■備考■ [1]二重根号ははずれない方が多い 二重根号の問題がそこそこできるようになると「二重根号は,必ずはずせるんだ」と考えるかもしれませんが,それは正しくありません. 生徒が出合う問題は「解ける問題」「はずせる問題」だけで,はずせない問題に触れる機会が少なく,「必ずはずれるんだ」という錯覚を持ってしまうのかもしれません. 説明のために, の形の二重根号で が無理数になるものだけを考え,これが の形の(一重)根号になるかどうか調べてみる. 例えば, は二重根号のように見えていますが,内側の根号内が平方数なので になります. 同様にして, の形をしたものは見かけは二重でも実質は二重根号ではありません.このようなものはここでは考えないことにします.…(##) …(1) の解になっているので,そもそも実数解を条件 すなわち …(2) を満たしていなければなりません.以下,この実数条件(2)を満たしているものだけを扱うと, の範囲で二重根号が外れるのは次の組合せだけです.
○1 これらの整数点は図1のように何本かの直線上に並びます. 黒で示した横線は上の(##)で述べたb=1,4,9,16,25,···でbが平方数で元の式がそもそも二重根号とは言えないことを表しています. 青の斜め線はb=a−1の直線になります. 緑の斜め線はb=2a−4の直線になります. オレンジの斜め線はb=3a−9の直線になります. 一般に,各々のaに対して,低い方からk番目の点は の直線上にあり, まで 本の直線が通っています. ○2 上の表1においてa=6の場合を例にとって解説する. m+n=6 となるの値が幾つあるか調べるには, 1) m=1とおくと,n=6−1=5, b=mn=5 このとき となる. 2) m=2とおくと,n=6−2=4, b=mn=8 このとき となる. 3) m=3とおくと,n=6−3=3, b=mn=9 となってbが平方数になります. *) 3<m<6のときは上記の解の順序を入れ換えたものになります. このようにm+n=6のときはm=1, 2になれるから2組になります. |
a=6の場合 次の表で背景色が水色の組は二重根号がはずれ,赤字で示したのはbが平方数になっているもの.
同様にして,a=10のとき b=a−1 b=2a−4 b=3a−9 b=4a−16 のうちで下2個が平方数になっているので,運悪く二重根号がはずれるのは2組だけになります.
最も運がよい場合でも1つの値aに対して,二重根号がはずれるbの値は すなわち の 個です. a=6 → 2個 a=10 → 4個(実際には2個) a=20 → 9個(実際には7個) などとなり,aの値が大きくなるほど(実数条件を満たすもののうちで)二重根号がはずれる確率は薄くなります. ○3 図1において横の座標が偶数で実数条件の境界線 上の点 から出ている接線になっています.すなわち,これらの直線はaが偶数であるときに新たに追加される接線から成っています. だから,接線の方程式は a=6の場合 次の表で背景色が水色の組は二重根号がはずれ,水色になっているものははずれないもの,赤字で示したのはbが平方数になっているものです.
例えば の二重根号をはずそうとすると,和が6で積が2となる2数を探すことになるので,解と係数の関係から の2つの解 を用いて となります.さらに,この を2次方程式 の2つの解を用いて求めようとすると が登場して,堂々巡りになり,結局はずれません. なども同様にして堂々巡りになり,はずれません. [3]二重根号は,現在高校の教科書では扱われていない 読者のやる気に水を注すような発言で申し訳ないのですが,この頁で取り上げた二重根号をはずす問題は「整数問題の処理」「論理的思考」の訓練にはなりますが,日常生活とのかかわりとなると非常に薄いものです. 社会生活で実際に扱うデータは小数であることも多く,さらには二重根号,三重根号,3乗根,...12乗根など何でもありですが,それらはコンピュータで瞬時に処理できます.この頁で扱った「筆算だけで二重根号をはずす技術」というのは,日常生活ではほとんど出合わないと考えられます.
※このような訳で,二重根号のはずし方という問題は,現在のもしくは近未来の重点項目ではないと考えられますが「読者からの質問が多い」ので教材を置いています. |
■[個別の頁からの質問に対する回答][二重根号について/18.4.30]
「二重根号は,現在高校の教科書では扱われていない」ということに驚きました。また、それにも関わらずこのようにわかりやすく詳しい解説・問題を掲載してくださっていることに感謝します。ぜひ無くなさないでいただきたいです。
=>[作者]:連絡ありがとう.この教材を作ったころ(ゆとりの時代)には,学習指導要領で「二重根号をはずす計算は扱わないものとする」とされ,どんな事情があっても例外は許されないという意味の「〜ものとする」で強く否定されていましたが,2018年現在の教科書では,発展学習として参考程度に触れられていることがあります. |