現在地と前後の項目 最大公約数,最小公倍数,ユークリッドの互除法/1次不定方程式の整数解/整数問題.センター(2015~)/ペル方程式/2進法,16進法,n進法⇔10進法/N進法/2進数の演算/N進数の演算/N進数の小数/連続整数の積/累乗剰余/平方剰余/入試問題(素数,剰余類1)/入試問題(素数,剰余類2)/フェルマー予想,オイラー予想/3n+1問題(コラッツ予想)/ ■平方剰余
【例1】
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫a, b, cが正の整数のとき,a2+b2=c2ならば,a, bの少なくとも1つは3で割り切れることを示してください. ■3で割った余りの一覧表
しかし,どんな正の整数cをもってきても,c2を3で割った余りが2になることはない. 以上の内容を数学の答案風に作文すればよい. (解答) 正の整数cの2乗を3で割った余りは
(1) c=3kならばc2=9k2=3Nだから余り0
以上により,どんな正の整数cについても,その2乗を3で割った余りが2になることはない.…(A)(2) c=3k±1ならばc2=9k2±6k+1=3N+1だから余り1 ただし,k, Nは整数 一方,a, bの両方とも3で割り切れないとき
a, b=3m±1, 3n±1となるから,
となるからa2+b2を3で割った余りは2になる.…(B)a2+b2=3M+1+3N+1=3(M+N)+2 ただし,M, Nは整数 (A)(B)は矛盾だから,a2+b2=c2のとき,a, bの両方とも3で割り切れないことはない.すなわち,a, bの少なくとも1つは3で割り切れる.
【例2】
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫a, b, cが正の整数のとき,a2+b2=c2ならば,a, b, cの少なくとも1つは5で割り切れることを示してください. ■5で割った余りの一覧表
(1) 1+1 → 2となることはできない
以上の内容を,数学の答案風にまとめるとよい.(2) 1+4 → 0となることはできない (3) 4+4 → 3となることはできない (解答) (1) a=5m±1, b=5n±1のとき
a2+b2=5M+1+5N+1=5(M+N)+2となるが,どのようなc=5p±1, 5p±2を持ってきても
c2を5で割った余りは,1,4となり,余りが2となることはない.
(2) a=5m±1, b=5n±2またはa=5m±2, b=5n±1のとき
a2+b2=5M+4+5N+1=5(M+N+1)となるが,どのようなc=5p±1, 5p±2を持ってきても
c2を5で割った余りは,1,4となり,余りが0となることはない.
(3) a=5m±2, b=5n±2のとき
a2+b2=5M+4+5N+4=5(M+N+1)+3となるが,どのようなc=5p±1, 5p±2を持ってきても
c2を5で割った余りは,1,4となり,余りが3となることはない.
以上により,a, b, cとも5で割り切れない場合は,a2+b2=c2にならない.
【例3】
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫a, b, cが正の整数のとき,a2+b2=c2ならば,a, b, cの少なくとも1つは4で割り切れることを示してください. ■4で割った余りの一覧表
0+0=0 → あり得る
これでは,すべて4で割り切れないとき,4で割った余りが等しくならないと言い切れない.0+1=1 → あり得る 1+1=2 → あり得ない そこで,”解像度”(数学用語ではない.俗な言い方!!)を上げて8で割った余りで分類すると,次のようになる. ■8で割った余りの一覧表
1+1=2 → あり得ない
そこで,8で割った余りで分類して,答案をまとめるとよい.
(解答)1+4=5 → あり得ない 4+4=8→0 → あり得ない a, b, cとも4で割り切れないとき,
(1) a, bとも8で割った余りが1,3,5,7のいずれかであるとき,a2+b2=8M+1+8N+1=8(M+N)+2 → c2=8L+2は,あり得ない
以上により,a2+b2=c2が成り立つときに,a, b, cとも4で割り切れないと矛盾を生ずるから,a,b,cのうち少なくとも一つは4で割り切れる.
(2) a, bの一方は8で割った余りが1,3,5,7のいずれか,他方は2,6のいずれかであるとき,a2+b2=8M+1+8N+4=8(M+N)+5 → c2=8L+5は,あり得ない (3) a, bとも8で割った余りが2,6のいずれかであるとき,a2+b2=8M+4+8N+4=8(M+N+1) → c2=8Lは,あり得ない
【例4】
(全体の見通し)・・・≪鉛筆遊びで戦う!≫自然数a, b, cについて,等式a2+b2=c2が成り立ち,かつa, bは互いに素とする.このとき,次のことを証明せよ.
(1) aが奇数ならば,bは偶数であり,したがってcは奇数である.
(2) aが奇数のとき,a+c=2d 2となる自然数dが存在する. (京都大学)
■2で割った余りの一覧表
上の表では1+1=2 → 0もあり得る(cが偶数ならば受けられる)ことになって矛盾を示せないので,”解像度”(数学用語ではない.俗な言い方!!)を上げて4で割った余りで分類すると,次のようになる. ■4で割った余りの一覧表
(1) aもbも奇数のとき,4で割った余りは(上の表により) 1+1=2 となって,どんな自然数cを持ってきてもc2を4で割った余りは2にならないから,矛盾. したがって,bは偶数 aが奇数,bが偶数のとき,a2+b2は奇数になるから,c2は奇数,したがってcは奇数になる. (2) (「a,bは互いに素」という条件をどう使うか,それが問題だ) a2=c2−b2=(c−b)(c+b) だから
c−b=p2
c+b=q2 (p, qは1,奇数の素数またはそれらの積で,互いに素)とおける.
152+82=172のような場合に152=172−82=9×25において
このときc−b=3 c+b=3×25 のように分けると b= ![]() c=
だから![]() a+c=
ここで,p, qは奇数だから,p+q=2dとおける.![]() ![]() a+c=
![]() ![]()
【問題5】
【例4】に次の小問を追加した場合,すなわち 自然数a, b, cについて,等式a2+b2=c2が成り立ち,かつa, bは互いに素とする. (3) aが奇数のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください. (筆者が練習問題として追加したもの)
1b+c=k2となる自然数kが存在する 2b+c=2k2となる自然数kが存在する 3b+c=3k2となる自然数kが存在する 4b+c=4k2となる自然数kが存在する 5b+c=5k2となる自然数kが存在する HELP
【例4】の結果から,b+c=q2が成り立ちます.
他の選択肢が間違いであることは,1つの反例で示すことができます. すなわち,32+42=52の場合を考えると
b+c=9 → 2k2にならない
b+c=9 → 3k2にならない b+c=9 → 4k2にならない b+c=9 → 5k2にならない
→1
(参考1)
aは奇数,bは偶数,cは奇数として,a2+b2=c2が成り立ち,かつa, bは互いに素となる例
(参考2) 上記の【例4】においてp+q=2m, q−p=2nとおくと
a=m2−n2
となるからb= ![]() c= ![]() a2+b2=c2(ピタゴラス数)で(aが奇数),a,bが互いに素な自然数の組はすべて, (m2−n2)2+(2mn)2=(m2+n2)2 の形に書くことができ, a+c=m2−n2+m2+n2=2m2 b+c=2mn+m2+n2=(m+n)2 が成り立ちます. |
[ポイント1]==ド・モルガンの法則==
(少なくとも1つは ・・・である)の否定は(すべて・・・でない)
[ポイント2]==背理法==
「ある命題が成り立つ」ことを示すには「その否定から矛盾を示せばよい」 【例1】では,「両方とも3で割り切れない」と仮定すれば矛盾を生ずるという構造になっています. (参考:前提の働き) ○ P:「a, b, cは正の整数」,Q:「a2+b2=c2」,R:「a, bの少なくとも1つは3で割り切れる」とするとき,もとの命題が
(PかつQ)ならばR
であるとき,これを対偶を用いて証明するには
——Rならば(——Pまたは——Q)
を示す必要があります.![]() ——Rならば(——PかつQ) ——Rならば(——Pかつ——Q) の3通り考えられます. ○ これに対して,
PのときQならばR
の形の主張では,Pは前提といわれ,これが成り立たない場合——Pを考える必要はありません. だから「PのときQならばR」の 「逆」を示したいときは
(PかつR)ならばQ
「裏」を示したいときは
(Pかつ——Q)ならば——R
「対偶」を示したいときは
(Pかつ——R)ならば——Q
を示せばよく,Pは常に仮定の側に入れてよいことになります.○ 特に,「PのときQならばR」を背理法で示すには,その否定
PかつQかつ——R → 矛盾
を示せばよいことになります.
【問題1】
a, b, cが正の整数で,a2+b2=c2のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください. 1a, b, cのうち少なくとも1つは奇数 2a, b, cはすべて奇数 3a, b, cのうち少なくとも1つは偶数 4a, b, cはすべて偶数 HELP
(全体の見通し)
2で割った余りの一覧表
他方で,32+42=52 → 62+82=102のように,全部偶数という場合はあります.(1はダメ) 32+42=52の場合を考えると,全部偶数とは限りません.(4はダメ) → 2の否定が3なので,2が成り立たないことを証明すればよい. (記述問題のとき) a=2l+1, b=2m+1, c=2n+1のとき,
a2+b2=4L+1+4M+1=2(2L+2M+1)
となって,これらは等しくならないから,すべて奇数の場合は,a2+b2=c2とはならない.したがって,少なくとも1つは偶数.
c2=4N+1+=2(2N)+1
→3
【問題2】
a, b, c, dが正の整数で,a2+b2+c2=d 2のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください. 1a, b, c, dのうち少なくとも1つは3の倍数 2a, b, c, dはすべて3の倍数 3a, b, c, dのうち少なくとも1つは3の倍数でない 4a, b, c, dはすべて3の倍数でない HELP
(全体の見通し)
3で割った余りの一覧表
12+22+22=32
なども参考にしながら,上の一覧表を見ると32+62+62=92 32+42+122=132 すべて3の倍数でなければ,3で割った余りは1+1+1=3 → 0となって,成り立たない.(4はダメ) 他方で,12+22+22=32 → 32+62+62=92のように,全部3の倍数という場合はあります.(3はダメ) 12+22+22=32の場合を考えると,全部3の倍数とは限りません.(2はダメ) → 4の否定が1なので,4が成り立たないことを証明すればよい. (記述問題のとき) a=3p±1, b=3q±1, c=3r±1, d=3s±1のとき,
a2+b2+c2=3P+1+3Q+1+3R+1=3(P+Q+R+1)
となって,これらは等しくならないから,すべて3の倍数でない場合は,a2+b2+c2=d 2とはならない.したがって,少なくとも1つは3の倍数.
d 2=3S+1
→1
【問題3】
nを正の整数とするとき,n2を6, 7 ,8, 9で割ったときの余りについて,正しいものを選んでください. 1余りが2になることはない 2余りが3になることはない 3余りが4になることはない 4余りが5になることはない HELP (全体の見通し)
余りが2,3,4になることは,反例として1つ示せばよい. 余りが5にならないことは証明すればよい.
→4
(記述問題のときの答案)n=3のときn2=9を7で割った余りは2になるから1は不可 n=3のときn2=9を6で割った余りは3になるから2は不可 n=4のときn2=16を6で割った余りは4になるから3は不可 n=6k,6k±1,6k±2,6k+3のときn2=6N, 6N+1, 6N+4, 6N+3だから6で割った余りは5にならない n=7k,7k±1,7k±2,7k±3のときn2=7N, 7N+1, 7N+4, 7N+2だから7で割った余りは5にならない n=8k,8k±1,8k±2,8k±3, 8k+4のときn2=8N, 8N+1, 8N+4, 8N+1, 8Nだから8で割った余りは5にならない n=9k,9k±1,9k±2,9k±3, 9k±4のときn2=9N, 9N+1, 9N+4, 9N, 9N+7だから9で割った余りは5にならない
【問題4】
a, b, cが正の整数で,a2+b2=c2のとき,次のうちでつねに成り立つものを選んでください. 1abは15の倍数になる 2abは24の倍数になる 3abcは48の倍数になる 4abcは60の倍数になる HELP
(全体の見通し)
【例題1,2,3】の結果から,a, b, cの少なくとも1つは3, 4, 5の倍数で,これらの3数は互いに素だからabcは3×4×5=60で割り切れます. 成り立たないことの証明は,反例を1つ示せばよい.
以下は,a, b, c≦50での例
(*) の場合abは15の倍数でない字下げは単なる定数倍 32+42=52 …(*) 62+82=102 92+122=152 …… 52+122=132 102+242=262 152+362=392 …… 72+242=252 142+482=502 …… 82+152=172 162+302=342 92+402=412 …… 122+352=372 …… 202+212=292 …… (*) の場合abは24の倍数でない (*) の場合abcは48の倍数でない
1個の例だけで全部答えられるので,他の例は証明上は不要.
→4
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