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※旧教育課程の高校数学Cに含まれていた「行列」について,このサイトには次の教材があります.
この頁へGoogleやYAHOO ! などの検索から直接来てしまったので「前提となっている内容が分からない」という場合や「この頁は分かったがもっと応用問題を見たい」という場合は,他の頁を見てください.  が現在地です.
行列の記号と用語
行列の相等,和,差,実数倍
行列の積
行列の計算(まとめ)
行列の乗法の性質
零因子
行列のn乗
行列のn乗(2)-現在地
行列のn乗(3)
逆行列
ケーリー・ハミルトンの定理
ケーリー・ハミルトンの定理(2)

== 行列のn乗 ==

◇解説◇
 正方行列(2×2行列,3×3行列,・・・)については行列のn乗が定義できますが,一般にはその成分計算は大変です.ここでは,2×2行列についてn乗が計算できる場合を取り扱います.
(1) 
与えられた行列A に対して,
P1AP=(λ00μ)
となる行列Pが見つかるときは,
P1AnP=(λn00μn) を利用して,
Anを求めることができます.

PAP1=(λ00μ)
のときも同様です.

(解説)
○対角行列についてはn乗を簡単に求めることができます.
(λ00μ)(λ00μ)=(λ200μ2)
同様にして
(λ200μ2)(λ00μ)=(λ300μ3)
一般に,対角行列のn乗は対角成分を各々n乗するだけで求めることができます.
(λ00μ)n=(λn00μn)

○次に,P-1AP の形の行列については
 (P-1AP)2 = P-1APP-1AP = P-1A2P
 同様にして (P-1AP)n = P-1An-1PP-1AP = P-1AnP
が成り立ちます.

○そこで,与えられた行列Aに対して,
P1AP=(λ00μ)
となる行列 P が見つかれば,
(P1AP)n=P1AnP=(λn00μn)
 この式に左から P を,右から P-1 を掛けると
An=P(λn00μn)P1
が求まります.
【例】
 A=(2112),S=(1111)とするときS1AS=[ウ]であり,これを用いて行列 An (n = 1, 2, 3, …) を求めると An = [ エ ] である.

( 福岡大-理・工(2005年)入試問題の一部引用 )

(答案)
S1=12(1111)だから
S1AS=12(1111)(2112)(1111)
S1AS=12(1111)(1313) =12(2006)= (1003)
(S1AS)n=S1AnS=(1n003n)
したがって
An=(1111)(1n003n)12(1111)
=12(1111)(113n3n)
=12(3n+13n13n13n+1)

(2) 
与えられた行列Aが,原点の周りの回転を表わす行列
(cosθsinθsinθcosθ)
に等しいときは,その n 乗は角度 θn 倍したものだから
(cosnθsinnθsinnθcosnθ)
になります.
さらに,回転・拡大となっているときも同様にして

A=r(cosθsinθsinθcosθ)ならば
An=rn(cosnθsinnθsinnθcosnθ)
になります.
【例】
A=(12323212)
についてA2 = [ ア ], A3 = [ イ ] である.また,
E + A + A2 + … + An = 0 となる 100 以下の自然数 n のうちで最小のものは[ ウ ]であり,最大のものは[ エ ]である.ただし,Eは単位行列,0=(0000) とする.

( 関西学院大-理工(2005年)入試問題の一部引用 )

(答案)
A=(cos120sin120sin120cos120)だから
A2=(cos240sin240sin240cos240)=(12323212)
A3=(cos360sin360sin360cos360) =(1001)
E + A + A2 = 0 … 最小値2
A3 + A4 + A5 =A3(E + A + A2)= 0
A6 + A7 + A8 =A6(E + A + A2)= 0

も同様にして示せるから
(E + A + A2)+ … + (A96 + A97 + A98) = 0 … 最大値98

(3) 
A2A3A4 程度の簡単な計算をしてみて, 0, kEkA などが登場すれば,その規則性を考えて An が求められます.
【例】
A=(0110)のときAnを求めよ.
(答案)
A2=-Eになるから
A3=-A
A4=-A2=E
4乗で1周するから
ア)n=4k+1(kは0以上の整数)のとき,An=A
イ)n=4k+2(kは0以上の整数)のとき,An=-E
ウ)n=4k+3(kは0以上の整数)のとき,An=-A
エ)n=4k(kは1以上の整数)のとき,An=E

(4)
○1 ケイリー・ハミルトンの定理を変形すると,
A2 = (a + d)A -(ad - bc)E
となり,この関係を繰り返し適用すると,次数を下げることができます.

○2 もっと一般的に,整式の割り算を用いて,次数を下げてから値を代入することができますが,高校では行列の割り算を取り扱わないので,答案にはかけ算で表わした結果のみを残す方がよいでしょう.
【○1の例】
 A2 = A + E ならば A3 = A2 + A = 2A + E

【○2の例】
A=(3512)のときA4 - 2A3 + A2 + Aを求めよ.
(答案)
A=(3512)のときケーリー・ハミルトンの定理により
A2 - A - E = 0 が成り立つから
A4 - 2A3 + A2 + A
= (A2 - A - E)(A2 - A + E) + A + E = A + E

=(4511)

■問題
困ったときはを押せばヒントが出ます.
1.
3つの行列 A, P, B を次のようにおく.
A=(3212),P=(1211)B = P-1AP_
このとき,次の問いに答よ.
(1) P の逆行列 P-1 および B を求めよ.
(2) Bn, An (n = 1, 2, 3, …) を求めよ.

(岩手大-工学部 (2000年) 入試問題の一部引用)
※この画面上では,を埋めて解答してください.(以下の問題も同様です)
1 2 3
(1)  
P1=13(121)=

B = P-1AP = =(100)=

(2)  Bn=(100n)=

(P-1AP)n = (1004n) だから  P-1AnP = (1004n)

An = =13(2×4n+12×4n+24n+14n+)=

2.
ac ≠ b2 とし,
行列A=(5320),B=(3002)
P=(abbc)P の逆行列 P-1 を考える.
(1) P-1AP = B を満たす a, b, c のうちで,正の整数であって最小なものを求めよ.
(2) 正の整数 n に対して,BnAn を求めよ.

(室蘭工大 (2000年後期) 入試問題の引用)
1 2
(1) a = 3, b = c =

(2) Bn = (3n00n)=

An=(3n+12n+13n+1+3×2n2×3n2n+12×3n+3×n)

=

3.
A=(1111) のとき,A20 を求めなさい.
1 2


A20 = =(2100010)=


4.
A=(2613) のとき,A100 を求めなさい.
1 2


A100 = (261)=

5.
A=(1234) のとき,
A4 - 29A2 + A + 3E を求めなさい.
1 2
A4 - 29A2 + A + 3E
=(023)=

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■[個別の頁からの質問に対する回答][ 行列のnについて/18.9.14]
逆行列の説明より前に逆行列が来ている気がします…!
=>[作者]:連絡ありがとう.?.逆行列の説明を読めばよい.
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列のnについて/18.8.25]
質問です。 問題2の(1)の計算式、計算式1で、行列の恒等式における文字の比較をすていますが、左辺と右辺のどの行列のどの成分同士を比較したら、b=c,2a=3bとなるんでしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.あなたの勉強の仕方には弱点があるようです.すなわち,自分で鉛筆を動かさずに全部を尋ねているようです.1つでも計算すれば分かるはずのことを尋ねています.それとも行列の積の項目をまだ学習していないのなら,そちらを先にやるべきです.
(1,1)成分の比較:5a−3b=3a, (1,2)成分の比較:5b−3c=2b, (2,1)成分の比較:2a=3b, (2,2)成分の比較:2b=3b
これらは,b=c, 2a=3bにまとめられる.
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列のnについて/18.8.22]
2つほど疑問に思ったことがあるので質問させてください 質問1 (1)の解説の、次にP^(-1)APの形の行列については~のあとの、同様にして~の隣に続く式で、左辺から中辺へ式変形するさいの途中式を教えてほしいです。 質問2 a,b,cという異なる3つの行列があって、(a×b×c)^n=(a^n×b^n×c^n)という恒等式は成り立つのでしょうか? ちょうどこの行列のn乗を学習しているさい疑問に思いました
=>[作者]:連絡ありがとう.質問1について:その質問はあり得ない.少しでも書いてみれば分かります.




質問2について:一般には行列の積について交換法則は成り立たないから

したがって

一般に

ただし,対角行列など特別なものについては,交換法則が成り立つ

特に
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列のnについて/18.8.22]
福岡大理工2005年の入試問題のところで、S^-1は、どうやって計算したのでしょうか? この項までに行列のマイナス乗はふれられてないと思うので、途中式を教えてほしいです
=>[作者]:連絡ありがとう.行列のマイナス乗が一般的に定義されているわけではないことに注意しましょう.当面,正方行列Aに対して,その逆行列A−1という特別なものだけを考えます.このページを先に読んでください.

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