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[素数と因数分解]
【中学校数学の復習】
• 1よりも大きい整数のうちで,1とその数p自身の他に約数をもたない数pを素数という. • 1は素数に含めない. • 例えば,2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, ・・・などが素数である. • 偶数の素数は2だけである.それ以外の素数3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, ・・・などはすべて奇数である.
• 多項式が次の形に因数分解できるとき
(式1)×(式2)=素数p
と言える.これは,素数には1とその数p自身の他に約数がないからである.
ただし,(式1)<(式2) ならば ![]() (式1)=1,(式2)=p |
現在地と前後の項目 最大公約数,最小公倍数,ユークリッドの互除法/1次不定方程式の整数解/整数問題.センター(2015~)/ペル方程式/2進法,16進法,n進法⇔10進法/N進法/2進数の演算/N進数の演算/N進数の小数/連続整数の積/累乗剰余/平方剰余/入試問題(素数,剰余類1)/入試問題(素数,剰余類2)/フェルマー予想,オイラー予想/3n+1問題(コラッツ予想)/
【例題1】
(解答)(1) n3+1=pをみたす自然数nと素数pの組をすべて求めよ. (2) n3+1=p2をみたす自然数nと素数pの組をすべて求めよ. (3) n3+1=p3をみたす自然数nと素数pの組は存在しないことを証明せよ. (2000年度千葉大)
(1) (n+1)(n2−n+1)=p と因数分解でき,nは自然数だからn+1≧2が成り立つ.したがって, ![]() n+1=p・・・② ①からn2−n=0 n(n−1)=0 nは自然数(≧1)だから n=1 ②から p=2 結局,(n, p)=(1, 2)・・・(答) |
(2) (n+1)(n2−n+1)=p2 と因数分解でき,nは自然数だからn+1≧2が成り立つ.したがって, ア) ![]() n+1=p2・・・② または イ) ![]() n+1=p・・・④ ア)のとき,①からn=1 これを②に代入するとp2=2 このような素数はないから,ア)からは解は求まらない イ)のとき,④を③に代入してpを消去すると n2−n+1=n+1 n2−2n=0 n(n−2)=0 n≧1だから n=2 ④に代入 p=3 結局,(n, p)=(2, 3)・・・(答) |
(3) n3+1=p3 (n≧1) を変形すると p3−n3=1 (p−n)(p2+pn+n2)=1 ここでp2+pn+n2>0だから ![]() p−n=1・・・② ②を①に代入してnを消去すると p2+p(p−1)+(p−1)2=1 p2+p2−p+p2−2p+1=1 3p2−3p=0 3p(p−1)=0 p=0, 1 しかしpは素数であるから,解なし 以上により,与えられた条件をみたす自然数nと素数pの組は存在しない ■証明終わり■ (別解) (1)(2)の解と同様にn3+1を因数分解して示してもよいが,その方法の場合は,n+1≧2も考えると,次のように場合分けが多くなる ア)n2−n+1=1, n+1=p3 イ)n2−n+1=p, n+1=p2 ウ)n2−n+1=p2, n+1=p いずれも解は求まらない |
【問題1.1】
[解答を見る]次の問いに答えよ. f(n)=n4−2n2−3 (1) f(n)をnの2次式の積で表せ. (2) nが自然数のとき,f(n)が素数となるnは1つだけ存在する.このときのnと素数f(n)を求めよ. (2021年度北星学園大)
(解答)
(1) f(n)=(n2−3)(n2+1) (2) nは自然数だからn≧1, n2+1≧2 したがって,f(n)が素数となるには ![]() f(n)=n2+1が素数・・・② ①より n2=4 n=2 (>0) ②に代入 f(2)=22+1=5 以上から,n=2, f(n)=5・・・(答) |
【問題1.2】
[解答を見る]x, yを自然数,pを3以上の素数とするとき,次の各問に答えよ.ただし,(1),(3)は答のみ記せ. (1) x2−y2=pが成り立つとき,x, yをpで表せ. (2) x3−y3=pが成り立つとき,pを6で割った余りが1となることを証明せよ. (3) x3−y3=pが自然数の解の組(x, y)をもつようなpを,小さい数から順にp1, p2, p3, ・・・とするとき,p5の値を求めよ. (2014年度早稲田大学.政治経済学部)
(解答)
(1) (x+y)(x−y)=pでx, yは自然数だからx, y≧1, x+y≧2 ![]() x−y=1 を解くと ![]() (2) (x−y)(x2+xy+y2)=pでx, yは自然数だからx, y≧1したがって,x2+xy+y2≧3 ![]() x−y=1 だから (x−y)2+3xy=p 1+3xy=p・・・(*) ここでx−y=1だから,x, yは隣り合う奇数と偶数の組になる.したがって,xyは2の倍数 結局,3xyは6の倍数になるから,pを6で割った余りが1となる. (3) (*)式に隣り合う整数を順に代入する ![]() y=1
⇒ p1=1+3×2×1=7は題意に適する
![]() y=2
⇒ p2=1+3×3×2=19は題意に適する
![]() y=3
⇒ p3=1+3×4×3=37は題意に適する
![]() y=4
⇒ p4=1+3×5×4=61は題意に適する
![]() y=5
⇒ p=1+3×6×5=91=7×13は素数でない
![]() y=6
⇒ p5=1+3×7×6=127は題意に適する
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【剰余類】
例えば,すべての整数nは
ア)「3で割ったとき割り切れる」
のいずれかに分類される.アイウは,3を法とする剰余類と呼ばれる.(剰余類の全体は剰余系と呼ばれる.)イ)「3で割ったとき1余る」 ウ)「3で割ったとき2余る」 すべての整数nは,次のいずれかの形に書けると言ってもよい.kは整数とする.
ア) n=3k
高校の教科書には「合同式」や「mod」の記号や用語は,登場しないが,大学入試問題の解説ではよく使われる.高校生が答案に書くのは構わない.イ) n=3k+1 ウ) n=3k+2(n=3k−1でもよい) すべての整数nは,次のいずれかの形に書けると言ってもよい.
ア) n≡0 (mod 3)
イ) n≡1 (mod 3) ウ) n≡2 (mod 3) |
【例題2】
(1) 正の整数a, b, cが,a2+b2=c2を満たすとき,a, b, cのうち少なくとも1つは3の倍数であることを証明せよ.
(解答)(2) 正の整数a, b, cが,a2+b2=c2を満たすとき,a, b, cのうち少なくとも1つは5の倍数であることを証明せよ. (3) 正の整数a, b, cが,a2+b2=c2を満たすとき,a, b, cのうち少なくとも1つは4の倍数であることを証明せよ. (1) k, K, L, M, Nは整数とする. 正の整数は,3k, 3k±1のいずれかの形に書けるから,その2乗は9k2=3K, (3k±1)2=9k2±6k+1=3K+1の形に書ける. もし,a, b, cがいずれも3の倍数でなければ,
a2+b2=(3K+1)+(3L+1)=3M+2
となって,a2+b2とc2は,3で割ったときの余りが一致しないから,a2+b2=c2は成り立たない.c2=3N+1 背理法により,a2+b2=c2を満たすとき,a, b, cのうち少なくとも1つは3の倍数でなければならないことが示された. (2) k, K, L, M, Nは整数とする. 正の整数は,5k, 5k±1, 5k±2のいずれかの形に書けるから,その2乗は
25k2=5K
の形に書ける.(5k±1)2=25k2±10k+1=5K+1 (5k±2)2=25k2+20k+4=5K+4 もし,a, b, cがいずれも5の倍数でなければ,
a2+b2=(5K+1)+(5L+1)=5M+2
となって,5で割ったときの余りが,2,0,3のいずれかになる.または (5K+1)+(5L+4)=5M または (5K+4)+(5L+4)=5M+3 他方で,
c2=5N+1, 5N+4
となって,5で割ったときの余りが,1または4になる.このように,a2+b2とc2は,5で割ったときの余りが一致しないから,a2+b2=c2は成り立たない. 背理法により,a2+b2=c2を満たすとき,a, b, cのうち少なくとも1つは5の倍数でなければならないことが示された. |
(3) k, K, L, M, Nは整数とする. 正の整数は,4k, 4k+1, 4k+2, 4k+3のいずれかの形に書けるから,その2乗は
(4k)2=16k2=8K
の形に書ける.(4k+1)2=16k2+8k+1=8K+1 (4k+2)2=16k2+16k+4=8K+4 (4k+3)2=16k2+24k+9=8K+1 もし,a, b, cがいずれも4の倍数でなければ,
a2+b2=(8K+1)+(8L+1)=8M+2
となって,8で割ったときの余りが,0,2,5のいずれかになる.または (8K+1)+(8L+4)=8M+5 または (8K+4)+(8L+4)=8M 他方で,
c2=8N+1, 8N+4
となって,8で割ったときの余りが,1または4になる.このように,a2+b2とc2は,8で割ったときの余りが一致しないから,a2+b2=c2は成り立たない. 背理法により,a2+b2=c2を満たすとき,a, b, cのうち少なくとも1つは4の倍数でなければならないことが示された. |
(参考1) (3)の証明において,なぜ8の倍数の話が登場するのか? これは,初めから分かっていたのではなく,4の倍数で分類すると,4k+2の場合にうまく証明できないことから,4の剰余類で証明しようと考えていた方針を変更して「8の剰余類で分類することにした」ということです. 一般に法を大きくすると剰余類も多くなるので,答案の場合分けが増える.だから,安易に法を大きくとるのは避けた方がよいが,やむを得ない場合もあるということは覚えておくとよい. (参考2) 上記の証明(1)(2)(3)によって,正の整数a, b, cが,a2+b2=c2を満たすのは
32+42=52
のように,1つずつ3,4,5の倍数に分かれてるということではない.少なくとも1つが3の倍数,4の倍数,5の倍数であるという条件を満たす組は
52+122=132
のように,1つの数12が3と4の倍数になっている場合や
112+602=612
のように,1つの数60が3,4,5の倍数になっていて,残り2つはどの倍数にもなっていないということもある.
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【問題2.1】
[解答を見る]a, bを正の整数とする.aを6で割ると5余り,a2+bを6で割ると4余る.このとき,bを6で割ったときの余りは 7 であり,a2−b2を6で割ったときの余りは 8 である.
[ 7 に関する選択肢]
(ア) 1 (イ) 2 (ウ) 3 (エ) 4 (オ) 5
[ 8 に関する選択肢]
(ア) 1 (イ) 2 (ウ) 3 (エ) 4 (オ) 5
(2021年度獨協大)
(解答)
k, m, n, K, M, Nを整数とする. a=6k+5・・・① b=6m+r(0≦r≦5)・・・② とおく. a2+b=(6k+5)2+(6m+r) =6K+25+(6m+r)=6M+(1+r)=6M+4 より r=3・・・(ウ)が答 a2−b2=(6k+5)2−(6m+3)2 =6K+25−(6M+9)=6N+4・・・(エ)が答 |
【問題2.2】
[解答を見る]自然数aを3で割った余りをr=0, 1, 2とする.以下の問いに答えよ. (1) 以下を求めよ. (ア)r=0のとき,a3+4を3で割った余り. (イ)r=1のとき,a3+4を3で割った余り. (ウ)r=2のとき,a3+4を3で割った余り. (2) 3つの自然数a, a3+4, a5+8のうちいずれか1つは3の倍数であることを示せ. (3) 3つの自然数a, a3+4, a5+8が同時に素数となるaをすべて求めよ. (2021年度中央大.理工学部)
(解答)
以下において,k, m, n, K, L, M, Nを整数とする. (1) (ア)r=0のとき
a3+4=(3k)3+4
(イ)r=1のとき=27k3+4=3(9k+1)+1=3K+1 だから,a3+4を3で割った余りは1・・・(答)
a3+4=(3k+1)3+4
(ウ)r=2のとき=3K+1+4=3(K+1)+2 だから,a3+4を3で割った余りは2・・・(答)
a3+4=(3k+2)3+4
(2)=3K+8+4=3(K+4) だから,a3+4を3で割った余りは0・・・(答) a=3k, 3k+1, 3k+2のときのa, a3+4, a5+8を3で割った余りを表にすると次のようになる.
(*1)(*2)(*3)の簡単な理由は次の通り
(*1)←a=3kならばa5+8=3K+8=3L+2 (*2)←a=3k+1ならばa5+8=3K+1+8=3(K+3)=3L (*3)←a=3k+2ならばa5+8=3K+8+8=3(K+5)+1=3L+1
(3) a=3k, a3+4=3K, a5+8=3Lは,いずれも3の倍数であるから,素数となるのは3自体である場合のみになる. ところで,a3+4≧5, a5+8≧9だから,このうちで素数となることができるのは,a=3, (k=1)の場合だけである. このとき,a3+4=31, a5+8=251は素数. ゆえに,条件を満たすのはa=3・・・(答)
a=251が素数であることを覚えている生徒はめったにいないと思うが,
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【問題2.3】
3333の1の位の数を求めよ.
[解答を見る](名古屋大)
整数の積や累乗の1の位の数は,1の位の数の積や累乗だけで決まり,十以上の位の数字に影響されないから,
(解答)
760nの1の位の数字は0
などは直ちに言える.1の位の数が0,1,5,6以外である場合は,何乗かしてみると2乗または4乗ごとに循環していることが分かるので,それが利用できる.
981nの1の位の数字は1 125nの1の位の数字は5 356nの1の位の数字は6
例えば,34=81=10k+1 (kは整数)だから (34)n=10K+1(Kは整数)と変形すると楽に証明できる. 34=81=10k+1 (kは整数)だから (34)n=10K+1(Kは整数) 3333=(34)83×3=(10L+1)×3(Lは整数) =10M+3(Mは整数) よって,1の位の数は3・・・(答) |
【問題2.4】
[解答を見る]77777の1の位の数を求めよ. (類題)
(解答)
74=2401=10k+1 (kは整数)だから 774=10K+1 (Kは整数) これを使うと 77777=(774)194×7=(10K+1)194×7 =(10L+1)×7(Lは整数) =10M+7(Mは整数) よって,1の位の数は7・・・(答)
【問題2.5】
[解答を見る]自然数x, yに対して,それぞれを100で割った余りが等しいとき,x≡yと書くことにする. (1) 自然数mに対して,76m≡76を証明せよ. (2) 2n≡76を満たす最小の自然数nを求めよ. (3) 21001を100で割った余りを求めよ. (2000年度名古屋大)
(解答)
(1) 762=5776≡76だから 763=762×76≡76×76≡76 同様にして,76m≡76m−1≡・・・≡76が言える (2)
(3) 21001=(220)50×2 ≡7650×2 ≡76×2=152 ≡52 100で割った余りは52 |
【問題2.6】
[解答を見る]pが素数ならばp4+14は素数でないことを証明せよ. (2021年度京都大.文系)
【秘訣⇒鉛筆遊びで傾向をつかむ】
(解答)
• 水色の背景色で示したように,pが3の倍数のとき,p4+14を3で割った余りは2になり,それ以外は3で割り切れる. • 3で割り切れるものは素数でない.以上をまとめるとよい. pは素数だから,p=3のときだけ3で割り切れ,それ以外のときは3で割り切れない. ア) p=3のとき p4+14=81+14=95=5×19は素数でない イ) pが3よりも大きな素数のとき p=3k±1 (kは整数)とおけるから p4+14=(3k±1)4+14=3N+1+14(Nは整数) =3(N+5)は3の倍数になり,素数ではない 以上により,pが素数ならばp4+14は素数でないことが示された ■証明終わり■ |
[解答を見る]
(別解)
上記の答案では「3の剰余類で分類すればよい」というのが鍵になっていますが,「3」を思いつかなければどうなるのか⇒「5の剰余類で分類してもできる」ことを以下に示す
p4+14=625+14=639=32×71は素数でない イ) pが5以外の素数のとき p=5k±1, 5k±2 (kは整数)とおける そのⅰ) p=5k±1のとき p4+14=(5k±1)4+14=5N+1+14(Nは整数) =5(N+3)は5の倍数になり,素数ではない そのⅱ) p=5k±2のとき p4+14=(5k±2)4+14=5N+16+14(Nは整数) =5(N+10)は5の倍数になり,素数ではない |
【対偶証明の復習】
(*)の解説 (1は真, 0は偽を表すものとする)元の命題p⇒qとその対偶q⇒pとは真偽が一致すること(*)を利用して,対偶q⇒pが真であることを示して,元の命題の証明とする方法
• 上記の2つの表を見比べると,元の命題p⇒qとその対偶q⇒pとは真偽が一致することが分かる.
【対偶証明の例】
x+y>0のとき,x, yの少なくとも1つは正の数であることを証明せよ.
pが複合的な形をしていて,qが単純な形をしているとき,p⇒qを証明するよりも,その対偶q⇒pを証明する方が考えやすいことが多い.
(解答)x≦0かつy≦0のとき,x+y≦0となるから,対偶によって示される. |
![]() 元の命題p⇒qをそのまま証明するのが難しいとき,pかつqを仮定すると矛盾を生ずることを示して,p⇒qの証明とする方法.
対偶証明との相違点は,
「pも仮定する点」にある. 証明の進め方によっては,q⇒pという対偶を一部として使用することも多いが,その場合は対偶によって証明できたと考えているのではなく,pとpが矛盾であることから,仮定が間違っていると述べるのが背理法. 背理法の場合は,pに行き着く場合だけでなく,一般の数学的常識に反することに行き着けば何でもよい.例えば,1=2が導かれたり,2が奇数になったり,1>2が導かれるような場合はすべて矛盾であるから,対偶証明よりも背理法の方ができることが多い. ![]() pという命題が成り立つ集合をPで表し,qという命題が成り立つ集合をQで表すとき,命題p⇒qには,集合の包含関係P⊂Qが対応する. P⊂Qであるとは,P∩Q(図の×印の部分)が空集合になること. したがって,P⊂Qを示すには,P∩Qとなるような要素xが存在すると仮定すると矛盾になるということを示せばよい. これが「p⇒qを背理法によって示す」ということを集合に対応させて考えたときの意味になる.
【背理法の例】
(解答)自然数a, b, cがa2+b2=c2をみたすとき,a, bのうち少なくとも1つは3の倍数であることを証明せよ. a2+b2=c2・・・(1) aもbも3の倍数でない・・・(2) と仮定する (2)より,a=3k±1, b=3m±1(k, mは整数)とおける このとき,a2+b2=(3k±1)2+(3m±1)2 =9k2±6k+1+9m2±6m+1 =3N+2(Nは整数)・・・(3) ところが,どんな自然数c=3p, 3p+1, 3p+2(pは整数)を持ってきても =c2=3N, 3N+1, 3N+1(Nは整数) となって,(3)は成り立たない. 以上により,(1)のときaもbも3の倍数でないと仮定すると矛盾を生ずる. 背理法により,a, b, cがa2+b2=c2をみたすとき,a, bのうち少なくとも1つは3の倍数であることが証明された. |
【例題3】
(解答)a, b, cはa2−3b2=c2を満たす整数とするとき,次のことを証明せよ. (1) a, bの少なくとも一方は偶数である. (2) a, bが共に偶数なら,少なくとも一方は4の倍数である. (3) aが奇数ならbは4の倍数である. (2000年度東北大)
(1) a, bとも奇数と仮定すると,
a=2k+1, b=2m+1(k, mは整数)とおける.
このとき a2−3b2=(2k+1)2−3(2m+1)2 =4k2+4k+1−3(4m2+4m+1) =4k2+4k+1−12m2−12m−3 =4(k2+k−3m2−3m)−2 =4K−2・・・(*1) この値とc2が等しいのだからcは偶数になる そこで,c=2k(kは整数)と仮定すると c2=4k2=4L・・・(*2)(Lは整数) (*1)は左辺が4の倍数でないことを示しており,(*2)は右辺が4の倍数であることを示しているから,矛盾. 背理法により,a, bの少なくとも一方は偶数であることが示された. |
(2) a2−3b2=c2・・・(*3) a, bが共に偶数・・・(*4)
(*4)により,a=2k, b=2m(k, mは整数)とおける.
(3)このとき,a2−3b2=4k2−12m2=4(k2−3m2) (*3)の右辺から,cは偶数でなければならない. そこで,c=2n(nは整数)とおくと右辺は 4n2となるから 4(k2−3m2)=4n2 k2−3m2=n2・・・(*5) (*5)に(1)の結果を適用すると,k, mの少なくとも一方は偶数になるから,a, bの少なくとも一方は4の倍数である. (1)の結果を使って,aは奇数,bは偶数とすると,a2−3b2=c2により,cは奇数になる.
a=2k+1, b=2m, c=2n+1(k, m, nは整数)とおくと
(2k+1)2−3(2m)2=(2n+1)2 4k2+4k+1−3(4m2)=4n2+4n+1 4(k2+k−3m2)=4(n2+n) k2+k−3m2=n2+n k(k+1)−n(n+1)=3m2 ここで連続2整数の積は2の倍数だから,左辺のk(k+1), n(n+1)はいずれも2の倍数になり,その差も2の倍数 これが右辺の3m2に等しいのだから,mは偶数 よって,b=4p(pは整数)となり,bは4の倍数である. |
【問題3.1】
[解答を見る](1) 任意の自然数aに対し,a2を3で割った余りは0か1であることを証明せよ. (2) 自然数a, b, cがa2+b2=3c2を満たすと仮定すると,a, b, cはすべて3で割り切れなければならないことを証明せよ. (3) a2+b2=3c2を満たす自然数a, b, cは存在しないことを証明せよ. (2014年度九州大)
(解答)
(1) ア) a=3k(kは整数)のとき
a2=(3k)2=9k2=3(3k2)=3K(Kは整数)
イ) a=3k±1(kは整数)のときと書けるから,a2を3で割った余りは0
a2=(3k±1)2=9k2±6k+1=3(3k2±2k)+1=3K+1(Kは整数)
アイ)より,任意の自然数aに対し,a2を3で割った余りは0か1であると書けるから,a2を3で割った余りは1 (2) ア) a, bの両方とも3で割り切れないとき
a=3k±1, b=3m±1(k, mは整数)とおけるから
イ) a, bの一方が3で割り切れず,他方が3で割り切れるとき
a2+b2=3K+2(Kは整数) となり,右辺の3c2と等しくならない
a, b=3k, b=3m±1(k, mは整数)[順不同]とおけるから
アイ)より,a, bの両方とも3で割り切れる.a2+b2=3K+1(Kは整数) となり,右辺の3c2と等しくならない さらに,このとき
a=3k, b=3m(k, mは整数)とおけるから
以上により,a, b, cはすべて3で割り切れなければならない.a2+b2=9K(Kは整数) となり,右辺の3c2と等しくなるには,cが3で割り切れなければならない. (3)
(2)の結果を使うと,
この作業をp回続けると(pは正整数)a2+b2=3c2・・・① ⇒ a=3k1, b=3m1, c=3n1(k1,m1,n1は整数)・・・② と書ける これを代入すると 9k12+9m12=27n12 両辺を9で割ると k12+m12=3n12・・・①' ⇒ k=3k2, m=3m2, n=3n2(k2,m2,n2は整数)・・・②' と書ける
a=3pk1, b=3pm1, c=3pn1(p, k1,m1,n1は整数)
と書けることになり,限りなく続けると,a, b, cとも無限大になり矛盾 背理法により,これを満たす自然数a, b, cは存在しない |
(参考)・・・無限降下法 例えば, 両辺を2乗する 左辺は2の倍数であるから,右辺のn2も2の倍数でなければならないが,そのためにはnが2の倍数でなければならない. n=2k(kは正整数)とおく・・・(2) (1)に代入すると 2m2=4k2 両辺を2で割る m2=2k2・・・(3) (3)は,mも2の倍数であることを示している. 以上から,m, nとも2の倍数であることになり「互いに素」という仮定に反する.
以上のように,
これに対して,「互いに素」という仮定を置かなければ,次のような記述になる.この論法は「無限降下法」と呼ばれ,フェルマーが大定理を証明するために用いた方法だと言われている(ただし,当時のフェルマーが実際に証明に成功していたかどうかは疑問とされている) (1)に代入すると 両辺を2で割る (2)に代入すると 両辺を2で割る 以上のように,(1)(1'),(2)(2'),(3)(3'),・・・のように変形していく作業は,限りなく繰り返すことができて,有限確定の正整数m, nについて次の不等式が成り立つことになる. これらは,有限確定の正整数m, nと1の間に無限個の整数が存在するという矛盾になっている.
2014年度九州大の問題(3)において,「a, b, cは正整数で互いに素」と仮定することができれば,上記のような無限降下法によらず,共通因数が1回登場すれば矛盾とすることができるはずであるが,(2)(3)の問題の組み立ての都合上,a, b, cとも3の倍数であるから「互いに素」と仮定することはできない.
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【問題3.2】
[解答を見る](1) x2+4y2=9z2をみたす自然数x, y, zがあれば,xとyはいずれも3の倍数であることを示し,x2+4y2=9z2をみたす自然数x, y, zの例を挙げよ. (2) x3+4y3=9z3をみたす自然数x, y, zは存在しないことを示せ. (2014年度東京海洋大)
(解答)
(1) x, yの少なくとも一方が3の倍数でない場合は,次の3つの場合に分けられる ア)x=3k±1, y=3m±1 (k, mは整数)のとき
x2+4y2=(3k±1)2+4(3m±1)2
イ)x=3k, y=3m±1 (k, mは整数)のとき
=3K+1+4(3M+1)=3(K+4M+1)+2 (K, Mは整数) 他方で,右辺は3の倍数だから,等式は成り立たない
x2+4y2=(3k)2+4(3m±1)2
ウ)x=3k±1, y=3m (k, mは整数)のとき
=3K+4(3M+1)=3(K+4M+1)+1 (K, Mは整数) 他方で,右辺は3の倍数だから,等式は成り立たない
x2+4y2=(3k±1)2+4(3m)2
以上により,x, yの少なくとも一方が3の倍数でなければ,x2+4y2=9z2は成り立たないから,x2+4y2=9z2をみたすときは,xとyはいずれも3の倍数でなければならない.=3K+1+4(3M)=3(K+4M)+1 (K, Mは整数) 他方で,右辺は3の倍数だから,等式は成り立たない
•
• • • 「例を挙げよ」だから,簡単な例を1つ挙げればよい (x, y, z)=(9, 6, 5)・・・(答) |
[解答を見る]
(2)
[解答を見る]=3K+1 (k, Kは整数) =3K+2(k, Kは整数) yについても同様 そこで,
(k, K, m, M, Nは整数)
• この表で, ア)x=3k, y=3mのとき となるから,z=3n(nは整数)でなければならない 代入すると 両辺を27で割ると ②は①と同じ形をしているから,同様の議論により この作業を限りなく繰り返すと のように,有限の整数値x, y, zと1の間に無限個の整数が入ることになり,矛盾
イ)x=3k+1, y=3m+2 (k, mは整数)のとき
は9で割り切れないから,9z3に等しくならない ウ)x=3k+2, y=3m+1 (k, mは整数)のとき は9で割り切れないから,9z3に等しくならない 以上のように,ア)イ)ウ)いずれの場合も成り立たないから,x3+4y3=9z3をみたす自然数x, y, zは存在しない |
【問題3.3】
[解答を見る]a−b−8とb−c−8が素数となるような素数の組 (a, b, c)をすべて求めよ. (2014年度一橋大)
• 偶数の素数は2だけ.他の素数(3, 5, 7, ...)は奇数
(解答)a>b+8, b>c+8だから c<b<a ア) a, b, cのいずれも奇数のとき
a−b, b−cは偶数で,a−b−8とb−c−8も偶数になる.
偶数の素数は2だけだから ![]() b−c−8=2 すなわち ![]() b−c=10
ただし,a, b, cは奇数でc<b<a
これに適する解として,c=3, b=13, a=23を思い着く
これ以外の組をどう処理するか←これが鍵
(試験会場で鉛筆遊びからスタート):赤字は素数でない
c=1,b=11,a=[21]
c=11,b=[21],a=31 c=[21],b=31,a=41 c=31,b=41,a=[51]
c=[3],b=13,a=23 c=13,b=23,a=[33] c=23,b=[33],a=43 c=[33],b=43,a=53
c=5,b=[15],a=25
c=[15],b=25,c=35 ここは全部ダメ
c=7,b=17,a=[27] c=17,b=[27],a=37 c=[27],b=37,a=47
c=[9],b=19,a=29 c=19,b=29,a=[39] c=29,b=[39],a=49 ![]() b−c=10
ただし,a, b, cは奇数でc<b<a
を満たす組は無限にあるが,上記の鉛筆遊びから分かるように,どの組にも[ ]で示した3の倍数が含まれる. ⇒3以外の3の倍数は素数でないから,他の組は条件に合わないと言えばよい. |
[解答を見る]
ア)の続き
(ⅰ) c=3k(kは整数)のとき,条件に合う組はc=3, b=13, a=23だけである. (ⅱ) c=3k+1(kは整数)のとき b=3k+11, a=3k+21=3(k+7)となって,aが素数でない (ⅲ) c=3k+2(kは整数)のとき b=3k+12=3(k+4), a=3k+22となって,bが素数でない 以上から,条件に合う組はc=3, b=13, a=23だけである. イ) c=2だけ偶数でa, bは奇数のとき ![]() b−2−8が素数 すなわち ![]() b−10=dが素数・・・② c=2, b=13, a=23は条件に合う (ⅰ) b=3k(k≧1は整数)のとき,bが素数となるのはb=3ときだけであるが,このときは②のdが負の数になり,適さない (ⅱ) b=3k+1(k≧1は整数)のとき a=3k+11, d=3k+1−10=3(k−3)となって,k=4の場合のみd=3が素数になる これはc=2, b=13, a=23ですでに登場している (ⅱ) b=3k+2(k≧1は整数)のとき a=3k+12=3(k+4)は素数でない アイ)より,結局(23, 13, 3), (23, 13, 2)・・・(答) |
【定着度チェック問題】・・・このページの振り返りです
【問題4.1】・・・受験では基礎のレベル
[解答を見る]整数a, bについて,aは13で割ると2余り,bは13で割ると7余る.このとき,4a+3bは13で割るとタ余り,abは13で割るとチ余る. (2021年度金沢工大)
a=13k+2, b=13m+7(k, mは整数)とおく
このとき 4a+3b=4(13k+2)+3(13m+7)=13(4k+3m)+29 =13(4k+3m+2)+3 だから,13で割ると3余る→[タ] ab=(13k+2)(13m+7) =132km+13×7m+13×2m+14 =13(K+1)+1(Kは整数) だから,13で割ると1余る→[チ] |
【問題4.2】・・・ちょうど良いレベルの良問
[解答を見る](1) k2+2が素数となるような素数kをすべてみつけよ.また,それ以外にないことを示せ. (2) 整数lが5で割り切れないとき,l4−1が5で割り切れることを示せ. (3) m4+4が素数となるような素数mは存在しないことを示せ. (2021年度お茶の水女子大)
(1)
• k=3m±1→k2=3M+1
ア) k=3m+1(m≧1は整数)のとき• しかし,k=3mとなる数(3の倍数)の中に1つだけ素数がある. k2=9m2+6m+1=3M+1(M≧5は整数) だからk2+2=3(M+1) (≧18)は素数でない イ) k=3m+2(m≧0は整数)のとき k2=9m2+12m+4=3M+1(M≧1は整数) だからk2+2=3(M+1) (≧6)は素数でない ウ) k=3m(m≧1は整数)のとき k2+2=9m2+2 (≧11) はk=3のとき,k2+2=11が素数になる. k=3・・・(答) |
[解答を見る]
(2)
5で割り切れない整数lは,l=5k±1, 5k±2(kは整数)とおける. 展開公式(x+y)4=x4+4x3y+6x2y2+4xy3+y4を使うと ア)l=5k±1(kは整数)のとき l4=(5k±1)4=(5k)4±4(5k)3+6(5k)2±4(5k)+1=5K+1 (Kは整数)とおけるから l4−1=5Kは5で割り切れる イ)l=5k±2(kは整数)のとき l4=(5k±2)4 =(5k)4±4(5k)3(2)+6(5k)2(22)±4(5k)(23)+16=5K+16 =5(K+3)+1 (Kは整数)とおけるから l4−1=5Kは5で割り切れる ア)イ)から,整数lが5で割り切れないとき,l4−1が5で割り切れる |
[解答を見る]
m4+4=(m2+2)2−(2m)2=(m2−2m+2)(m2+2m+2)
ここで,mを素数(≧2)とすれば, m2−2m+2 < m2+2m+2 m2−2m+2=(m−1)2+1≧2 となるから,m4+4=(m2−2m+2)(m2+2m+2)は2以上の整数の積になり,素数でない |
【問題4.3】・・・チャレンジしてみよう
[解答を見る]素数p, qを用いて pq+qp と表される素数をすべて求めよ. (2016年度京都大)
• 偶数の素数は2だけ.他の素数(3, 5, 7, ...)は奇数
(解答)次の4つの場合に分けて求める. ア)p, qとも偶数のとき
偶数の素数は2だけだから,p=2, q=2とおくと,pq+qp=4+4=8は素数でないから,適さない
イ)p, qとも奇数(≧3)のとき
pq+qp (≧33+33≧54)は奇数と奇数の和で偶数になる.ところが,偶数の素数は2だけで,54以上のものはない
ウ)pが偶数,qが奇数のとき
偶数の素数は2だけだから,p=2とおくと,2q+q2が素数となるかどうか調べる.
エ)pが奇数,qが偶数のときここで,q=6k+1, 6k+3, 6k+5(kは整数)について,次の場合分けに沿って,3で割った余りを求める. • q=6k+3=3(2k+1)(kは整数)となる場合で,qが素数となるのはq=3だけ このとき,2q+q2=8+9=17は素数 • q=6k+1(k≧1は整数)のとき, 22=4 (=3m+1)(mは整数)だから 26k+1=(22)3k×2=3L+2 (L≧1は整数) q2=(6k+1)2=3M+1 (M≧1は整数) したがって,2q+q2=3L+2+3M+1=3(L+M+1)は3の倍数になるが,3よりも大きな素数はない • q=6k+5(k≧1は整数)のとき, 22=4 (=3m+1)(mは整数)だから 26k+5=(22)3k+4×2=3L+2 (L≧1は整数) q2=(6k+5)2=3M+25=3(M+8)+1 (M≧1は整数) したがって,2q+q2=3L+2+3(M+8)+1=3(L+M+9)は3の倍数になるが,3よりも大きな素数はない
ウ)の場合とp, qを入れ替えたものになる
以上から,(p, q)=(2, 3), (3, 2)でpq+qp=17・・・(答)
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【問題4.4】
[解答を見る]nを2以上の整数とする.3n−2nが素数ならばnも素数であることを示せ. (2021年度京都大)
(解答)
対偶証明によって示す. nが素数でないと仮定すると,n=pq(p, qは2以上の整数)とおける.
因数分解公式
an−bn=(a−b)(an−1+an−2b+an−3b2+・・・+bn−1)を使うと 3pq−2pq=(3p)q−(2p)q =(3p−2p){(3p)q−1+(3p)q−2(2p)+(3p)q−3(2p)2+・・・+(2p)q−1} p, qは2以上の整数だから • (3p)q−1+(3p)q−2(2p)+(3p)q−3(2p)2+・・・+(2p)q−1>1は明らか • 3p−2p>1は次のように数学的帰納法で示せる. (Ⅰ) p=2のとき 3p−2p=9−4=5>1は成り立つ (Ⅱ) p=k (k≧2)のとき 3k−2k>1が成り立つと仮定すると 3k+1−2k+1=3(3k−2k)+3×2k−2k+1 =3(3k−2k)+(3−2)2k =3(3k−2k)+2k≧3+4>1 (Ⅰ)(Ⅱ)より,2以上の整数pについて,3p−2p>1が成り立つ. 以上により,nが素数でなければ,3n−2nが素数でないことが示されたから,対偶証明により,3n−2nが素数ならばnも素数であるといえる. |
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