← PC用は別頁
自然対数の底(ネイピア数)に関係する極限値の取り扱いは,かなり骨折れる作業になる.
このページでは,指数関数や対数関数の微分公式を先に練習して,(楽しく)基本問題が解けることを目指す.それらの根拠となっている自然対数の底(ネイピア数)に関係する極限値の取り扱いは,難行苦行になるので後回しにする.
【要約】
• 定数は「自然対数の底」または「ネイピア数」(ネイピア:対数を研究した学者の名.16〜17世紀,イギリス)と呼ばれる. (最初の3桁が言えれば十分であるが,「 • の形の関数を「を …(1) (この公式の証明は,このページの下の方にあります.先に公式の使い方の練習をします.) 底が以外の数の場合には,微分の計算は少しややこしくなる. …(2)
底が以外のときは,に直して計算すると簡単になる.そのために,次の公式を使う.
• 数学Uでは,様々な底の値を使うが,微分積分では,ほとんどの場合「自然対数の底」を使う.
↑右辺の対数をとると,となるから,右辺はに等しい. そこで, になる. この変形が分からない場合は,次のように考えてもよい.
底は底,指数形と対数形で,中と外が入れ替わる
対数の定義:同じものは同じものに等しいから: |
【指数関数の微分 公式1】
【例1.1】
(解答)を微分してください. …(答)
【例1.2】
(解答)を微分してください. …(答) |
【基本問題】(高校数学Vの教科書レベル)
【問1.1】
を微分してください.
積の微分法を利用する
(解答)…(答)
【問1.2】
を微分してください.
商の微分法
(解答)を利用する …(答)
【問1.3】
を微分してください.
合成関数の微分法
(解答)を利用する とおくと …(答)
【問1.4】
を微分してください.
合成関数の微分法
(解答)を利用する とおくと …(答) |
【指数関数の微分 公式2】
【例2.1】
(解答)を微分してください. …(答)
【例2.2】
(解答)を微分してください. …(答) |
【基本問題】(高校数学Vの教科書レベル)
【問2.1】
を微分してください.
合成関数の微分法
(解答)を利用する とおくと …(答)
【問2.2】
を微分してください. において,とする …(答) (別解) と変形して,商の微分法を用いると …(答)
【問2.3】
を微分してください.
合成関数の微分法
(解答)を利用する とおくと …(答)
【問2.4】
を微分してください.
合成関数の微分法
(解答)を利用する とおくと …(答) |
【要約】
• の形の関数を「を • 定数を底とする対数関数を使うと,微分の計算が簡単になる. …(1) 底が省略されているときは,底はである. …(1') 底が以外の数の場合には,微分の計算は少しややこしくなる. …(2)
底の変換公式を使うと,だから
• 数学Uでは,様々な底の値を使うが,微分積分では,ほとんどの場合「自然対数の底」を使う.
になる. |
【例3.1】
(解答)を微分してください.
ではないことに注意
だから…(答) (別解) 合成関数の微分法を用いる …(答)
【例3.2】
(解答)を微分してください. とおく …(答) |
【例4.1】
(解答)を微分してください. …(答)
【例4.2】
(解答)を微分してください. …(答) |
【備考】
(1)と(2)の違いについて…(1) …(2) 関数の定義域については,特に指定されていない限り,その関数が意味を持つなるべく広い範囲を考えます. ア) まず,の定義域は,で,その範囲でだから,右上がりのグラフになります. イ) 次に,は, だから,のときは,合成関数の微分法により いずれの場合も,導関数はになります. ただし,次のようになっていることに注意(のとき,だから,右下がりの関数) はだけで定義される関数 はこれらを貼り合わせただけのもの.
※対数微分法においては,真数が負になる場合にも対応できるように,絶対値付きの対数にして微分することが多いが,の微分はの微分と全く同じ形で,になることを覚えておこう
|
【例5.1】
(解答)を微分してください. 合成関数の微分法を用いる …(答)
【例5.2】
(解答)を微分してください. 合成関数の微分法を用いる …(答) (別解) だから …(答) |
対数微分法 多くの関数の積商で表わされる関数や複雑な合成になっている関数を微分するとき,元の関数の(絶対値の)対数を微分すると計算できることがある.元の関数の(絶対値の)対数を微分する方法を対数微分法という. 例1 のとき 両辺を x で微分する. 左辺の微分は z=log|y| とおくと,合成関数の微分法により = = · y’= …(対数微分法の左辺は常にこの式になる) 右辺の微分は − したがって,=− y’=y(−)=(−) = 例2 y=xx ( x>0 ) のとき log y=x log x =log x+x · =log x+1 ゆえに,y’=xx (log x + 1) |
問題 次の関数の導関数を求めよ. |
------------------ y=et t=5x とおく ------------------ ==e5x · 5=5e5x → 閉じる ← |
|
y=xe−x → y’=e−x+x(−e−x)=e−x(1−x)
→ 閉じる ← |
|
y=log(x2+1) ----------------- y=log t t= x2+1 とおくと ----------------- = =·2x= → 閉じる ← |
|
○ (logax)’= の公式を覚えているとき y=log103x ----------------- y=log10t t= 3x とおくと ----------------- = =· 3== ○ 微分公式は底が e のものに絞るとき y=log103x → y= → y’= いずれの場合でも,(**2)の公式から,定数3は登場しないことに注意 (y= 定数 ↓log103+log10x とすれば分かる) → 閉じる ← |
|
対数微分法による y=xlog x (x , y>0) → log y=(log x)2 (| |はなくてもよい) =2logx·= y’=xlogx·=x−1+log x(2log x) → 閉じる ← |
|
対数微分法による y= → log|y|=(log x+log(x+1)) =(+)= y’=·= → 閉じる ← |
指数関数,対数関数の重要な極限値 *** 自然対数の底,ネイピア数の定義 *** 指数関数の導関数をその定義に従って求めようとすると,次のに示した極限値が必要になる. また,対数関数の導関数をその定義に従って求めようとすると,次のに示した極限値が必要になる. とおく |
これらの極限値を含む次の約10個の極限値は,互いに密接に結びついており,(1)の「自然対数の底」「ネイピア数」を使って表すことができる.
(1) (は整数)
(2) (は整数)
(3) (は実数)
(4) (は実数)
(5) (は実数)
(6) (は実数)
(7) (は実数)
(8) (は実数)
(9) (は実数)
(10)
(11)
|
(1)の解説 の値は,次の表のようになり,グラフは右図のようになります.
nが大きくなると,の値は増加します.すなわち,はnに関して「単調増加」になっています. しかし,nが限りなく大きくなっても,の値は3よりも大きくならないことを示すことができます(下記). このような性質を持った数列,すなわち「単調かつ有界な数列は収束する」というのは実数の連続性に関する重要定理(公理)ですが,この定理の証明は難し過ぎるのでここでは扱わず,この結果を利用することにする.
他の例として,例えばという数列は単調減少でだから,下に有界です.この数列は0に収束します.
1) 数列が単調増加であることの証明を二項定理を用いて展開すると 第2項まではnの値に依らず等しいが,第k項(k≧3)はnが大きくなると が小さくなるから は大きくなる. このようにnが大きくなると,対応する第k項(k≧3)はすべて大きくなり,さらに最後の項も増えるから,nに関して単調増加になる. 2) 有界であることの証明(特に3よりも小さいことの証明) において,各々のは1よりも小さいから ここでk≧2のとき(分母が大きいと1より小さくなるから) したがって 1)2)より,数列は「単調増加」かつ「上に有界」であるから,収束する. |
(1)→(2)の証明 (1)→(3)の証明 のとき (1)のにより,第1辺,第3辺ともに収束するから, (3)→(4)の証明 (2)→(4)の証明 (1)→(3)と同様にして示される |
(3)(4)→(5)の証明 とおくと, ア) のとき, イ) のとき, (5)→(7)の証明 (5)→(6)の証明 とおくと,のとき, の対数をとると (*) (7)→(6)の証明 上記の(5)→(6)の証明中の(*)から1とできる |
(6)→(8)の証明 (7)→(9)の証明 分子の底の変換を行うと (8)→(9)の証明 とおくと のとき, の対数をとると |
(6)(8)→(10)の証明 (7)(9)→(11)の証明 |
(10)(11)の補足説明 ■極限値の議論にうんざりしている人へ■ 自然対数の底(ネイピア数)は,以上のように精密な極限値としての定義,導入するのが理科系向きですが,そこまで詳しいものは必要ないと考えている人,または,極限値の議論にはうんざりで「ついていけない」と考えている場合には,右図のようにグラフを用いて視覚的に導入することもできます. まず,のグラフでは,のときになるので,点を通りますが,その点で「傾きがちょうど1になる」のは底がの場合です. そこで,が「ちょうど1になる値」をと定めたことになります. 同様にして,のグラフでは,のときになるので,点を通りますが,その点で「傾きがちょうど1になる」のは底がの場合です. そこで,が「ちょうど1になる値」をと定めたことになります. |
3. 極限値の計算問題 問題 次の極限値を求めよ.(選択肢から選べ.) 2 2e e2 |
[ 採点と途中経過 ] ( ) n =(1−) n == ←(*1) (別解) ( ) n = = = = ←(*1) |
|
(1+) n ={ (1+) }2 =e2 ←(*1) |
|
y=(1+x3) とおくと log y=log(1+x3) =x2 → 0 ( x → 0 ) ←(*6)だから y → 1 ( x → 0 ) |
|
=· 2=2 …(*4) |
|
=· = …(*6) |
...(携帯版)メニューに戻る ...(PC版)メニューに戻る |
■[個別の頁からの質問に対する回答][指数関数,対数関数の導関数について/18.7.17]
コメント失礼しますm(__)m
lim x→0 (e^x + x )^1/x という問題をネットで見つけたのですが解けなくて困っています;_;
よければ解いていただけないでしょうか?
■[個別の頁からの質問に対する回答][指数関数,対数関数の導関数について/18.7.16]
=>[作者]:連絡ありがとう.よそ様の問題には干渉しないようにしています(wxMaximaに問題を書き込めば答えが出ます:e2) コメント失礼しますm(__)m
この分野で3日くらいつまづいていて困っています。この指数対数関数の微分の分野って、ここまで登場した極限値のまとめのところの極限値の導出をできるようにして、問題を解くときはこのような極限値の形に帰着できるようにしていくものなんでしょうか?
なかなか問題が解けるようにならないので、どう勉強していけばいいか教えて欲しいですm(__)m
■[個別の頁からの質問に対する回答][指数関数,対数関数の導関数について/17.5.23]
=>[作者]:連絡ありがとう.極限値にまで遡っている問題(3.のような問題)が出たら,定義に戻って極限値を求めます.普通の場合(4.のような問題)は,により機械的に処理します 分かり易いI解説で助かっています。ありがとうございます。「πと並んで有名な無理数」の「π」ですが、GoogleChromeで見ると「n」に見えてしまいます。よく見ると「π」なのですが、一見すると[n」に見えます。ご報告まで。
■[個別の頁からの質問に対する回答][指数関数,対数関数の導関数について/16.12.7]
=>[作者]:連絡ありがとう.確かにGoogle Chromeで見るとゴシック体で表示されるようですので変更しました. 正解をしているのに×がつきます
■[個別の頁からの質問に対する回答][指数関数,対数関数の導関数について/16.11.15]
=>[作者]:連絡ありがとう.何番の問題に何と答えたのか述べないと,話が通じません. 独学で学ぶのに役立つので、嬉しい。
=>[作者]:連絡ありがとう. |