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高卒から大学初年度レベル「積分」について,このサイトには次の教材があります.
この頁へGoogleやYAHOO ! などの検索から直接来てしまったので「前提となっている内容が分からない」という場合や「この頁は分かったがもっと応用問題を見たい」という場合は,他の頁を見てください.  が現在地です.


== 重積分:変数変換.ヤコビアン ==

○ 【1変数の場合を振り返ってみる】
 置換積分の公式bawwwf(x)dx=βαwwwf(g(t)) g’(t)dt
この公式が成り立つためには,その区間において「1対1の対応であること」「積分可能であること」など幾つかの条件を満たしていなけばならないが,これは満たされているものとする.
においては,
xab
tαβ
f(x)f(g(t))
x=g(t) → .dxdtnn=g’(t) → dx=g’(t)dt

のように,積分区間被積分関数積分変数の各々を対応するものに書き換えることによって,変数変換を行うことができます.
 その場合において,積分変数dxは,単純にdtに変わるのではなく,図1に示されるようにg’(t)dtに等しくなります.
図1
※傾きm=g’(t)は,縦/横の比率を表すので,
(縦の長さ)=(横の長さ)×(傾き)
になる.
.dxdtnn=g’(t)は極限移項前の分数の形では.ΔxΔtnn≒g’(t)
つまりΔx≒g’(t)Δt
極限移項したときの記号としてdx=g’(t)dt

○ 【2変数の重積分の場合】
 重積分wnDwwwf(x,y)dxdyにおいて,積分変数x, y
x=x(u, v)
y=y(u, v)
によって変数u, vに変換する場合を考えてみると,dudvはそのままの形では面積要素dS=dxdyに等しくなりません.1つには微小な長さ「dudvが各々dxdyに等しいとは限らず」,もう一つには,直交座標x, yとは異なり,一般には「dudvとが直角になるとは限らない」からです.
 図2のように
(dx, 0)(.∂x∂unndu , .∂x∂vnndv )に移され
(0, dy)(.∂y∂unndu , .∂y∂vnndv )に移される.
図2
このとき,図3のように面積要素は
dxdy=|.∂x∂unn.∂y∂vnndudv−.∂x∂vnn.∂y∂unndudv|
=|.∂x∂unn.∂y∂vnn.∂x∂vnn.∂y∂unn|dudv
のように変換されます.
.∂x∂unn.∂y∂vnn.∂x∂vnn.∂y∂unnは負の値をとることもあり,
面積要素として計算するには,これを正の符号に変えます.
ここで,
|.∂x∂unn.∂y∂vnn.∂x∂vnn.∂y∂unn|
は,ヤコビ行列J= の行列式すなわちヤコビアン(関数行列式)det(J)=の絶対値|det(J)|を表します.

【要点】
x=x(u,v), y=y(u,v)により,xy平面上の領域Duv平面上の領域Eに移されるとき
ヤコビアンの絶対値を|det(J)|で表すと
|det(J)|=|.∂x∂unn.∂y∂vnn.∂x∂vnn.∂y∂unn|
面積要素は|det(J)|倍になる.
 wnDwwwf(x,y)dxdy=wnEwwwf(x(u,v),y(u,v))|det(J)|dudv
この公式が成り立つためには,その領域において「1対1の対応であること」「積分可能であること」など幾つかの条件を満たしていなけばならないが,これは満たされているものとする.
【2つのベクトルで作られる平行四辺形の面積】
 次の図のような2つのベクトルpw=(a, b), qw=(c, d)で作られる平行四辺形の面積S
S=|ad−bc|
で求められます.
図3
 これを行列式の記号で書けば
Sの絶対値となります.
(解説)
S=|pw||qw|sinθ …(1)
において,ベクトルの内積と角度の関係式
.pw · qw=ac+bd=|pw||qw|cosθ …(2)
から,cosθを求めて
sinθ=.1−cos2θ√nnnnnnni (>0) …(3)
に代入すると(途中経過省略)
S=.(a2+b2)(c2+d2)−(ac+bd)2√nnnnnnnnnnnnnnnnnnnni
=.(ad−bc)2√nnnnnnnni
=|ad−bc|
となることを示すことができます.
【用語と記号のまとめ】
ヤコビ行列
J=

ヤコビアン
det(J)=

ヤコビアンの絶対値
|det(J)|=|.∂x∂unn.∂y∂vnn.∂x∂vnn.∂y∂unn|
【例1】
 直交座標xyから極座標に変換するとき,
x=rcosθ, y=rsinθ
だから
.∂x∂rnn=cosθ, .∂x∂θnn=−rsinθ
.∂y∂rnn=sinθ, .∂y∂θnn=rcosθ
det(J)=cosθ·rcosθ−(−rsinθ)·sinθ
=rcos2θ+rsin2θ=r (>0)
したがって
 wnDwwwf(x,y)dxdy=wnEwwwf(x(r,θ),y(r,θ))·r·drdθ
【例2】
重積分wnDwww(x+y)2dxdy (D : 0≦x+y≦1, |x−y|≦1)
を変数変換u=x+y, v=x−yを用いて行うとき,
E : 0≦u≦1, −1≦v≦1
x=.u+v2nnn, y=.u−v2nnn (旧変数←新変数の形)
.∂x∂unn=.12n, .∂x∂vnn.12n
.∂y∂unn=.12n, .∂y∂vnn=−.12n
det(J)=.12n(−.12n)−.12n.12n=−.12n (<0)
だから
|det(J)|=.12n
wnDwww(x+y)2dxdy=wnEwwwu2.12ndudv
1−1www10www.u22ndudv=1−1www[n.u36ndv=1−1www.16ndv
=[n.v6n=.13n

※正しい番号をクリックしてください.
問1次の重積分を計算してください.
.wnDwww.x2+y2√nnnnnidxdy (D : x2+y2≦1)
1.π4n 2.π3n 3.π2n 4.3nn 5.2nn

問2次の重積分を計算してください.
.wnDwwwx dxdy(D :0≦x+y≦1, 0≦x−y≦1)
1.12n 2.13n 3.14n 4.16n 4.112nn

問3次の重積分を計算してください.
.wnDwwwcos(x2+y2)dxdy( D : x2+y2.π2n )
1.π4n 2.π2n 3π 4.π24nn 4.π22nn

問4 D : |x−y|≦2, |x+2y|≦1において,次の重積分を計算してください.
.wnDwww{(x−y)2+(x+2y)2}dydx
1.259nn 2.329nn 3.349nn 4.389nn 5.409nn


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■[個別の頁からの質問に対する回答][重積分:変数変換.ヤコビアンについて/18.9.23]
素朴な疑問なんですが、この変数変換って、離散的な関数に対しては同じようなことってできないんですかね?重和分するときの自由度って連続なときよりも低いんですかね?どう思われますか?
=>[作者]:連絡ありがとう.この教材は,大学初年度レベルの内容を取り扱ったものです.和分,差分というのは昔からある分野なので,何か確立された公式的なものがあるはずです.見つからない項目については,自分で作っていくことになります.
■[個別の頁からの質問に対する回答][重積分:変数変換.ヤコビアンについて/18.1.30]
二重積分の応用の例題も作ってもらえると助かります。しかし、テストでは非常に助かりました。
=>[作者]:連絡ありがとう.一歩踏み出せば,果てしなき応用の世界が広がっているようですが・・・
■[個別の頁からの質問に対する回答][重積分:変数変換.ヤコビアンについて/17.7.22]
3変数はどのようにすればよいのでしょうか
=>[作者]:連絡ありがとう.省略し過ぎで意味がつかみにくいですが,3変数の場合のヤコビアンはどうなりますかという質問でしたら
(右辺は省略記号)
(の絶対値)を使うことになります.
■[個別の頁からの質問に対する回答][重積分:変数変換.ヤコビアンについて/17.7.20]
途中式も丁寧に挟まれており、旧変数←新変数の形など、単純に見えるが案外間違えていたり抜けてしまう過程などが明記されているので、最後まで立ち止まる事なく理解に徹することが出来ました。
=>[作者]:連絡ありがとう.
■[個別の頁からの質問に対する回答][重積分:変数変換.ヤコビアン について/17.1.29]
非常にわかりやすくて助かりました
=>[作者]:連絡ありがとう.
■[個別の頁からの質問に対する回答][重積分.変数変換.ヤコビアンについて/17.1.22]
問4のxに誤り. x=1/3(2u+v)
=>[作者]:連絡ありがとう.その間違いを引きずってさらに2,3個の式がおかしかったので,併せて訂正しました.

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