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■1次変換の定義
○座標平面から座標平面への写像で,点(x, y)の像(x', y')が,次のような定数項のない1次式で表されるものを1次変換といいます.
○ 行列で書かれた等式は,対応する各成分が等しいことを表します. 例えば,2×1行列の等式=は 連立方程式と同値です. また,行列の積は2×1行列に等しい ので,次の行列の等式は上記の連立方程式(1)(2)と同値になります. = ○ このように1次変換は係数行列によって定まるので, 1次変換 すなわち= を,行列が表す1次変換といいます. |
○ 集合Aの各々の要素xに集合Bの要素yを対応させる規則が与えられているとき,この対応y=f(x)をAからBへの写像(または関数)といいます.
一般の写像においては,集合Aを集合Bとは異なる集合である場合もあります.
【例】 ベクトルの内積 (a, b)·(c, d)→ ac+bd は平面上の2つの点から1つの実数への対応になっています. ○ 写像のうちで,特に同一集合から同一集合への対応となってるものを変換といいます. 座標平面から座標平面への対応を与えている写像は,変換です. |
■合成変換の定義 ○ 1次変換f:= によって,点(x, y)が点(x', y')に移され, 1次変換g:= によって,点(x', y')が点(x'', y'')に移されるとき,点(x, y)に点(x'', y'')を対応させる変換をこれら2つの変換の合成変換といいます.
【重要】
(解説)1次変換f, gを表す行列が各々A, Bであるとき, 合成変換g○fを表す行列は,行列の積BAになります.
合成変換を表す記号g○fについても,行列の積についても,「後から行う操作」に対応する方が「左側」に着きます.
f:=…(1)においてA= g:=…(2)においてB= とおくとき,(1)を(2)に代入すると == だから =BA
【例1】
(解答)1次変換f, gを表す行列が各々, であるとき,合成変換g○f, f○g, f○fを表す行列を求めてください. g○fを表す行列は= f○gを表す行列は= f○fを表す行列は=
【問題1】
g○fを表す行列HELP1次変換f, gを表す行列が各々, であるとき,合成変換g○f, f○g, f○fを表す行列を求めてください.(下の選択肢から選んでください) f○gを表す行列HELP f○fを表す行列HELP
【問題3】
θ= , r=1
θ= , r=2a≠0またはb≠0のとき,行列で表される1次変換 は,原点の周りの角θの回転を表す1次変換f f:= と原点を中心とする相似拡大(または縮小)を表す1次変換g f:=r= の合成変換で表すことができます. 次の行列で表される1次変換を回転と拡大の合成と見なしたとき,回転角0≦θ<2πと拡大比r>0は各々幾らになりますか.HELP θ= , r= θ= , r= |
【合成変換を表す記号】 点の座標(x, y), (x', y')はその位置ベクトル, , で表すことができるので, =(x, y) =(x', y') =(x'', y'') とおくと 各々の1次変換が =f()…(1) =g()…(2) で表されるとき,(1)を(2)に代入すると =g(f()) となりますが,このg(f())を 記号g○f() またはg○fで表します.
##危険な落とし穴##
(参考)g○fはg(f())のことなので,先に1次変換fによって移し,次に1次変換gによって移された結果を表します. 見かけ通りに前から順に読んでしまって,gが先だと考える間違いが多いので注意しましょう. Excelを使って行列の積を検算する方法
○ 行列の積を求めるワークシート関数は =MMULT()です.そこで,G1をポイントしておいて ○ ≪ここからが重要≫ 以上の操作では,G1に1行1列成分が書き込まれるだけで,他の行列成分は書き込まれません.(数式のコピペなどをしてもだめです) 行列として一体の「配列」に直すには,次のようにします. (1) G1〜H2までを選択して反転表示にしておきます. (2) Excel画面の上の方にある数式バーにマウスを当てて,Ctrl+Shift+Enter(CtrlキーとShiftキーを押しながら,Enterキーを押す) ○ 行列の掛け算の順序を入れ替えたり,同じ行列の積を求める場合でも, |
【逆変換】
(解説)○ 1次変換fを表す行列がAであるとき,Aの逆行列A−1が存在すれば f:=A…(1) の逆変換f−1は,逆行列A−1で表され f−1:=A−1 …(2) となります. ○ 1次変換f, gを表す行列が各々A, Bで,A, Bの逆行列A−1, B−1が存在するとき, 合成変換f○gの逆変換 (f○g)−1=g−1○f−1は(AB)−1=B−1A−1…(3) で表されます. 合成変換g○fの逆変換 (g○f)−1=f−1○g−1は(BA)−1=A−1B−1…(4) で表されます. ○ 1次変換fを表す行列がAで,Aの逆行列A−1が存在するとき,逆変換の逆変換は元の変換と等しくなり,その行列はAになります. (f−1)−1=f ⇔ (A−1)−1=A…(5) ○ また,逆変換(逆行列)が存在するとき,1次変換fとその逆変換f−1との合成変換は恒等変換I(行列で書けばE)になります. f−1○f=I , f○f−1=I ⇔ A−1A=E , AA−1=E…(6) (1)(2)← A−1が存在すれば =A の両辺に「左から」A−1を掛けると A−1 =A−1A=E= したがって,逆向きの対応は =A−1 で表されます. (3)← A−1, B−1が存在すれば =AB の両辺に「左から」B−1A−1を掛けると B−1A−1=B−1A−1AB= =B−1A−1 となるから,(AB)−1=B−1A−1 (4)も同様
【例2】
(解答)次の1次変換について,逆変換の式を求めてください. = 行列について,D=2×3−1×5=1だから 逆行列は−1= したがって,逆変換の式は = |
(復習)【逆行列の求め方】
行列A=について,その行列式D=ad−bcが0で なければ,行列Aの逆行列A−1が存在し A−1= が成り立ちます.
(参考)
【逆行列が存在する場合と存在しない場合の対応の違い】 ○ 行列A=の行列式 D=ad−bcが0でないとき, 行列Aは正則であるといい,座標平面上の点(x, y)から(x', y')への対応は1対1になります.
(1) (x, y)が座標平面上のすべての点をとるとき,(x', y')もすべての点をとります.(全射)
したがって,平面上の任意の(x', y')に対して(全射だから),元の(x, y)がただ一つ(単射だから)存在します.(2) 異なる(x, y)には,異なる(x', y')が対応します.(単射) ○ 行列A=の行列式 D=ad−bcが0であるとき, 行列Aは正則でないと言われ,座標平面上の点(x, y)から(x', y')への対応は1対1になりません.
(1) (x, y)が座標平面上のすべての点をとっても,(x', y')はすべての点をとりません.平面上の一部分になります(全射でない)
したがって,平面上のある(x', y')に対して,元の(x, y)が存在しないことがあります.(元が全射でないから)(2) 異なる(x, y)には,同一の(x', y')が対応する場合があります.(単射でない) 平面上のある(x', y')に対して,元の(x, y)が複数個存在することがあります.(元が単射でないから) ○ 以上のように,1次変換Aによる像(x', y')から原像(x, y)への対応が座標平面上のすべての点(x', y')に対して定義できるのは逆行列が存在する場合に限ります.
【例3】
(解答)1次変換f, gを表す行列が各々 A=, B= であるとき,(f○g)−1を表す行列を求めてください.
f○gを表す行列はABで,その逆変換(f○g)−1を表す行列は(AB)−1=B−1A−1になります.
AB==実際に求めるには,ABを計算してからその逆行列を求めても,B−1 , A−1をそれぞれ求めてからその積を求めても同じになります. その行列式はD=11×(−7)−19×(−4)=−77+76=−1だから (AB)−1== |
=
= = = |
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