※高卒から大学初年度向けの「ベクトル,行列」について,このサイトには次の教材があります.
*** ベクトル *** ↓ ●ベクトル.行列の超基本 ●ベクトルの直交条件 ●1次独立,1次従属,基底,次元,核,階数 *** 行列 *** ↓ ●逆行列(1) ●逆行列(2) ↓ ●転置行列,対称行列,対角行列,三角行列 ●行列の階数 *** 行列式 *** ●行列式(1) ●行列式(2) ●行列式(3) *** 一次変換 *** ●行列と一次変換 ●点の像と原像 *** 固有値 *** ↓ ●固有値.固有ベクトルの定義 ↓ ●固有値と固有ベクトル(1) ●固有値と固有ベクトル(2) ●行列の対角化とは ●行列を対角化するには |
◇解説◇ 正方行列(2×2行列,3×3行列,・・・)については行列のn乗が定義できますが,一般にはその成分計算は大変です.ここでは,2×2行列についてn乗が計算できる場合を取り扱います. |
(1)
与えられた行列 に対して, となる行列が見つかるときは, を利用して, を求めることができます. のときも同様です. (解説) ○対角行列についてはn乗を簡単に求めることができます. 同様にして 一般に,対角行列のn乗は対角成分を各々n乗するだけで求めることができます. ○次に,P-1AP の形の行列については (P-1AP)2 = P-1APP-1AP = P-1A2P 同様にして (P-1AP)n = P-1An-1PP-1AP = P-1AnP が成り立ちます. ○そこで,与えられた行列に対して, となる行列 P が見つかれば, この式に左から P を,右から P-1 を掛けると が求まります. |
【例】
(答案)とするとき=[ウ]であり,これを用いて行列 An (n = 1, 2, 3, ) を求めると An = [ エ ] である. ( 福岡大−理・工(2005年)入試問題の一部引用 ) だから したがって |
(2)
与えられた行列が,原点の周りの回転を表わす行列 に等しいときは,その n 乗は角度 θ を n 倍したものだから になります. さらに,回転・拡大となっているときも同様にして ならば になります. |
【例】
(答案)についてA2 = [ ア ], A3 = [ イ ] である.また, E + A + A2 + + An = 0 となる 100 以下の自然数 n のうちで最小のものは[ ウ ]であり,最大のものは[ エ ]である.ただし,E は単位行列, とする. ( 関西学院大−理工(2005年)入試問題の一部引用 ) だから E + A + A2 = 0 最小値2 A3 + A4 + A5 =A3(E + A + A2)= 0 A6 + A7 + A8 =A6(E + A + A2)= 0 … も同様にして示せるから (E + A + A2)+ + (A96 + A97 + A98) = 0 最大値98 |
(3)
A2,A3, A4 程度の簡単な計算をしてみて, 0, kE,kA などが登場すれば,その規則性を考えて An が求められます. |
【例】
(答案)のときAnを求めよ. A2=-Eになるから A3=-A A4=-A2=E 4乗で1周するから ア)n=4k+1(kは0以上の整数)のとき,An=A イ)n=4k+2(kは0以上の整数)のとき,An=-E ウ)n=4k+3(kは0以上の整数)のとき,An=-A エ)n=4k(kは1以上の整数)のとき,An=E |
(4)
○1 ケイリー・ハミルトンの定理を変形すると, A2 = (a + d)A -(ad - bc)E となり,この関係を繰り返し適用すると,次数を下げることができます. ○2 もっと一般的に,整式の割り算を用いて,次数を下げてから値を代入することができますが,高校では行列の割り算を取り扱わないので,答案にはかけ算で表わした結果のみを残す方がよいでしょう. |
【○1の例】 A2 = A + E ならば A3 = A2 + A = 2A + E
【○2の例】
(答案)のときA4 - 2A3 + A2 + Aを求めよ. のときケーリー・ハミルトンの定理により A2 - A - E = 0 が成り立つから A4 - 2A3 + A2 + A = (A2 - A - E)(A2 - A + E) + A + E = A + E |
■問題 困ったときはを押せばヒントが出ます.
1.
3つの行列 A, P, B を次のようにおく. B = P-1AP このとき,次の問いに答よ. (1) P の逆行列 P-1 および B を求めよ. (2) Bn, An (n = 1, 2, 3, ) を求めよ. (岩手大−工学部 (2000年) 入試問題の一部引用) |
2.
ac ≠ b2 とし, 行列 と P の逆行列 P-1 を考える. (1) P-1AP = B を満たす a, b, c のうちで,正の整数であって最小なものを求めよ. (2) 正の整数 n に対して,Bn と An を求めよ. (室蘭工大 (2000年後期) 入試問題の引用) |
3.
のとき,A20 を求めなさい. |
4.
のとき,A100 を求めなさい. |
5.
のとき, A4 - 29A2 + A + 3E を求めなさい. |
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■[個別の頁からの質問に対する回答][ 行列のn乗について/18.9.14]
逆行列の説明より前に逆行列が来ている気がします…!
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列のn乗について/18.8.25]
=>[作者]:連絡ありがとう.?.逆行列の説明を読めばよい. 質問です。
問題2の(1)の計算式、計算式1で、行列の恒等式における文字の比較をすていますが、左辺と右辺のどの行列のどの成分同士を比較したら、b=c,2a=3bとなるんでしょうか?
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列のn乗について/18.8.22]
=>[作者]:連絡ありがとう.あなたの勉強の仕方には弱点があるようです.すなわち,自分で鉛筆を動かさずに全部を尋ねているようです.1つでも計算すれば分かるはずのことを尋ねています.それとも行列の積の項目をまだ学習していないのなら,そちらを先にやるべきです. (1,1)成分の比較:5a−3b=3a, (1,2)成分の比較:5b−3c=2b, (2,1)成分の比較:2a=3b, (2,2)成分の比較:2b=3b これらは,b=c, 2a=3bにまとめられる. 2つほど疑問に思ったことがあるので質問させてください
質問1 (1)の解説の、次にP^(-1)APの形の行列については〜のあとの、同様にして〜の隣に続く式で、左辺から中辺へ式変形するさいの途中式を教えてほしいです。
質問2 a,b,cという異なる3つの行列があって、(a×b×c)^n=(a^n×b^n×c^n)という恒等式は成り立つのでしょうか?
ちょうどこの行列のn乗を学習しているさい疑問に思いました
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列のn乗について/18.8.22]
=>[作者]:連絡ありがとう.質問1について:その質問はあり得ない.少しでも書いてみれば分かります. 質問2について:一般には行列の積について交換法則は成り立たないから したがって 一般に ただし,対角行列など特別なものについては,交換法則が成り立つ 特に 福岡大理工2005年の入試問題のところで、S^-1は、どうやって計算したのでしょうか?
この項までに行列のマイナス乗はふれられてないと思うので、途中式を教えてほしいです
=>[作者]:連絡ありがとう.行列のマイナス乗が一般的に定義されているわけではないことに注意しましょう.当面,正方行列Aに対して,その逆行列A−1という特別なものだけを考えます.このページを先に読んでください. |