきても構わないということです.
 例えば,上記の例でのとき成り立つのであるから,などでも成り立つ.
 しかし,特に必要もない場面でのような答案を書くと,読む側がこの魔法の数字100はどこから出てくるのか?と当惑してしまう場合があるので,普通はそういう極端な値は使わない.
 これに対して,次の式のように,不等式が正確には解けないときに「1つの十分条件でよい」「大雑把な遥かかなたの安全な値を使う」という考え方は有難い.
 のとき,という不等式を正確に解くことはできなくても,を利用して,次のように変形できる.

とするためには

とすればよい.
 同様にして

とするためには

とすればよい.
【例1.2】
 関数が,において連続となることを,ε-δ論法を使って証明してください.
だから

となるようにで表せたらよい.
(解答)


に十分近い値であるとき,だから


となるには

とすればよい.
 すなわち
 任意のε>0に対して,定数と決めると
|x−1|<δならば|f(x)−f(1)|<ε
となるから,f(x)x=1において連続である.

テイラー展開の利用
 前の【例2】では,その場の思い付きで,のときとしたが,一般には,次のようにテイラー展開(有限テイラー展開)を利用して,のまわりでのべきを利用すれば,計算できることが多い.

 元の関数が多項式の場合は,この展開は有限のn次式までで表される.
(1) 例えば,のまわりで展開する場合







だから


に十分近い値のとき,が成り立ち,次数が高い冪ほど小さくなる.

したがって




そこで,となるためには


とすればよい.

1に十分近いと言わない書き方
 上記の答案では,「に十分近い値のとき,が成り立ち,次数が高い冪ほど小さくなる.」

ということを利用したが,任意のε-δ論法の答案では,「十分に近い」などとは書かずに,すべての任意のε>0に対して成り立つ答案とする.このためにはδ>0の定義を次のように行えばよい.
ア)のとき

イ)のとき

要するに,と1の小さい方(等しいときはその値)をδとする.
数学記号としては,2数のうちで大きい方(2数が等しいときはその値)をで表し,小さい方(2数が等しいときはその値)をで表すから,これを使うと

と定義するとよい.このとき
ア)の場合

だから,
イ)の場合

だから,
ア)イ)のいずれの場合でも,が成り立つ.
 この定義を使って【例2】の答案を書き直すと,次のようになる.

【例1.2'】
 関数が,において連続となることを,ε-δ論法を使って証明してください.
(解答)
テイラーの定理を用いて展開すると


 ここで,とおくと
の値は,ここで決まるのでなく,下の(※注)の式を見てから,振り返ってここに書き込む

・・・@
が成り立つ.
 このとき
ならば

三角不等式
↓↓

↓↓@

したがって,任意のε>0に対して
 (※注)
(要約)

となるから,f(x)x=1において連続である.
【例1.3】
 関数が,において連続となることを,ε-δ論法を使って証明してください.
(解答)
 関数のまわりでテイラーの定理を用いて展開する.








 ここで,とおくと
の値は,ここで決まるのでなく,下の(※注)の式を見てから,振り返ってここに書き込む


が成り立つ.
 このとき
ならば


 (※注)
 以上により,

となるから,f(x)x=3において連続である.

【例1.4】
 
について,における連続性を調べてください.
(解答1)・・・左極限値と右極限値が一致しない:極限値が存在しないことをいう


における左極限値と右極限値が一致しないから,極限値が存在しない.したがって,不連続である.
(解答2)・・・そもそもグラフに段差があれば連続にならない
のとき

だから,任意に与えられた(0<)ε<1に対して,

となることはできないから不連続.
【例1.5】
 
について,における連続性を調べてください.
(解答)

となるためには,任意に与えられたε>0に対して,δ=εとおけばよい.

となるから,f(x)x=0において連続である.

2変数関数の連続性
 2変数関数は,このページの先頭部分で述べたように,次の関係を満たすとき,点(a, b)において連続である.

 次の3つとも成り立つときに,連続と言え,1つでも成り立たなければ不連続となる.
@関数値f(a, b)が存在すること
A極限値が存在すること
Bそれらが等しいこと
 この連続の定義をε-δ論法を使って書き直すと,次のようになる.
 どんな数ε(>0)に対しても,適当な数δ, δ’(>0)を選べば,
|x− a|<δかつ|y− b|<δ’となるすべてのx, yについて
| f(x, y)−f(a, b) |<ε
が成り立つとき,f(x, y)(a, b)において連続といえる.
 この連続の定義には二重の極限

もしくは,これを略式に書いた

を考えるので,本来は1つのε(>0)に対して,δ(>0)δ’(>0)の両方を選べなければならないが,このページの初めの方で練習したように,点(x, y)が点(a, b)に近づくときにの極限を求めるときに,「近づき方に依存しない極限値を求めるには」「距離r→0」とすればよい.
 そこで,次の形で使うことができる.
 どんな数ε(>0)に対しても,適当な数δ(>0)を選べば,

となるすべてのx, yについて
| f(x, y)−f(a, b) |<ε
が成り立つとき,f(x, y)(a, b)において連続といえる.

【例2.1】
 
について,における連続性をε-δ論法を使って調べてください.
(解答)

とおくと


任意に与えられたに対して,上記の不等式が成り立つためには

となればよい.
 要約すると
とすると

となるから,f(x, y)(0, 0)において連続である.
【例2.2】
 
について,における連続性をε-δ論法を使って調べてください.
(解答)

とおくと

この式の値は偏角θによって変化し,例えばθ=0のとき,rがどのように変化しても,式の値

は,小さくならない(すなわちεよりも小さくならない)
 よって,(0, 0)において不連続
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