3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCが正三角形であるための条件は
(解説)2つの複素数 の商(割り算)を極形式で書くとこれにより から へ移るときの「辺の長さの比」と「回転角」が分かる. 二等辺三角形でかつ頂角が60°なら,残り2つの角も60°になるので,正三角形になる のとき,辺の長さの比は …(1) 偏角の差は ∠BAC=±60°…(2) になるから,△ABCは正三角形になる. (A→B→Cは,偏角が+60°のとき左回りに並び,−60°のとき右回りに並ぶ) 逆に,△ABCが正三角形のとき,(*)が成り立つといえる.
引用元の問題は記述式の問題ですが,以下の問題ではWeb画面上での操作性をよくするため,選択問題に変えています.
【問題1】 正三角形の頂点を表す複素数を求める問題まぐれ当たりでは力が付きませんので,計算用紙を使って,よく考えてから選択肢の内の1つをクリックしてください.解答すれば解説が出ます. なお,答案はこの教材の筆者が作成したものです.間違い等がありましたらお知らせください.
(1) (やさしい)
zを複素数とする.複素数平面上の3点z, z2, z3を頂点とする三角形が正三角形となるzをすべて求めよ. (日本女子大2005年度)
(2)
複素数平面上で,3点A(4z), B(3z+2), C(z3)を頂点とする△ABCが正三角形となるような複素数zをすべて求めよ. (福島県立医科大2016年度)
点A(4z)を中心としてB(3z+2)を±60°回転するとC(z3)に重なればよい(右図青の線)
より A(8),B(8),C(8)が1つの点になり三角形ができないからz≠2とする.
【複素数のn乗根の公式】
の解は ( ) 右の公式により から …(1) …(2) から …(3) …(4)
※ \(\cos 60^{\circ}-i\sin 60^{\circ}=\cos(-60^{\circ})+i\sin(-60^{\circ})\)として
(1)(2)(3)(4)より\(\cos(\frac{-60^{\circ}+ 360^{\circ}\times 0}{2}) + i\sin(\frac{-60^{\circ}+ 360^{\circ}\times 0}{2})\) \(\cos(\frac{-60^{\circ}+ 360^{\circ}\times 1}{2}) + i\sin(\frac{-60^{\circ}+ 360^{\circ}\times 1}{2})\) とすれば,上の公式と形式的には一致する 上の図の赤で示した点B(3z+2)を中心とした回転を考えた場合は 以下同様にして解ける. のような複素係数の2次方程式に対して解の公式を使うこともできますが,その場合は,根号内に虚数を含む形で形式的に書かれる解 の根号の部分は,2乗が になる複素数としてa+biの形に書きなおす必要があります.これを満たす実数a, bを連立方程式から求めるのはそれなりの計算になります.むしろ,上記のように のようにn乗からn乗根に変形するのが楽です. |
【要点】
3点A(α), B(β), C(γ)を頂点とする△ABCについて
(解説)のとき ∠BAC=θ 2つの複素数 の商(割り算)を極形式で書くとこれにより から へ移るときの「辺の長さの比」と「回転角」が分かる. 【問題2】 三角形の辺の比などを求める問題
引用元の問題は記述式の問題ですが,以下の問題ではWeb画面上での操作性をよくするため,選択問題に変えています.
まぐれ当たりでは力が付きませんので,計算用紙を使って,よく考えてから選択肢の内の1つをクリックしてください.解答すれば解説が出ます. なお,答案はこの教材の筆者が作成したものです.間違い等がありましたらお知らせください.
(1)
α, βを等式9α2−18αβ+25β2=0を満たす0でない複素数とする.このとき複素平面上で3点0, α, βを頂点とする三角形の3辺の長さの比を求めよ. (東京女子大2005年度)
(2)
(∠AOB)複素数α, βは,α2−2αβ+4β2=0, |α−2β|=4の関係を満たす.複素数平面上に,O(原点),A(α), B(β)の3点をとる.三角形AOBの∠AOBの値を求めよ.また,三角形AOBの面積の値を求めよ. (岐阜薬科大2005年度)
α, βのいずれかが0なら三角形ができないから,α, βはいずれも0でないとする.
(△AOBの面積)α2−2αβ+4β2=0の両辺をβ2で割ると 2次方程式の解の公式を使って を求めると ∠AOB=60° また,右図のように|α−2β|=4だから △AOBの面積は
右図のような2βの図が思いつかないときに,式の変形だけで|α−2β|=4を使うには
において,|α|,|β|の比ではなく,長さを求めたらよい より このとき
(3)
(1) |β|原点をOとする複素数平面上において,複素数α, βの表す点をそれぞれA, Bとする.α, βが条件 を満たすとき,次の問いに答えよ.ただし,iは虚数単位である. (1) |β|の値を求めよ. (2) 2(1+i)および の偏角をそれぞれ−180°より大きく180°以下の範囲で求めよ. (3) △ABCの面積を求めよ. (静岡大2005年度)
(2) 2(1+i)の偏角 (2) ( の偏角) (3) (△ABCの面積)
αとβのなす角は75°
の偏角は75°だからここで (1)または(2)の途中経過を見ると, の虚部が であるから より これらの値を代入すると
加法定理や半角公式を使って sin 75°を求めてもよいが,(1)(2)の結果を利用すると自然な流れになります
(4) (3)とよく似ているが少し違う.誘導はより明確.
(1) |β|原点をOとする複素数平面上において,複素数α, βの表す点をそれぞれA, Bとする.α, βが次の2つの式を満たすとき,次の各問いに答えよ.ただし,iは虚数単位とする. (1) |β|の値を求めよ. (2) の偏角をθ(0≦θ≦π)とするとき,sinθの値を求めよ. (3) △ABCの面積を求めよ. (芝浦工大2016年度)
(2) (sinθの値) (3) (△ABCの面積) |
≪目が覚める1題≫
4つの複素数z1, z2, z3, z4は互いに異なり,その絶対値はすべて1であるとする.
(2) 参考答案を見る(1) 略 (2) z1+z2+z3=0が成り立つとき,z1, z2, z3を頂点とする複素数平面上の三角形は正三角形であることを示せ. (3) z1+z2+z3+z4=0が成り立つとき,z1, z2, z3, z4を頂点とする複素数平面上の四角形は長方形であることを示せ. (お茶の水女子大2016年度)
式の変形:計算力で解決できる問題も多いが,図形の問題は図形によって解決する方が見通しが立てやすい.
(3) 参考答案を見る
ベクトルの問題はベクトルで,複素数の問題は複素数で,図形の問題は図形の知識で解く方が見通しを立てやすい!!
ベクトルで考えて,複素数z1, z2, z3をベクトル に対応させるとならば,各ベクトルのなす角が120°になることを示せばよい. 仮定により, の終点に の始点を, の終点に の始点を継いで行くと の終点が原点に戻る.また, の大きさ(長さ)はすべて1だから,右の下の図のように「3辺の長さが等しい」正三角形ができる. 正三角形の内角は60°だから,その外角は120°になり,ベクトル のなす角は120°になる.同様にして,他の2組のベクトルのなす角も120°になる. 右の上の図において,黄色,水色,桃色で示した三角形はすべて2辺の長さが1でその間の角が120°であるから合同.よって頂点z1, z2, z3をつないでできる三角形は正三角形になる.
ベクトルで考えて,複素数z1, z2, z3, z4をベクトル に対応させると
ならば,四角形の内角がすべて90°になることを示せばよい. の大きさはすべて1だから,右の下の図において四角形ABCDはひし形になる. 頂点z1, z2, z3, z4の並び方は指定されていないが,例えば右の下の図のように,z1, z2, z3, z4の順に左回りに並んでいる場合, になる. 半径1の円において,大きさが1の2つのベクトル が逆向きに入っているのだから, は,右の上の図のように直径になる. 直径の上に立つ円周角は90°だから∠z1z2z3=90°, ∠z1z4z3=90°となる. 同様にして,∠z2z1z4=90°, ∠z2z3z4=90°も言えるから,4つの内角がすべて90°となり,長方形であることが示される. (頂点z1, z2, z3, z4の並び方が他の順である場合も同様にして示される)
*** この話は一般化できるものかどうか興味を引く問題である.5つの場合,6つの場合を検討してみよう ***
(4) 参考答案を見る(4) 互いに異なる5つの複素数が|z1|=|z2|=|z3|=|z4|=|z5|=1 z1+z2+z3+z4+z5=0 を満たすとき,この五角形は正五角形といえるか? (5) 互いに異なる6つの複素数が|z1|=|z2|=|z3|=|z4|=|z5|=|z6|=1 z1+z2+z3+z4+z5+z6=0 を満たすとき,この六角形は正六角形といえるか?
右図上のようにz1, z2, z3が正三角形になるように並べておくと,z1+z2+z3=0になる.
(5) 参考答案を見るこれとは独立にz4, z5が直径になるように並べておくと,z4+z5=0になる. そうすると, (z1+z2+z3)+(z4+z5)=0 が成り立ち,正三角形と直径は独立に決められるから,五角形としては正五角形でも何でもないものになる. また,右図下のように1つの頂点z1=1を固定してから, のように2組の共役複素数で4つの複素数z2, z3, z4, z5を決めると,2つずつ共役だからこれらの和は実数になる. 次に,z2, z3の実部の和が になるように決めると
例えば
とおくと,z2+z3+z4+z5=−1になるから, z1+(z2+z3+z4+z5)=0 となる.このように共役複素数の組を作って実部の和で調整するとできるから,正五角形とは関係ないものができる.
右図上のようにz1, z3, z5が正三角形になるように並べておくと,z1+z3+z5=0になる.
(2)(3)(4)(5) そもそもの話これとは独立にz2, z4, z6が正三角形になるように並べておくと,z2+z4+z6=0になる. そうすると, (z1+z2+z3)+(z4+z5+z6)=0 が成り立ち,六角形としては正六角形でも何でもないものになる. また,右図下のように互いに直径となる3組の複素数z1, z4,z2, z5,z3, z6を作ると,それぞれz1+z4=0,z2+z5=0,z3+z6=0となるから (z1+z2)+(z3+z4)+(z5+z6)=0 を満たす.このとき六角形は正六角形でも何でもない.
そもそも,複素数で書かれた1つの等式は,実数で書かれた2つの等式と同値になります.
○1 実部,虚部で書けば
a+bi=c+di ←→
a=c
b=d ○2 極形式で書けば r1(cosα+isinα)=r2(cosβ+isinβ) (r1, r2>0, 0≦α, β<2π) ↓↑ r1=r2 α=β ○そこで(2)の問題のようにz1, z2, z3で表される三角形の頂点を決めるには, の6つの自由度 がある. ここに大きさが1という条件を付ければ, となるから,残り3つの変数 が自由になっている. ここに1つの等式z1+z2+z3=0を指定すると,自由度が2つ減って,1つの変数だけが自由に決められることになる.自由に決められる1つの変数とは例えば (z1の偏角)である. このようにして,z1+z2+z3=0を指定すると, z1の偏角だけは自由に決められるが,残りはすべて決まることになる. ○これに対して(3)の問題のようにz1, z2, z3, z4で表される四角形の頂点を決めるには, の8つの自由度 がある. ここに大きさが1という条件を付ければ, となるから,残り4つの変数 が自由になっている. ここに1つの等式z1+z2+z3+z4=0を指定すると,自由度が2つ減って,2つの変数が自由に決められることになる.自由に決められる2つの変数とは例えば (z1, z2の偏角)である. 右図においてz1, z2の偏角は自由に定めることができ,その分だけ形は定まらない. ○同様にして,5つの点から五角形を作る場合,自由度が10のところが,大きさがすべて1という条件が付いていると自由度が5だけ減少し,さらに1つの等式z1+z2+z3+z4+z5=0が指定されていると自由度が2だけ減少するから,結局自由度は3になる.したがって,例えば のように3つの偏角が自由に決められることになり,形は定まらない.(どの問題でも,1つの頂点z1の位置は自由に定められるが,五角形のこの問題では,さらに2つの角度が自由になり,形が定まらないということです.) |
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