(未知数が2個:の場合の例) …(1) …(2) (未知数が3個:の場合の例) …(1) …(2) …(3) このページでは,
(A) 加減法による解き方
を扱う.なお,中高で習うものとして他に2次以上の連立方程式も扱える代入法があるが,ここでは扱わない.(B) 行基本変形(掃き出し法)による解き方 (C) クラメル(クラーメル)の公式(法則)による解き方 (D) 逆行列による解き方 連立1次方程式には,「解がただ1通りに決まる問題」「解が無数にある問題=不定解になるもの」「解が存在しない問題=不能解になるもの」があるが,各々の解き方で解けるものと解けないものは,次の表の通り.
そこで実際上は,クラメルの公式,逆行列を試みて,それらでできない問題を行基本変形で解くという方針で臨むとスマートに決まる. |
(A) 加減法による解き方
加減法による解き方は,方程式を横に見て,係数が0になってほしい未知数を決めることからスタートします. …(1)
…(2)たとえば,この連立方程式では(1)のyの係数が0になったら,x=...の形に解けていいのになと考えます.(2)のyの係数でもよいが,同じことなので,ここでは(1)のyに目を付ける. (1)×5+(2)×3で新しい式を作るとyの係数が0になって消える. xが求まったら,(1)ないし(2)にその値を代入すると,残りのyの値も求まる. ←(1) 結局,…(答) 未知数が3個の場合は,次の流れの中で現在地をはっきりと意識して進めることが重要です.(特に,赤枠で示したステップ)
(解説) 連立方程式(1)(2)(3)から1文字を減らして,未知数2個,方程式2個の連立方程式にすることを目指します.…たまたま,直接1文字に行けそうな場合でも,後で混乱することが多いので,確実に未知数2個,方程式2個の連立方程式を作ることが重要です. この問題ではzの係数がそろっているので,(1)+(2), (2)+(3)を作ると,上の表の(4)(5)になります.
このとき,(1)−(3)を作っても新しい式ができるからといって,も付け加えるのは混乱の元です.
未知数が4個の場合も,同様にして(1)+(2), (2)+(3)から(1)−(3)の内容はすでに言えています.((1)+(2)と(1)−(3)の組合わせにするのはよい) (未知数4個,方程式4個)→(未知数3個,方程式3個)→(未知数2個,方程式2個)→(未知数1個,方程式1個) →(解1個)→(解2個)→(解3個)→(解4個) の流れを作ると解けます. |
(B) 行基本変形(掃き出し法)による解き方
※行基本変形(掃き出し法)の解説は,このページにあります
行基本変形による解き方は,加減法による解き方を組織的に行うものです.特に,連立方程式の係数行列を縦に(列方向に)見ると,行われていることの意味が分かります.
行列の変形では「列基本変形」もありますが,連立方程式を解くときは,列基本変形は使えないことに注意.例えば,係数行列の1列目と2列目を入れ換えるといった操作を行うと,xとyの解が入れ替わってしまう!
例えば,次の連立方程式(1)(2)(3)はだから,連立方程式を解くときは「行基本変形」で解く …(1) …(2) …(3) を変形して の形にすれば,連立方程式は解けたことになります. (1)(2)(3)の連立方程式は,行列を使って,次の形に書ける. これは,次の形の「拡大係数行列」にまとめて書かれることが多い. この形で書けば,上記の連立方程式は,左辺の係数行列が単位行列である次の形になれば解けたことになる. 加減法で連立方程式を解くときは,次の操作を行う.これを連立1次方程式の「基本変形」という
@) ある式を別の式と入れ替える.
連立方程式の1つの式というのは,横に並んだ行だから,これを行列で書くと,次の3つの操作にまとめられる.A) ある式を0でない定数倍する. B) ある式を何倍かして別の式に加える. これを「行基本変形」という.
@) ある行を別の行と入れ替える.
A)B)はよく使うので特に説明を要しないが,@)は次の場面で必要になる.A) ある行を0でない定数倍する. B) ある行を何倍かして別の行に加える すなわち のように,対角成分を順に1に変形していく過程において,この例の場合のように(1, 1)成分が0になっていると,何倍しても1にならない.そこで,2行目と1行目(3行目と1行目でもよい)を入れ換える操作を行う.
1行目も2行目も3行目も(要するにすべての行で)1列目の係数が0のときは,入れ換えても目標は達成できないが,そのような問題ではどのxにも0が掛けられていることになり,xは不定になる.[逆行列が存在しない]
(行基本変形による解き方:例1)
◎自分が1になったら,縦にある他の成分を消せる(0にできる)ところがポイントです
(1, 1)成分を1にするために,1行目の各成分を2で割る 2行目から1行目の4倍を引く 3行目から1行目の6倍を引く (2, 2)成分を1にするために,2行目の各成分を−11で割る 1行目から2行目の3/2倍を引く 3行目に2行目の16倍を足す
◎一度0になった列は,それ以降の計算で他の行に影響しないところがミソ
(3, 3)成分を1にするために,3行目の各成分を26/11で割る1行目から3行目を引く |
(行基本変形による解き方:例2) 次の連立1次方程式を行基本変形によって解く 1行目と2行目を交換する←(1, 1)成分を1にするため
2行目から1行目の2倍を引く,3行目から1行目の4倍を引く,4行目から1行目の3倍を引く
2行目を−5で割る,3行目を3で割る
1行目から2行目の4倍を引く,3行目から2行目の−5倍を引く,4行目から2行目の−5倍を引く
3行目と4行を入れ替える,さらに3行目を−1倍する
1行目から3行目の6倍を引く,2行目から3行目の−2倍を引く,4行目から3行目の−5倍を引く
4行目を3で割る
1行目に4行目の4倍を加える,2行目から4行目の2倍を引く
が解 |
(C) クラメルの公式による解き方
※クラメルの公式の解説は,このページにあります
クラメルの公式は,係数行列が正則行列であるとき(行列式の値が0でないとき,逆行列が存在するとき)に利用することができます.【未知数が2個の連立1次方程式の場合】 ax+by=p cx+dy=q すなわち の解は(ad−bc≠0のとき) となる. 【未知数が3個の連立1次方程式の場合】 ax+by+cz=p dx+ey+fz=q gx+hy+iz=r すなわち の解をクラメールの公式を使って書くと(分母が0でないとき) ※左辺の係数行列から成る行列式を分母とする.xの値を求めるには,係数行列の1列目(xの係数)を右辺のベクトルに変えた行列式を分子にする.yの値を求めるには,係数行列の2列目(yの係数)を右辺のベクトルに変えた行列式を分子にする.zも同様 …(1) …(2) …(1) …(2) …(3) |
(D) 逆行列による解き方
※逆行列の求め方は,このページにあります
行く行列を用いて連立1次方程式を解く方法は,係数行列が正則行列であるとき(行列式の値が0でないとき,逆行列が存在するとき)に利用することができます.【未知数が2個の連立1次方程式の場合】 ax+by=p cx+dy=q すなわち (ad−bc≠0のとき)の両辺に係数行列の逆行列を掛けると ここで,逆行列と元の行列の積は単位行列()になるから となる. したがって が解を表す. 【未知数が3個の連立1次方程式の場合】 同様にして,未知数が3個の場合も (係数行列の行列式が0でないとき)の両辺に係数行列の逆行列を掛けると が解となる. |
…(1) …(2) とおくと …(1) …(2) …(3) |
不定解になる問題=解が無数にある問題
初めにまとめたように,不定解になる問題は,加減法,行基本変形で解けるが,クラメルの公式や逆行列では解けない.(係数行列の行列式が0になって,逆行列が存在しない)
…(1) …(2) (2)式は(1)式を2倍したものだから,実際には方程式は1つしかない. を満たすx,yはすべて解となる. yを媒介変数tとすると (は任意の実数) ※xを媒介変数にして,次の形で答えてもよい (は任意の実数) ※適当に変形して,次の形で答えることも可能 すなわち (は任意の実数) (行基本変形による解) (1, 1)成分を1にするために1行目を2で割る 2行目から1行目の4倍を引く この拡大係数行列の2行目はyが任意であることを示しているから
は,任意のyの値について成り立つから
(は任意の実数) |
…(1) …(2) …(3) この連立方程式をよく見ると,(3)は(1)(2)式から作れる((1)+(2)=(3)になっている).だから,実際には未知数が3個で方程式が3個になっている. 方程式の個数が未知数の個数よりも少ないときは,どれか1つの未知数を媒介変数に選べばよい …(1) …(2) この形から,左辺の2つの未知数x,yについて解く(結果はzを用いて表す) zを媒介変数tにすると (は任意の実数) (行基本変形による解) 2行目から1行目の2倍を引く,3行目から1行目の3倍を引く (2, 2)成分を1にするため2行目の符号を逆にする 1行目から2行目の3倍を引く,3行目から2行目の−1倍を引く 3行目はzがどんな値であっても成り立つから,は任意の実数とおく. 行列で書かれていることを方程式に直すと (は任意の実数) したがって (は任意の実数) |
媒介変数が2個になる問題
…(1) …(2) …(3) 未知数が4個あるから,4行目を追加して係数をすべて0にする.これにより,は媒介変数になる.
すなわち (は任意の実数) |
不能解になる問題=解が存在しない問題
(1) 未知数が1個の場合のように,xのどんな値に対しても左辺が0になるのに,右辺の値として0でないものが指定されていれば,解は存在しない. 一般に次の形の方程式は不能解になる(解は存在しない) …(@) …(A) のように,(@)式と(A)式が矛盾する形になっているとき((@)式を満たせば(A)式は満たせない.逆も同様),この連立方程式を満たす解はない. 一般に, において, かつ において,分母が0,分子が0でない形になり,解は存在しない. 行基本変形で見れば,
どんなx,yを持ってきても成り立たない式になっている. かつ 行基本変形で見れば,
どんなx,yを持ってきても成り立つ式になっている. |
よって,解は存在しない
よって,解は存在しない |
まとめの問題
以下においては,次の解き方に絞って例を示す.
1. 係数行列の行列式が0でないとき(ただ1組の解になる問題)
クラメルの公式で解く
2. 係数行列の行列式が0であるとき(不定解,不能解になる問題)
行基本変形で解く
であるから,解はただ1組になる. クラメルの公式により になる. 行基本変形で解く
とすると (は任意の実数) ※結果のまとめ方は,解答者の好みに応じて,様々な形が可能 と変形すれば,次のように整数係数で表せる (は任意の実数) になる. 行基本変形で解く 2行目に1行目の2倍を加える
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であるから,解はただ1組になる. クラメルの公式により 分子は 分子は 分子は になる. 行基本変形で解く
とおくと (は任意の実数) になる. 行基本変形で解く
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