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※旧教育課程の高校数学Cに含まれていた「1次変換」について,このサイトには次の教材があります.
この頁へGoogleやYAHOO ! などの検索から直接来てしまったので「前提となっている内容が分からない」という場合や「この頁は分かったがもっと応用問題を見たい」という場合は,他の頁を見てください.  が現在地です.
1次変換とは
点の像と原像
2点とその像→変換式
回転移動の1次変換
合成変換と逆変換
直線の像,領域の像-現在地

== 直線の像,領域の像 ==

【1次変換の線形性】
 1次変換fは,次の関係を満たします.これを1次変換の線形性といいます.
(2つのベクトルの和を1次変換したものは,各々のベクトルを1次変換してから和を求めたものに等しい
⇔1次変換とベクトルの和は順序を入れ替えることができる)
(1) f(x1ww+x2ww)=f(x1ww)+f(x2ww)

(ベクトルの定数倍を1次変換したものは,ベクトルを1次変換してから定数倍したものに等しい
⇔1次変換とベクトルの定数倍は順序を入れ替えることができる)
(2) f(kxww)=kf(xw)

以上の(1)(2)から,一般に,a, bを定数とするとき
(*) f(ax1ww+bx2ww)=af(x1ww)+bf(x2ww)
が成り立ちます.
(解説)
 2次元ベクトルを次のような2×1行列(列ベクトル)で表します.
.xw=
x
y
.

 1次変換fが行列
ab
cd
.
によって表されるとき,
 1次変換f(xw)は,次のような行列の積に対応します.
.f(xw)=
ab
cd
.
x
y
.

(1)←
 行列の積については,次の分配法則が成り立ちます.
.
ab
cd
..
x1
y1
.+
x2
y2
..

.=
ab
cd
.
x1
y1
.+
ab
cd
.
x2
y2
.

したがって
.f(x1ww+x2ww)=f(x1ww)+f(x2ww)
が成り立ちます.
(2)←
 行列の積について,次の等式が成り立ちます.
.
ab
cd
..k
x
y
..=k.
ab
cd
.
x
y
..

したがって
.f(kxww)=kf(xw)
が成り立ちます.

※ 上記の線形性により,図形の1次変換について,次の性質が成り立ちます.
ここでは,逆行列が存在する(D=ad−bc≠0,正則)1次変換について述べる.逆行列が存在しない(D=ad−bc=0,正則でない)1次変換では,平面全体が直線や点に「つぶれる」場合があり,ここではこれを考えない.逆行列が存在する1次変換では,平面全体は平面全体に1対1に対応します.
(A) 直線は直線に移される
真っ直ぐなものが,1次変換によって曲がることはない.
(解説)
 点A(aw)を通り方向ベクトルuw=ABwwに平行な直線は,ベクトル方程式
.pw=aw+tuw
tは実数)
で表される.
位置ベクトルP(pw), 点A(aw),方向ベクトルuw=ABの1次変換fによる像を各々pw’=f(pw)A’(aw)u'ww=A'B'とすると
.f(pw)=f(aw+tuw)=f(aw)+f(tuw)
.=aw’+tuw
ゆえに
.pw’=aw’+tuw
これは,P'(pw’)が点A'(aw’)を通り,方向ベクトルuw’=A'B'に平行な直線上にあることを示している.

(B) 線分の内分比は変わらない
元の内分比がPQ:QR=m:nのとき,P'Q':Q'R'm:nになる.
(解説)
Q(qw)が2点P(pw), R(rw)m:nに内分するとき
.qw=.npw+mrwm+nnnnnnn
 点P(pw), Q(qw), R(rw)の1次変換fによる像を各々
P'(p'ww)=f(pw), Q'(q'ww)=f(qw), R'(r'ww)=f(rw)とすると
.f(qw) =f ..npw+mrwm+nnnnnnn.
.=.nf(pw)+mf(rw)m+nnnnnnnnnnnn

ゆえに
.q'ww=.np'ww+mr'wwm+nnnnnnnnnn
これは,点Q'(q'ww)が2点P'(p'ww), R'(r'ww)m:nに内分することを示している.

※ 逆行列が存在する(D=ad−bc≠0,正則)1次変換については,この他に,つぎのような性質も成り立ちます.
 しかし,直線や領域の移動を考えるときに,真っ先に利用できるのは上の2つの性質です.
(C) 異なる2点は異なる2点に移される.
(D) 平行な2直線は平行な2直線に移される.
(E) 三角形の内部は三角形の内部に移される.

*** 逆行列が存在するときの直線の像 ***
【例1】
 1次変換
x'
y'
.=
23
−14
.
x
y
.
によって,直線y=3x
がどのような図形に移されるか調べてください.
(解答) (2点の像で求める方法)

図形y=3xの変換となると考えにくいという場合には,点の移動で求める.
選ぶのは直線上の2点ならどれでもよいが,性質(A)により「直線は直線に移される」ことが分かっているから,出てきた2点を結ぶ直線の方程式を求めると答が出る.
 原点O
0
0
.

.
x'
y'
.=
23
−14
.
0
0
.=
0
0
.
によって
原点O'
0
0
.
に移される.
 次に,直線y=3x上の1つの点P
1
3
.
.
x'
y'
.=
23
−14
.
1
3
.=
11
11
.
によって
P'
11
11
.
に移される.
 (A) により直線は直線に移されるから,直線OPは直線O'P'に移される.
 O'P'の方程式はy=x …(答)
(別解1) (逆変換による方法)

 旧座標(x, y)の関係式が
.y=3x…(1)
 新旧の関係式が
 
x'
y'
.=
23
−14
.
x
y
.
…(2)
であるときに,新座標(x', y')の関係式を求めたらよい.
(2)を変形して
 
x
y
.=
23
−14
.−1
x'
y'
.=
.411nn.311nn
.111nn..211nn
.
x'
y'
.

したがって
 
x=.411nnx'−.311nny'
y=.111nnx'+.211nny'
.
…(2')
(2')を(1)に代入
(.111nnx'+.211nny')=3(.411nnx'−.311nny')
(x'+2y')=3(4x'−3y')
11y'=11x'
y'=x'
通常の表記に直すと
y=x …(答)
(別解2) (媒介変数表示による方法)
 方程式y=3x…(1) のままでは
 
x'
y'
.=
23
−14
.
x
y
.
…(2)
に代入することはできませんが,これを媒介変数表示に直してx座標とx座標に分けると,代入できるようになります
(1)式を媒介変数表示に直してx=t, y=3t…(1')とする
(1')を(2)に代入すると
 
x'
y'
.=
23
−14
.
t
3t
.

 
x'=2t+9t=11t
y'=−t+12t=11t
.

 x'=11t , y'=11tから媒介変数tを消去すると
 y'=x'
通常の表記戻すと
 y=x …(答)
(別解3) (図で考える方法)
 1次変換
x'
y'
.=
ab
cd
.
x
y
.
によって
 ew=
1
0
.
e'w=
a
c
.
に移され
 fw=
0
1
.
e'w=
b
d
.
に移されます.
 このとき点
x
y
.=xew+yfw=x
1
0
.+y
0
1
.

 
 
ab
cd
..x
1
0
.+y
0
1
..

 =x
ab
cd
.
1
0
.+y
ab
cd
.
0
1
.=x
a
c
.+y
b
d
.

 =xe'w+yf'wに移されますので,次図のピンク色はピンク色の部分に,緑色は緑色,水色は水色に各々移されます.
 そこで上の図の赤で示した直線y=3xは下の図の赤で示した直線に移されます.

目の子算(めのこざん)という言葉があるらしい.・・・まともに計算せずに,目で見て合わせる方法
丸印の所などを参考にすると,y=x…(答)
※ 上の【例1】のように,原点を通る直線の像を求めたいとき,原点の像は必ず原点になるから,他にもう一つの点の像を求めて,2点の像を求めるとよい.
 次のようにまとめることができます.
直線の像の求め方(その1)

⇒ 直線の像は,2点の像で求められます

2点の像が得られたら,それら2点(a, b) , (c, d)を通る直線の方程式は,次の公式で求められます.
○ c≠aのとき
.y−b=.d−bc−annn(x−a)
○ c=aのときは
 次図のようにx軸に垂直な直線になるから
.x=a (またはx=c
 上の【例1】では,2点(0, 0) , (11, 11)を通る直線の方程式として
.y−0=.11−011−1nnnn(x−0)
で求めています.
直線の像の求め方(その2)

 ⇒ 逆変換を使えば,x, yの関係式をx', y'の関係式に直せます.


 
x'
y'
.=A
x
y
.

は,逆行列A−1を求めたら
 
x
y
.=A−1
x'
y'
.

と書き直せます.
直線の像の求め方(その3)

 ⇒ 媒介変数表示を使えば,方程式y=f(x)の代わりに点の座標( ...t, ...t)になるので,そのまま変換式に代入できます.

【媒介変数表示に直すには】
○ 関数y=f(x)の形で書かれている方程式を媒介変数表示直すには,
x=t, y=f(t)tは媒介変数)とするとよい
例えば,y=2x+1を媒介変数表示に直すには
x=t, y=2t+1tは媒介変数)とするとよい

○ y=...の形に変形しにくい場合,例えば,x=y2+1の場合ならば
y=t, x=t2+1tは媒介変数)とするとよい

※ 媒介変数表示に直す方法は1つではないので,例えば2x+3y+1=0の場合ならば
(1) x=t, y=−.23nt−.13ntは媒介変数)でもよく
(2) y=s, x=−.32ns−.12nsは媒介変数)でもよい
(3) 2(x−1)=−3(y+1)と変形して
x−1=3u, y+1=−2u
x=3u+1, y=−2u−1uは媒介変数)でもよい


【問題1】
 
x'
y'
.=
11
−11
.
x
y
.

で表される1次変換によって,直線x+3y=1がどのような図形に移されるか調べてください.

. 2x−4y=−1 . y=−2x+1
. 4x−2y=1 . y=2x−1
【問題2】
 
x'
y'
.=
32
54
.
x
y
.

で表される1次変換によって,直線x+2y=4がどのような図形に移されるか調べてください.

. 3x−2y+4=0 . 3x−2y−2=0
. 13x+10y−4=0 . 13x−10y+4=0

*** 逆行列が存在するときの多角形の像 ***
【例2】
 1次変換
x'
y'
.=
53
21
.
x
y
.
によって,
領域{ (x, y) | 0≦x≦1, 0≦y≦1 }がどのような図形に移されるか調べてください.
(解答)
 頂点O(0, 0), A(1, 0), B(1, 1), C(0, 1)はこの1次変換によって各々
.
53
21
.
0
0
.=
0
0
.
…O'
.
53
21
.
1
0
.=
5
2
.
…A'
.
53
21
.
1
1
.=
8
3
.
…B'
.
53
21
.
0
1
.=
3
1
.
…C'
に移される.
 このとき,四角形OABCは四角形O'A'B'C'に移され,四角形OABCの内部は四角形O'A'B'C'の内部に移されます.
 したがって,O'(0, 0), A'(5, 2), B'(8, 3), C'(3, 1)を頂点とする四角形の内部および周上 …(答)
 直線は直線に移されるから,線分OAは線分O'A'に移され,他の3つの辺も同様 ⇒ 四角形の周上の点は周上の点に移される.
 次に,図のような四角形の内部の点Pは,「内分比が変わらない」ことにより,内分比が同じ図のような点P'に移されるので,四角形の内部の点は新しい四角形の内部の点に移されます.

 このようにして,
  • 図形の周辺の像を求めれば図形の像は求められます.
  • 特に,三角形,四角形のような直線で囲まれた図形の像は,頂点の像を求めるだけで求められます.
【問題3】
 
x'
y'
.=
31
24
.
x
y
.

で表される1次変換によって,3点O(0, 0), A(1, 0), B(0, 1)を頂点とする三角形OABの内部および周上がどのような図形に移されるか調べてください.

. .
. .
【問題4】
 
x'
y'
.=
20
−14
.
x
y
.
で表される1次変換によって,
領域{ (x, y) | 0≦x≦1, 0≦y≦1 }がどのような図形に移されるか調べてください.

. .
. .

*** 1次変換による原像 ***
【例3】
 1次変換
x'
y'
.=
3−1
42
.
x
y
.
によって,
直線y=3x+1に移される元の図形を求めてください.
(解答)
 新座標(x', y')の関係式
.y'=3x'+1…(1)
と,新座標(x', y')と旧座標(x, y)の変換式
.
x'
y'
.=
3−1
42
.
x
y
.
x'=3x−y
y'=4x+2y
.
…(2)
から新座標(x', y')を消去して,旧座標(x, y)の関係式を作ればよい.
 (2)を(1)に代入すると
.4x+2y=3(3x−y)+1
.5x−5y+1=0…(答)
 像の関係式(新座標の方程式)y'=3x'+1から原像の関係式y=...x+...を求める手続きを理屈で考えれば逆変換に見えますが,上欄のように(x', y')(x, y)の関係を整理すると,『意外な事に』元の1次変換のまま使えばよいことが分かります.

※ この問題では,直線y=3x+1上の2点,例えば(0, 1), (1, 4)の原像を求めて,それら2点を通る直線の方程式を計算する方法も考えられますが,「逆行列の計算」「2点の原像の計算」「2点を通る直線の方程式の計算」と長い道のりになり,大変です.
【問題5】
 1次変換
x'
y'
.=
−15
3−4
.
x
y
.
によって,
直線2x+3y−1=0に移される元の図形を求めてください.
. 2x+7y−1=0 . 7x−2y−1=0
. 11x+13y−17=0 . 17x+13y−11=0
【問題6】
 1次変換
x'
y'
.=
2−1
−23
.
x
y
.
によって,
直線y=−2xに移される元の図形を求めてください.
. y=2x . y=−2x
. x=2y . x=−2y

*** 逆行列が存在するときの曲線図形の像 ***
【例4】
 1次変換
x'
y'
.=
1−1
11
.
x
y
.
によって,
x2+y2=1はどのような図形に移されますか.
 この問題は,元の図形が直線で囲まれた図形ではなく,曲線なので2点の像を直線でつないでも解答は得られません.
 しかし,単位面積{ (x, y) | 0≦x≦1, 0≦y≦1 }の像は略図を描くときには非常に参考になります.(次図参考)
(解答)
 旧座標(x, y)の関係式
.x2+y2=1…(1)
と,新座標(x', y')と旧座標(x, y)の変換式
.
x'
y'
.=
1−1
11
.
x
y
.

.
x
y
.=
1−1
11
.−1
x'
y'
.=
..12n.12n
.12n.12n
.
x'
y'
.

.
x=.12nx'+.12ny'
y=−.12nx'+.12ny'
.
…(2)
から旧座標(x, y)を消去して,新座標(x', y')の関係式を作ればよい.
 (2)を(1)に代入すると
.(.12nx'+.12ny')2+(−.12nx'+.12ny'')2=1
....
.x'2+y'2=2
x, yの表記に直すと
.x2+y2=2…(答)
※ 理屈で考えると,(x, y)の関係式を変換すると(x', y')の関係式になるように思われますが,実際の計算は,上の解説のように逆変換を代入します.
 したがって,この方法で答えられるのは,1次変換に逆行列が存在する場合だけです.


※ この問題は,元の図形が曲線なので,2点の像で直線の像を求める方法で解くことはできませんが,
単位面積{ (x, y) | 0≦x≦1, 0≦y≦1 }
の像を描くと平面が移される様子が視覚的に理解できます.
(0, 0)→(0, 0), (1, 0)→(1, 1), (1, 1)→(0, 2), (0, 1)→(−1, 1)だからピンクの四角形はピンクの四角形に移されます.同様にして,黄色は黄色へ,灰色は灰色へ,水色は水色へ移されます.
 この頁の先頭で述べた(B)の性質により,各々の色の中にある図形は各々の色の中に移されるので,赤で示した線は赤で示した線に移されます.(金網を引きのばして回転させた感じ)
 求めた線が円であることは,上のような計算によらなければ断定できません.
【問題7】
 1次変換
x'
y'
.=
0−1
10
.
x
y
.
によって,
放物線y=x2はどのような図形に移されますか.
. y=x2 . y=−x2 . x=y2 . x=−y2
【問題8】
 1次変換
x'
y'
.=
20
03
.
x
y
.
によって,
x2+y2=1はどのような図形に移されますか.
. x2+y2=13 . 4x2+9y2=1 . .x29n+.y24n=1 . .x24n+.y29n=1


*** 逆行列が存在しないときの像 ***
【例5】
 1次変換
x'
y'
.=
6−4
−32
.
x
y
.
によって,
直線y=2x+1はどのような図形に移されますか.
 この問題では,逆行列が存在しない(D=6×2−(−4)×(−3)=0)ので逆変換は利用できません.
 原像が直線図形なので,2点の像で求めることができます.媒介変数表示を利用してもできます.
(解答)
(2点の像で求める方法)
(1) 直線y=2x+1の上にある2点を選びます.例えば(0, 1), (1, 3)を選びます.
(2) これら2点の像を各々求めます.
.
6−4
−32
.
0
1
.=
−4
2
.

.
6−4
−32
.
1
3
.=
−6
3
.

(3) 像となる2点の座標(−4, 2), (−6, 3)から,2点を通る直線の方程式を求めます.
.y−2=.3−2−6+4nnnnn(x+4)
.x+2y=0…(答)
(媒介変数表示による方法)
y=2x+1を媒介変数表示に直してx=t, y=2t+1…(*)とする
(*)を代入すると
 
x'
y'
.=
6−4
−32
.
t
2t+1
.

 
x'=6t−4(2t+1)=−2t−4
y'=−3t+2(2t+1)=t+2
.

 x'=−2t−4 , y'=t+2から媒介変数tを消去する
.x'+2y'=0
習慣にしたがって変数をx, yで表すと
.x+2y=0
【問題9】
 1次変換
x'
y'
.=
21
42
.
x
y
.
によって,
直線x+y−3=0はどのような図形に移されますか.
. y=2x . y=−2x . x=2y . x=−2y

【問題10】
 1次変換
x'
y'
.=
6−4
−32
.
x
y
.
によって,
直線y=2x+1はどのような図形に移されますか.
. y=2x . y=−2x . x=2y . x=−2y


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