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== クラメルの公式 ==
 このページでは,連立1次方程式の解き方のうちで「クラメルの公式」と呼ばれる解き方を具体例を用いて解説し,簡単な連立方程式が解けるようになることを目標とする.
 内容は大学の基本レベルで,行列式の計算を利用する.
 クラメルの公式が成り立つことの証明は,別のページに書いてあります.
2x+5y=9 …(1.1)
3x−4y=2
 この2元連立1次方程式の解は,係数行列の行列式が0でないとき,次のように係数行列の行列式の割り算で表されるというのが「クラメルの公式」です.
 (1.1)の左辺の係数行列の行列式を
25
3−4
とし,次にxの係数を右辺のベクトルに入れ替えた行列の行列式を
95
2−4
とすると
95
2−4

25
3−4

と求めることができる.
同様にして,yの値を求めるには,yの係数を右辺のベクトルに入れ替えた行列の行列式
29
32
を使って
29
32

25
3−4

と求めることができる.
2×2行列の行列式は

のように計算するので,上記のx, yの値は,次のようになる.


以上により,2元1次連立方程式(1.1)の解は,(x, y)=(2, 1)となる.
ちょっと一息
 スイス人cramerの名を英語読みすればクレイマーになるが,文句を言う人claimerとは違い,商人という意味らしい.
 外国人の名前をカタカナ表記にするとバラバラに分かれるが,手元にある線形代数の教科書10冊の中では,クラメル5冊,クラーメル3冊,クラメール2冊とクラメルが一番多いので,このページではクラメルに揃えることにした.
 この公式はクラメルが1748年に出版した代数学の書物に書かれていたので,後にクラメルの公式と呼ばれるようになったが,実際にはマクローリンがそれよりも数十年前に見つけていたと言われている.
【要点1】
(1) 連立方程式
ax+by=p
cx+dy=q
は,係数行列の行列式
ab
cd
=ad−bc

が0でないとき,次の形で解が求められる.これをクラメルの公式という.
pb
qd

ab
cd

ap
cq

ab
cd

 xを求めるとき,係数行列のxの係数を右辺の定数ベクトルに書き換えたものを分子にする.
 yを求めるとき,係数行列のyの係数を右辺の定数ベクトルに書き換えたものを分子にする.
(2) 係数行列の行列式ad−bcが0になる場合は,この公式では解は求まらない.(行基本変形など別の方法を使うとよい)

【例題1.2】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
x+2y=8
−2x+y=−1
(解答)
82
−11

12
−21

分母は,
分子は,

18
−2−1

12
−21

分母は,
分子は,

以上により,連立方程式(1.2)の解は,(x, y)=(2, 3)となる.
【例題1.3】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
3x+y=8
2x−3y=9
(解答)
81
9−3

31
2−3

分母は,
分子は,

38
29

31
2−3

分母は,
分子は,

以上により,連立方程式(1.3)の解は,(x, y)=(3, −1)となる.

【問題1.4】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
3x+5y=2
2x+3y=3
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【問題1.5】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
2x−3y=8
4x−5y=14
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【問題1.6】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
2x+5y=1
3x+4y=2
解答を見る解答を隠す
【問題1.7】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
−2x+5y=1
3x+y=−2
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[3次の行列式の求め方:簡単に復習]
(A) 3次正方行列の行列式の値を求める「サラスの方法」と呼ばれる覚え方がある(sarrus[フランス人,人名]).
(B) ただし,サラスの方法は4次以上の場合には適用できないので,ここでは余因子展開によって行列式の値を求める方法も解説する.
(A) サラスの方法

=a11a22a33+a12a23a31+a13a32a21
−a31a22a13−a11a23a32−a21a12a33
(B) 余因子展開では,まずij列の成分に(−1)i+jの符号を持たせる.要するにi+jが偶数ならば正,奇数ならば負の符号となるから,1行1列の成分を正として,チェック模様に交互に符号を付けることになる.
++
+
++
 次に,どこか1つの列または1つの行に沿って展開して,n次の行列式をn-1次の行列式に直して計算する.
例えば,3次の行列式
 
を1列目に沿って展開する方法で,2次の行列式によって計算すると

1行目に沿って展開した場合は

2行目に沿って展開した場合は

※どの行,どの列に沿って展開しても結果は等しくなるが,実際の計算にあたっては,0や1の成分が多い行や列に沿って展開すると,計算が楽になり計算間違いが少なくなる.
【例題2.1】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
x+y+z=3
2x+3y+4z=−1
3x+5y+8z=2
(解答)
311
−134
258

111
234
358

≪サラスの方法で行列式の値を求める場合≫
分母は,



分子は,



ゆえに

≪余因子展開で行列式の値を求める場合≫
(1行に沿って展開すると)分母は,

(1行に沿って展開すると)分子は,

ゆえに
131
2−14
328

111
234
358

≪サラスの方法で行列式の値を求める場合≫
分母は,xの場合と同じだから1
分子は,



ゆえに

≪余因子展開で行列式の値を求める場合≫
(1行に沿って展開すると)分母は,xの場合と同じだから1
(1行に沿って展開すると)分子は,


ゆえに
113
23−1
352

111
234
358

≪サラスの方法で行列式の値を求める場合≫
分母は,xの場合と同じだから1
分子は,



ゆえに

≪余因子展開で行列式の値を求める場合≫
(1行に沿って展開すると)分母は,xの場合と同じだから1
(1行に沿って展開すると)分子は,


ゆえに

以上により,連立方程式の解は,(x, y, z)=(17, −21, 7)となる.

【問題2.2】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
2x−y+3z=5
3x+4y−z=2
−x−2y+3z=4
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【問題2.3】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
4x+3y=1
3x+y+z=−2
−x+5y−2z=15
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 4次の正方行列に対する行列式には,サラスの方法は使えないので,余因子展開で行うとよい.
 まずij列の成分に(−1)i+jの符号を持たせる.要するにi+jが偶数ならば正,奇数ならば負の符号となるから,1行1列の成分を正として,チェック模様に交互に符号を付ける.
++
++
++
++
 次に,どこか1つの列または1つの行に沿って展開して,4次の行列式を3次の行列式に直して計算する.
例えば,4次の行列式
 
を1列目に沿って展開する方法で,3次の行列式に直して計算すると


※1) 各々の3次の行列式の計算方法は,ここまでに行ってきた通り.
※2) どの行,どの列に沿って展開しても結果は等しくなるが,実際の計算にあたっては,0や1の成分が多い行や列に沿って展開すると,計算が楽になり計算間違いが少なくなる.
 4次の行列式の計算は,計算量が多くて大変であるが,特に1つの列や行に0が多いと計算が楽になることから,行列式の基本変形を利用して,あらかじめ0を増やすことができる.
【行列式の基本変形】
(A) ある行に他の行の定数倍を加えても行列式の値は変わらない.
(B) 列についても同様である.
 行列式の基本変形について,十分理解できていない場合でも,上の(A)で述べたことは,連立方程式の変形方法として「(1)式を2倍して(2)に加える」など中学高校で普通に使ってきた内容と同じである.
 行列式の値としては,(B)に述べたように「ある列に他の列の定数倍を加える」という変形も可能である.
【4次の行列式の計算練習】
【例題3.1】
次の行列式の値を求めてください.
(解答)
≪とにかく余因子展開を行う場合≫…0が1つある4列目に沿って展開すると


 次に,3次の行列式3個を,サラスの方法か余因子展開によって求めるのであるが,相当な根性物語になる.(それでもできる人はやればよいが,筆者はここまでで保留にしておく)
≪行基本変形を行って0を増やす場合≫
(2)行−(1)行×2,(3)行+(1)行,(4)行−(1)行の変形を行うと1列目に0が増える

この行列式を1列目に沿って展開すると,3次の行列式になる

さらに(2)行+(1)行×2の変形を行うと1列目に0が増える

この行列式を1列目に沿って展開すると,2次の行列式になる

ここまで来ると暗算でできる


【例題3.2】
次の行列式の値を求めてください.
(解答)
≪行基本変形を行って0を増やす場合≫
(1)行−(4)行×4,(2)行−(4)行×2,(3)行−(4)行×3の変形を行うと1列目に0が増える

この行列式を1列目に沿って展開すると,3次の行列式になる

さらに(1)行−(2)行×3, (3)行−(2)行×2の変形を行うと1列目に0が増える

この行列式を1列目に沿って展開すると,2次の行列式になる

ここまで来ると暗算でできる

【問題3.3】
次の行列式の値を求めてください.
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【問題3.4】
次の行列式の値を求めてください.
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【例題4.1】
次の連立方程式をクラメルの公式を使って解いてください.
x+2y+3z−4w=6
2x+y−z−2w=−3
2x+3y+2z−w=2
x+2y−z+w=−6
(解答)
623−4
−31−1−2
232−1
−62−11

123−4
21−1−2
232−1
12−11

163−4
2−3−1−2
222−1
1−6−11

123−4
21−1−2
232−1
12−11


126−4
21−3−2
232−1
12−61

123−4
21−1−2
232−1
12−11

1236
21−1−3
2322
12−1−6

123−4
21−1−2
232−1
12−11



【例題4.1】続き
■共通の分母■ ⇒1列目に0を増やす: (2)行−(1)行×2, (3)行−(1)行×2, (4)行−(1)行

1列目に沿って余因子展開 ⇒ (1)行−(2)行×3

1列目に沿って余因子展開 ⇒ (1)行+(2)行×3

■xの分子■ ⇒ (2,2)成分の1を使って,2列目に0を増やす: (2)行−(1)行×2, (3)行−(1)行×2, (4)行−(1)行

2列目に沿って余因子展開 ⇒ (3,2)成分の1を使って,3行目に0を増やす: (3)列−(2)列×5

3行目に沿って余因子展開


■yの分子■ ⇒1列目に0を増やす: (2)行−(1)行×2, (3)行−(1)行×2, (4)行−(1)行

1列目に沿って余因子展開 ⇒ 3行目に0を増やす:(3)行−(2)行

3行目に0を増やす:(3)列−(1)列

3行目に沿って余因子展開


■zの分子■,■wの分子■も同様にして計算すると,各々−150と0になる

以上により,連立方程式の解は,
(x, y, z, w)=(1, −2, 3, 0)となる.

【問題4.2】
クラメルの公式を使って,次の連立方程式の解を求めてください.
2x+y+3z−w=−8
−x+5y+2z+2w=9
3x+z+4w=1
4y+2z+w=4
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【問題4.3】
クラメルの公式を使って,次の連立方程式の解を求めてください.
4x+y+2z+w=12
−x+5y+2w=−3
3x+2y+z=2
3x+2z+w=13
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