○ 行列の対角化とは
(参考)対角行列はべき乗(累乗)計算が簡単にできるなど便利な性質があり,対角行列になおすことができればメリットが大きい. 与えられた正方行列Aに対して,
P−1AP=
となるような行列Pを見つけてP−1APが対角行列になるようにすることを対角化という.
(1) 対角行列の積を求めるには対角成分を掛けるだけでよい.
=
(2) 対角行列のn乗を求めるには各対角成分をn乗すればよい.
n=
※ 「対角化せよ」という問題に対しては,
P−1AP=
の形で答えるとよい.この式に左からPを,右からP−1を掛けた式,
A=PP−1
は同じ内容を表している.
|
※注1 m×n行列とj×k行列の積はn=jの場合のみ定義される.
※注2 対角行列でない行列Aを対角行列にすることはできない.対角化とは,P−1APを対角行列にすることをいう. |
○ P−1APの形の式の特徴
※ 対角行列をDで表すとき,次のように変形してもよい.
・ P−1AP=のとき 左辺のn乗については,
(P−1AP)n=P−1AnPが成り立つ.
右辺のn乗については
n=が成り立つ.
したがって,
P−1AnP=
両辺に左からPを,右からP−1を掛けると
An=PP−1
が求まる.
P−1AP=D ⇒ A=PDP−1
のとき
An=( PDP−1 )n=PDnP−1=PP−1
|
※ 行列の積について
(1) 交換法則は成立しない. (2) 結合法則は成立する. ある行列Pとその逆行列P−1との積は単位行列になる 結合法則を利用するとP−1APの形の式のn乗は,次のように簡単になる. ○ 2乗のとき
(P−1AP)(P−1AP)=P−1A(PP−1)AP=P−1AEAP=P−1AAP
だから
(P−1AP)2=P−1A2P
が成り立つ.○ 3乗以上のときも
(P−1AP)(P−1AP)···(P−1AP)
において隣り合うPP−1を先に計算してEにしておくと,掛け算ではすべて無視できて
=P−1APP−1AP···P−1AP
(P−1AP)n=P−1AnP
となることが分かる.
|
○ 対角化と累乗計算の例
例1与えられた正方行列Aに対して,
P−1AP=D (Dは対角行列)
となるような行列Pを見つける方法については,次の頁で扱う.ここでは,行列Pが見つかったときの累乗計算を示す.
An= = |
例2 An= |
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列の対角化とはについて/16.11.8]
Pの求め方がわからない
■[個別の頁からの質問に対する回答][行列の対角化とはについて/16.11.6]
=>[作者]:連絡ありがとう.その頁は対角化とはなにかということを説明した頁です.次に行列を対角化するにはという頁を読んでください. 対角行列でない行列Aを対角行列にすることはできない.対角化とは,P−1APを対角行列にすることをいう.
対角行列しか対角行列に出来ないというのはどういう意味でしょうか?
=>[作者]:連絡ありがとう.これはよく考えてみると当然のことを,読者の気を引くように刺激的な表現にしたものです. 「対角行列でない行列」Aは,対角行列でないのだから,対角行列に等しいはずはありませんし,変形して対角行列にできるはずはありません.
が対角行列でないときに,などと変形できるはずはありません.そんな変形は正しい変形ではありません・・・なぜなら,Aは,対角行列でないのだから,の形に書けるはずはないということです.
対角化とは,与えられた行列Aに対して,うまく行列Pを見つけて のように対角行列のサンドイッチにすること もしくは,(同じことを別の書き方で示すと) のようにAのサンドイッチが対角行列になるように変形することです. |