== 不定積分の漸化式 ==
○ はじめに
 数列の漸化式では「一般項を求める」ことに関心を向けられることがあるが,不定積分の漸化式から一般項を求めるのは困難なことが多い.
 不定積分の漸化式を利用して第n項を求めるには,低次の項から順に高次の項を求めるという原始的な方法をとる.
 各々の漸化式を証明するには,被積分関数の次数が低くなるように部分積分を行うとよい.それでだめなら置換積分を考える.
 ※ なお,この頁に登場する「公式を覚える」必要はない…「部分積分・置換積分で公式を作れる」という体験があればよく,利用方法については「一般項を求めるのではない」ということが分かればよい.



○1 sinnx dx=In (n=2,3,4,···)とおくと

In= − +In−2 (n= 2, 3, 4, ···)
(証明)
 
In=sinn−1x sinx dxと見る.
f=sinn−1x f’=(n−1)sinn−2x cosx
g=−cosx g’=sinx
部分積分法の公式

fg’ dx=fg−f’g dx
を適用すると
sinn−1x sinx dx

=sinn−1x(−cosx)−(n−1)sinn−2x cos x(−cos x) dx

=sinn−1x(−cosx)+(n−1)sinn−2x (1−sin2x) dx

=sinn−1x(−cosx)+(n−1)(sinn−2x −sinnx) dx
したがって
In= −sinn−1x cosx+(n−1)In−2−(n−1)In
nIn= −sinn−1x cosx+(n−1)In−2
ゆえに
In= − +In−2

○1を用いるとsinnx dxを「nの次数の低いものから順に」求めることができる.(いきなり一般項が求められるわけではない.)

(1) はじめにI0I1は漸化式を利用せずに,通常の積分計算によって求めておく.
I0= dx=x+C
I1=sin x dx= −cos x+C
(2) n= 2, 3, 4, ···となるnについては,漸化式を利用して低次のInで表す.(この問題では,InIn−2の関係式になっているので,奇数番号の系列と偶数番号の系列に分かれる.)
I2= − +I0 = − +x+C

I4= − +I2

= − +( − +x)+C

= − sinx cosx+x+C



I3= − +I1

= − cos x+C

I5=− +I3

=− +(− cosx)+C

=− sin2x cosx− cosx+C


※試験に出ない問題:
 試験の時間が例えば50分間だとすると,筆算の問題でI8とかI9などが出題される可能性はまずない.なぜなら,そのような問題を出すと1題解くために非常に時間がかかり他の問題に割り当てる時間がなくなるため,非常にいびつな問題構成になってしまうから
♪〜出題したくても出題できない〜♪
 プログラミングの問題としては,帰納的に定義されている問題は再帰的な関数によって解決できる.
0n50のときのInの検算↓
sinx dx= (n= 2, 3, 4, ···)
計算する 消す


○2 cosnx dx=In (n=2,3,4,···)とおくと

In= +In−2 (n= 2, 3, 4, ···)
(証明)
 
In=cosn−1x cosx dxと見る.
f=cosn−1x f’=(n−1)cosn−2x(−sinx)
g=sinx g’=cosx
部分積分法の公式

fg’ dx=fg−f’g dx
を適用すると
cosn−1x cosx dx

=cosn−1x sinx−(n−1)cosn−2x (−sin x)sin x dx

=cosn−1xsinx+(n−1)cosn−2x (1−cos2x) dx

=cosn−1x sinx+(n−1)(cosn−2x −cosnx) dx
したがって
In= cosn−1x sinx+(n−1)In−2−(n−1)In
nIn= cosn−1x sinx+(n−1)In−2
ゆえに
In= +In−2
○2を用いるとsinnx dxを「nの次数の低いものから順に」求めることができる.

(1) はじめにI0I1は漸化式を利用せずに,通常の積分計算によって求めておく.
I0= dx=x+C
I1=cos x dx= sin x+C
(2) n= 2, 3, 4, ···となるnについては,漸化式を利用して低次のInで表す.(この問題では,InIn−2の関係式になっているので,奇数番号の系列と偶数番号の系列に分かれる.)
I2= +I0 = +x+C

I4= +I2

= +( +x)+C

= +cosx sinx+x+C



I3= +I1

= +sin x+C

I5= +I3

= +( + sinx)+C

= + cos2x sinx+ sinx+C


0n50のときのInの検算↓
cosx dx= (n= 2, 3, 4, ···)
計算する 消す


○3 tannx dx=In (n=2,3,4,···)とおくと

In= −In−2 (n= 2, 3, 4, ···)
(証明)
 
In=tann−2x tan2x dxと見る.

ここで dxの形を作れば,被積分関数がf n(x)f’(x)の形になり,置換積分により簡単に計算できることに目を付ける.
数学Iで習う三角比の相互関係の公式
sin2x+cos2x=1
の両辺をcos2xで割ると
tan2x+1=
したがって
tan2x= −1
だから
In=tann−2x (−1) dx
= ( tann−2x )dx
= dx − In−2
右辺第1項をt=tan xとおいて置換積分すると
=  → dx= cos2x dt
dx= cos2x dt=+C
=+C
ゆえに
In= − In−2
○3を用いるとtannx dxを「nの次数の低いものから順に」求めることができる.

(1) はじめにI0I1は漸化式を利用せずに,通常の積分計算によって求めておく.
I0= dx=x+C
I1=tan x dx= − dx = − log|cosx|+C
(2) n= 2, 3, 4, ···となるnについては,漸化式を利用して低次のInで表す.(この問題では,InIn−2の関係式になっているので,奇数番号の系列と偶数番号の系列に分かれる.)
I2= −I0 = tan x−x+C

I4= −I2

= −(tan x−x)+C

= tan x+x+C



I3= − I1

= +log|cosx|+C

I5= −I3

= −( +log|cosx| )+C

= log|cosx|+C


0n50のときのInの検算↓
tan x dx= (n= 2, 3, 4, ···)
計算する 消す


○4  (log x)ndx=In (n=0,1,2, ···)とおくと

In= x(log x)n−nIn−1 (n= 1, 2, 3, ···)
(証明)
 
In=(log x)n · 1 dxと見る.
f=(log x)n f’=n(log x)n−1 ·
g=x g’=1
部分積分法の公式

fg’ dx=fg−f’g dx
を適用すると
(log x)n·1 dx

=(log x)nx−n(log x)n−1··x dx

=x(log x)n−n(log x)n−1dx

ゆえに
In=x(log x)n−nIn−1
(1) はじめにI0は漸化式を利用せずに,通常の積分計算によって求めておく.
I0= dx=x+C
(2) n=1, 2, 3, ···となるnについては,漸化式を利用して低次のInで表す.
I1= x(log x)1−I0=x log x−x+C
I2=x(log x)2−2I1=x(log x)2−2(x log x−x)+C
=x(log x)2−2x log x+2x+C
I3=x(log x)3−3I2
=x(log x)3−3 { x(log x)2−2x log x+2x }+C
=x(log x)3−3x(log x)2+6x log x−6x+C

0n50のときのInの検算↓
(log x) dx= (n= 1, 2, 3, ···)
計算する 消す


【問題】 次の関係式を証明しなさい.


(1)  xnsin xdx=In (n= 2, 3, 4, ···)とおくと

In=−xncos x+nxn−1sin x−n(n−1)In−2 Check



(2)  xnexdx=In (n= 1, 2, 3, ···)とおくと

In= xnex−nIn−1 Check


(3)  dx=In (n= 1, 2, 3, ···)とおくと

In= − +nIn−1 Check


(4)  dx=In (n= 1, 2, 3, ···)とおくと

In= +In−1 Check

(5)  xm(log x)ndx=In (n= 1, 2, 3, ···)とおくと

.In= In−1 Check


(その他,不定積分の漸化式)

とおくと,次の漸化式が成り立つ
・・・(1)
・・・(2)
・・・(3)
・・・(4)
(解説)
 こういう漸化式があるということに気付くことは大変で,この漸化式を自分で作ることも大変であるが,この漸化式を「証明する」のは簡単です.
 なぜなら,証明問題では「結論」が書いてあり,部分積分の式

を証明するには,積の微分

を示せばよいからです.(両辺を積分すれば結果が示される)
(1)を証明するには,次の関係式を示せばよい.


(左辺)










両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■
(2)を証明するには,次の関係式を示せばよい.


(左辺)











両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■

(3)を証明するには,次の関係式を示せばよい.


(左辺)











両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■
(4)を証明するには,次の関係式を示せばよい.


(左辺)









両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■

とおくと
・・・(5)
(解説)
まず,三角関数の相互関係の式(数学T)を確かめておきます

両辺をで割ると

ゆえに
・・・(#1)
次に,の微分を確かめておきます

・・・(#2)
と変形する

(#1)により



とおく置換積分を行うと,(#2)により

求める式の第1項は



ゆえに

(定数項は各々の不定積分に吸収される)
■証明終わり■
とおくと
・・・(6)
(解説)

を証明する.(この式の両辺を積分すれば(6)になるから)






両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■
とおくと
・・・(7)
(解説)

を証明する.(この式の両辺を積分すれば(7)になるから)







両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■

とおくと
・・・(8)
(解説)

を証明する.(この式の両辺を積分すれば()になるから)
両辺を積分すれば,求める式が得られる.
■証明終わり■
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