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== ド・モルガンの法則 ==
■ 共通部分,和集合
(1) 2つの集合A , Bの両方に属する要素全体の集合をA , B共通部分といいABで表す.
(2) 2つの集合A , Bの少なくとも一方に属する要素全体の集合をA , B和集合といいABで表す.

(1) 共通部分は集合の要素が満たすべき条件を「かつ」で結んだ場合に対応している.
AB = { x | xA かつ xB }
(2) 和集合は集合の要素が満たすべき条件を「または」で結んだ場合に対応している.
AB = { x | xA または xB }

※ 数学で使われる「AまたはB( A or B )」という用語は,上の(2)から分かるようにAだけ,Bだけというようなどちらか一方だけの場合だけでなく,ABの場合も含んでいることに注意
 したがって,Aが朝にコーヒーを飲む人の集合,Bを朝に紅茶を飲む人の集合とするとき,ABには両方とも飲む人も含まれている.
例1
 A = { 1 , 2 } , B = { 2 , 3 }のときABを要素を書き並べて示しなさい.
(解答)
 AB = { 2 }

例2
 A = { 1 , 2 } , B = { 2 , 3 }のときABを要素を書き並べて示しなさい.
(解答)
 AB = { 1 , 2 , 3 }

例3
 右図において(AC)Bを要素を書き並べて示しなさい.

(解答)
AC = { 4 , 3 }
B = { 2 , 3 , 5 , 6 }
だから
(AC)B = { 2 , 3, 4 , 5 , 6 }
 共通部分や和集合が組み合わされているときは,かっこの中を先に考えて合成する.
(1) (AB)Cを図示するには
まず AB と C を考える.

次に,それらの和集合を考える.
⇒ 
(2) A(BC)を図示するには
まず A と BC を考える.

次に,それらの共通部分を考える.
⇒ 
※ 上の(1)(2)から分かるように,
 一般に(AB)CA(BC)は異なる集合になるので,式の中に使われている「かっこ」は省略できない.
 これに対して,(AB)CA(BC)は常に同じ集合になり,どちらの意味に理解されても混乱は起こらないのでABCと書くことができる.
 ABCも同様
■ 補集合
 全体集合Uの要素のうちで集合Aに属さない要素の集合をA補集合といい で表す.

 補集合については次の関係が成り立つ.
A=U
A=
=A

 補集合は条件の「否定」(〜でない)に対応している.
= { x | x|A }
正確に言えば
= { x | xU かつ xA }

※ 補集合は全体集合を指定しないと決まらない.
 例えば,偶数の集合の補集合が奇数の集合となるのは,全体集合を整数の集合とした場合であって,全体集合を実数の集合としているときは偶数の集合の補集合には奇数の他に約分できない分数や無理数も含まれる.
(1) ABを作ってからその補集合を考えたものを表す.
  

(2) Aの補集合とBの補集合の共通部分を表す.
  

※ 上の(1)(2)から分かるようには全く異なるものになる.
【重要】
 ”屋根”がつながっているかどうかで全く違うものになる
例4
 右図において次の各集合を要素を書き並べて示しなさい.

(1) BC

(2) A()

(3) (BC)

(4) A()

(解答)
(1)  = { 5 , 6 , 7 , 8 } , B = {2 , 3 , 5 , 6} , C = { 3 , 4 , 6 , 7 } だから BC = { 6 }
(2) BC = { 3 , 6 }だから = { 1 , 2 , 4 , 5 , 7 , 8 }
また A = { 1 , 2 , 3 , 4 }
ゆえに A() = { 1 , 2 , 4 }
(3)  = { 5 , 6 , 7 , 8 }
また BC = { 2 , 3 , 4 , 5 , 6 , 7 }
ゆえに (BC) = { 5 , 6 , 7 }
(4) BC = { 3 , 6 }だから = { 1 , 2 , 4 , 5 , 7 , 8 }
また A = { 1 , 2 , 3 , 4 }
ゆえに A() = { 1 , 2 , 3 , 4 , 5 , 7 , 8 }
(集合について) ド・モルガンの法則

= …(1)
= …(2)
(1) ←:
AB

   …(i)



   …(ii) (i)(ii)は等しい
(2) ←:
AB

   …(i)



   …(ii) (i)(ii)は等しい
例5
 次の各集合のうちで等しいものを選びなさい.
(1) 
(2) 
(3) 
(4) 
(5) ()
(6) ()
(7) ()
(8) 
(解答)
(1)→==()→(8)
(2)→==()→(5)
(3)→==()→(7)
(4)→==()→(6)
■ 論理についてのド・モルガンの法則
■ (「かつ」「または」について)ド・モルガンの法則
(1) (aかつb)でない = (aでない)またはbでない)
(2) (aまたはb)でない = (aでない)かつbでない)

⇒ 否定にすると「かつ」と「または」が入れ替わる

例6
(1) (x>1かつx10)でない
 = (x>1でない)またはx10でない)
 = (x1またはx>10
□ 論理についてのド・モルガンの法則は,集合についてのド・モルガンの法則に対応している.

「かつ」を∧で,「または」を∨で,否定(〜でない)をで表すと,論理についてのド・モルガンの法則は次の形に書ける.
=
=

例7
(2) (x=1またはx10)でない
 = (x=1でない)かつx10でない)
 = (x1かつx=10
 以下は2010年度現在の高校数学Aの教科書には出ていないが,方程式や不等式の解を考えるときに普通に使われる考え方である.
■ (「すべて」「ある」について)ド・モルガンの法則
(1) { すべてのxについてp(x)} でない
 = あるxについて { p(x)でない }
(2) { あるxについてp(x) } でない
 = すべてのxについて { p(x)でない }

⇒ 否定を作ると「すべて(all)」と「ある(some , exist)」が入れ替わる

(解説)
xが多数あるとき(x1 , x2 , ··· ,xn
(1)
{ すべてのxについてp(x)} でない
={ p(x1 ) かつ p(x2 ) かつ ··· p(xn ) }でない
={p(x1 )でない} または {p(x2 )でない} または ··· {p(xn )でない}
となるから
あるxについて { p(x)でない }
に等しい.
(2)
{ あるxについてp(x)} でない
={ p(x1 ) または p(x2 ) または ··· p(xn ) }でない
={p(x1 )でない} かつ {p(x2 )でない} かつ ··· {p(xn )でない}
となるから
すべてのxについて { p(x)でない }
に等しい.

 「すべての」を∀,ある(存在する)を∃で表すとき
(1)  = x()
(2)  = x()
 「すべての」「ある」を意識して解くべき不等式の例
 例えば,2次不等式x2−6x+9<0を解きたいとき
 この問題は,x2−6x+9<0を満たすxの値の範囲を求めるものであるが,そもそも
x2−6x+9<0が成り立つxはあるか?」
すなわち
「あるxについてx2−6x+9<0が成り立つか?」…(1)
と考えると,図のように
「すべてのxについてx2−6x+90が成り立つ」…(2)
すなわち,否定(2)が真だから元の命題(1)は偽になる.
したがって,元の問題は「解なし」になる.
例8 (この教室にいる学生について)
(1)
 (すべての学生は男子である)を否定するには
 (ある学生は女子である)ことを示せばよい.(全員女子であることを示す必要はない)
(2)
 (男子がいる)を否定するには
 (全員女子である)ことを示せばよい.(女子がいることを示すだけでは足りない)

例9 (自然数xについて)
元の命題:「すべてのxについて,x>1が成り立つ」
の否定命題は:「あるxについて,x1が成り立つ」
(この例では否定命題が正しい[ x=1のときがあるから ])
例10 (実数xについて)
 「あるxについて,2x+10が成り立つ」の否定は
 「すべてのxについて,2x+1<0が成り立つ」
(この例では元の命題が正しい[元の不等式に解があるから])
例11 (自然数m , nについて)
「あるmについて,どんなnをもってきても,mnが成り立つ」…(*1)
 (このように書かれるときは,mを先に決め,nの値は後から決める.特にnの値はmの値に応じて決めてもよい.
 (*1)の命題は真 … この命題は,自然数には最小値m=1が存在するということを表している.)

例12 (自然数m , nについて)
例11の否定は
「すべてのmについて,あるnが存在して,m>nが成り立つ」…(*2)
 mを先に決め,nの値は後から決める.特にnの値はmの値に応じて決めてもよい.
 (*2)の命題は偽 … m=1のとき,m>nとなるような自然数nは存在しない.)

例13 (自然数m , nについて)
「あるmが存在して,どんなnについても,mnが成り立つ」…(*3)
 (決め方の順序は上記例11,12と同様.nの値は「後だしジャンケン」のようにmの値を聞いてから決めてもよい.
 (*3)の命題は偽 … n=m+1とすればn>mとなるから.このことは自然数には最大値が存在しないことを示している.)

■上の例に示したように,∀,∃に対応する日本語としては様々な言い方がある.
x:「すべてのxについて」「どんなxについても」「任意のxについて」
x:「あるxについて」「xが存在する」「適当なxを選べば」
■「かつ/または」,「すべて/ある」のド・モルガンの法則の組み合わせ
例14 (実数xについて)
 「あるxについて,(x0かつx<3が成り立つ
の否定は
 「すべてのxについて,(x0かつx<3)でない」
 =「すべてのxについて,(x<0またはx3)」
     [参考] - - - - - (元の命題が正しい:n=1など)
例15 (正の整数nについて)
 「すべてのnについて,(nは偶数である,または,3の倍数)」
の否定は
 「あるnについて,(nは偶数である,または,3の倍数)でない」
 =「あるnについて,(nは奇数である,かつ,3の倍数でない)」
     [参考] - - - - - (否定が正しい:n=1など)
問題1
 A = { 2 , 3 , 4 , 6 } , B = { 3 , 5 , 6 }のとき,次の集合を要素を書きならべて示せ.(1つ選べ)
(1) AB 
(2) AB 

問題2
 右図において次の集合を要素を書きならべて示せ.(1つ選べ)
(1) (AB) 
(2) C 
(3)  
問題3 に等しいものを選べ. 

問題4 「すべてのxについて,(x0またはx1)」の否定を次のうちから選べ. 

問題5 「任意のmについて,適当なnを選べば,mnが成り立つ」の否定を次のうちから選べ. 

■[個別の頁からの質問に対する回答][ド・モルガンの法則について/17.7.27]
問題2 の (3) ここがポイント≫ まずA∩B={2,3}を求めてから,次にこれとC={3,4,6,7}の和集合を求めます 次の行のA∩Bの上のバ−はいらないと思いますが。
=>[作者]:連絡ありがとう.ほんとだ,いらないので訂正しました.Web画面上でバーを表示するプログラムをいじくったりしているうちに間違ったようです.改行位置も見にくいので少し修正しました.
■[個別の頁からの質問に対する回答][ド・モルガンの法則について/17.5.14]
問題とは関係ないのですが、 スマホで縦スクロールだけで見れるようにしていただけるとうれしいです
=>[作者]:連絡ありがとう.その頁の先頭に「→ 携帯版は別頁」というリンクがあり,それをたどれば携帯版に行くようになっていますが,その表示が分かりにくいということでしょうか?もう少しその表示を大きくする?
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