■定積分の置換積分

■はじめに
○ ある定積分がそのままの形では計算しにくいときに、計算しやすい形に変数を変換するのが定積分の置換積分

○ 定積分の置換積分の公式・その証明は右の通りであるが、この公式を丸暗記しても問題が解けるとは限らない。

 実際に問題を解くためには、次のように(1) 定積分の区間, (2) 被積分関数, (3) 微分 の3つの部分に分けて、各々等しいものに置き換えるとよい。
(1) ある変換によって
xab
tαβ
となるときに書き換える。
(2) x=g(t)の変数変換によって
被積分関数f(x)tで表す:f(g(t))
(3) 微分の部分dxdtで表す:g’(t)dt
(1)(2)(3)により、f(x)dx=f(g(t))g’(t)dtとする。
【定積分の置換積分の公式】
x=g(t) , a=g(α), b=g(β)のとき
f(x)dx=f(g(t))g’(t)dt
≪証明≫
 f(x)の不定積分の1つをF(x)とするとき
(左辺)=F(b)−F(a)
右辺については、まず合成関数微分法により
F(g(t))=F’(g(t))g’(t)=f(g(t))g’(t)
すなわち、f(g(t))g’(t)dt=F(g(t)+Cに注意すると
(右辺)=f(g(t))g’(t)dt=F(g(t))=F(g(β))−F(g(α))
=F(b)−F(a)

これらは等しい。

※ 多くの場合この公式を用いて左辺→右辺とするが、右辺→左辺の形も使う。(特に意識しなくてもできる。下記の例5参照)
例1 (2x+1)3dx
(2x+1)3を展開すれば計算できるが、3乗を展開するのは大変→2x+1=tとおけばt3になって展開しなくて済む。
2x+1=tとおくと
x01
t13
=2dx=
(2x+1)3dx=t3 == = 10
※一般に、被積分関数がf(ax+b)の形になっているとき、ax+b=tとおくと簡単になる。
例2 xdx
x+1=tまたは=tとおくとできる。
=tの方ができる範囲が広い。
≪解1≫
x+1=tとおくと
x01
t12
=1dx=dt
x=(t−1)tdt =(t−t)dt
=tt=( 4 2 )−( )
= (+1)

≪解2≫
=tとおくとx+1=t2 , x=t2−1
x01
t1
=2tdx=2tdt
xdx=(t2−1)t·2tdt =(2t4−2t2)dt
=t5t3=( 4 2 )−( )
= (+1)
例3 dx
の根号をはずすには、
1−sin2x=cos2xを利用して==|cosx|
または==|sinx|と変形するのが定石。
積分の区間によっての符号を決める。
x=sin tとおくと、==
x01
t0
=cos tdx=cost dt
0t においてはcos t0だから
=cos t

dx=cost cost dt=cos2tdt
= dt= + =( + 0)−(0+0)=


例5
三角関数の公式 tan2θ+1= を利用すると
=cos2θになる。
x=tan tとおくと、
x01
t0
= dx=
= cos2t =t =
例4
x=2sin tとおくと、
x02
t0
==2
0t においてはcos t0だから
2=2cos t
=2cos tdx=2cost dt

= 2cost dt=dt=t=
※この問題において、x02のとき、t0でなければならないということではない。
図のように、x02のとき、t0とするのが最も簡単でよいが、1)tπでもよく、2)t−πでもよい。
1)のときの計算は次のようになる:
x=2sin tとおくと、
x02
tπ
==2
tπにおいてはcos t0だから
2=−2cos t
=2cos tdx=2cost dt

=− 2cost dt=−dt=−t
=−( −π)=
2)のように単調増加(減少)でなく増減のある区間を用いて変換するのは不気味であるが計算は一致する。なお。左の例3についても同様にtの区間には他の取り方もある。
例6 x(x2+1)2dx
一般にf(g(x))g’(x)dxg(x)=tとおくとf(t)dtになる
x2+1=tとおくと、
x01
t12
=2xdx=
2x dx=dtという書き方を好む人もある。)
x(x2+1)2dx=xt2 = =( )=
例7 dx
一般に dxf(x)=tとおくと dt=log|t|+C
になる。【特急券あり】
1+sinx=tとおくと、
x0
t12
=cosxdx=
cosx dx=dtという書き方を好む人もある。)
dx= = log|t|=log2
■問題 次の定積分を計算せよ。
初めに問題を選び、続いて右の解答を選べ。間違ったときは問題を選び直すことから始めること。暗算では無理なので計算用紙が必要)

(1)(x+2)4dx
(2)xdx
(3)dx
(4)
(5)
(6) dx

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■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分の置換積分について/17.8.18]
例3がわかりやすくて、非常によかった
=>[作者]:連絡ありがとう.
■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分の置換積分について/17.6.11]
証明のF(g(t)+Cに注意するとのところとその上の式の ↑の)が足りない気がします
=>[作者]:連絡ありがとう.かっこが抜けていましたので訂正しました.
■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分の置換積分について/17.6.9]
いつも参考にさせて頂いております。証明に「(左辺)=F(b)−F(b)」とありますが、(左辺)=F(b)−F(a)」の誤植だと思います。参考になれば幸いです。読者Nより。
=>[作者]:連絡ありがとう.
■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分の置換積分について/17.6.6]
例4で∫dx/√(4-x^2)dx と書かれているがdx多くね?
=>[作者]:連絡ありがとう.dxが多かったので訂正しました.