→ 携帯版は別頁
大きな区分
高校数学 >> 高校数学Ⅱ・B>> ベクトルの内積,空間ベクトル
現在地と前後の項目

***ベクトルの内積***
/ベクトル内積の定義/ベクトル内積(成分)/ベクトルのなす角(成分から)/ベクトルのなす角(成分から)/|ベクトル|の変形/ベクトル方程式(内積)が表す図形/(各駅停車)ベクトルの内積/Excelを用いた内積の計算/ベクトルの内積と相関係数
/***空間ベクトル***
/空間座標.空間ベクトル(1)/空間座標.空間ベクトル(2)/空間における直線の方程式/空間における平面の方程式/空間における平面と直線/
ベクトルの内積
[解説]
● ベクトルのなす角
2つのベクトルa,bの始点を原点Oに重ねて,OA=a,OB=bとするとき,AOB=θをベクトルのa,bのなす角という。ただし,0°≦θ≦180°とする。

● ベクトルの内積の定義

2つのベクトルa=(a1,a2),b=(b1,b2)のなす角をθとするとき,ベクトルa,bの内積abを次の式で定義する。

ab=∣abcosθ・・・(1)
ab=a1b1+a2b2・・・(2)

上の定義において,(1)は矢印で表される図形ベクトルに対応し,(2)は成分表示に対応します.
a,bのようにそれぞれのベクトルa,bの左右を絶対値記号で囲んだものは,ベクトルの大きさ(長さ)を表します.
高校の教科書では,初めに矢印を使ってベクトルを図形的に導入しますので,(1)を定義として(2)を結果とします.
しかし,このページの少し後の方(※)に書いていますように,成分で表したベクトルを先に習った場合,(2)を定義として(1)をその性質とすることもできます.

1.  図形で表されたベクトルの内積
図1
【例】
図1の場合
a∣=2,b∣=3と読み取ります.
次に,これら2つのベクトルの始点が重なっていることを確かめます.
始点が重なった状態で,2つのベクトルのなす角はθ=60°だから
ab=2×3×cos60
とします.
数学Ⅰで習った三角比の値cos60=12を使って,結果を次のようにまとめます.
ab=2×3×cos60=6×12=3
図2
図2の場合
a∣=1,b∣=2と読み取ります.
次に,これら2つのベクトルの始点が重なっていることを確かめます.
始点が重なった状態で,2つのベクトルのなす角はθ=90°だから
ab=1×2×cos90
とします.
数学Ⅰで習った三角比の値cos90=0を使って,結果を次のようにまとめます.
ab=1×2×cos90=2×0=0
この例では,a∣=1,b∣=2の値は全く利用されていません.
すなわち,cos90=0だから,2つのベクトルの大きさ(長さ)が何であっても,垂直な2つのベクトルの内積は0になります.
この結果は,ベクトルを習うときに何度も登場します.
図3
図3の場合
a∣=2,b∣=1と読み取ります.
次に,これら2つのベクトルの始点が重なっていることを確かめます.
この問題で2つのベクトルのなす角はだと考えてはいけません.ここまでの例で,始点を確かめる話は,何の役に立っているのか?と疑問に思う人もあるかもしれませんが,始点を重ねると2つのベクトルのなす角が180°だと分かります.
始点が重なった状態で,2つのベクトルのなす角はθ=180°だから
ab=2×1×cos180
とします.
数学Ⅰで習った三角比の値cos180=1を使って,結果を次のようにまとめます.
ab=2×1×(1)=2
一般に,a,bが零ベクトルでないとき,a,bは大きさ(長さ)だから,つねに
a∣>0,b∣>0
が成り立ちますが,90<θ180のとき
cosθ<0
だから
ab=∣abcosθ<0
になります.
すなわち,2つのベクトルのなす角が90°よりも大きいとき(鈍角のとき),内積は負の値になります.

≪例≫
 図形で表されたベクトルの内積を求めるには,
(1) 2つのベクトルa,bの大きさ(=長さ)|a||b|を求める
(2) 2つのベクトルa,bのなす角θを求めてcosθを求める
(3) 定義に従って,ab=|a||b|cosθに当てはめる
これだけです.
 ただし,2つのベクトルのなす角を求めるときに,上で述べた図1~図3のように始点がそろっているときはそのまま測れますが,次の図4~図6のように始点がそろっていないときは
「始点がそろうように移動させてから測ること」
「角度は0°≦θ≦180°で求めること」
に注意が必要です.
図4
(1) |a|=2|b|=4
(2) cos45=12
(3) ab=|a||b|cosθ
=2×4×12=42…(答)

図5
(1) |a|=2|b|=2
(2) cos120=12
(3) ab=|a||b|cosθ
=2×2×(12)=2…(答)

図6
(1) |a|=2,|b|=2
(2) cos90=0
(3) ab=|a||b|cosθ=0…(答)


《問題》=== 図形で表されたベクトルの内積 ===
 左から問題を選び,次にその答を右から選びなさい.なお,次の余弦の値を参考にしてよい.
[ルール]
○「左から問題を一つクリック」し,続けて「右からその答をクリック」すると消えます.間違えば消えません.
○間違った場合,下に参考答案が出ます.














2 成分で表されたベクトルの内積
≪定義≫
 成分で表されたベクトルの内積を求めるには,
(1) 2つのベクトルa=(a1,a2),b=(b1,b2)の対応するx成分同士,y成分同士の積を求める
a1×b1,a2×b2
(2) それらの和を求める
ab=a1×b1+a2×b2
これだけです.
≪例≫
a=(3,4),b=(6,5)のとき
ab=3×6+4×(5)=1820=2
a=(2,3),b=(3,4)のとき
ab=2×3+3×(4)=2343=23
##簡単な話に見えますが,間違う生徒は多い##
◎内積の正しい計算(相方と掛け合う)
a=(1, 2)b=(3, 4)のとき
ab=1×3+2×4
××内積の間違った計算(自家受粉になっている)
a=(1, 2)b=(3, 4)のとき
ab=1×2+3×4

《問題》=== 成分で表されたベクトルの内積 ===
 次の2つのベクトルの内積abを求めなさい.
(正しいものを下から選べ)
正しいと思う選択肢をクリック(タップ)すれば,採点結果と解説が出ます.解答しなければ解説は出ません.
(1) a=(1,2),b=(3,1)
−4 −3 −2 −1 0 1 2 3 4 5
(2) a=(0,4),b=(2,1)
−4 −3 −2 −1 0 1 2 3 4 5
(3) a=(2,3),b=(3,2)
−4 −3 −2 −1 0 1 2 3 4 5
(4) (2,1),b=(2,2)
−4 −3 −2 −1 0 1 2 3 4 5
(5) a=(1,2),b=(2,0)
−4 −3 −2 −1 0 1 2 3 4 5

※少々込み入った話…たぶんためになるが,混乱しそうなら読み飛ばしてもよい
≪なぜベクトルの内積をab=|a||b|cosθと定義するのか?≫
 この話は,高校の数学の教科書を何冊か見ても明確に書かれたものはなく,自分が高校で教えていたときも踏み込んでしまうと相手によっては余計に混乱してしまうおそれのであえて触れなかった.
 はじめて習うときには,「なぜsinθでなくてcosθなのか」「そもそもなぜそのように定義するのか」「そんな不自然な定義をしてどんな使い道があるのか」など疑問を持つことがある.(この段階ではまだエネルギーや力積は習っていない)
 筆者が高校生のときは,頭ごなしにab=|a||b|cosθだと言われると,わだかまりがあって勉強がしばらく停滞した覚えがあるので,高2段階でそれなりに納得のいく説明を試みる.
 本当は,成分表示a=(a,b),b=(c,d)において,
ab=a×c+b×d(積の和)…(1)
のように定義すると,3次元になっても,4次元になっても,いろいろと使えるので(1)になるようにしたいというのが本音です.そこで,(1)になるようにするには
ab=|a||b|cosθ…(2)
のように定義する必要があるのです.
 まず,a=(a,b)のとき,右図のように直角三角形を書いて三平方の定理を思い出すと分かるように,
|a|=a2+b2…(3)
|a|2=a2+b2…(4)

 次に,右図のような三角形について余弦定理を思い出すと
z2=x2+y22xycosθ…(5)
だから
|ab|2=|a|2+|b|22|a||b|cosθ…(6)
これを(5)を使って成分で表すと
(ac)2+(bd)2=a2+b2+c2+d2
2a2+b2c2+d2cosθ
簡単にすると
ac+bd=a2+b2c2+d2cosθ…(7)
(3)を用いて(7)の右辺を表すと
ac+bd=|a||b|cosθ…(8)

 以上のように,ベクトルの内積を(1)のように成分で定義すると,(2)のようにab=|a||b|cosθになるのです.
 教科書では,通常,内積について(2)のように図形的に定義し,成分に直す方法は後から教えるので,上のような説明を行う機会は少ない.
 ベクトルを図形から定義すれば,数学・理科以外での使い道が分からなくなるが,成分で定義すれば列になったデータは何でもベクトルと見なせる.今日では,生徒は4次元,5次元どころか数十,数百次元のデータでも普通に処理しており,それがベクトルで,各成分の積の和が内積なのだと言えばもっと関心を持ってもらえるかもしれない.
 価格個数
商品15457
商品28686
商品310850
商品427031
商品536740
商品654018
 合計48644
左の表において,
価格は(縦に読む)6次元のベクトル,
個数は(縦に読む)6次元のベクトルで,
その内積(積の和:Excelで言えば=SUMPRODUCT( ))が合計の売上高を表します.
※統計では,数学とはちょっと違って「上端の表題をベクトルの名前」とし,特に→を付けずに日本語漢字,ひらがな何でもありで「ベクトルの名前」に使います.
この例では(価格)·(個数)は内積になり,¥48,644です.


...(PC版)メニューに戻る
お疲れ直しはYouTubeで(外部リンク)
∀∅ 太陽がくれた季節.青い三角定規 ♪♫
∀∅ コーヒールンバ 西田佐知子 ♪♫
■このサイト内のGoogle検索■

△このページの先頭に戻る△
【 アンケート送信 】
… このアンケートは教材改善の参考にさせていただきます

この頁について,良い所,悪い所,間違いの指摘,その他の感想があれば送信してください.
○文章の形をしている感想は全部読ませてもらっています.
○感想の内で,どの問題がどうであったかを正確な文章で伝えていただいた改善要望に対しては,可能な限り対応するようにしています.(※なお,攻撃的な文章になっている場合は,それを公開すると筆者だけでなく読者も読むことになりますので,採用しません.)


質問に対する回答の中学版はこの頁,高校版はこの頁にあります
■[個別の頁からの質問に対する回答][ベクトルの内積について/17.5.18]
a,bの文字が大きくて見づらいです
=>[作者]:連絡ありがとう.その頁は毎週3000人以上の人が見る人気の頁で,悪い評価は少ないです.文字が小さくて見づらいという意見は他の頁では時々ありますが,文字が大きくて見づらいとは?・・・作業時間に余裕ができたら考えます.
■[個別の頁からの質問に対する回答][ベクトルの内積について/17.1.16]
いやー時代が変わりましたね。素晴らしいの一言です。私は第2世代ベビーブームの薬剤師です。 人生をやり直した気持ちでやってみました。今後もっともっと素晴らしいサイトを構築してくださいませ。
=>[作者]:連絡ありがとう.
■[個別の頁からの質問に対する回答][ベクトルの内積について/16.11.15]
左と右から選んで消していく問題について、誤タップから選択を消す方法がないので、再度タップすると選択中の赤枠が消えるなどあると使いやすい。
=>[作者]:連絡ありがとう.問題の選び直し(=いわゆる迷い箸のようなもの)については考えておきます.