※高卒から大学初年度向けの「ベクトル,行列」について,このサイトには次の教材があります.
*** ベクトル *** ↓ ●ベクトル.行列の超基本 ●ベクトルの直交条件 ●1次独立,1次従属,基底,次元,核,階数 *** 行列 *** ↓ ●逆行列(1) ●逆行列(2) ↓ ●転置行列,対称行列,対角行列,三角行列 ●行列の階数 *** 行列式 *** ●行列式(1) ●行列式(2) ●行列式(3) *** 一次変換 *** ●行列と一次変換 ●点の像と原像 *** 固有値 *** ↓ ●固有値.固有ベクトルの定義 ↓ ●固有値と固有ベクトル(1) ●固有値と固有ベクトル(2) ●行列の対角化とは ●行列を対角化するには |
○ケーリー・ハミルトンの定理 2次の正方行列A=については,は次の関係式がつねに成り立ちます。これをケーリー・ハミルトンの定理といいます。
A2−(a+d)A+(ad−bc)E=0
(証明)・・・成分計算を気長に行えばできます。
A=のとき, A2−(a+d)A+(ad−bc)E =+ +=
ケーリー・ハミルトンの"定理自身"は上記のように成分計算で示しますが,ひとたびこの定理が証明できると,ケーリー・ハミルトンの定理を用いた行列での変形が可能となります。[行列は行列でやる。]
ただし,ケーリー・ハミルトンの定理で何でもできるわけではないので,行き詰まれば成分計算を併用します。 [応用]
A2=(a+d)A−(ad−bc)E
とみると,左辺は2次式で,右辺は1次式になります.つまり,次数を下げる変形ができます。 これを使って,行列のn乗を次数を下げて計算することができます.
【例】
A=のとき, a+d=1 , ad−bc=−2だから, A2−A−2E=0 これを用いれば, A2=A+2E…(1) となって,A2を行列の積を直接計算せずに求めることができる. さらに,A3を求めるには,両辺にAをかけて, A3=A2+2A (1)を繰り返し適用すると =(A+2E)+2A=3A+2E= 同様にして, A4=A3A=(3A+2E)A=3A2+2A =3(A+2E)+2A=5A+6E= などと変形できます。
【要約】
行列の計算には2つの処理方法があります。 1 成分で行う方法(何でもできるが,遅い) 2 行列で行う方法(使えるところは速い) --計算の方針-- 使えるところは,新幹線(ケーリー・ハミルトン)で行く, 残りは,普通列車(成分計算)で行く。 |
○数値計算を参考にして行う行列計算
[数] 次数を1次ずつ下げる方法--
【例】 x=1+√2 のとき,x2,x3,x4の値を求めなさい。 x=1+√2 ←→ x-1=√2 → (x-1)2=2 ←→ x2-2x-1=0・・・(1) (1)より,x2=2x+1・・(2) (2)より,x3=(2x+1)x=2x2+x=2(2x+1)+x =5x+2・・(3) (3)より,x4=(5x+2)x=5x2+2x=5(2x+1)+2x =12x+5・・(4)
x2=2(1+√2)+1=3+2√2 x3=5(1+√2)+2=7+5√2 x4=12(1+√2)+5=17+12√2 |
[行列] 次数を1次ずつ下げる方法--
ケーリー・ハミルトンの定理により,A2-2A-E=0・・(1)
【例】 A=のとき,A2,A3,A4を求めなさい。 (1)より,A2=2A+E・・(2) (2)より,A3=(2A+E)A=2A2+A=2(2A+E)+A =5A+2E・・(3) (3)より,A4=(5A+2E)A=5A2+2A=5(2A+E)+2A =12A+5E・・(4)
A2=2+= A3=5+2= A4=12+4= |
[数]--商と余りの関係を利用する方法--
(上記をまとめて行う) 【例】 X=2−i のとき,X3−3X2+X+3の値を求めなさい。 X=2−i ←→ X−2=−i → (x−2)2=−1 ←→ X2−4X+5=0・・(1) (X3−3X2+X+3)÷(X2−4X+5)=x+1・・・ −2 X3−3X2+X+3=(X2−4X+5)(x+1)−2・・(2) (1)によりX2−4X+5=0だから (一度に3次下げる)
X3−3X2+X+3=−2・・・答 |
[行列]--商と余りの関係を利用する方法--
(上記をまとめて行う) 例 A=のとき, A3−3A2+A+3Eを求めなさい。 ケーリー・ハミルトンの定理により,A2-4A+5E=0・・(1) 行列には割り算がないので,答案を清書するときは「掛け算と足し算・引き算だけでまとめなければならない」ことに注意
(X3−3X2+X+3)÷(X2−4X+5)=x+1・・・ −2
A3−3A2+A+3E=(A2-4A+5E)(A+E)−2E・・(2)
X3−3X2+X+3=(X2−4X+5)(x+1)−2 を参考にすると (1)によりA2-4A+5E=0だから (一度に3次下げる)
A3−3A2+A+3E=−2E=・・答 |
【問題】
≪1≫
[ウ]=,[エ]= |
≪2≫
[キ]=,[ク]= |
[注]直前にPC版から入られた場合は,自動転送でスマホ版に来ていますので,ブラウザの[戻るキー]では戻れません(堂々巡りになる).下記のリンクを使ってメニューに戻ってください.
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■[個別の頁からの質問に対する回答][ケーリー・ハミルトンの定理について/17.1.9]
問題2のA³−5A²+7A は、A³−5A²+7Eの間違いだと思います。(でないと答えが違う)
=>[作者]:連絡ありがとう.問題と解答にはエラーはないが,解説図に数か所ボロボロのところがありましたので訂正しました. |