以下においては,これらの基本性質のうちで,主に次の2つを使って,文字式の変形を行う.
【行列式の基本性質】
(A) 行列式の1つの行を定数(k)倍すると,行列式の値はk倍になる. 行列式の1つの列を定数(k)倍した場合も同様に,行列式の値はk倍になる. (B) 行列式の1つの行に他の行の定数倍を加えても,行列式の値は変わらない. 行列式の1つの列に他の列の定数倍を加えた場合も同様に,行列式の値は変わらない. |
【例A】 【例B】 これらの性質を利用して,1つの行あるいは1つの列にできるだけ多くの0を作り,余因子展開を行うことによって次数を下げることを目指す. |
【例題1】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第2行をでくくり出す 第3行をでくくり出す 第2行−第1行,第3行−第1行 第1列に沿って余因子展開 第1行をでくくり出す 第2行をでくくり出す 第2行−第1行 第1列に沿って余因子展開 …(答) ※一般に,Excel, Excel Online, Googleスプレッドシートなどの表計算ソフトで,文字係数を含む行列に対して行列式を求めるのは無理です.wxMaximaを使えば,文字係数を含む行列に対して行列式を求めて,展開や因数分解を行うことができる. 例えば,この問題では, ●1 「代数→手入力による行列生成→行数2,列数3,タイプ:一般,変数名:Aなどとする→行列の入力(空欄移動はタブキーを押すのが便利)1,1,1,x,x^2,x^3,y,y^2,y^3→OK」 ●2 「代数→行列式の計算」によりdeterminant(%);というコマンドが入り,行列式の展開式になる ●3 「式の変形→因数分解」によりdeterminant(%);というコマンドが入り,因数分解の結果が得られる. 筆算で数学的な考え方を身に着けるとともに,コンピュータを使って点検することも重要. ※以下の問題についても,同様 |
【問題1】
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行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
一般に第2行−第1行,第3行−第1行 第1列に沿って余因子展開 第1行をでくくり出す 第2行をでくくり出す 第2行−第1行 第1列に沿って余因子展開 …(答) もしくは,その転置行列の行列式 は,Vandermonde[ヴァンデルモンド, ファンデルモンド]の行列式と呼ばれ,Vnもしくはで表される. はの差積と呼ばれ,例えば になる. |
【例題2】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第2列−第1列, 第3列−第1列 第1行に沿って余因子展開する 第1列をでくくり出す 第2列をでくくり出す 第2列−第1列 第1行に沿って余因子展開する |
【問題2】
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行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第2行−第1行, 第3行−第1行 第1列に沿って余因子展開する 第1行をでくくり出す 第2行をでくくり出す 第2行−第1行 (2, 2)成分を因数分解する 第2行をでくくり出す |
【例題3】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第2行−第1行, 第3行−第1行, 第4行−第1行 第1列に沿って余因子展開する 第1列に沿って余因子展開する |
【問題3】
解答を見る解答を隠す
行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第2行−第1行, 第3行−第2行, 第4行−第3行 第2行に沿って余因子展開する 第2行に沿って余因子展開する 第2行に沿って余因子展開する |
【例題4】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式の値を計算してください. 第2行−第1行× 第2行に沿って余因子展開する |
【問題4】
解答を見る解答を隠す
行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第2行−第1行, 第3行−第1行, 第4行−第1行 第1列に沿って余因子展開する 第1行をでくくり出す 第2行をでくくり出す 第3行をでくくり出す 第1行に沿って余因子展開する 第1行に沿って余因子展開する |
【例題5】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第2行−第1行, 第3行−第1行, 第4行−第1行 第2行をでくくり出す 第3行をでくくり出す 第4行をでくくり出す 第1行+第3行× 第1列に沿って余因子展開する 第1列−第2列 第3行に沿って余因子展開する |
【問題5】
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行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第1列に第2列と第3列を加える 第1列をでくくり出す 第2行から第1行を引く,第3行から第1行を引く 第1列に沿って余因子展開する [参考] 展開式は、サラスの方法で考えると見るだけでできる. 因数分解公式(展開公式)から,これらが一致することが分かる. |
【例題6】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第1列に第2列と第3列を加える 第1列をでくくり出す 第2行から第1行を引く,第3行から第1行を引く 第1列に沿って余因子展開する [参考] 前問の結果と比較すると が成り立つことが分かる.このことは,次の変形によっても示すことができる.
【行列式の基本性質】(C)
行列式のある列が2つの列の和であれば,行列式の値はをそれぞれで置き替えた2つの行列式の和に等しい. |
第1列を分けると 第1項は
【行列式の基本性質】(D)
この後半は第1列と第3列が等しいから,0となって消える.2つの列が等しい行列式の値は0になる 前半を第2列で分けると,同様にして の後半は第2列と第3列が等しいから,0となって消える. 結局,第1項は に等しい. 同様にして,第2項は に等しいから,元の式は,次の和に等しい
【行列式の基本性質】(E)
2つの列を入れ替えると符号が変わる |
【例題7】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第1列に第2列と第3列を加える 第1列に沿って余因子展開する |
【問題7】
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行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第2行に第1行を加える,第3行に第1行を加える 第2行を2でくくり出す 第3行を2でくくり出す 第1行から第2行を引く 第1行から第3行を引く 第1列に沿って余因子展開する |
【例題8】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第1列に第2列と第3列を加える 第1列をでくくり出す 第2行から第1行を引く, 第3行から第1行を引く 第1列に沿って余因子展開
【問題8】
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行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第1行から第3行を引く, 第2行から第3行を引く 第1行をでくくり出す 第2行をでくくり出す 第3行から第1行の倍を引く 第1列に沿って余因子展開 |
【例題9】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第1行から第2行と第3行を引く 第1行を−2でくくり出す 第2行から第1行を引く, 第3行から第1行を引く 第1列に沿って余因子展開 |
【行列式の基本性質】(D)
2つの列が等しい行列式の値は0になる. 2つの行が等しいときも同様.
【例題10】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式の値を計算してください. 第3列に第2列を加える 第3列をでくくり出す 第1列と第3列が等しいから,行列式の値は0になる |
【問題10】
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行列式の基本性質を用いて,次の式の値を計算してください.
(解答)
第4行に第2行と第3行を加える 第4行をでくくり出す 第1行と第4行が等しいから,行列式の値は0になる |
【例題11】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第2列から第1列を引く, 第3列から第1列を引く 第2列をでくくり出す 第3列をでくくり出す 第1行に沿って余因子展開する |
【問題11】
解答を見る解答を隠す
行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第2行から第1行を引く, 第3行から第1行を引く 第2行をでくくり出す 第3行をでくくり出す 第3列に沿って余因子展開する 第2行から第1行を引く |
【例題12】
(解答)行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください. 第2行から第1行を引く, 第3行から第1行を引く 第2行をでくくり出す 第3行をでくくり出す 第1列に沿って余因子展開する 第2行から第1行を引く |
【問題12】
解答を見る解答を隠す
行列式の基本性質を用いて,次の式を因数分解してください.
(解答)
第2列から第1列を引く, 第3列から第1列を引く 第2列をでくくり出す 第3列をでくくり出す 第3列から第2列を引く 第3列をでくくり出す 第3行から第2行を引く 第3列n沿って余因子展開する |