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== 数学的帰納法のいろいろな問題 ==(問題と答案)
 このページは数学的帰納法による証明問題として,よく登場するものを一覧表的に整理したものです.
 自分で解く場合は,問題の全部を解く必要はなく,「これは?」と気になる項目を解けばよいでしょう.
 各々の式をクリックすれば,答案にジャンプできます.(ファイルが大きいので,数式を展開するのに数分かかる[リンク先がしばらく出ない]場合があります)
数列の和:等式の証明
〇 nが自然数であるとき,次の等式が成り立つことを証明せよ.
(A1)1+2+3++n=n(n+1)2
(A2)1+3+5++(2n1)=n2
(A3)12+22+32++n2=n(n+1)(2n+1)6
(A4)12+32+52++(2n1)2=n(2n1)(2n+1)3
(A5)1222+3242+(2n)2=n(2n+1)
(A6)13+23+33++n3={n(n+1)2}2
(A7)12+23+34++n(n+1)=n(n+1)(n+2)3
一般に,このような階段状の積の和は,1次高い階段状の積で表されます.
123+234+345++n(n+1)(n+2)
=n(n+1)(n+2)(n+3)4
1234+2345++n(n+1)(n+2)(n+3)
=n(n+1)(n+2)(n+3)(n+4)5

(A8)12+34+56++(2n1)2n
=n(n+1)(4n1)3

(A9)(n+1)(n+2)(n+3)(2n)
=2n135(2n1)

(A10)112+131412n
=1n+1+1n+2++12n

(A11)112+123+134++1n(n+1)=nn+1
一般に,このような階段状の積の逆数(分数)の和は,次のようになる.
1123+1234+1345++1n(n+1)(n+2)
=12{12!1(n+1)(n+2)}
11234+12345++1n(n+1)(n+2)(n+3)
=13{13!1(n+1)(n+2)(n+3)}

(A12)113+135+157++1(2n1)(2n+1)=n2n+1
(A13)12+24+38++n2n=2n+22n
一般に,x≠1のとき
x+2x2+3x3++nxn=nxn+2(n+1)xn+1+x(x1)2
が成り立つ.
上記は,この式において,x=12を代入した場合となっている.
他の例として,x=3の場合は
3+232+333++n3n=(2n1)3n+1+34
となる.

(A14) 11+2+12+3++1n+n+1=n+11

不等式の証明
〇 nが自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B1)1+12+13++1n2nn+1
(B2)(1+2+3++n)(1+12+13++1n)n2
(B3)2n>n
(B4)1+12+13++1n<2n
(B5) a>0, b>0のとき,an+bn2(a+b2)n
〇 nが2以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B6)112+122+132++1n2<21n
(B7)2n>n+1
(B8)3n>2n+1
以下の問題も,ほぼ同様に証明できる.
〇 nが3以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
2n>2n+1
3n>4n+10
〇 nが4以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
2n>3n
〇 nが5以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B9)2n>n2
〇 nが10以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B10)2n>n3
〇 nが2以上の自然数であるとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(B11)(1+h)n>1+nh(ただし,h>とする)
(B12)(1h)n>1nh(ただし,h>とする)

漸化式と数学的帰納法
(C1)
数列{an}a1=34,an+1=114an(n=1,2,3,)で定める.
(1)a2,a3,a4,a5,a6を求めよ.また,それにより一般項anを推定せよ.
(2) 数学的帰納法により(1)の一般項の推定が正しいことを証明せよ.(以下略)
(2014年度岐阜大入試問題)
(C2)
数列{an}a1=23,an+1=2an32an(n=1,2,3,)を満たしている.次の問いに答えよ.
(1)a2,a3を求めよ.
(2) 一般項anを推定し,それが正しいことを数学的帰納法により証明せよ.(以下略)
(2011年度岡山県立大入試問題)
図形問題の証明
(D1)
nが4以上の自然数であるとき,凸n角形の対角線の総数は,n(n3)2に等しいことを数学的帰納法で証明せよ.

(D2)
平面上にn本の直線があり,どの2本も平行でなく,どの3本も同一の点を通らないとする.このとき,これらn本の直線によって,平面はn2+n+22個の領域に分けられることを数学的帰納法で証明せよ.

降順の証明
(E1) ak>0 (1≦k≦7)のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
a1+a2+a3++a77a1a2a3a77

(E2) m, nが自然数で,ak>0(1kn)のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(a1+a2+a3++ann)ma1m+a2m+a3m++anmn

pならばqの証明
(F1) nが自然数,a, bが整数で(2+3)n=a+3bであるならば,(23)n=a3bとなることを証明せよ.
(F2) nが自然数,a, bが整数で(3+22)n=a+2bであるならば,(322)n=a2bとなることを証明せよ.
整数問題の証明
n=k1,kk+1の形で証明するもの≫
nが自然数であるとき,次の式の値が整数になることを証明せよ.
(G1)(3+22)n+(322)n
(G2)(5+26)n+(526)n2
(G3)a1=1,a2=1,an+2=an+an+1で定義される数列(フィボナッチ数列)の一般項は
an=(1+52)n(152)n5
となることを証明せよ.

≪倍数の証明≫
(G4) すべての自然数nについて,3n2n+3は4の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(G5) すべての自然数nについて,33n+1+72n1は11の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(G6) nを自然数とするとき4×32n1+24nは28で割り切れることを示せ.
(2005年度東京女子大入試問題)

(A1)1+2+3++n=n(n+1)2
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1,(右辺)=1×22=1だから(A1)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A1)が成り立つと仮定すると,
1+2+3++k=k(k+1)2…(*)
(*)の両辺にk+1を加えると
1+2+3++k+(k+1)=k(k+1)2+(k+1)
=k(k+1)+2(k+1)2=(k+1)(k+2)2…(**)
(**)はn=k+1のときも(A1)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A1)が成り立つ.
(A2)1+3+5++(2n1)=n2
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1,(右辺)=12=1だから(A2)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A2)が成り立つと仮定すると,
1+3+5++(2k1)=k2…(*)
(*)の両辺に2k+1を加えると
1+3+5++(2k1)+(2k+1)=k2+(2k+1)
=(k+1)2…(**)
(**)はn=2k+1のときも(A2)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A2)が成り立つ.

(A3)12+22+32++n2=n(n+1)(2n+1)6
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=12=1
(右辺)=1×2×36=1だから(A3)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A3)が成り立つと仮定すると,
12+22+32++k2=k(k+1)(2k+1)6…(*)
(*)の両辺に(k+1)2を加えると
12+22+32++k2+(k+1)2
=k(k+1)(2k+1)6+(k+1)2
=k(k+1)(2k+1)+6(k+1)26
=(k+1){2k2+k+6k+6}6
=(k+1){2k2+7k+6}6
=(k+1)(k+2)(2k+3)6
=(k+1){(k+1)+1}{2(k+1)+1}6…(**)
(**)はn=k+1のときも(A3)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A3)が成り立つ.

(A4)12+32+52++(2n1)2=n(2n1)(2n+1)3
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=12=1
(右辺)=1×1×33=1だから(A4)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A4)が成り立つと仮定すると,
12+32+52++(2k1)2=k(2k1)(2k+1)3…(*)
(*)の両辺に(2k+1)2を加えると
12+32+52++(2k1)2+(2k+1)2
=k(2k1)(2k+1)3+(2k+1)2
=k(2k1)(2k+1)+3(2k+1)23
=(2k+1){2k2k+6k+3}3
=(2k+1){2k2+5k+3}3
=(2k+1)(k+1)(2k+3)3
=(k+1){2(k+1)1}{2(k+1)+1}3…(**)
(**)はn=k+1のときも(A4)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A4)が成り立つ.

(A5)1222+3242+(2n)2=n(2n+1)
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1222=3
  (右辺)=1×3=3だから(A5)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A5)が成り立つと仮定すると,
1222+3242+(2k)2=k(2k+1)…(*)
(*)の両辺に(2k+1)2(2k+2)2を加えると
1222+3242+(2k)2+(2k+1)2(2k+2)2
=k(2k+1)+(2k+1)2(2k+2)2
=2k2k+4k2+4k+14k28k4
=2k25k3=(k+1)(2k+3)
=2k25k3=(k+1){2(k+1)+1}…(**)
(**)はn=k+1のときも(A5)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A5)が成り立つ.
 (参考)
(A3)12+22+32++n2=n(n+1)(2n+1)6
の結果が使える場合は,(A5)は次のようにして導ける.
12+22+32++(2n)2=2n(2n+1)(4n+1)6…(*1)
4{12+22+32++(n)2}=4n(n+1)(2n+1)6
22+42+62++(2n)2=4n(n+1)(2n+1)6…(*2)
(*1)−2×(*2) (←偶数番目を2回引く)
1222+3242+(2n)2
=n(2n+1)(4n+1)34n(n+1)(2n+1)3
=n(2n+1)(4n+14n4)3
=n(2n+1)(3)3

=n(2n+1)

(A6)13+23+33++n3={n(n+1)2}2
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=13=1
  (右辺)={1×22}2=1だから(A6)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A6)が成り立つと仮定すると,
13+23+33++k3={k(k+1)2}2…(*)
(*)の両辺に(k+1)3を加えると
13+23+33++k3+(k+1)3
={k(k+1)2}2+(k+1)3
=(k+1)2{k2+4(k+1)}4
=(k+1)2(k2+4k+4)4
=(k+1)2(k+2)24
={(k+1)(k+2)2}2…(**)
(**)はn=k+1のときも(A6)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A6)が成り立つ.

(A7)12+23+34++n(n+1)=n(n+1)(n+2)3
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1·2=2
 (右辺)=1×2×33=2だから(A7)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A7)が成り立つと仮定すると,
 12+23+34++k(k+1)=k(k+1)(k+2)3…(*)
(*)の両辺に(k+1)(k+2)を加えると
12+23+34++k(k+1)+(k+1)(k+2)
=k(k+1)(k+2)3+(k+1)(k+2)
=k(k+1)(k+2)+3(k+1)(k+2)3
=(k+1)(k+2)(k+3)3
=(k+1){(k+1)+1}{(k+1)+2}3…(**)
(**)はn=k+1のときも(A7)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A7)が成り立つ.

(A8)12+34+56++(2n1)2n
=n(n+1)(4n1)3
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1·2=2
(右辺)=1×2×33=2だから(A8)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A8)が成り立つと仮定すると,
12+34+56++(2k1)2k=k(k+1)(4k1)3…(*)
(*)の両辺に(2k+1)(2k+2)を加えると
12+34+56++(2k1)2k+(2k+1)(2k+2)
=k(k+1)(4k1)3+(2k+1)(2k+2)
=k(k+1)(4k1)+6(2k+1)(k+1)3
=(k+1){4k2k+12k+6}3
=(k+1){4k2+11k+6}3
=(k+1)(k+2)(4k+3)3
=(k+1){(k+1)+1}{4(k+1)1}3 …(**)
(**)はn=k+1のときも(A8)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A8)が成り立つ.

(A9)(n+1)(n+2)(n+3)(2n)
=2n135(2n1)
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=(1+1)(1+2)=6
  (右辺)=2113=6だから(A9)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A9)が成り立つと仮定すると,
(k+1)(k+2)(k+3)(2k)
=2k135(2k1)…(*)
(*)の両辺に(2k+1)(2k+2)をかけて,(k+1)で割ると
(k+2)(k+3)(2k)(2k+1)(2k+2)
=2k135(2k1)(2k+1)(2k+2)k+1
=2k+1135(2k1)(2k+1)…(**)
(**)はn=k+1のときも(A9)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A9)が成り立つ.

(A10)112+131412n
=1n+1+1n+2++12n
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=112=12
(右辺)=11+1=12だから(A10)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A10)が成り立つと仮定すると,
112+131412k
=1k+1+1k+2++12k…(*)
(*)の両辺に12k+112k+2を加えると
112+131412k+12k+112k+2
=1k+1+1k+2++12k+12k+112k+2
=1k+2++12k+12k+1+{1k+112k+2}
=1k+2++12k+12k+1+12k+2 …(**)
(**)はn=k+1のときも(A10)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A10)が成り立つ.

(A11)112+123+134++1n(n+1)=nn+1
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=12
  (右辺)=12だから(A11)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A11)が成り立つと仮定すると,
112+123+134++1k(k+1)=kk+1…(*)
(*)の両辺に1(k+1)(k+2)を加えると
112+123+134++1k(k+1)+1(k+1)(k+2)
=kk+1+1(k+1)(k+2)
=k(k+2)+1(k+1)(k+2)=(k+1)2(k+1)(k+2)=k+1k+2 …(**)
(**)はn=k+1のときも(A11)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A11)が成り立つ.

(A12)
113+135+157++1(2n1)(2n+1)=n2n+1
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=113=13
 (右辺)=13だから(A12)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A12)が成り立つと仮定すると,
113+135+157++1(2k1)(2k+1)=k2k+1…(*)
(*)の両辺に1(2k+1)(2k+3)を加えると
113+135+157++1(2k1)(2k+1)+1(2k+1)(2k+3)
=k2k+1+1(2k+1)(2k+3)
=k(2k+3)+1(2k+1)(2k+3)=2k2+3k+1(2k+1)(2k+3)
=(2k+1)(k+1)(2k+1)(2k+3)=k+12k+3 …(**)
(**)はn=k+1のときも(A12)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A12)が成り立つ.

(A13)12+24+38++n2n=2n+22n
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=12
 (右辺)=232=12だから(A13)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A13)が成り立つと仮定すると,
 12+24+38++k2k=2k+22k…(*)
(*)の両辺にk+12k+1を加えると
12+24+38++k2k+k+12k+1=2k+22k+k+12k+1
=2+2k4+k+12k+1=2k+32k+1 …(**)
(**)はn=k+1のときも(A13)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A13)が成り立つ.

(A14)
11+2+12+3++1n+n+1=n+11
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=11+2=21
 (右辺)=21だから(A14)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(A14)が成り立つと仮定すると,
 11+2+12+3++1n+n+1=n+11…(*)
(*)の両辺に1n+1+n+2を加えると
11+2+12+3++1n+n+1+1n+1+n+2
=n+11+1n+1+n+2
=n+11+n+2n+1
=n+21 …(**)
(**)はn=k+1のときも(A14)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(A14)が成り立つ.

(B1)
〇 nが自然数であるとき,
1+12+13++1n2nn+1
[証明]
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1
 (右辺)=22=1だから(B1)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(B1)が成り立つと仮定すると,
 1+12+13++1k2kk+1…(*)
(*)の両辺に1k+1を加えると
 1+12+13++1k+1k+12kk+1+1k+1=2k+1n+1
>(?)2(k+1)k+2
(*?)は次のように証明できる.
2k+1k+12(k+1)k+2=(2k+1)(k+2)2(k+1)2(k+1)(k+2)
=2k2+5k+22k24k2(k+1)(k+2)=k(k+1)(k+2)>0
したがって
1+12+13++1k+1k+12(k+1)k+2 …(**)
(**)はn=k+1のときも(B1)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(B1)が成り立つ.
不等式は「左辺を変形しても右辺にはならない」から,(*?)のように「言いたいこと」を設定して,「引き算が正になる」ことを別途示すというスタイルにするとよい.

(B2)
〇 nが自然数であるとき,
(1+2+3++n)(1+12+13++1n)n2
[証明1]
次の証明は,数学的帰納法による証明ではないが,,(B1)の結果を利用すれば,次のように示せる.
 1+12+13++1n2nn+1
の両辺に(1+2+3++n)(>0)を掛けると
(1+2+3++n)(1+12+13++1n)
2nn+1(1+2+3++n)
=2nn+1n(n+1)2=n2
1+2+3++n=n(n+1)2のような,教科書に出ている公式は,それ自体の証明が問題である場合を除けば,黙って使える.
[証明2]
次の証明も,数学的帰納法による証明ではないが,スマートに決まる.
(相加平均)≧(相乗平均)の関係から
1+2+3++nnn!n(>0)
1+12+13++1nn1n!n(>0)
両辺とも正であるから,辺々掛けると
1+2+3++nn1+12+13++1nn1
したがって
(1+2+3++n)(1+12+13++1n)n2
n個の場合の相加,相乗の関係は,教科書に書いてないから,黙って使うと少し減点されることがある.
[証明3]
「数学的帰納法を用いて証明せよ」と解き方が指定されている場合は,それに従う他ない.
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1×1=1
(右辺)=12だから(B2)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(B2)が成り立つと仮定すると,
(1+2+3++k)(1+12+13++1k)k2…(*)
n=k+1の場合を考えると
{1+2+3++k+(k+1)}
×(1+12+13++1k+1k+1)
=(1+2+3++k)(1+12+13++1k)
+(k+1) (1+12+13++1k)
+(1+2+3++k)(1k+1)
+(k+1)(1k+1)
k2 +(k+1) (1+12+13++1k)
+(1+2+3++k)(1k+1)+1=Aとおく
ここで,(相加平均)≧(相乗平均)の関係より
(k+1)(1+12+13++1k)+(1+2+3++k)(1k+1)
2(k+1)(1+12+13++1k)(1+2+3++k)(1k+1)
=2(1+12+13++1k)(1+2+3++k)
2k2=2k
だから
Ak2+2k+1=(k+1)2…(**)
(**)はn=k+1のときも(B2)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(B2)が成り立つ.

(B3)
〇 nが自然数であるとき,
2n>n
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=21=2
(右辺)=1だから(B3)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧1)のとき(B3)が成り立つと仮定すると,
 2k>k…(*)
(*)の両辺に2をかけると
2k+1>2k(?)k+1
(*?)は次のように示せる.
2k(k+1)=k10
したがって,
2k+1>k+1 …(**)
(**)はn=k+1のときも(B3)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(B3)が成り立つ.

(B4)
〇 nが自然数であるとき,
1+12+13++1n<2n
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=1
 (右辺)=21=2だから(B4)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧1)のとき(B4)が成り立つと仮定すると,
1+12+13++1k<2k…(*)
(*)の両辺に1k+1を加えると
1+12+13++1k+1k+1<2k+1k+1
<(?)2k+1
(*?)は次のように示せる.
2k+12k=2k+1+k>2k+1+k+1
=1k+1
したがって,
2k+1>2k+1k+1
1+12+13++1k+1k+1<2k+1 …(**)
(**)はn=k+1のときも(B4)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(B4)が成り立つ.

(B5)
〇 nが自然数であるとき,
a>0, b>0のとき,an+bn2(a+b2)n
(Ⅰ) n=1のとき,(左辺)=a+b2(右辺)=a+b2だから(B5)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧1)のとき(B5)が成り立つと仮定すると,
 ak+bk2(a+b2)k…(*)
(*)の両辺にa+b2をかけると
(ak+bk2)(a+b2)(a+b2)k+1
ここで
 ak+1+bk+12(?)(ak+bk2)(a+b2)(a+b2)k+1
を証明する.(*?)の部分は
ak+1+bk+12(ak+bk2)(a+b2)
=14{2ak+1+2bk+1(ak+bk)(a+b)}
=14(2ak+1+2bk+1ak+1bk+1akbabk)
=14(ak+1+bk+1akbabk)
=14{ak(ab)+bk(ba)}
=14(akbk)(ab)=Aとおく
a≧bのとき,ab0,akbk0だからA≧0
a<bのとき,ab<0,akbk<0だからA>0
したがって,つねにA≧0…(**)
(**)はn=k+1のときも(B5)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(B5)が成り立つ.
左辺からそろえる証明がほとんどであるが,この問題では右辺からそろえる.考えたらわかる.

(B6)
〇 nが2以上の自然数であるとき,112+122+132++1n2<21n
(Ⅰ) n=2のとき,(左辺)=112+122=54
 (右辺)=212=32=64だから(B6)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧2)のとき(B6)が成り立つと仮定すると,
112+122+132++1k2<21k…(*)
(*)の両辺に1(k+1)2を加えると
112+122+132++1k2+1(k+1)2<21k+1(k+1)2
ここで
21k+1(k+1)2<(?)21k+1
を証明する.
21k+1(21k+1(k+1)2)
=1k1k+11(k+1)2
=(k+1)2k(k+1)kk(k+1)2
=k2+2k+1k2kkk(k+1)2
=1k(k+1)2>0
(*?)が成立するから
112+122+132++1k2+1(k+1)2<21k+1…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B6)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,2以上のすべての自然数nについて(B6)が成り立つ.

(B7)
〇 nが2以上の自然数であるとき,2n>n+1
(Ⅰ) n=2のとき,(左辺)=22=4
 (右辺)=2+1=3だから(B7)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧2)のとき(B7)が成り立つと仮定すると,
 2k>k+1…(*)
(*)の両辺に2をかけると
2k+1>2(k+1)=2k+2>k+2 …(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B7)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,2以上のすべての自然数nについて(B7)が成り立つ.
(B8)
〇 nが2以上の自然数であるとき,3n>2n+1
(Ⅰ) n=2のとき
 (左辺)
=32=9
 (右辺)=2×2+1=5だから(B8)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧2)のとき(B8)が成り立つと仮定すると,
 3k>2k+1…(*)
(*)の両辺に3をかけると
3k+1>3(2k+1)
ここで
3(2k+1)>(?)2(k+1)+1
を証明する.
3(2k+1){2(k+1)+1}=6k+32k3
=4k>0
だから(*?)が成り立つ.したがって
3k+1>2(k+1)+1…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B8)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,2以上のすべての自然数nについて(B8)が成り立つ.

(B9)
〇 nが5以上の自然数であるとき,2n>n2
(Ⅰ) n=5のとき
 (左辺)
=25=32
 (右辺)=52=25だから(B9)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧5)のとき(B9)が成り立つと仮定すると,
 2k>k2…(*)
(*)の両辺に2を掛けると
2k+1>2k2
ここで,2k2>(?)(k+1)2…を証明する.
2k2(k+1)2=k22k1
=(k1)22422>0 (∵k≧5)
(*?)により,2k+1>(k+1)2…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B9)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,5以上のすべての自然数nについて(B9)が成り立つ.

(B10)
〇 nが10以上の自然数であるとき,2n>n3
(Ⅰ) n=10のとき
 (左辺)=210=1024
 (右辺)=103=1000だから(B10)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧10)のとき(B10)が成り立つと仮定すると,
 2k>k3…(*)
(*)の両辺に2をかけると
2k+1>2k3
ここで,2k3>(?)(k+1)3を証明する.
2k3(k+1)3=k33k23k1
f(k)=k33k23k1とおくと
f(k)=3k26k3=3(k1)26
3×926>0 (∵k≧10)
 したがって,f(x)k≧10において単調増加
また,f(10)=1033×1023×101=669>0
したがって,k≧10においてf(x)>0…(*?)が成り立つ
※以上は,微分を使った証明であるが,微分をまだ習っていない場合は,次のように示すことができる.
正の数の大小は比によって調べることができる.すなわち,a, b>0のとき,ba<1ならばa>bであると言える.
2つの正の数2k3,(k+1)3>0について
(k+1)32k3=12×(k+1k)3=12×(1+1k)3
において,k≧10のとき,
0<1+1k1+110=1110
であるから
(k+1)32k312×13311000=13312000<1
(*?)により,2k+1>(k+1)3…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B10)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,10以上のすべての自然数nについて(B10)が成り立つ.

(B11)
○ nが2以上の自然数であるとき,(1+h)n>1+nh(ただし,h>0とする)
(Ⅰ) n=2のとき
 (左辺)=(1+h)2=1+2h+h2
 (右辺)=1+2hだから(B11)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧2)のとき(B11)が成り立つと仮定すると,
(1+h)k>1+kh…(*)
(*)の両辺に(1+h)をかけると
(1+h)k+1>(1+kh)(1+h)=1+(k+1)h+kh2
>1+(k+1)h …(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B11)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,2以上のすべての自然数nについて(B11)が成り立つ.
(B12)
○ nが2以上の自然数であるとき,(1h)n>1nh(ただし,h>0とする)
(Ⅰ) n=2のとき
 (左辺)=(1h)2=12h+h2
 (右辺)=12hだから(B12)は成立する.
(Ⅱ) n=k (k≧2)のとき(B12)が成り立つと仮定すると,
(1h)k>1kh…(*)
(*)の両辺に(1h)をかけると
(1h)k+1>(1kh)(1h)=1(k+1)h+kh2
>1(k+1)h …(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(B12)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,2以上のすべての自然数nについて(B12)が成り立つ.

(C1)
 数列 {an}
a1=34,an+1=114an(n=1,2,3,)で定める.
(1)a2,a3,a4,a5,a6を求めよ.また,それより一般項anを推定せよ.
(2) 数学的帰納法により(1)の一般項の推定が正しいことを証明せよ.(以下略)
(2014年度岐阜大入試問題)
(1)
n123456
an344658610712814
左の表から
an=n+22n+2…(*1)
と推定する.
(2)
(Ⅰ) n=1のとき,a1=1+22×2+2=34
だから(*1)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(*1)が成り立つと仮定すると,
ak=k+22k+2…(*)
ak+1=114×k+22k+2=1k+12(k+2)
=k+32k+4=(k+1)+22(k+1)+2 …(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(*1)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(*1)が成り立つ.

(C2)
数列 {an}a1=23,an+1=2an32an(n=1,2,3,)を満たしている.次の問いに答えよ.
(1)a2,a3を求めよ.
(2) 一般項anを推定し,それが正しいことを数学的帰納法により証明せよ.(以下略)
(2011年度岡山県立大入試問題)
(1)
a2=2a132a1=22332×23=4353=45
a3=2a232a2=24532×45=6575=67
(2)

n123
an234567
左の表から
an=2n2n+1…(*1)
と推定する.
(Ⅰ) n=1のとき,a1=2×12×1+1=23だから(*1)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(*1)が成り立つと仮定すると,
ak=2k2k+1…(*)
ak+1=2k+22k+12k+32k+1=2k+22k+3=2(k+1)2(k+1)+1…(**)
が成立する.
(**)はn=k+1のときも(*1)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(*1)が成り立つ.

(D1)
 nが4以上の自然数であるとき,凸n角形の対角線の総数は,n(n3)2に等しいことを数学的帰納法で証明せよ.
(Ⅰ) n=4のとき,4角形の対角線は2本であるから,4×(43)2=2に等しい.
(Ⅱ) n=kのとき対角線の総数が
k(k3)2…(*)
に等しいと仮定する.
1 2 ... k k+1
 この図形にk+1番目の頂点を追加して,k+1角形にすると
ア)右図の赤実線で示したように,k+1番目の頂点からこれに隣り合わないk−2個の頂点に引いた線分が対角線として増える.
イ)右図の赤破線で示したように,k角形のときに辺に数えていたもの1本がk+1角形では対角線に入る.
以上のア)イ)から,k+1角形の対角線の総数は
k(k3)2+(k2)+1=k23k+2k4+22
=k2k22=(k+1)(k2)2
=(k+1){(k+1)3}2…(**)
に等しい.
(**)はn=k+1のときも(*)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,4以上の自然数nについて(*)が成り立つ.
組合せを使って求める場合は,n個の頂点を結ぶ線分の総数nC2のうちで辺となるものn本を引くと
n(n1)2n=n2n2n2=n(n3)2
となることが分かる.

(D2)
 平面上にn本の直線があり,どの2本も平行でなく,どの3本も同一の点を通らないとする.このとき,これらn本の直線によって,平面はn2+n+22個の領域に分けられることを数学的帰納法で証明せよ.
(Ⅰ) n=1のとき,平面は2つの領域に分けられる.
12+1+22=2
に等しい.
(Ⅱ) n=kのとき
k2+k+22…(*)
個の領域に分かれると仮定する.
1 ... k k+1
 この図形にk+1本目の直線を追加すると,どの2本も平行でなく,どの3本も同一の点を通らないことにより,初め描かれていたk本の直線と交わる.
 図の赤丸で示したk個の交点がk+1本目の直線上に並ぶから,植木算の考え方により,k+1本目の直線はk+1個の線分や半直線に分かれる.
 そのとき,各々向こう側とこちら側に領域が分かれるから,k+1本目の直線を引くことにより,領域の数はk+1個だけ増える.
 したがって,n=k+1のとき,領域の数は
k2+k+22+(k+1)=k2+k+2+2k+22
=k2+3k+42=(k+1)2+(k+1)+22…(**)
に等しい.
(**)はn=k+1のときも(*)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(*)が成り立つ.

(E1)
 ak>0(1k7)のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
a1+a2+a3++a77a1a2a3a77
※数学的帰納法による証明では,ほとんどの場合,n=1のときなどから初めて,順次多い方に向かって攻めていく論証の形をとる.しかし,n=kのときの関係から1つ多いn=k+1のときの関係を導くのが難しいことがある.このような場合,多い方から降順に攻めてもすべての整数について成り立つことを示せる.
a1+a22a1a2を変形して
a1+a2+a33a1a2a33を導くのは難しいが
a1+a2+a3+a44a1a2a3a44を変形して
a1+a2+a33a1a2a33を導くのはやさしい.…(A)
また,②から④,④から⑧を導くのも容易である.
②から④は
a1+a2+a3+a44=a1+a22+a3+a422a1+a22a3+a42
a1a2a3a4=a1a2a3a44
④から⑧も同様に示せる.
 一般にn=2m個の正の数について(相加平均)≧(相乗平均)の関係を示すことができる.…(B)
 そこで,教科書に掲載されていて,黙って使える②だけを前提として,大きな整数nの場合に(相加平均)≧(相乗平均)の関係を証明するには,適当に大きなn=2mから順に下がってもよい.
(B)については,上に示したので,④→③の場合を例にとって(A)を示してみる.
a1+a2+a3+a44a1a2a3a44
において,変数a1,a2,a3,a4,(>0)は各々独立した自由な値をとれるから,たまたま,a4=a1+a2+a33となる場合を考えてみると
a1+a2+a3+a1+a2+a334a1a2a3a1+a2+a334
4(a1+a2+a3)34a1a2a3a1+a2+a334
a1+a2+a33a1a2a3a1+a2+a334
両辺を4乗すると
(a1+a2+a33)4a1a2a3a1+a2+a33
(a1+a2+a33)3a1a2a3
両辺の3乗根をとると
a1+a2+a33a1a2a33
 本題に戻って,⑧→⑦の場合は
a8=a1+a2+a3++a77とおいてから,8乗して,7乗根をとると同様に証明できる.
 ※ここでは,話を簡単にするためにn=7の場合のみ取り上げたが,一般に与えられた自然数nよりもp=2mが大きくなるような数から降っていくとnに至るのは明らかであるから,どのような自然数nについても成り立つと言える.

(E2)
 m, nが自然数で,ak>0 (1≦k≦n)のとき,次の不等式が成り立つことを証明せよ.
(a1+a2+a3++ann)ma1m+a2m+a3m++anmn
初めにmについての数学的帰納法を用い,次にnについての数学的帰納法を用いると証明しやすい.nについての数学的帰納法は,降順に示すと簡単になる.
 初めに,すべての自然数mについて
(a1+a22)ma1m+a2m2…(*1)
が成り立つことを証明する.
(Ⅰ)m=1のとき
(a1+a22)1a11+a212
だから,成立する.
(Ⅱ)m=kのとき
(a1+a22)ka1k+a2k2
が成り立つと仮定すれば
(a1+a22)k+1a1k+a2k2×a1+a22
が成り立つ.ここで
a1k+a2k2×a1+a22(?)a1k+1+a2k+12
を示す.
a1k+1+a2k+12a1k+a2k2×a1+a22
=14(2a1k+1+2a2k+1a1k+1a2k+1a1ka2a1a2k)
=14(a1k+1+a2k+1a1ka2a1a2k)
=14{a1k(a1a2)a2k(a1a2)}
=14(a1ka2k)(a1a2)
a1a2のときa1ka2k
a1<a2のときa1k<a2k
であるから,(*?)が成り立つ.
 したがって
(a1+a22)k+1a1k+1+a2k+12
 以上から,数学的帰納法によりすべての自然数mについて,(*1)が成り立つ.
 次に,すべての自然数nについて
(a1+a2+a3++ann)ma1m+a2m+a3m++anmn …(*2)
が成り立つことを証明する.
(Ⅰ)
n=1のとき
 (左辺)=a1m,(右辺)=a1mであるから,成立する.
n=2のとき,(*1)により
 (a1+a22)ma1m+a2m2
が成り立つ.
(Ⅱ)n=4で成り立つことを示す.
(a1+a22+a3+a422)m(a1+a22)m+(a3+a42)m2
a1m+a2m2+a3m+a4m22
(a1+a2+a3+a44)ma1m+a2m+a3m+a4m4
 同様にすれば,n=23,24,,2pで成り立つことが言える.
n=4の場合に
 a4=a1+a2+a33
のときを考えると
(a1+a2+a3+a1+a2+a334)ma1m+a2m+a3m+(a1+a2+a33)m4
(4(a1+a2+a3)34)ma1m+a2m+a3m4+(a1+a2+a33)m4
(a1+a2+a33)ma1m+a2m+a3m4+14×(a1+a2+a33)m
右辺の第2項を左辺に移項すると
34(a1+a2+a33)ma1m+a2m+a3m4
(a1+a2+a33)ma1m+a2m+a3m3
 このようにして,n=3のとき,成り立つことが示せる.
 同様にして,kよりも大きな2pのときから順次降順に示すことができる.
 以上により,すべての自然数nについて(*2)が成り立つ.

(F1) nが自然数,a, bが整数で(2+3)n=a+3bであるならば,(23)n=a3bとなることを証明せよ.
「Aのとき,PならばQ」ということをもう少しシンプルな表現にすると「AかつPならばQ」と考えればよい.
同様にして,「Aのとき,P(k)ならばQ(k)が成り立つとき,P(k+1)ならばQ(k+1)が成り立つことを証明せよ」とは「AかつP(k)かつQ(k)かつP(k+1)ならばQ(k+1)が成り立つことを証明せよ」と考えればよい.
要するに,Q(k+1)以外はすべて仮定してQ(k+1)を証明したらよい.
(Ⅰ) n=1のとき
 (2+3)1=2+3×1だから,a=2, b=1
 このとき,(23)1=23×1だから,a=2, b=1だから(F1)は成立する.
(Ⅱ) n=kのとき(F1)が成り立つと仮定すると,
 (2+3)k=a+3bであるならば,
 (23)k=a3b…(*)
このとき,
(2+3)k+1=(a+3b)(2+3)
=(2a+3b)+(a+2b)3
(23)k+1=(a3b)(23)
=(2a+3b)(a+2b)3…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(F1)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(F1)が成り立つ.

(F2) nが自然数,a, bが整数で(3+22)n=a+2bであるならば,(322)n=a2bとなることを証明せよ.
(Ⅰ)
 n=1のとき,(3+22)1=3+22だから
a=3, b=2
 このとき,(322)1=322だから,a=3, b=2
だから(F2)は成立する.
(Ⅱ)
 n=kのとき(F2)が成り立つと仮定すると,
(3+22)k=a+2bであるならば,
(322)k=a2b…(*)
このとき,
(3+22)k+1=(a+2b)(3+22)
=(3a+4b)+(2a+3b)2
(322)k+1=(a2b)(322)
=(3a+4b)(2a+3b)2…(**)が成立する.
(**)はn=k+1のときも(F2)が成り立つことを示している.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて(F2)が成り立つ.

(G1) nが自然数であるとき,次の式の値が整数になることを証明せよ.
(3+22)n+(322)n
(Ⅰ) n=1のとき
 (3+22)1+(322)1=6は整数である.
また,n=2のとき,
 (3+22)2+(322)2=9+122+8+9122+8
=34は整数である.
(Ⅱ) n=k−1, k (k≧2)のとき
以下,簡単のために,3+22=A,322=Bとおく.このとき,A+B=6, AB=1である.
Ak1+Bk1,Ak+Bkが整数であると仮定すると
Ak+1+Bk+1=(Ak+Bk)(A+B)(AkB+ABk)
=(Ak+Bk)(A+B)AB(Ak1+Bk1)
ここで,Ak1+Bk1,Ak+Bkは仮定により整数で,A+B, ABも整数であるから,Ak+1+Bk+1も整数になる
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて,
(3+22)n+(322)nが整数になることが示された.

(G2) nが自然数であるとき,次の式の値が整数になることを証明せよ.
(5+26)n+(526)n2
(Ⅰ) n=1のとき,
(5+26)1+(526)12=5
は整数である.
また,n=2のとき,
(5+26)2+(526)22=49
は整数である.
(Ⅱ) n=k−1, k (k≧2)のとき
以下,簡単のために,5+26=A,526=Bとおく.このとき,A+B=10, AB=1である.
Ak1+Bk12,Ak+Bk2が整数であると仮定すると
Ak+1+Bk+12=(Ak+Bk)(A+B)(AkB+ABk)2
=Ak+Bk2(A+B)ABAk1+Bk12
ここで,Ak1+Bk12,Ak+Bk2は仮定により整数で,A+B, ABも整数であるから,Ak+1+Bk+1も整数になる
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて,
(5+26)n+(526)n2が整数になることが示された.

(G3) a1=1,a2=1,an+2=an+an+1で定義される数列(フィボナッチ数列)の一般項は
an=(1+52)n(152)n5
となることを証明せよ.
an=(1+52)n(152)n5
が漸化式を満たすことを証明する.
(Ⅰ)
n=1のとき,
a1=(1+52)1(152)15=2525=1
n=2のとき,
a2=(1+52)2(152)25=4545=1
が成り立つ.
(Ⅱ) n=k, k+1 (k≧1)のとき
以下,簡単のために,1+52=A,152=Bとおく.このとき,A+B=1, AB=−1である.
ak=AkBk5,ak+1=Ak+1Bk+15
が成り立つと仮定する.
Ak+2Bk+2
=(Ak+1Bk+1)(A+B)AB(AkBk)
だから
Ak+2Bk+25
=(Ak+1Bk+1)5(A+B)AB(AkBk)5
ここで,A+B=1, AB=−1だから
Ak+2Bk+25
=(Ak+1Bk+1)5+(AkBk)5
したがって
ak+2=ak+ak+1
が成り立つ.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて,
an=(1+52)n(152)n5
が漸化式を満たすことが示された.

(G4) すべての自然数nについて,3n2n+3は4の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(Ⅰ) n=1のとき,
312+3=4
は4の倍数である.
(Ⅱ) n=kのとき
3k2k+3=4NNは整数)と仮定する.
このとき,差{3k+12(k+1)+3}{3k2k+3}が4の倍数になることを示せばよい.
{3k+12(k+1)+3}{3k2k+3}
=3k(31)2=2(3k1)
ここで,3kは奇数だから,3k1は偶数
したがって,2(3k1)は4の倍数.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて,3n2n+3は4の倍数であることが示された.

(G5) すべての自然数nについて,33n+1+72n1は11の倍数である.このことを,数学的帰納法を用いて示せ.
(2016年度愛知教育大入試問題)
(Ⅰ) n=1のとき,
33+1+721=81+7=88
は11の倍数である.
(Ⅱ) n=kのとき
33k+1+72k1=11N (Nは整数)と仮定する.
このとき,差{33(k+1)+1+72(k+1)1}{33k+1+72k1}が11の倍数になることを示せばよい.
{33(k+1)+1+72(k+1)1}{33k+1+72k1}
=33k+1(331)+72k1(721)
=33k+1×26+72k1×48
=26(33k+1+72k1)+72k1×22
=26×11N+72k1×2×11
は11の倍数である.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて,33n+1+72n1は11の倍数であることが示された.

(G6) nを自然数とするとき4×32n1+24nは28で割り切れることを示せ.
(2005年度東京女子大入試問題)
(Ⅰ) n=1のとき,
4×321+24=12+16=28
は28で割り切れる.
(Ⅱ) n=kのとき
4×32k1+24k=28NNは整数)と仮定する.
このとき,差
{4×32(k+1)1+24(k+1)}{4×32k1+24k}
が28の倍数になることを示せばよい.
{4×32(k+1)1+24(k+1)}{4×32k1+24k}
=4×32k1(91)+24k(161)
=32×32k1+15×24k
=28×32k1+(4×32k1+24k)+14×24k
=28×32k1+28N+28×24k1
は28の倍数である.
(Ⅰ),(Ⅱ)により,すべての自然数nについて,4×32n1+24nは28の倍数であることが示された.


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