■ケーリー・ハミルトンの定理

[解説]
2次の正方行列については,は次の関係式がつねに成り立ちます。これをケーリー・ハミルトンの定理といいます。
A2-(a+d)A+(ad−bc)E=0

[応用]
 
A2 → (a+d)A-(ad−bc)E

とみると,左辺は2次,右辺は1次
つまり,次数を下げる変形ができます。

行列のn乗を変形するのに用いることができます:

例
A=のとき,
 a+d=1,ad−bc=-2だから,

A2-A-2E=0
 これを用いれば,
   A2=A+2E
 両辺にAをかけて,
A3=A2+2A=(A+2E)+2A=3A+2E=
 同様にして,
   A4=A3A=(3A+2E)A=3A2+2A
     =3(A+2E)+2A=5A+6E=
などと変形できます。
※ 証明は,成分計算を気長に行えばできます。
A=のとき,
A2-(a+d)A+(ad−bc)E
=+
+=
 
 

※ 行列の計算は2つの処理方法があります。
  1 成分で行う方法(何でもできるが,遅い)
  2 行列で行う方法(使えるところは速い) 

ケーリー・ハミルトンの"定理自身"は上記のように成分計算で示しますが,ひとたびこの定理が証明できると,ケーリー・ハミルトンの定理を用いた行列での変形が可能となります。[行列は行列でやる。]
ただし,ケーリー・ハミルトンの定理で何でもできるわけではないので,行き詰まれば成分計算を併用します。
 
 
[要点]--計算の方針--
使えるところは,新幹線(ケーリー・ハミルトン)で行く,
残りは,普通列車(成分計算)で行く。
 

[数値計算と行列計算の比較]
[数]--次数を1次ずつ下げる方法--
例 x=1+√2 のとき,x2,x3,x4の値を求めなさい。


x=1+√2 ←→ x-1=√2 → (x-1)2=2
       ←→ x2-2x-1=0・・・(1)
(1)より,x2=2x+1・・(2)
(2)より,x3=(2x+1)x=2x2+x=2(2x+1)+x
       =5x+2・・(3)
(3)より,x4=(5x+2)x=5x2+2x=5(2x+1)+2x
      =12x+5・・(4)
x2=2(1+√2)+1=3+2√2
x3=5(1+√2)+2=7+5√2
x4=12(1+√2)+5=17+12√2
[行列]--次数を1次ずつ下げる方法--
例 A=のとき,A2,A3,A4を求めなさい。

ケーリー・ハミルトンの定理により,A2-2A-E=0・・(1)
(1)より,A2=2A+E・・(2)
(2)より,A3=(2A+E)A=2A2+A=2(2A+E)+A
       =5A+2E・・(3)
(3)より,A4=(5A+2E)A=5A2+2A=5(2A+E)+2A
=12A+5E・・(4)
A2=2+=
A3=5+2=
A4=12+4=
[数]--商と余りの関係を利用する方法--(上記をまとめて行う)
例 X=2−i のとき,X3−3X2+X+3の値を求めなさい。


X=2−i ←→ X−2=−i → (x−2)2=−1
      ←→ X2−4X+5=0・・(1)
(X3−3X2+X+3)÷(X2−4X+5)=x+1・・・ −2
X3−3X2+X+3=(X2−4X+5)(x+1)−2・・(2)
(1)によりX2−4X+5=0だから
(一度に3次下げる)
X3−3X2+X+3=−2・・・答
[行列]--商と余りの関係を利用する方法--(上記をまとめて行う)
例 A=のとき,
A3−3A2+A+3Eを求めなさい。


ケーリー・ハミルトンの定理により,A2-4A+5E=0・・(1)
--高校の行列には割り算がないので,答案の書き方に注意--
(X3−3X2+X+3)÷(X2−4X+5)=x+1・・・ −2
X3−3X2+X+3=(X2−4X+5)(x+1)−2 により
A3−3A2+A+3E=(A2-4A+5E)(A+E)−2E・・(2)
(1)によりA2-4A+5E=0だから
(一度に3次下げる)
A3−3A2+A+3E=−2E=・・答
■問題
1
A=のとき,A3−2A2+3Eを求めなさい。
A3−2A2+3E=
[ア]=,[イ]=
[ウ]=,[エ]=
2
A=のとき,A3−5A2+7Aを求めなさい。
A3−5A2+7A=
[オ]=,[カ]=
[キ]=,[ク]=
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■[個別の頁からの質問に対する回答][ケーリー・ハミルトンの定理について/17.1.9]
問題2のA³−5A²+7A は、A³−5A²+7Eの間違いだと思います。(でないと答えが違う)
=>[作者]:連絡ありがとう.問題と解答にはエラーはないが,解説図に数か所ボロボロのところがありましたので訂正しました.