■逆行列
【逆行列とは】
n次正方行列Aに対して AB=BA=En が成り立つとき,n次正方行列BをAの逆行列といい,A−1で表す.ここに,Enはn次の単位行列とする.
【例】
※n次正方行列Aの逆行列A−1が存在するとき(1) 2次の正方行列について = = だから はの逆行列 また,はの逆行列 (2) 3次の正方行列について = = だから はの逆行列 また,はの逆行列 AA−1=A−1A=En が成り立つ. ※正方行列でないものについては逆行列は考えない.
【逆行列の求め方】
○2次の正方行列について,高校では(教育課程により,また科目選択により,習わないことがある)次のように覚える.
(ア) |A|=ad−bc≠0のとき,逆行列が存在し
の逆行列は
○3次以上の正方行列については,
の対角成分は入れ替えて,対角でない成分は符号だけ変えたものを考えると,
(イ) |A|=ad−bc=0のときは,逆行列は存在しない.
= となるから,全体をad−bcで割ると単位行列になる. A=の逆行列を求めるには,その右側に単位行列を付けた次のような行列を考えて |
【例】
(1) (高校数学で習う方法で)A=の逆行列を求めるには,まず対角成分は入れ替えて,対角でない成分は符号だけ変えて を考える.次に,これを行列式|A|=4−6=−2で割って A−1=とする. 【行基本変形で求める方法】 右側に単位行列を付けた次のような行列を考える 1行目は左端が1になっている.2行目から1行目の3倍を引く 2行目の0でない左端を1にするために,2行目を−2で割る 1行目から2行目の2倍を引いて,左側の行列を単位行列にする よって,−1= (2) 行基本変形によっての逆行列を求めるには,はじめに右側に単位行列を付けた次のような行列を考える 1行目と2行目を入れ替える 3行目から1行目の2倍を引く 1行目から2行目を引く,3行目に2行目を足す 1行目に3行目を足す,2行目から3行目の2倍を引く よって,−1= |
○この頁に登場する【問題】は,公益社団法人日本技術士会のホームページに掲載されている「技術士第一次試験過去問題 共通科目A 数学」の引用です.(=公表された著作物の引用)
○【解説】は個人の試案ですが,Web教材化にあたって「問題の転記ミス」「考え方の間違い」「プログラムの作動ミス」などが含まれる場合があり得ます. 問題や解説についての質問等は,原著作者を煩わせることなく,当Web教材の作成者(<浅尾>)に対して行ってください.
A=
A= のとき,これらをまとめて A= と表せるから 両辺に右から−1を掛けると A=−1== → 3 ≪別解≫
A=とおくと
A=よりa=−2, c=1 A=よりa+b=1, c+d=3 だから a=−2, b=3, c=1, d=2 A= |
AB+2B=Eより
(A+2E)B=E 両辺に左から(A+2E)−1を掛けると B=(A+2E)−1 A+2E=だから B=(A+2E)−1= → 3 |
から行基本変形を行って,逆行列を求める
1行目を2で割る 3行目から1行目の4倍を引く 2行目から3行目の3倍を引く 2行目を2で割る 逆行列A−1の(1, 1)成分は → 1 |
から行基本変形を行う
2行目から1行目を引く 2行2列の成分1−aが0の場合は,2行目のすべての成分が0となるため,行列式が0となり,逆行列が存在しない.これは題意に合わないからa≠0といえる.そこで2行目を1−aで割る. 1行目から2行目のa倍を引く.3行目から2行目を引く できた逆行列の(1, 1)成分が−1であるから 1−=−1 a−1−a=−(a−1) a=2 → 5 |
≪逆行列を利用する方法≫
A= A= だから A= A=−1= = したがって A== → 4 ≪行列の積の線形性を利用する方法≫
行列A,列ベクトル, , , について
=+A=,A= ならば A(+)=+ が成り立つ だから A=A+A=+= |
≪必要なところだけ計算する≫
= となるから,積の3列目だけ比較すると x−y+3=0…(1) 2x+y=0…(2) 3x−y+3a=1…(3) (1)(2)よりx=−1, y=2 これを(3)に代入 a=2 → 5 ≪別解:行基本変形により逆行列を求める≫ から変形し始める 2行目から1行目の2倍を引く.3行目から1行目の3倍を引く 2行目を3で割る 1行目に2行目を足す.3行目から2行目の2倍を引く 3行目にを掛ける まだ途中であるが,以下の変形は逆行列の(3,3)成分に影響しない.逆行列の(3,3)成分が3だから =3 3a−5=1 a=2 |
から行基本変形によって求める
2行目から1行目を引く (分数を避けるために)2行目と3行目を入れ替える 2行目の符号を変える 1行目から2行目の2倍を引く.3行目に2行目の2倍を足す 2行目に3行目を足す よって,逆行列は → 3 |
から行基本変形で求める
1行目の符号を変える 1行目に2行目の2倍を足す 3行目の符号を変える 1行目から3行目の5倍を引く.2行目から3行目の2倍を引く よって、逆行列は → 1 |
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