【直線の方程式】
(解説)複素数平面において,点A(z1)を通り,複素数z2に平行な直線の方程式は z=z1+tz2 (tは実数) 図1のように,tを変化させると,tz2は直線の方向に伸び縮みするから,z=z1+tz2は,点A(z1)を通り,複素数z2に平行な直線上の点を指し示します.
図1
この直線の方程式において,z=z1+tz2は「直線の中に埋め込まれたもの」を表しているのではなく,原点から直線上の点に向かうものでることに注意
【2直線の交点を求めるための元になる考え方】
(解説)(複素数の1次独立) (1) z1, z2は平行でなく,0でもない複素数,p,qは実数とする. pz1+qz2=0 ならば p=q=0 が成り立つ. (2) z1, z2は平行でなく,0でもない複素数,p,q,s,tは実数とする. pz1+qz2=sz1+tz2 ならば p=s, q=t が成り立つ. 2つの複素数z1 , z2が平行であるときは,一方を他方の実数倍として表すことができます. z1=sz2 (またはz2=tz1) しかし,2つの複素数z1 , z2が平行でなく,0でもないとき, z1=sz2 (またはz2=tz1) となることはありません. (1) 平行でなく,0でもない複素数z1, z2について, pz1+qz2=0…(A) のとき,もし,p≠0ならば z1=−z2 となって,z1, z2が平行でないという仮定に反します.したがって,p=0でなければなりません. このとき, 0z1+qz2=0 qz2=0 (z2≠0) により q=0でなければなりません. 以上により,(A)が成り立つならばp=q=0でなければなりません. (2) pz1+qz2=sz1+tz2 …(B)ならば (p−s)z1+(q−t)z2=0 と変形できるから,(1)の結果からp−s=0, q−t=0でなければなりません. したがって,(B)が成り立つならばp=s, q=tになります. (係数比較が各々等しいといえるということです.) |
(2直線の交点の求め方)
【例1】
【解き方1】(複素数で直線の方程式を作って交点を求める方法)(1) 図の三角形において,頂点Aを表す複素数をz1,頂点Bを表す複素数をz2とし,OAの中点CとOBを2:1に内分する点をDとするとき,CBとADの交点Pを表す複素数をz1 , z2を用いて表してください. (2) さらに,OPの延長が線分ABと交わる点をEとするとき,Eを表す複素数をz1 , z2を用いて表してください. (1) Aを表す複素数はz1 DはOBを2:1に内分する点だから =z2 =z2−z1 直線ADはAを通り,に平行な直線だから,その方程式はsを実数として z=z1+s(z2−z1 )=(1−s)z1+z2…(i) と書ける. 他方で,Bを表す複素数はz2 CはOAの中点だから =z1 =z1−z2 直線BCはBを通り,に平行な直線だから,その方程式はtを実数として z=z2+t(z1−z2 )=z1+(1−t)z2…(ii) と書ける. 求める交点P(z)は(i)(ii)の両方とも満たすから (1−s)z1+z2=z1+(1−t)z2…(iii) ここで,z1 , z2は平行でなく,0でもないから,係数比較により 1−s= =1−t この連立方程式を解くと s= ,t= (i)または(ii)に代入すると z= …(答) (2) EはABの内分点だから, またはsz1+tz2 (s+t=1) の形に書ける. の定数倍としてこの形になるのは …(答) |
【解き方2】(中学校で習う相似図形と比例の関係を使って解く方法)
平行線を引けば相似図形ができ,相似図形を使えば,他の辺の比を利用して辺の比を求めることができます.
右図のようにDからBCに平行な直線を引き,OAとの交点をSとすると,△ODS∽△OBCとなるから,OS:SC=OD:DB=2:1 また,OC=CAだから OS:SC:CA=2:1:3 △ACP∽△ASDとなるから, AP:PD=AC:CS=3:1 よって,PはADを3:1に内分する. (1) A(z1 ), D(z2 )だから Pを表す複素数は,=…(答)
(別解)
(2) CからOEに平行な直線を引き,ABとの交点をUとすると,△ACU∽△AOEとなるから,CからADに平行な直線を引き,OBとの交点をTとすると,△OTC∽△ODAとなるから, OT:TD=OC:CA=1:1 また,OD:DB=2:1だから TD:DB=1:1 △BPD∽△BCTとなるから, CP:PB=TD:DB=1:1 したがって,PはBCを1:1に内分する. Pを表す複素数は,=…(答) AU:UE=AC:CO=1:1 また,CP:PB=1:1だから UE:EB=1:1 よって,EはABを2:1に内分する. Eを表す複素数は …(答) 【解き方3】(チェバの定理を使って解く方法)
チェバの定理とは,右図のような△ABCにおいて,頂点からA,B,Cから点Pを通る直線を引いて,対辺との交点をR,S,Tとするとき,
=1
(2) 例1の問題について,チェバの定理を適用すると,(2)の問題が先に解ける.が成り立つというものです.
この関係は,右図のように分母と分子を順に選んで一周すれば,次の形に書くこともできます.
=1
証明は,右図のようにAを通ってBCに平行な直線を引いて行うことができます. = = = ゆえに ==1 ××=1 =2 よって,AE:EB=2:1 Eを表す複素数は …(答) (1) k が,B(z2 ), C( )の内分点 = となるのは,p=1, q=1のときで …(答)(k=) |
【問題1】
(解き方1)右図の三角形において,頂点Aを表す複素数をz1,頂点Bを表す複素数をz2とし,OAを1:2に内分する点をC,OBを2:3に内分する点をDとする. (1)CBとADの交点Pを表す複素数zをz1 , z2を用いて表してください. (2)OPの延長が線分ABと交わる点をEとするとき,Eを表す複素数wをz1 , z2を用いて表してください. (1)直線ADは,A(z1) を通り,=z2−z1に平行な直線だから, z=z1+s(z2−z1 )(sは実数) …(i) と書ける. また,直線BCは,B(z2) を通り,=z1−z2に平行な直線だから, z=z2+t(z1−z2 )(tは実数) …(ii) と書ける. AD, BCの交点は(i)(ii)の両方とも満たすから z1+s(z2−z1 )=z2+t(z1−z2 ) (1−s)z1+sz2=tz1+(1−t)z2 z1 , z2は平行でなく,0でもないから,係数比較により z1の係数が等しくなるべきことから, 1−s=t z2の係数が等しくなるべきことから, s=1−t になります. s, tについての上記の連立方程式を解くと 1−s=t → 3−3s=t…(A) s=1−t → 2s=5−5t…(B) (A)を(B)に代入すると 2s=5−5(3−3s) 13s=10 s=, t= になります. 以上により,Pを表す複素数zは s=, t= だから z=(1−s)z1+sz2=z1+sz2 になります. (2) E(w)はABの内分点だから w= (m,n>0) の形になる. z= の定数倍で,これが成り立つのは 3+4=7だから,分母を7にすると内分点を表すことになり w= |
(解き方2) (1) DからBCに平行な直線を引き,OAとの交点をSとすると, OS:SC=OD:DB=2:3 また,OC:CA=1:2だから OS:SC:CA=OD:DB=2:3:10 したがって, DS//BCだから△ACP∽△ASD AP:PD=AC:CS=10:3 A(z1 )とD()だから z== (2) E(w)はABの内分点だから w= (m,n>0) の形になる. z= の定数倍で,これが成り立つのは w= (解き方3) (2) チェバの定理により ××=1 = = より, AE=EB → AE:EB=EB:EB=4:3 したがって w= (1) k が,B(z2 ), C( )の内分点 = となるのは,p:3q=3:4 → 4p=9q p= p:q=:q=9:4 == …(答)(k=) |
≪一般化して公式を作ろう≫
【問題2】
(1)右図の三角形において,頂点Aを表す複素数をz1,頂点Bを表す複素数をz2とし,OAをm:nに内分する点をC,OBをh:kに内分する点をDとする. (1)CBとADの交点Pを表す複素数zをz1 , z2を用いて表してください. (2)OPの延長が線分ABと交わる点をEとするとき,Eを表す複素数wをz1 , z2を用いて表してください. (1) (解き方2:平行線を引く方法で解説する)・・・他の方法でもよい OS:SC=h:k=mh:mk 他方で,OC:CA=m:n=m(h+k):n(h+k)だから OS:SC:CA=mh:mk:n(h+k) したがって AP:PD=n(h+k):mk z== (2) |
(2) (解き方3:チェバの定理を使う方法で解説する)・・・他の方法でもよい ××=1 だから, = AE:EB=nh:mk ゆえに w= |
[注]直前にPC版から入られた場合は,自動転送でスマホ版に来ていますので,ブラウザの[戻るキー]では戻れません(堂々巡りになる).下記のリンクを使ってメニューに戻ってください.
...(携帯版)メニューに戻る...(PC版)メニューに戻る |