《解説》
○ 高校数学Iで登場する「三角比の相互関係」とは、次の2つの公式のことです。
sin2A+cos2A=1 …(1) tanA = …(2) 三角比sinA , cosA , tanAのうち1つ分かれば、残りはこれらの公式を使って「芋づる式に」求まります。 ○ 例えば、sinAが分かれば(1)を使ってcosAが求まり、さらに(2)を使ってtanAが求まります。
しかし、例えばtanA = のように、三角比のうちでtanAだけが与えられて残りのsinA , cosAを求めるときは要注意です。
(2)からsinA=3 , cosA=4などと間違う生徒が多いからです。(−1≦sinA , cosA≦1を満たしていないので、間違いに気づくはずです。比だけが与えられているのだから、3/2:4/2 あるいは3/5:4/5の可能性も考えなければなりません。) このように、tanA ⇒ cosA(またはsinA)の関係式が必要なときは、(1)の両辺をcos2A(またはsin2A)で割って次の公式(3)(4)を「その場で作ればよい」。(「公式」を覚えるのでなく、必要になったときに作るようにします・・・「公式がある」ということだけを覚えておく…覚えなければならない公式の数を減らして、公式間の関連をつかむようにする)
tan2A+1 = …(3)
1+ = …(4) |
例1
sinA = (0°≦A≦180°)のときcosAの値を求めてください。
(答案)sin2A+cos2A=1にsinA = を代入すると ( )2+cos2A=1 cos2A=1−= cosA=±
右図のようにsinA = のとき、Aは第1象限の場合も第2象限の場合もあり、これに対応するcosAの値は、第1象限なら正、第2象限なら負の値になる。(どちらも可能)
ゆえに、cosA=±…(答)
注意
右図のように直角三角形を描いて、三平方の定理を使って横の長さxを求めても答は得られるが、この解き方は「三平方の定理」の練習にはなるが三角比の相互関係の練習にはならない。 この方法ばかり練習していると、例えば(sinA+cosA)2などの変形ができないおそれがあります。 |
例2
cosA = (0°≦A≦180°)のときtanAの値を求めてください。
(答案)sin2A+cos2A=1にcosA = を代入すると sin2A+( )2=1 sin2A=1−= sinA=± 右図のようにcosA = のとき、Aは第1象限の角で、これに対応するsinAの値は正の数になる。 ゆえに、sinA= このとき、tanA= = = 2…(答)
(別解)
この答案では公式(1)を使ってcosA → sinA 公式(2)を使ってsinA , cosA → tanA のように2段階で求めたが、公式(3)を使って、cosA → tanAのように直接求めることもできる。 |
例3
tanA = − (0°≦A≦180°)のときcosAの値を求めてください。
■注意■
(答案)tanA = だからといって cosA = − 2 , sinA = などと考えていれば、大きな間違いです。 比率が− になるものには、 − , − , − など多くの分母・分子の 組合せがあります。 実際には、これらのうちでsin2A+cos2A=1を満たすものだけが答になりますが、その値は公式(3)で求まります。 公式(1)の両辺をcos2Aで割って、公式(3)を作る。 tan2A+1 = …(3) (3)にtanA = − を代入すると (− )2+1= = cosA=± 右図のようにtanA = − のとき、Aは第2象限の角で、これに対応するcosAの値は負の数になる。 ゆえに、cosA= − …(答) |
【問題1】 選択肢の中から正しいものをクリック
(1)
sinA = (0°≦A≦180°)のときcosAの値を求めてください。 |
(2)
sinA= (0°≦A≦180°)のときcosAの値を求めてください。 |
(3)
cosA= (0°≦A≦180°)のときsinAの値を求めてください。 |
(4)
cosA=− (0°≦A≦180°)のときsinAの値を求めてください。 |
(5)
cosA=− (0°≦A≦180°)のときtanAの値を求めてください。 |
(6)
sinA= (0°≦A≦180°)のときtanAの値を求めてください。 |
(7)
tanA= (0°≦A≦180°)のときcosAの値を求めてください。 |
(8)
tanA=− (0°≦A≦180°)のときsinAの値を求めてください。 |
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■[個別の頁からの質問に対する回答][三角比の相互関係について/18.7.06]
例題2の答えは、±2ルート2では?
■[個別の頁からの質問に対する回答][三角比の相互関係について/17.10.31]
=>[作者]:連絡ありがとう.例1のように,においてのとき,Aは第1象限,第2象限の2つの可能性がありますが,例2のように,においてのときは,第1象限だけになります.この違いは重要ですので覚えておくようにしましょう. 第一象限や第二象限がよくわかりません。どのような時にどんな象限がきまり、それに対する答えがどうなっていくのかを教えていただきたいです
■[個別の頁からの質問に対する回答][三角比の相互関係について/16.8.28]
=>[作者]:連絡ありがとう.この教材の管理人(私)は,第1象限などの用語は中学校1年生で習って,その後自由に使いこなしていると思っていましたが,今の教科書を見ると,中学校の教科書には登場しないようです. 象限という用語を使わないと,反比例のグラフが「どこ」と「どこ」にあるというようなことが言えなくなって不便だと思うのですが,そういう場所を表す用語はないらしい. 象限という用語は,高校数学Tで初登場のようです.左図のように,x, yとも正の場所を「第1象限」といい,以下反時計回り(左回りに)第2象限,第3象限,第4象限とします.ただし,座標軸上はどの象限にも入れません. 三角関数との関係で言えば,象限ということを意識しないと,符号の決め方が分からなくなるはずです. 例えば,においてx, yは象限に応じて決まる符号が付いていて(符号付の実数),rだけは半径(長さ,符号なしの実数)なので常に正です. だから,第1象限では 第2象限では のように各象限に応じて三角関数の符号が決まります.[まずこれが重要] 逆に,三角関数の符号が決まれば,象限が決まる場合と決めきれない場合があります. 例えば,という条件だけでは,第3象限と第4象限の可能性があってどちらと決められませんが,さらに,という条件もついていると,第3象限に決まります. 今学習しているところ、効率よく学習をする上でのポイントをしっかり書いてあって、分かりやすく説明しているのでとてもいいと思います。
問題も○×がすぐわかり、解説もしてくれるので、とてもいいです。
これからも利用させていただきます。
=>[作者]:連絡ありがとう.問題をやり,必要に応じて解説に立ち返る学習方法は,このサイトの一番良い利用方法だと考えています. |