■絶対値付関数の積分 ◆要点◆ ・・・ 区間によって異なる関数形となるときは,区間を分けて積分します。 ※ 基本的な使い方は,右図[1]のような場合で,aからbまで積分するときに,途中のcで関数形が変わるとき,まずaからcまでの積分を求め,これにcからbまでの積分を加えます。 |
|
【解説】 原始関数の1つをF(x)とすると 左辺=F(b) - F(a) 右辺=F(c) - F(a) + F(b) - F(c) = F(b) - F(a) これらは等しい。 |
※ 左の解説において,a,b,cの大小関係は前提とされておらず,単にF(c)が計算上消えることによるので,図[2]のようにcがa,bの外側にある場合でもこの公式は成り立ちます。 |
◆絶対値付の関数の積分◆ 絶対値付きの関数の積分は、要注意です。特に、積分してから絶対値を付けたものは,元のものと全く違います。 例 絶対値付きの関数を正しく積分するためには,絶対値記号をはずして、区間ごとに分けて計算します。(次の例題参照) |
■例題 (1) を計算しなさい。 (答案) |x-1|は ア) x<1のとき-x+1 イ) x≧1のときx-1 となるから |
【解説図】 |
(2) を計算しなさい。 (答案) |
【解説図】 |
|
計算式 | ヒント |
|
|
|
(1) x<2のとき,|x−2|=−x+2
(2) x≧2のとき,|x−2|=x−2だから (1) x<−2のとき,|x+2|=−x−2 (2) x≧−2のとき,|x+2|=x+2だから ←ラッキー!一発で! (1) x<−1のとき,|x+1|=−x−1 (2) x≧−1のとき,|x+1|=x+1だから (1) x<1のとき,|x−1|=−x+1 (2) x≧1のとき,|x−1|=x−1だから (1) x<0のとき,|x|=−x (2) x≧0のとき,|x|=xだから |
【助変数を含むとき】
(1)のように積分変数がtで,それとは異なる文字xが積分区間の上端や下端にあるとき,…(1) の積分記号の中では,xは定数,tが変数 積分記号の外では,xが変数,tは存在しない. …(2) の積分記号の中では,xは定数,tが変数 積分記号の外では,xが変数,tは存在しない.
tで積分するときは,xは単なる定数として扱い,できあがったxの式をxの関数とします.
【例】
(解答)をxの簡単な式で表してください. t<1のとき|t−1|=−t+1 t≧1のとき|t−1|=t−1 だから (ア) x<1のとき積分区間0≦t≦xに入るどのtの値に対しても |t−1|=−t+1 となるから
ここでは0≦xの図で説明したが,実際には積分区間の上端が下端よりも小さくても構わない(上から下を引くだけの計算だから)から,x<0でもよい.
(イ) 1≦xのとき積分区間0≦t≦xは,次の2つの区間に分けられる.
i) 0≦t<1のとき|t−1|=−t+1
ii) 1≦t≦xのとき|t−1|=t−1 |
(2)のように積分変数がtで,それとは異なる文字xとの大小に応じて絶対値記号のはずし方を考えるとき
tで積分するときは,xは単なる定数として扱い,できあがったxの式をxの関数とする事情は(1)と同じですが,xが積分区間の中にある場合には,場合分けして積分することになります.
【例】
(解答)をxの簡単な式で表してください. (ア) x<0のとき,積分区間0≦t≦1に含まれるどのtの値もt−x>0を満たすから
xは定数だから値が固定されている.
(イ) 0≦x<1のとき,積分区間0≦t≦1に含まれるtの値のうちxに先に手を出させてから,tは「後出しジャンケン」をする
i) 0≦t<xのとき,t<xだから|t−x|=−t+x
ii) x≦t≦1のとき,t≧xだから|t−x|=t−x (ウ) x≧1のとき,積分区間0≦t≦1に含まれるどのtの値もt−x≦0を満たすから |
【問題2】
t, xは実数とする.関数f(t)を
と定義し, とおく. (2) 関数F(x)を求めよ. (1)(3)(4) 略 (2014年度愛媛大入試問題)
t<1のとき|t−1|=−t+1
t≧1のとき|t−1|=t−1 だから (ア) x<1のとき積分区間0≦t≦xに入るどのtの値に対しても |t−1|=−t+1 となるから (イ) 1≦xのとき積分区間0≦t≦xは,次の2つの区間に分けられる.
i) 0≦t<1のとき|t−1|=−t+1
ii) 1≦t≦xのとき|t−1|=t−1 |
【問題3】
実数xに対して,関数f(x)を
とおく.次の問いに答えよ. (1) 関数f(x)を求め,そのグラフをかけ. (2)(3) 略 (2011年度金沢大入試問題)
(ア) x<0のとき,積分区間0≦t≦2に含まれるどのtの値もt−x>0を満たすから
(イ) 0≦x<2のとき,積分区間0≦t≦2に含まれるtの値のうち
i) 0≦t<xのとき,t<xだから|t−x|=−t+x
ii) x≦t≦2のとき,x≦tだから|t−x|=t−x (ウ) x≧2のとき,積分区間0≦t≦2に含まれるどのtの値もt−x≦0を満たすから |
■[個別の頁からの質問に対する回答][絶対値付き関数の積分について/17.1.5]
短時間でこなせるように、難易度の低い問題から中程度の問題に遷移する形で、問題数を増やしてほしい。
=>[作者]:連絡ありがとう.サブメニューが易しいものから難しいものへの順に並んでいますので,活用してください. |