［要点］
　ある不等式（Ａ）が成り立つことを数学的帰納法によって証明するには，次のようにすればよい．
(I)　n=1 のとき（Ａ）が成り立つことを証明する．
(II)　n=k のとき（Ａ）が成り立つことを仮定する．
　その仮定を使って
　n=k+1 のとき（Ａ）が成り立つことを証明する．

　n が 3 以上の整数のとき，次の不等式が成り立つことを証明せよ．

2k>2k …（Ｂ）

どこからそんな話が出てくるのか？それは，n=k+1 のときの左辺の形を予想すると，式（Ｂ）と ×2 の分だけ違うからである．

2k×2>2k×2

2k+1>4k

4k−2(k+1)=2k−2=2(k−1)>0　（ k≧3 だから）

2k+1>4k>2(k+1)　※

2k+1>2(k+1)

勢い余って「すべての正の整数について成立する」などと書かないように．「 3 以上」だけでしか成り立たないことに注意

［不等式の証明で注意すべき点］
　左辺と右辺が等しくないのが不等式なので，ほとんどの場合左辺を変形していっても右辺にはならない．

※において 4k を変形しても 2(k+1) にはならない．
証明したいことは 2k+1>2(k+1) だから，この結論に合うように 4k>2(k+1) を証明すればよい．

2k+2>2k+2=2(k+1)

2k+1−(2k+2)=2k(2−1)−2=2k−2

2k−2≧8−2=6>0

2k+1>2k+2>2k+2=2(k+1)

　n が 4 よりも大きい自然数のとき，次の不等式が成り立つことを証明せよ．

2k>k2 …（Ｂ）

2k+1>2k2

2k2−(k+1)2
=k2−2k−1
=(k−1)2−2 (*2)

(k−1)2−2≧14>0 (*3)

(II)　において次のように書いている答案は零点なので要注意
n=k のとき n=k+1 のとき ⇒ n=k のときも，n=k+1 のときも代入しているだけで何も証明されていない．n=k+1 のときも代入してしまうと，その式が n=k+1 のときに成立することを仮定していることになる．
⇒ n=k のときは成立することを仮定しなければならないが，n=k+1 のときは成立することを証明しなければならない．

　n が 2 以上の自然数のとき，次の不等式が成り立つことを証明せよ．

1+ + + ··· + > …（Ａ）

　左辺=1+ = =1.5

　右辺= ==1.33...

1+ + + ··· + > …（Ｂ）

（Ｂ）の両辺に を加えると

1+ + + ··· + + > + =

−

= { (2k+1)(k+2)−2(k+1)(k+1) }

= { 2k2+5k+2−(2k2+4k+2) }

= > 0　（∵ k≧2 ）

1+ + + ··· + + > >

　n が 2 以上の自然数のとき，次の不等式が成り立つことを証明せよ．

　左辺= + = 1+ =

　右辺=2− = =

+ + + ··· + < 2− …（Ｂ）

（Ｂ）の両辺に を加えると

+ + + ··· + + < 2− +

2− > 2− + を証明する．

(2− )−(2− + )

=− + −

= { -k(k+1)+(k+1)2−k }

= { -k2−k+k2+2k+1−k }

= > 0　（∵ k≧2 ）

+ + + ··· + + < 2− +

< 2−

　すべての自然数 n について，次の不等式が成り立つことを証明せよ．

※初めに [ ? ] で示される空欄を１つ選び，続いてその空欄に入る値を下の選択肢から１つ選べ．
合っていれば代入されます．間違っていれば元に戻り，答案の傾向が表示されます．

　左辺=[ ？ ]

　右辺=[ ？ ]

4k > 3k …（Ｂ）

（Ｂ）の両辺に [ ？ ] を掛けると

4k+1 > [ ？ ] k

[ ？ ] k−3(k+1)=9k−3≧ [ ？ ] > 0
　（∵ k≧[ ？ ] ）

4k+1 > 12k > 3(k+1)