■ 軌跡の方程式1○ 点が動いたあとを「軌跡」という.右図1は,バッターが打った球が飛んで行った軌跡で,右図2は窓ガラスの表面をカタツムリが歩いた?軌跡のイメージ図である. ○ 高校数学IIでは,「 xy 平面上で動点 P が与えられた条件を満たしながら動くとき, P の軌跡の方程式を求めよ.」という問題を扱う. ○ 例えば,「2定点 A , B からの距離が等しい点の軌跡は,線分 AB の垂直二等分線になる」(中学校で習う二等辺三角形の性質 ⇒ 頂角の二等分線は底辺を垂直に二等分することから示される)が,この垂直二等分線の方程式は次の例題1のようにして求めることができる. なお,初歩的なことであるが, PA や PB の長さは一定ではなく,PA や PB の長さは変化するがそれらの長さは等しい:PA=PB という条件を満たしながら PA , PB の長さが変化することに注意. ![]()
[例題1] [2定点から等距離にある点の軌跡]
[解答]2定点 A( - 1 , 3) , B(3 , - 1) からの距離が等しい点の軌跡の方程式を求めよ. 点 P の座標を (x , y) とおく. 2点 AP 間の距離は AP= ![]() 2点 BP 間の距離は BP= ![]() AP=BPのとき ![]() ![]() 両辺を2乗すると (x+1)2+(y−3)2=(x−3)2+(y+1)2 x2+2x+1+y2−6y+9=x2−6x+9+y2+2y+1 8x−8y=0 y=x (必要条件) 逆に,y=x のとき,(この式を逆にたどっていくと)(1)が成り立つ.(十分条件) ゆえに,求める軌跡の方程式は y=x …(答) |
図1
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■以下においてよく使う公式
【2点間の距離の公式】 2点 A(x1 , y1 ) , B(x2 , y2 ) 間の距離は AB= ![]()
【要点】 軌跡の方程式の求め方
(I) 動点の座標を (x , y ) とおく. 「軌跡の方程式」とは,「動点の x 座標と y が満たす関係式」のことと考えればよい.これを求めるためには,必ず x 座標と y 座標がいる.(II) 与えられた条件を満たす x , y の関係式を作る. 「与えられた条件 ⇒ 関係式(図形)」で求まる式(図形)は,与えられた条件が成立するための「必要条件」になっている.(III) (II)で求めた関係式を満たす点が元の条件を満たすかどうか確かめる. 「関係式 ⇒ 与えられた条件」が成り立つかどうか調べる.「BならばA」が成り立つときBはAの「十分条件」と呼ばれる.十分条件が成り立つことを,十分性を満たすともいう. |
[問題1]
2定点 A(−2, 1) , B(3 , 0) から等距離にある点 P の軌跡を求めよ. |
動点 P の座標を (x , y) とおく. 2点 AP 間の距離は AP= ![]() 2点 BP 間の距離は BP= ![]() AP=BP ならば ![]() ![]() 両辺を2乗すると (x+2)2+(y−1)2=(x−3)2+y2 x2+4x+4+y2−2y+1=x2−6x+9+y2 10x−2y−4=0 y=5x−2 (必要条件) 逆に,y=5x−2 のとき,(この式を逆にたどっていくと)(1)が成り立つ.(十分条件) ゆえに,求める軌跡の方程式は y=5x−2 …(答) |
[例題2] [2定点からの距離の比が一定である点の軌跡]
2定点 A(−2 , 0) , B(4 , 0) からの距離が 1 : 2 である点の軌跡を求めよ. ![]() 点 P の座標を (x , y) とおく. 2点 AP 間の距離は AP= ![]() 2点 BP 間の距離は BP= ![]() AP : BP=1 : 2 ならば ![]() ![]() 内項の積・外項の積は等しいから 2 ![]() ![]() 両辺を2乗すると 4 { (x+2)2+y2 } = { (x−4)2+y2 } 4 { x2+4x+4+y2 } = { x2−8x+16+y2 } 4x2+16x+16+4y2 =x2−8x+16+y2 3x2+24x+3y2=0 x2+8x+y2=0 (x+4)2+y2=16…(2) (必要条件) 逆に,(2) のとき,(この式を逆にたどっていくと)(1)が成り立つ.(十分条件) ゆえに,求める軌跡の方程式は (x+4)2+y2=16 点 (−4 , 0) を中心とする半径 4 の円 …(答) |
○ 一般に「2定点からの距離の比が一定(1:1を除く)であるような点の軌跡は円になる」ことが知られている.(1:1のときは2定点を結ぶ線分の垂直二等分線になる.) ○ このようにしてできる円を「アポロニウスの円」という.(アポロニウスはB.C.200年頃のギリシャの数学者 ) ○ 左のアニメーションにおいて,2定点と動点とが一直線上に並ぶときを考えると,「アポロニウスの円は,2定点の内分点と外分点を直径の両端とする円になる.」ことが分かる. すなわち,「2定点A,Bからの距離の比がm:n(ただしm≠n)である点の軌跡は,ABをm:nに内分する点とm:nに外分する点をそれぞれ直径の両端とする円になる.」といえる.(教科書に書かれているとは限らないので,黙って使うことはできないが,結果を予測するのには役立つ.) 例 2定点 A(0 , 0) , B(4 , 0) からの距離が 3 : 1 である点の軌跡 AB を 3 : 1 に内分する点は C(3 , 0) AB を 3 : 1 に外分する点は D(6 , 0) CD が直径だから,中心 ( ![]() ![]() (x− ![]() ![]() ![]() |
[問題2]
2定点 A(−2 , 0) , B(3 , 0) に対して AP : BP=2 : 3 となる点 P の軌跡を求めよ. |
動点を P(x , y) とおく. AP : BP=2 : 3 ならば ![]() ![]() 3 ![]() ![]() 両辺を2乗すると 9{(x+2)2+y2}=4{ (x−3)2+y2} 9{x2+4x+4+y2}=4{ x2−6x+9+y2} 9x2+36x+36+9y2−4x2+24x−36−4y2=0 5x2+60x+5y2=0 x2+12x+y2=0 (x+6)2+y2=36 (必要条件) 逆に,(x+6)2+y2=36 のとき,(この式を逆にたどっていくと)(1)が成り立つ.(十分条件) ゆえに,求める軌跡の方程式は (x+6)2+y2=36 中心が (−6 , 0),半径が 6 の円 …(答) |
[例題3] [2定点からの距離の2乗の差が一定である点の軌跡]
[解答]2定点 A(−2 , 0) , B(2 , 0) に対して AP2−BP2=8 となる点 P の軌跡を求めよ. 点 P の座標を (x , y) とおく. { (x+2)2+y2 }−{ (x−2)2+y2 }=8 (2乗なので根号がはずれている.) { x2+4x+4+y2 }−{ x2−4x+4+y2 }=8 8x=8 x=1 逆が成り立つのは明らか ゆえに,求める軌跡の方程式は x=1 …(答) |
※ 記号 AP は線分 AP の長さを表わし,AP2 は AP×AP を表わす. 例えば AP=3 ならば AP2=9 となる. 一般の文字式 ab2 などとは異なり, P だけを2乗している訳ではない. (参考) ![]() AP2=AH2+PH2 - ) BP2=BH2+PH2 ![]() AP2−BP2=AH2−BH2=8 ここで AH+HB=4 だから AH−HB=2 となる点 H に立てた垂線 HP 上に P があればよい. |
[問題3]
2定点 A(−2 , 0) , B(2 , 0) に対して AP2+BP2=16 となる点 P の軌跡を求めよ. |
点 P の座標を (x , y) とおく. { (x+2)2+y2 }+{ (x−2)2+y2 }=16 { x2+4x+4+y2 } + { x2−4x+4+y2 }=16 2x2+2y2+8=16 x2+y2=4 (必要) 十分性は明らか ゆえに,求める軌跡の方程式は x2+y2=4 …(答) |
[類題1]
2定点 A(1 , 2) , B(3 ,−4) から等距離にある点 P の軌跡を求めよ. |
点 P の座標を (x , y) とおく. AP=BP ならば AP2=BP2 (x−1)2+(y−2)2 = (x−3)2+(y+4)2 x2−2x+1+y2−4y+4=x2−6x+9+y2+8y+16 4x−12y−20=0 x−3y−5=0 (必要) 十分性は明らか ゆえに,求める軌跡の方程式は x−3y−5=0 …(答) |
[類題2]
2定点 A(−2 , 0) , B(6 , 0) からの距離の比が 1 : 3 である点の軌跡を求めよ. |
点 P の座標を (x , y) とおく. AP : BP=1 : 3 ならば 3AP=BP 両辺を2乗すると 9AP2=BP2 9 { (x+2)2+y2 }=(x−6)2+y2 9 { x2+4x+4+y2 }=x2−12x+36+y2 8x2+8y2+48x=0 x2+y2+6x=0 (x+3)2+y2=9 (必要) 十分性は明らか ゆえに,求める軌跡は,中心の座標が (−3 , 0),半径が 3 の円 …(答) |
[類題3]
2定点 A(0 , 0) , B(6 , 0) に対して AP2−BP2=24 となる点 P の軌跡を求めよ. |
点 P の座標を (x , y) とおく. { x2+y2 }−{ (x−6)2+y2 }=24 12x=60 x=5 十分性は明らか ゆえに,求める軌跡の方程式は x=5 …(答) |
■[個別の頁からの質問に対する回答][軌跡の方程式1について/17.6.19]
半世紀ぶりの数学の学び直し、脳内の霧が晴れていくような気持がしています。本当に有難いサイトです。ありがとうございます。
■[個別の頁からの質問に対する回答][軌跡の方程式1について/17.6.10]
=>[作者]:連絡ありがとう. 例題1の解答で2点 AP 間の距離は AP=√(x+1)2+(y-3)2 とありましだか、それはどうしてですか??詳しくお願いします!!よろしくお願いします!
■[個別の頁からの質問に対する回答][軌跡の方程式について/17.1.5]
=>[作者]:連絡ありがとう.回答の文章を考えるときに,いつも思うのは,この人は何歳ぐらいの人で,この分野の内容をどれくらいやった人なのだろうかが不明の場合に,どこまで答えるのかということです.もし,高校生になっていない人が,たまたま検索でヒットした頁に質問しているのなら,それなりに事前学習をしてもらわないと言えないこともあります.
その頁の右半分に書いてありますように,2点
これが「なぜ?」ということでしたら,中学校3年のこの教材を初めに読んでいただく必要があります.
したがって,2点 とても分かりやすかった
=>[作者]:連絡ありがとう. |
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