【要点1】
(解説)異なる2つの複素数z1 , z2が与えられていて,実数p, qが p+q=1, p≧0, q≧0 の条件を満たしながら変化するとき, z=pz1+qz2 で示される点は,2点z1 , z2を結ぶ線分になる.
図1
図1のように,複素数z1に実数pを掛けたものpz1は,z1を同じ方向にp倍した点になります.
p>0のときは同じ向きに,p<0のときは逆向きになります.また,p>1ならば拡大,0<p<1ならば縮小になります.
図2
図2のように,2つの複素数z1 , z2の和z1+z2は,ベクトルの和と同様に図示することができます.すなわち,
1) 平行四辺形の対角線で考える方法
原点とz1 , z2から.平行四辺形を作り,その対角線が和になる. 2) 三角形で考える方法
まず,原点からz1まで移動し,z2で表される分の移動を継ぎ足す.
図3
図3のように,2つの複素数z1 , z2の差z2−z1は,ベクトルの差と同様に図示することができます.すなわち,z1からz2に向かうものとなります.
z2−z1によってできる複素数は,「(終点)−(始点)」の形になっています.向きを逆に覚えてしまう人が結構多いので,気をつけましょう.
複素数は,ベクトルで言えば「位置ベクトル」に対応しており,得られた複素数z2−z1を表す点は,図の赤丸のように原点からz2−z1だけ移動した点になります.
≪要点1の解説≫
図4
z=pz1+qz2(p+q=1, p≧0, q≧0)を書き換えると z=pz1+qz2(p=1−q, 0≦p≦1, 0≦q≦1) z=(1−q)z1+qz2(0≦q≦1) z=z1+q(z2−z1)(0≦q≦1) となるから,図4のように,まずz1まで進み,次にz2−z1を0≦q≦1倍だけ足したものになります.q=0のとき点z1を,q=1のとき点z2を表し,その間の値ではz1,z2の間の点を表します.
z=pz1+qz2(p+q=1, p≧0, q≧0)
で表される複素数は,線分z1z2に埋め込まれたものを表しているのでなく,原点から線分z1,z2上の1点に向かっていることに注意 なお, z=pz1+qz2(p+q=1, p>0, q>0) となるときは,両端を含まない線分z1z2なります. z=pz1+qz2(p+q=1) だけの場合は,直線z1z2なります.(図5)
図5
(要点1の別の考え方)z=pz1+qz2(p+q=1, p>0, q>0) のとき,p+q=1だから, z= と書ける.これは,z1, z2をq:p=q:(1−q)に内分する点を表している.qが0<q<1の範囲で変化するとき,この値はz1z2間にある点を表す.q=0, 1のときは,元の式から線分の両端z1, z2になることがわかる. |
【例1】
(解答)異なる2つの複素数z1 , z2が与えられていて,実数p, qが p+q=, p≧0, q≧0 の条件を満たしながら変化するとき, z=pz1+qz2 で示される点は,どのような図形を描くか? p+q= → p=−qを代入すると z=(−q)z1+qz2=z1+q(z2−z1) …(A) ただし, p=−q≧0, q≧0より0≦q≦ …(B) (A)(B)より,次の図の青で示した線分(両端を含む) z=(p+q)=, p≧0, q≧0 と変形できるから,z1 , z2の内分点(上図の茶色の部分)の絶対値を半分にしたもの.青で示した線分(両端を含む) |
【例2】
(解答)異なる2つの複素数z1 , z2が与えられていて,実数p, qが p+q<1, p>0, q>0 の条件を満たしながら変化するとき, z=pz1+qz2 で示される点は,どのような図形を描くか? z=(p+q), p>0, q>0 と変形できるから,z1 , z2の内分点を縮小(p+q<1)したもの. すなわち,三角形O, z1 , z2の内部(周上は含まない) |
【要点2】
(解説)1直線上にない異なる3つの複素数z1 , z2 , z3が与えられていて,実数p, q, rが p+q+r=1, p≧0, q≧0, r≧0 の条件を満たしながら変化するとき, z=pz1+qz2+rz3 で示される点は,3点z1 , z2 , z3で作られる三角形の内部および周上になる. z=pz1+qz2+rz3 (p+q+r=1, p≧0, q≧0, r≧0) だから z=pz1+qz2+rz3 (p=1−q−r≧0, q≧0, r≧0) pを消去すると z=(1−q−r)z1+qz2+rz3 (q+r≦1, q≧0, r≧0) z=z1+q(z2−z1)+r(z3−z1) (q+r≦1, q≧0, r≧0) となるから,上の【例2】を参考にすると,まずz1まで進み,次にz2−z1,z3−z1を2辺とする三角形の内部および周上を指すことが分かる. (p+q+r=1, q>0) (p+q+r=1, q<0) の場合は z=z1+q(z2−z1)+r(z3−z1) (q>0) (q<0) となるから,各々図のような領域を表す. |
p+q+r=1は,何の役に立っているのか?
一般に,ある複素数zを,与えられた(直線上にはない)3個の複素数z1 , z2 , z3を使って,
※z=pz1+qz2+rz3z=pz1+qz2+rz3 のように表す方法は,ただ1通りには定まらず,何通りにでも表すことができる.(p,q,rを定めるための方程式と見たときは,不定解を持つ) すなわち z1=a+bi, z2=c+di, z3=e+fi, z=g+hi のとき pa+qc+re=g …(1) pb+qd+rf=h …(2) となる実数p,q,rは,未知数が3個であるのに対して,方程式が2個しかないため,ただ1通りには定まらない. 例えば,複素数0を3つの複素数1, i , −1で表す方法は 1×1+1×(−1)+0i=0 でも成り立ち 2×1+2×(−1)+0i=0 でも成り立つ. これに対して, p+q+r=1 …(3) という条件を追加しておくと,自由度が1だけ減って方程式が3個になるので,p,q,rはただ1通りに定まる. (p+q+r=1, r>0) (p+q+r=1, r<0) の場合は z=z1+q(z2−z1)+r(z3−z1) (r>0) (r<0) となるから,各々図のような領域を表す. ※z=pz1+qz2+rz3 (p+q+r=1, p>0) (p+q+r=1, p<0) の場合は z=pz1+qz2+(1−p−q)z3 (r=1−p−q) z=z3+p(z1−z3)+q(z2−z3) (p>0) (p<0) と変形できるから,各々図のような領域を表す. |
【例3】
(解答)1直線上にない異なる3つの複素数z1 , z2 , z3が与えられていて,実数p, q, rが p+q+r=1, q>0, r<0 の条件を満たしながら変化するとき, z=pz1+qz2+rz3 で示される点は,,どのような図形を描くか? 上記の解説で,q>0とr<0の共通部分を求めると,図の水色の部分(境界は含まない)になる. |
【例4】
(解答)1直線上にない異なる3つの複素数z1 , z2 , z3が与えられていて,実数p, q, rが p+q+r=1, p=,q>0, r>0 の条件を満たしながら変化するとき, z=pz1+qz2+rz3 で示される点は,,どのような図形を描くか? z=z1+q(z2−z1)+r(z3−z1) q+r=,q>0, r>0 z=z1+(−r)(z2−z1)+r(z3−z1) 0<r< z=z1+(z2−z1)+r(z3−z2) 0<r< となるから,順次組み立てていくと,図の赤線(端点を含まない)になる. |
【問題2】1直線上にない異なる3つの複素数z1 , z2 , z3に対して,
(1)解説
z=pz1+qz2+rz3 で定義される複素数が次の図形を描くとき,実数p, q, rが満たす条件として正しいものを下の選択肢から選んでください. 領域については水色で示した部分,直線,半直線,線分については赤で示した部分とし,すべて境界線や端点を含まないものとします.
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下図のようになります.
(1)ここまで↑
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(2)解説
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下図のようになります. (2)ここまで↑
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(3)解説
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下図参照
(3)ここまで↑
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(4)解説
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z1を通り,−z1に平行な直線は,
z=z1+t(−z1 )=(1−t)z1+z2+z3
ここで,z1, z2, z3の係数をp,q,rとおくと, p+q+r=1, q=r (4)ここまで↑
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(5)解説
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図参照 (別解) z3から,z1−z3を同じ向きに定数倍してできる点だから, z=z3+t(z1−z3 )=tz1+0z2+(1−t)z3 (t>0) ここで,z1, z2, z3の係数をp,q,rとおくと, p+q+r=1, p>0, q=0 (5)ここまで↑
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(6)解説
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から,z3−を同じ向きに定数倍してできる点 と考えると, z=+t(z3− )=z1+z2+tz3 (t>0) ここで,z1, z2, z3の係数をp,q,rとおくと, p+q+r=1, p=q, r>0 |
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■[個別の頁からの質問に対する回答][複素数の1次結合が表す図形について/18.5.1]
●「【問題2】1直線上にない異なる3つの複素数z1 , z2 , z3に対して,z=pz1+qz2+rz3
で定義される複素数が次の図形を描くとき,実数p, q, rが満たす条件として正しいものを
右から選んでください.」
の(2)の解答「p+q+r=1 p<0, q<0 」についてですが、
「r>0」は必要ないのでしょうか?
●同様に「【問題2】(5)の解答「p+q+r=1, p>0, q=0」も「r<1」は必要ないのでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.前半:p+q+r=1 p<0, q<0のとき,r=1−p−q>1が当然成り立つので,r>0は書かなくても成り立ちます. 同様にして,後半:p+q+r=1, p>0, q=0のとき,r=1−p−q<1が当然成り立つので,書かなくても成り立ちます. |