現在地と前後の項目 ***ベクトルの内積*** /ベクトル内積の定義/ベクトル内積(成分)/ベクトルのなす角(成分から)/ベクトルのなす角(成分から)/|ベクトル|の変形/ベクトル方程式(内積)が表す図形/(各駅停車)ベクトルの内積/Excelを用いた内積の計算/ベクトルの内積と相関係数 /***空間ベクトル*** /空間座標.空間ベクトル(1)/空間座標.空間ベクトル(2)/空間における直線の方程式/空間における平面の方程式/空間における平面と直線/ ○はじめに
ベクトルを表す方法としては
(1) 矢印ベクトル
の2種類があります.右図1のように矢印を使って図形的に表したもの (2) 成分ベクトル −−>a =(3, −4), −−>b =(2, 5, −1)のように成分を並べて表したもの (1)の矢印ベクトルは図形的に考えるときに便利ですが,2次元までが限界で3次元のベクトルは投影図として擬似的に表したものとなっています.4次元以上のベクトルを図形的に考えるのは無理です. 以下においては,主に(2)の成分ベクトルを扱うものとし,矢印ベクトルは必要なときだけ参考にします. 物理的に考えると,3次元ベクトル−−>a =(3, −2, 5)などが空間ベクトルを表していて,4次元ベクトルはこれにさらに時間座標を追加したものか?などと難しく考えるかもしれませんが,数学的には4次元以上のベクトルも単に成分の個数が多くなっているだけで,特別な事は何もありません.100次元,200次元,...などは普通の話です.(コンピュータを使えば簡単にできます) |
図1
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○ベクトルは列ベクトルで表すのが基本 高校の数学でベクトルを成分で表示するときは−−>a =(3, −2), −−>b =(3, −2, 5)のように
• ベクトルの成分は行ベクトルとして横に並べてカンマで区切る.
のが普通です.• ベクトルの名前には矢印を付ける. しかし,コンピュータでベクトルを扱うときは(Excelに限らず他のソフトでも)
• ベクトルの成分は列ベクトルとして縦に並べる.(区切りの記号のカンマはいらない)
右図2の例で国語の得点は,数学記号では• ベクトルの名前は列のラベルとして付け,特に矢印はいらない. −−>k =(89,88,48,88,44,54,54,97,72,67) という10次元のベクトルになりますが,Excelでは列ベクトルとして右図のように入力します.このとき,国語,数学,英語というラベルが各々のベクトルの名前になります. (データベ-ス的な見方をすれば列がフィールド,列ラベルはフィールド名になりますが,これらがベクトル,ベクトルの名前に対応します.右図で1行分の横の並びはデータベース的な見方をすれば1件のレコードですが,各々が数学でのx座標,y座標,...もしくはx1座標,x2座標,...になります.) |
図2
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○ベクトルの演算 2−−>a +3−−>bのようなベクトルの演算の結果を成分で表したいとき,例えば図2のベクトルで国語の2倍と数学の3倍を加えたベクトルE列に表示するには,
• セルE2に =2*B2+3*C2 と書き込みます.
• セルE2をコピーし,E3からE11までに貼り付けます.(相対参照の式が貼り付けられます)
⇒ 各成分の演算によってベクトルの演算を表すということです.
(この演算結果を表すベクトルの列ラベルは,何を表しているか分かるように付ければよい)
【例題1】BMI指数は,体重をkg単位で身長をm単位で表したときに,体重÷身長2で定義され,肥満度を表す目安に使われます.右の表1の9人についてBMI指数が最も高い人を探してください.
(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.灰色の部分も付いてきますが,その部分はExcelに貼り付けてからExcel上で削除してください.) ○ベクトルの大きさ 数学ではベクトル−−>x =(x1 , x2 , x3 , ...)の大きさ|−−>x |は次のように定義されます. |−−>x |= ![]() Excel上で各々の値の2乗を求めるには,例えば =B2 * B2 のように計算してもできますが, |−−>x |2=x12+x22+x32+... が求まりますので,次に
【例題2】右の表2で,10人分の言語能力,理数能力,運動能力を列ベクトルと見なしたとき,ベクトルの大きさが最も大きいものを選んでください.
(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.) |
表1
(解答)
セルD2に =C2/(B2/100)^2 と書き込み,これをコピーしてD3からD10までに貼り付けます.(2乗の演算 ^ は掛け算,割り算よりも優先して行われます) 小数第1位までの表示で,順に 表2
(解答)
上記の表をExcelワークシートの左上端(A1)に貼り付けるものとします. 言語能力(B列)のデータの下端に =SQRT(SUMSQ(B2:B11)) と書き込み,これをC列,D列にもコピー&貼り付けすると,各々11.8,11.2,12.1 となって,運動能力のベクトルの大きさが最大となります. |
○単位ベクトル 大きさが1のベクトルを単位ベクトルといいます.右図3のように,単位ベクトルは無数にあります.
単位ベクトルと間違いやすいものに基本ベクトルがあります.基本ベクトルは,座標軸の正の向きに向いている単位ベクトルのことで,2次元の基本ベクトルは−−>e =(1, 0),−−>f =(0, 1)の2個だけ,3次元ベクトルの単位ベクトルは−−>e1 =(1, 0, 0),−−>e2 =(0, 1, 0),−−>e3 =(0, 0, 1)の3個だけです.
ベクトルを定数倍すると,方向が変わらずに大きさだけ何倍かされます.(正の数を掛ければ同じ向きに何倍かされ,負の数を掛けると逆向きに何倍かされます.)そこで,与えられたベクトル−−>aと同じ向きの単位ベクトルを作るには,その大きさ|−−>a |で割ればよいことになります.
−−>aと同じ向きの単位ベクトルは
![]()
ベクトルの割り算というものは定義されていませんが|−−>a |は単なる数なので,
【例】![]() −−>a =(3, 4)の大きさは ![]() ![]() ![]() ![]() Excel上では小数で表示され(0.6, 0.8)となります.
3次元ベクトル−−>b =(1, 1, 1)の大きさは ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() Excel上では小数で表示され(0.577, 0.577, 0.577)などとなります.
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図3
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【例題3】上の表2で,言語能力を表すベクトルと同じ向きの単位ベクトルを求めてください.
(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.) (解答) はじめに,言語能力を表す列ベクトル(B列にあるものとし,表題「言語能力」は1列目にあるものとする)の大きさを求めます. 右図でB13のセルに =SQRT(SUMSQ(B2:B11)) と書きこみます. 次に,言語能力のベクトルを単位ベクトルに直したものをE列に書き込むものとして列見出しを「言語u」とし,E2に (割り算となる分母のE13はコピー&貼り付けのときに変化しないように絶対参照$B$13とします:ファンクションキーF・4を押します.) 検算を兼ねて,E列のベクトルの大きさが1になるかどうか確かめておくとよいでしょう.
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(解答続き)
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○ベクトルの内積 2つのベクトル−−>x =(x1 , x2 , x3 , ...),−−>y =(y1 , y2 , y3 , ...)の内積は −−>x · −−>y =x1 y1+x2 y2+x3 y3+ ... で定義されます.(対応する成分の積の和になります) 右図5のように,Excel上で要素数が等しい「列と列」「行と行」の積の和を求めるには,
(1) =SUMPRODUCT(範囲1,範囲2)で指定する2つの範囲の要素数は等しくなければなりません.
(2) =SUMPRODUCT(範囲1,範囲2)で指定する2つの範囲は「列と列」「行と行」のようにセルを同じ向きに選んだものでなければなりません. (=SUMPRODUCT(範囲1,範囲2)は,行列の積のように行と列を掛けることには使えません.行と列を掛けたいときは,行列の積を求める関数=MMULT(行の範囲,列の範囲)を使います.)
【例題4】右の表3で,項目1の列ベクトルと項目2の列ベクトルの内積を求めてください.また,標本1の行ベクトルと標本2の行ベクトルの内積を求めてください.
(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.) (解答) 以下,データはワークシートの左上端(A1~D7)に貼り付けるものとします. 項目1の列ベクトルと項目2の列ベクトルの内積は =SUMPRODUCT(B2:B7,C2:C7)で求めることができ(小数第1位まで表示すると)−0.69になります. 標本1の行ベクトルと標本2の行ベクトルの内積は =SUMPRODUCT(B2:D2,B3:D3)で求めることができ(小数第1位まで表示すると)1.92になります. |
図5![]() 表3
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○数学にはなくて統計にはあるもの 数学では1つのベクトル−−>x =(x1 , x2 , x3 , ...)の平均,分散,標準偏差というようなことは考えませんが,統計で扱っている列ベクトルなどは同種のデータを並べたものなので平均,分散,標準偏差などを考えるのが普通です. ○変数の基準化 右図6のように横軸に項目1,縦軸に項目2をとって2次元の散布図によってデータの差異を比較したいときに,各項目のスケール(単位など)や散らばり具合が違うと数字の大きい方の項目の影響を受けやすく,本質的でない要素によって比較が左右されてしまう.このようなことを避けるために,各項目の「平均が0」「標準偏差が1」となるように変数変換を行うことを基準化といいます. 元のベクトル(統計では変数と呼ばれることが多い)の平均をm,標準偏差をσとするとき,元の値(ベクトルの各成分xi)から平均を引いて標準偏差で割ってできる新しい変数が基準化された変数Xiになります. Xi= ![]() 【例】 右の表4がワークシートの左上端(A1~E10)にあるとき,元のベクトル(変数)身長(cm),体重(kg)を基準化するには
(1) 元の変数の平均,標準偏差を求めておきます.(B9に=AVERAGE(B2:B7),B10に=STDEVP(B2:B7),これらをコピーしてC列にも貼り付けます.)
※上記の(3)は=STANDARDIZE(B2,B$9,B$10)によっても行うことができます.この場合でも,あらかじめ平均と標準偏差は求めておく必要があります.(2) 新たに変数を作り,身長s,体重sなどとラベルを付けます. (3) D2に=(B2-B$9)/B$10と書きこみます.この計算式をコピーし,D3~D7,E2~E7に貼り付けます. ※検算を兼ねて,できた基準化変数の平均が0,標準偏差が1になっているかどうか確かめておく方がよいでしょう.
【例題5】次の表の身長と体重のデータを基準化してください.
(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.)
平均は各々159.5,68.6,標準偏差は各々5.8,8.7 となり,これらを使って (元の値−平均)÷標準偏差 を計算すると,右の表5のようになります. |
図6
![]() 表4
表5
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○ベクトルのなす角 2つのベクトルのなす角は,2次元ベクトル,3次元ベクトルについては右図7のように矢印ベクトルの図を用いて考えることができます.(4次元以上のベクトルではこのような図を描くことはできませんが,成分を用いて計算することはできます.) 2つのベクトル−−>a =(a1 , a2 , a3 , ... ),−−>b =(b1 , b2 , b3 , ...)の内積は,2つのベクトルのなす角θを用いて −−>a · −−>b =|−−>a |·|−−>b |cosθ …(1) 成分を用いて −−>a · −−>b =a1b1+a2b2+a3b3+... …(1) と表すことができ,これら(1)(2)が等しいことから, cosθ= ![]() = ![]() ![]() ![]() となります. (この値は角度θではなく,角度の余弦であることに注意.高校数学の初歩では「角度θを求めなさい」という問題も出されますが,Excel上では必要に応じて逆三角関数ACOS(値)により弧度法の角度に直すことができ,さらにDEGREES(ラジアン)により60分法の角度に直すことができます.)
【例題6】右の表6はあるコンビニ・チェーン店の深夜の時間帯におけるパン,おにぎり,ジュースの売れ行きを支店別に集計したものとします(ただし,架空データ).変数(列ベクトル)パンとジュースのなす角を求めてください.
(解答)(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.) cosθ=0.98,θ=0.20(ラジアン),θ=11.46° ○ベクトルのなす角と相関係数 2つの変数(ベクトル)の関連性は通常,相関係数によって調べられます. これを矢印ベクトルの図で言えば,2つの変数(ベクトル)がほぼ同じような向きを向いているとき,これらの変数(ベクトル)はよく似た傾向があると考えることになります.ただし,右図8のように原点の取り方や縮尺の大小により,元のデータからそのまま角度を計算すると,見かけだけよく似ているものと区別がつきませんので,2つのベクトルの相関を調べるときは,各々のベクトルを基準化した(平均0,標準偏差1のデータに直した)ベクトルでその角度を測ります. 【例】 表6のデータを基準化したデータが表7です.このとき,表7から角(の余弦)を求めると パンsとおにぎりs・・・ −0.847 パンsとジュースs・・・ 0.740 おにぎりsとジュースs・・・ −0.595 となって,パンsとジュースsがよく似た売れ行きをしていることが分かります.
※元のデータの(基準化ベクトルでも同じ)相関係数は,ここで求めた基準化したデータのなす角(の余弦)になっています.
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図7
![]() 表6
![]() 表7
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○ベクトルの垂直条件
【要点】
(解説)2つのベクトルが垂直 ⇔ 内積が0 Excel上では 2つの列ベクトルが垂直 ⇔ SUMPRODUCT(列1,列2)=0 2つのベクトルのなす角がθ=90°であることはcosθ=0と同じであるので,ベクトルの垂直条件は内積を用いて−−>a ·−−>b =0と書くことができます.
−−>a ·−−>b =|−−>a |·|−−>b |cosθ
だから θ=90° ⇔ cosθ=0 ⇔ −−>a ·−−>b =0 ここで −−>a ·−−>b =a1b1+a2b2+a3b3+... だから θ=90° ⇔ a1b1+a2b2+a3b3+...=0
数学では−−>a ·−−>b =0であっても,理論上は|−−>a |=0の場合や|−−>b |=0の場合もあると言いますが,統計データでは|−−>a |=0や|−−>b |=0(すべての成分が0)であるかどうかは見れば分かります.
【例】右の図10において,調査項目1と調査項目2のなすベクトルが垂直であるかどうかは, ○2つの変数の独立・無相関 数学で垂直,直交(直角に交わる)ということを,統計では独立,無相関といいます.
【要点】
2つのベクトル(変数)が独立,無相関,垂直,直交であるための条件 |
図9
![]() 図10 ![]() 図11 ![]() |
【問題】右の表8のデータについて,以下の問いに答えてください.
(右の表を画面上でドラッグ→コピーし,Excel上に単純に貼り付けるとデータを転記できます.以下においては,ワークシートの左上端に貼り付けられたものとして解説)
以下,選択肢の中から最も近い値を選んでください.
(1)項目1が表すベクトルの大きさを求めてください.
=SUMSQ(B2:B11)によりベクトルの大きさの2乗が得られ,その正の平方根 =SQRT(SUMSQ(B2:B11))により,20.1が求まります.近い値は20
(2)項目1が表すベクトルをその大きさで割って単位ベクトルに直したとき,No.1の成分を求めてください.
(1)で求めたベクトルの大きさで各成分を割ると 0.447となります.近い値は0.45
(3)項目1が表すベクトルと項目2が表すベクトルの内積を求めてください.
=SUMPRODUCT(B2:B11,C2:C11)により−3.38となります.近い値は−3.4
(4)項目1が表すベクトルを基準化したとき,No.1の成分を求めてください.
項目1の平均と標準偏差を求めておき,=STANDARDIZE(B2,平均,標準偏差)で求めます.
=(B2−平均)/標準偏差でも求まります.1.098となって,近い値は1.1 |
表8
項目2と項目3の内積は9.72,項目2の大きさは18.25,項目3の大きさは15.40,=9.72/(18.25*15.40)=0.03となります.
(6)項目2と項目3を基準化したとき,それらのベクトルのなす角の余弦(cosθ)を求めてください.
基準化したベクトルは大きさが1なので,単に内積を求めると余弦になります.0.0755だから近い値は0.08
(7)元の項目3のNo.1の値を少し変えると,項目2と項目3は「ほぼ垂直」になります.項目3のNo.1の値が次のどの値となるとき垂直に近くなりますか.(難しく考えずに,内積を表す式を作っておいて,選択肢の値を試しに代入してください.)
=SUMPRODUCT(C2:C11,D2:D11)の式を作っておいて,選択肢の値を代入すると,−6.464のときにほぼ0になります.
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