(リーマンのゼータ関数,バーゼル問題,フーリエ級数)
このページでは,次のような級数の和を扱う.(その内容が書かれた場所に直接ジャンプするには,太字青の記号をクリック) |
これらを求めるために,次のフーリエ級数展開を利用する. |
1.三角関数の定積分(復習)
まず,三角関数の定積分について,次の式を確認しておきます.(m, nは正の整数)…(1.1) …(1.2) …(1.3) m≠nのとき …(2.1) ←(1.2)から言える
m=nのとき…(2.2) ←(1.2)から言える
m≠nのとき…(2.3) ←(1.3)から言える
m=nのとき…(2.4) |
m≠nのとき …(2.5) ←(1.3)から言える
m=nのとき…(2.6)
【まとめ】
※覚え方は簡単:同じ関数の組合せ(次の図の対角成分)だけ残る.他は全部0
…(3.1) m≠nのとき …(3.2) …(3.3) m=nのとき …(3.4) …(3.5)
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2.フーリエ係数の公式
のとき …(4.1) …(4.2) …(4.3) (証明) (4.1)← の両辺をの区間で積分すると (左辺)= |
(右辺)= (1.1)により (1.2)により (1.3)により だから,(右辺)= これらが等しくなるためには, ※ただし,初めの定義で定数項をとおいていることに注意 |
(4.2)← の両辺にを掛けての区間で積分すると (左辺)= (右辺)= ここで,(1.3)により (3.2)(3.4)により,m≠nのときは消えるから (3.1)により 以上から,(右辺)= (左辺)と(右辺)が等しくなるためには |
(4.3)← の両辺にを掛けての区間で積分すると (左辺)= (右辺)= ここで,(1.2)により (3.3)(3.5)により,m≠nのときは消えるから (3.1)により 以上から,(右辺)= (左辺)と(右辺)が等しくなるためには ※上記のようにして求めた(4.1)(4.2)(4.3)は となるために係数が満たすべき必要条件となっています.一定の条件を満たす関数については,このようにして求めた係数により,実際に が成り立つこと(十分条件も満たされること)は,「ディりクレーの定理」によって示されるが,この教材ではそこまで踏み込まないことにする |
3.奇関数・偶関数の積分
後の計算を行うときに,奇関数・偶関数の積分に関する次の性質を使うと,計算の見通しがよく,計算が簡単になります.
L>0とする
(5.1の例)(奇関数)…(5.1) (偶関数)(偶関数)…(5.2) xは奇関数 sin xは奇関数 (5.1の図解) 奇関数のグラフは原点対称なので,−L〜0までの積分と0〜Lまでの積分は符号が逆になり,全部足せば0になる. |
(5.1の証明) が奇関数であるとき,が成り立つ. そこで
とおく置換積分を行うと
だから |
(5.2の例) x2は偶関数 cos xは偶関数 (5.2の図解) 偶関数のグラフはy軸対称(左右対称)なので,−L〜0までの積分と0〜Lまでの積分は同じになり,全体は右半分の2倍になる. (5.2の証明) が偶関数であるとき,が成り立つ. |
そこで
とおく置換積分を行うと
だから |
4.偶関数と奇関数の組合せ(まとめ)
(奇関数)×(奇関数)=(偶関数)…(6.1)
(奇関数)×(偶関数)=(奇関数)…(6.2) (偶関数)×(偶関数)=(偶関数)…(6.3) なお,奇関数を定数倍したものは奇関数,偶関数を定数倍したものは偶関数になる…(6.4) (奇関数)±(奇関数)=(奇関数)…(6.5) (奇関数)±(偶関数)→奇関数でも偶関数でもない…(6.6) (偶関数)±(偶関数)=(偶関数)…(6.7) なお,0以外の定数項は偶関数…(6.8) ※奇数,偶数の話(奇数×奇数=奇数,奇数×偶数=偶数,偶数×偶数=偶数)と混同しないように!
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(6.1の例) は偶関数 は偶関数 (6.1の証明) を奇関数とすると が成り立つ このとき,これらの積によって定義される関数について が成り立つから,は偶関数 |
(6.2の例) は奇関数 は奇関数 (6.2の証明) は奇関数,は偶関数とすると が成り立つ このとき,これらの積によって定義される関数について が成り立つから,は奇関数 (6.3の例) は偶関数 は偶関数 (6.3の証明) は偶関数とすると が成り立つ このとき,これらの積によって定義される関数について が成り立つから,は偶関数 |
(6.4の例) は奇関数 は奇関数 (6.4の証明) を奇関数とするとが成り立つ.は定数とする. とおくと となるから,は奇関数 を偶関数とするとが成り立つ.は定数とする. とおくと となるから,は偶関数 (6.5の例) は奇関数 は奇関数 (6.5の証明) を奇関数とするとが成り立つ. とおくと となるから,は奇関数 についても同様に示される |
(6.6の例) は奇関数でも偶関数でもない
が,つねにまたはに等しい訳ではない
は奇関数でも偶関数でもない
が,つねにまたはに等しい訳ではない
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(6.7の例) は偶関数 は偶関数 (6.7の証明) を偶関数とするとが成り立つ. とおくと となるから,は偶関数 についても同様に示される (6.8の例) は偶関数 は偶関数 (6.8の証明) とすると,が成り立つからは偶関数 |
6.とおくと
求める関数は偶関数であるから,はすべて0でなければならない.また,偶関数であるからを利用できる. (4.1)→ (4.2)→ 被積分関数は偶関数だから,右半分の2倍で計算できる
とおいて部分積分を行う
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結局,のフーリエ級数展開は,次の式になる. →[2]
このフーリエ級数展開が,元の関数 y=|x| をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成すると,次のようになる.
この式において,x=0とおくと,次の和が得られる.→D |
7.とおくと
求める関数は偶関数であるから,はすべて0でなければならない.また,偶関数であるからを利用できる. (4.1)→ (4.2)→ 被積分関数は偶関数だから,右半分の2倍で計算できる
とおいて部分積分を行う
とおいて部分積分を行う
結局,のフーリエ級数展開は,次の式になる. →[4] |
このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x2 をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
この式において,x=0とおくと,次の和が得られる.に対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線. これによれば,ほぼy=x2が再現できていると考えられる. →C 6.の結果から とおくと,7.の結果から したがって →E →B |
8.方形波(矩形波)のフーリエ級数展開
右図のようなで定義される関数は方形波(矩形波)と呼ばれる.この方形波(矩形波)のフーリエ級数展開を考えてみる. この関数は,奇関数だから,はすべて0になる. (4.3)→
とおいて第1項を置換積分で変形する
これにより,第1項と第2項は等しいことが分かるから結局,方形波のフーリエ級数展開は,次の式になる. →[3] |
このフーリエ級数展開が,元の方形波(矩形波)をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成すると,次のようになる.
この式において,とおくと,左辺は定義により1となるからしたがって となって,5.の結果と一致する |
9.とおくと
求める関数は奇関数であるから,はすべて0でなければならない.(4.3)→
ここで
したがって,次の形に書ける.は置換積分により,右半分と等しいことが示せる. すなわち,とおいて第1項を置換積分で変形すると 部分積分を3回繰り返して,の次数を下げる.
とおいて部分積分を行う
とおいて部分積分を行う
とおいて部分積分を行う
したがって,のフーリエ級数展開は次の式になる. →[5] |
このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x3 をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
のときの式の値を求めるとに対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線. これを見ると,がほぼ再現されていると考えられる. 5.の結果から だから →G 一般に,sが正の奇数のとき は簡単な分数では書けない. |
10.とおくと
求める関数は偶関数であるから,はすべて0でなければならない.(4.1)→ (4.2)→ 部分積分を4回繰り返して,の次数を下げる.
とおいて部分積分を行う
とおいて部分積分を行う
とおいて部分積分を行う
とおいて部分積分を行う
したがって,のフーリエ級数展開は次の式になる. →[6] |
このフーリエ級数展開が,元の関数 y=x4 をどのぐらい再現しているかを調べるために,−3.1415≦x≦3.1415まで0.1刻みに点を取り,n=1〜100までのフーリエ多項式でグラフをExcelで作成し,近似式を表示すると,次のようになる.
のときに対応し,黒で示した細い方の直線が近似直線. これを見ると,がほぼ再現されていると考えられる. ここで7.の結果から だから, →I ここで, とおくと だから →H →(*1) この級数の和は,テイラー級数(マクローリン級数)で考える方が簡単になる.すなわち, においてx=1を代入すると が得られる. |
11.パーセバルの等式
のが大きな整数になると,次の(4.2)(4.3)によってフーリエ係数を求めようとすると,部分積分をn回繰り返さなければならず,計算が大変になる.…(4.2) …(4.3) このとき,フーリエ級数に関するパーセバルの等式を利用するとのフーリエ係数をもっと楽に計算できる. まず,[無限次元空間におけるベクトル]について成り立つ関係を思い出すと を互いに垂直で大きさ1の基本ベクトルとするとき だから となるベクトルについて
…(11.1)
が成り立つ.(ピタゴラスの定理,パーセバルの等式と呼ばれる)また,ベクトルの内積から, のとき
…(11.2)
が成り立つ. |
フーリエ級数 については,同一物との積の積分が1,異なる物との積の積分が0ということから,上と類似の次の関係が成り立つ.
…(11.3)
(11.3)はフーリエ係数に関するパーセバルの等式と呼ばれる.
(証明)
まず のうちで,初めの項は 次に …(1.2) …(1.3) だから,他の項は0になって消える. |
次の関係が成り立つから,の項だけ残り,他は0になって消える. …(3.1) m≠nのとき …(3.2) …(3.3) m=nのとき …(3.4) …(3.5) |
も同様にして,の項だけ残り,他は0になって消える. 以上の項を加えると のとき
…(11.4)
も成り立つはずであるが,教科書に書かれていないのは,使える場面が少ないせいかもしれない. |
【パーセバルの等式を利用した計算】 →[1] に対してパーセバルの等式を適用すると この結果はBと一致する. |
→[4] に対してパーセバルの等式を適用すると この結果はHと一致する. |
→[1] →[5] として(11.4)を適用すると ここで の結果を使い, とおくと したがって |
→[5] に対してパーセバルの等式を適用すると の結果を使い, とおくと したがって |
→[4] →[6] として(11.4)を適用すると |
の結果を使い, とおくと したがって |