■ 定積分の漸化式

※ 不定積分の漸化式の項を先に読むこと
○1

  sinnx dx=In (n0) とおくとき,

In= In−2 (n2)

が成り立つ.


I0= dx=x=

I1=sin x dx=cos x= 1

だから,上記の漸化式を用いると
ア) nが偶数のとき

In= ·

イ) nが奇数のとき

In=

(証明)
 不定積分の漸化式の項において

 sinnx dx=In (n= 2, 3, 4, ···)とおくと

In= − +In−2

となっているが,これを用いて区間0xの定積分を考えると,
sin0=0 , cos=0
になるので,

sinnx dx= + sinn−2x dx

=(− )−(− )+ sinn−2x dx

=0 + sinn−2x dx= sinn−2x dx


すなわち,In= In−2

が成り立つ.
○2

  cosnx dx=In (n0) とおくとき,

In= In−2 (n2)

が成り立つ.


I0= dx=x=

I1=cos x dx=sin x= 1

だから,上記の漸化式を用いると
ア) nが偶数のとき

In= ·

イ) nが奇数のとき

In=

(証明)
 不定積分の漸化式の項において

 cosnx dx=In (n= 2, 3, 4, ···)とおくと

In= +In−2

となっているが,これを用いて区間0xの定積分を考えると,
sin0=0 , cos=0
になるので,

cosnxdx=+ cosn−2xdx

=()−()+cosn−2x dx

=0+ cosn−2x dx= cosn−2x dx


すなわち,In= In−2

が成り立つ.
○3

  tannx dx=In (n0) とおくとき,

In= −In−2 (n2)

が成り立つ.


I0= dx=x=

I1=tan x dx=log|cos x|= log2

I2=1−I0=1−
I3= log2

(証明)
 不定積分の漸化式の項において

 tannx dx=In (n= 0, 1, 2, ···)とおくと

In= −In−2 (n= 2, 3, 4, ···)

となっているが,これを用いて区間0xの定積分を考えると,
tan0=0 , tan=1
になるので,

tannx dx= tann−2x dx

= −In−2


○4

  (log x)n dx=In (n0) とおくとき,

In= e−nIn−1 (n1)


が成り立つ.


I0= dx=x= e−1

I1=e−I0=e−(e−1)=1

I2=e−2I1=e−2
I3=e−3I2=e−3(e−2)=−2e+6

(証明)
 不定積分の漸化式の項において

(log x)ndx=In (n=0,1,2, ···)とおくと

In= x(log x)n−nIn−1 (n= 1, 2, 3, ···)
となっているが,これを用いて区間1xeの定積分を考えると,
1(log1)=0 , e log e=e
になるので,

(log x)n dx= x(log x)n−n (log x)n−1 dx

= e−nIn−1
○5

  xm(1−x)n dx=In (n0) とおくとき,

In= In−1 (n1)

が成り立つ.


I0=xm dx= xm+1 =

I1= I0=

In= In−1=

=

(証明)

 In= xm(1−x)n dxと見る
f=(1−x)n f’=n(1−x)n−1(−1)
g=xm+1 g’=xm
部分積分法の公式

fg’ dx=fg−f’g dx
を適用すると
xm(1−x)n dx

= (1−x)nxm+1 + n(1−x)n−1xm+1 dx

= (1−x)n−1xm+1 dx

= (1−x)n−1{ xm−xm(1−x) } dx

= { (1−x)n−1xm−(1−x)nxm } dx

In= (In−1−In )
(m+1)In= n(In−1−In )
(m+n+1)In= nIn−1

In= In−1

(他の例)
(6)

とおくと
・・・(6.1)
・・・(6.2)
(解説)
(6.1)←
次のようにf(x), g(x)をおいて,部分積分

f(x)g’(x) dx=f(x)g(x)f’(x)g(x) dx
を行う



(6.2)←
次のようにf(x), g(x)をおいて,部分積分

f(x)g’(x) dx=f(x)g(x)f’(x)g(x) dx
を行う



 実際に使う場合には,(6.1)(6.2)の左辺を右辺に変形できるのは,m, n=1, 2, 3, ...のときですが,そのときの右辺には,m, n=0 の場合が登場します.
 結局,m=0 または n=0 が登場するまでは変形できるが,m=0 または n=0 が登場したら,もう漸化式は使えないということです.
m | n01234567
0






1





2





3





4





5





6





7





 例えば,この表の

は,(6.1)の漸化式を適用して,「mを1減,nを1増」させる変形を行うと,赤色で示した値をたどって,に至る.
このは,漸化式を使った変形をそれ以上行えないが,積分の値を直接計算できる.








(6.2)の漸化式を適用して,「mを1増,nを1減」させる変形を行うと,青色で示した値をたどって,に至る.
このも,積分の値を直接計算できる.







※一般に,上記の形で定義された

は,次の式にまとめられます.


《広義積分》
(#1) 定積分の下端や上端の値が有限で,端の点で関数の値が(正負の)無限になる場合

 例えば,は,次の定積分の下端において無限大になるが,右辺の極限値が定まる場合には,その極限値をもって定積分の値とする.

(#2) 定積分の下端または上端が有限でない場合

例えば,次の定積分の上端は無限大であるが,右辺の極限値が定まる場合には,その極限値をもって定積分の値とする.


(7)

とおくと

(解説)
 この積分は,上記の広義積分の解説において,(#1)の場合になっています.(のとき,
次のようにf(x), g(x)をおいて,部分積分

f(x)g’(x) dx=f(x)g(x)f’(x)g(x) dx
を行う



とおくと

これは,∞/∞の場合のロピタルの定理により

ゆえに
・・・(*1)
のときとおくと

だから
・・・(*2)

ところで,



(8)

とおくと
(解説)
 この積分は,上記の広義積分の解説において,(#2)の場合になっています.
次のようにf(x), g(x)をおいて,部分積分

f(x)g’(x) dx=f(x)g(x)f’(x)g(x) dx
を行う


は,∞/∞の場合のロピタルの定理により

この変形を繰り返すと
・・・(*3)
ところで

上記の(*3)により,第1項は0になるから


この変形を繰り返すと

《よく登場する極限》
○1 指数関数は,どんなn次式に対してもの極限において,の争いで勝てる

○2 対数関数は,どんなn次式に対してもの極限において,の争いで負ける

○3 対数関数の極限にある穴は,1枚に対しての争いで負ける

が束になってかかっても,負ける

もちろん,が束になっている場合は,当然負ける

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