■「掃き出し法」で不定,不能になる場合 ○ この頁では,連立方程式の「掃き出し法」による解き方のうちで,不定,不能となる場合を扱います.
係数行列が正則である場合(det(A)≠0であるとき.すなわち,A−1が存在するとき)
A= の方程式に左からA−1を掛けることにより,直ちに =A−1 という解がただ1つ存在することが分かります. これに対して,この頁で扱う問題は,係数行列が正則でない場合(det(A)=0であるとき.すなわち,A−1が存在しないとき)で,解が存在しない場合と不定解となる場合に分かれます. ○ 【例1】・・・解なしとなる場合 次のような連立方程式は,zにどのような値を与えても成立しません. したがって,この連立方程式は「解なし」(不能)となります.
したがって,この連立方程式は「解なし」(不能)となります.
これらを行列の形(拡大係数行列)で考えると,次のように「係数行列のある行がすべて0で,かつ,右辺の定数項が0でない」場合には,連立方程式は解なしになるということです.
r≠0
q≠0 ○ 【例2】・・・不定解となる場合 次のような連立方程式では,(3)式はzにどのような値を与えても成立します.
↑自由に決められる変数が1個あるときは,1個の媒介変数を使って表される不定解となります.
さらに,次のような連立方程式は,y, zにどのような値を与えても成立します.この場合,必ずしもzを媒介変数にしなくても,例えばxを媒介変数にすることもできます.
↑自由に決められる変数が2個あるときは,2個の媒介変数を使って表される不定解となります.
右に続く→
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※ 連立方程式の解き方は,次の頁にもあります
○[中学校の内容]未知数が2個(x, yだけ)の簡単なものについて,代入法や加減法での解き方を扱うものは ○[高校の内容]未知数が2個(x, yだけ)の場合について行列との関わりを示すものは ○未知数が2個(x, yだけ)または3個(x, y, z)で,読者の入力した問題に対して解を自動的に計算するものは →[同上]
○同次方程式が自明でない不定解をもつ条件を扱うものは
○逆行列,クラメールの公式による解き方を扱うものは
○Excelを使って解を求める方法は
→[同上]
左記の不定解の場合を行列の形(拡大係数行列)で考えると,次のように「係数行列のある行がすべて0で,かつ,右辺の定数項が0である」場合には,連立方程式は不定解になるということです.
元の連立方程式を考えると,上の例は,次の形の不定解を持つことになります.
【要約】
連立方程式を掃き出し法で解いて行くと,対角線上に1ができるが,その途中経過で「左辺の係数が全部0」となる場合が起ったら
○ 右辺の定数項が0でない ⇒ 解なし
○ 右辺の定数項が0 ⇒ 不定解 ⇒ 媒介変数を用いて表す
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以下において,連立方程式と同様に,1行目を(1),2行目を(2),..などと表す.
また,繁雑になるのを避けるため,書き換えた式を再び(1)(2)(3)と振り直すものとする.
【例題1】
(解答)次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(1)により
(3)−(2)×(−2)により
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【例題2】
(解答)次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(1)により
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【例題3】
(解答)次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(1)
(3)−(2)×5
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【例題4】
(解答)次の連立方程式の解を掃き出し法で求めてください.
連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(1)×2
(3)−(2)×13
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以下,正しい番号を選択してください.
なお,s, tは各々任意の数を表すものとします. |
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[問題4]
連立方程式の拡大係数行列が次の形になるとき,この連立方程式の解として正しいものを選んでください.
1解なし
1行目はx−y+2z=3を表しており,2行目,3行目は常に成立する.
1行目からx=3+y−2zとなるので,y=s, z=tとおけば媒介変数表示が得られる. |
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連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(2)
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連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(1)×6
(3)−(2)×(−7)
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連立方程式を拡大係数行列で表すと,次のようになる.
(3)−(1)×(−3)
(3)−(2)×12
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