【逆変換】
○ 1次変換 fを表す行列が Aであるとき, Aの逆行列 A−1が存在すれば
.f: | x' |  | y' | .=A | x |  | y | .…(1)
の逆変換 f−1は,逆行列 A−1で表され
.f−1: | x |  | y | .=A−1  | x' |  | y' | .…(2)
となります.
○ 1次変換 f, gを表す行列が各々 A, Bで, A, Bの逆行列 A−1, B−1が存在するとき,
合成変換 f○gの逆変換
.(f○g)−1=g−1○f−1は (AB)−1=B−1A−1…(3)
で表されます.
合成変換 g○fの逆変換
.(g○f)−1=f−1○g−1は (BA)−1=A−1B−1…(4)
で表されます.
○ 1次変換fを表す行列がAで,Aの逆行列A−1が存在するとき,逆変換の逆変換は元の変換と等しくなり,その行列はAになります.
.(f−1)−1=f ⇔ (A−1)−1=A…(5)
○ また,逆変換(逆行列)が存在するとき,1次変換fとその逆変換f−1との合成変換は恒等変換I(行列で書けばE)になります.
.f−1○f=I , f○f−1=I ⇔ A−1A=E , AA−1=E…(6)
(解説)
(1)(2)←
A−1が存在すれば
. | x' |  | y' | .=A | x |  | y | .
の両辺に「左から」A−1を掛けると
.A−1  | x' |  | y' | .=A−1A | x |  | y | .=E | x |  | y | .= | x |  | y | .
したがって,逆向きの対応は
. | x |  | y | .=A−1  | x' |  | y' | .
で表されます.
(3)←
A−1, B−1が存在すれば
. | x' |  | y' | .=AB | x |  | y | .
の両辺に「左から」B−1A−1を掛けると
.B−1A−1 | x' |  | y' | .=B−1A−1AB | x |  | y | .= | x |  | y | .
. | x |  | y | .=B−1A−1 | x' |  | y' | .
となるから,(AB)−1=B−1A−1
(4)も同様
(解答)
行列 | 2 | 1 |  | 5 | 3 | .について,D=2×3−1×5=1だから
逆行列は | 2 | 1 |  | 5 | 3 | .−1= | 3 | −1 |  | −5 | 2 | .
したがって,逆変換の式は
. | x |  | y | .= | 3 | −1 |  | −5 | 2 | . | x' |  | y' | .
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(復習)【逆行列の求め方】
行列 A= | a | b |  | c | d | .について,その行列式 D=ad−bcが 0で
なければ,行列 Aの逆行列 A−1が存在し
A−1=. 1Dnn | d | −b |  | −c | a | .
が成り立ちます.
(参考)
【逆行列が存在する場合と存在しない場合の対応の違い】

○ 行列 A= | a | b |  | c | d | .の行列式
D=ad−bcが 0でないとき,
行列 Aは正則であるといい,座標平面上の点 (x, y)から (x', y')への対応は1対1になります.
(1) (x, y)が座標平面上のすべての点をとるとき,(x', y')もすべての点をとります.(全射)
(2) 異なる(x, y)には,異なる(x', y')が対応します.(単射)
したがって,平面上の任意の (x', y')に対して(全射だから),元の (x, y)がただ一つ(単射だから)存在します.

○ 行列 A= | a | b |  | c | d | .の行列式
D=ad−bcが 0であるとき,
行列 Aは正則でないと言われ,座標平面上の点 (x, y)から (x', y')への対応は1対1になりません.
(1) (x, y)が座標平面上のすべての点をとっても, (x', y')はすべての点をとりません.平面上の一部分になります(全射でない)

(2) 異なる (x, y)には,同一の (x', y')が対応する場合があります.(単射でない)
したがって,平面上のある (x', y')に対して,元の (x, y)が存在しないことがあります.(元が全射でないから)
平面上のある (x', y')に対して,元の (x, y)が複数個存在することがあります.(元が単射でないから)
○ 以上のように,1次変換 Aによる像 (x', y')から原像 (x, y)への対応が座標平面上のすべての点 (x', y')に対して定義できるのは逆行列が存在する場合に限ります.
【例3】
1次変換 f, gを表す行列が各々
.A= | 2 | 5 |  | −1 | −2 | ., B= | −2 | −3 |  | 3 | 5 | .
であるとき, (f○g)−1を表す行列を求めてください.
(解答)
f○gを表す行列はABで,その逆変換(f○g)−1を表す行列は(AB)−1=B−1A−1になります.
実際に求めるには,ABを計算してからその逆行列を求めても,B−1 , A−1をそれぞれ求めてからその積を求めても同じになります.
AB= | 2 | 5 |  | −1 | −2 | . | −2 | −3 |  | 3 | 5 | .= | 11 | 19 |  | −4 | −7 | .
その行列式はD=11×(−7)−19×(−4)=−77+76=−1だから
(AB)−1=. 1−1nn | −7 | −19 |  | 4 | 11 | .= | 7 | 19 |  | −4 | −11 | .
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