◆解説◆
【行ベクトル,列ベクトル】
例えば,次の行列をAとするとき, また,Aは3個の行ベクトル 【一次独立,一次従属】 ○行ベクトルまたは列ベクトル(の組), , , ...について, 一次独立でないとき,一次従属であるといいます. ○あるベクトル(の組)が,一次独立であるとき, どのベクトルも,他のベクトルの一次結合によって表すことはできません. ≠cp+cq+... 逆に,あるベクトル(の組)が,一次従属であるとき, いずれかのベクトルは,他のベクトルの一次結合によって表すことができます. =cp+cq+...
【例】
【行基本変形,列基本変形】次の行列Aを4次元行ベクトル, , の組によって考えるとき, となっています.したがって,これらの行ベクトルは一次独立ではなく,一次従属です. ※一般に4次元ベクトルでは,一次独立なベクトルは多くても4個ですが,この例のようにあるベクトルが他のベクトルの一次結合で表されるときは,一次独立なベクトルがそれよりも少なくなっていることがあります. また,行列Aを3次元列ベクトル, , , の組によって考えるとき, =− =− となっています.したがって,これらの列ベクトルは一次独立ではなく,一次従属です. ※一般に3次元ベクトルでは,一次独立なベクトルは多くても3個ですが,この例のようにあるベクトルが他のベクトルの一次結合で表されるときは,一次独立なベクトルがそれよりも少なくなっていることがあります. 【一次独立なベクトルの個数】 ○次の行列Aのような3行4列の行列では また,行ベクトルとして取り出すと,4次元ベクトルとなるので,一次独立なベクトルの個数は多くても4個までです. ⇒ 以上から,3×4行列を行ベクトルまたは列ベクトルとして取り出すとき,一次独立なベクトルの個数は,行と列のうち少ない方:3個以下です. ⇒ 一般に,m×n行列からできる行ベクトルまたは列ベクトルのうちで一次独立なものの個数は,mとnのうちで小さい方以下となります. ○行列の行(列)に対して,次の操作を行うことを行(列)基本変形といいます.
この変形は,連立方程式を正しく変形するときに,係数行列に加えることのできる変形をまとめたものです.
・2つの行(列)を入れ替える.
・1つの行(列)を定数倍(≠0)する.
以後の変形の見通しを良くするために,
・1つの行(列)に他の行(列)の定数倍(≠0)を加える.
※行基本変形にあたっては,行ベクトルの成分のうちで,左から見て0でない最初の成分を1となるように, ある行(列)ベクトルが他の行(列)ベクトルの一次結合で表されるということ =cp+cq+... は, 行(列)基本変形によって零ベクトルになる ということと同じなので,行(列)基本変形を繰り返したときに,零ベクトルにならずに残った行(列)ベクトルの個数が行列のうちで一次独立なものの個数です.
【行列の階数の求め方】
○行列の階数とは,ある行列の列ベクトル(または行ベクトル)のうちで一次独立なものの最大個数です.
行(列)基本変形によって,行(列)ベクトルを成分をなるべくたくさん消したときに(0にして),
消えずに残った行(列)ベクトルの個数が階数
【例1】
・2行目に1行目を加える.次の行列の階数を求めてください. 3行目から2行目の3倍を引く. ≪別解≫ ・2列目から1列目を引く. 3列目に1列目の3倍を足す. 3列目から2列目の2倍を引く.
【例2】
・1行目と2行目を入れ替える.次の行列の階数を求めてください. 3行目に1行目の2倍を足す. |
○この頁に登場する【問題】は,公益社団法人日本技術士会のホームページに掲載されている「技術士第一次試験過去問題 共通科目A 数学」の引用です.(=公表された著作物の引用)
○【解説】は個人の試案ですが,Web教材化にあたって「問題の転記ミス」「考え方の間違い」「プログラムの作動ミス」などが含まれる場合があり得ます. 問題や解説についての質問等は,原著作者を煩わせることなく,当Web教材の作成者(<浅尾>)に対して行ってください.
・2行目から1行目の3倍を引く.
3行目から1行目を引く. 3行目に2行目の11倍を足す.
・2行目に1行目を足す.
3行目から2行目のa−1倍を引く 2−a(a−1)=0 a2−a−2=0 (a−2)(a+1)=0 a=2, −1 a>0よりa=2 → 2 |
・3行目から1行目を引く
3行目から2行目を引く |
・3行目から1行目を引く
2b−a=0 2−b−a=0 この連立方程式を解いてa=, b= → 5 |
平成21年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-13 4次元数ベクトル a1= , a2= , a3= , a4= , a5=のうち,一次独立なものの最大個数は次のどれか. 11 22 33 44 55 解説
列基本変形によって,零ベクトルでないものが何個残るか調べる
・a4+a3→a4= 結局,a1= , a2= , a3= , a4= , a5= となるから,零ベクトルでないのは3個.階数は3 → 3 |
行基本変形によって,零ベクトルでない行ベクトルが何個残るか調べる
・1行目と3行目を交換する 3行目から1行目の3倍を引く 4行目に2行目を足す |
平成23年度技術士第一次試験問題[共通問題]
【数学】V-19 行列の階数が2のとき,a,bが満たす関係は次のどれか. 1a−b+1=0 22a−b+1=0 3a−2b+1=0 43a−b+1=0 5a−3b+1=0 解説 行基本変形,列基本変形のいずれでもよいが,文字で割る変形をすると,0かどうかで場合分けを要するため,やや複雑になる.できれば文字で割らない方が楽
・2列目から1列目の2倍を引く3列目から1列目の3倍を引く |
行基本変形とは,次の変形をいう
・2つの行を入れ替える.
1←2行目に3行目(の1倍)を足せば得られる・1つの行を定数倍(≠0)する. ・1つの行に他の行の定数倍(≠0)を加える. 3←3行目を−1倍すれば得られる 4←1行目と2行目を入れ替えれば得られる 5←1行目に3行目の2倍を足せば得られる 2←2行目は,行基本変形では得られない → 2 |
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■[個別の頁からの質問に対する回答][行列の階数について/18.9.12]
公益社団法人の上から7番目の問題の解説で質問です。3列目から2列目のa倍を引くとありますが、aが0の可能性があるときに文字の掛け算をしてもいいんでしょうか?
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列の階数について/18.9.12]
=>[作者]:連絡ありがとう.掛けることは何も問題がありません.割ることに問題があるだけです. 公益社団法人の、上から4つめの問題で、解説下部の連立方程式で、2-a=0ではなく2b-a=0ではないでしょうか。
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列の階数について/16.10.21]
=>[作者]:連絡ありがとう.訂正しました. 問題を解く時のヒントなどをもっと入れた上が良いと思います!
=>[作者]:連絡ありがとう.問題に解答すれば,詳しいhelpが出ます. |