■逆関数
【はじめに】
(1) 関数と関数でないものの違い
 「定義域の各々の実数xの値に対して,実数yの値が,1つ,しかも唯1つだけ定まる対応関係があるとき,この対応f:x→yを関数といい,y=f(x)などと表します.
1つのxの値に対して,2つ以上のyの値が対応するような場合(多価関数)は,この頁では関数に含めません.だから,関数と呼ばれるものでは1対多対応のようなものは考えず,1つのxの値に対しては,1つのyだけが対応するものを考えます.
 例えば,上図のような円のグラフは1つの関数y=f(x)の形には表せず,y=±というように2つの関数で表します.(青で示した上半円がy=オレンジで示した下半分がy=−
 厳密に言えば,あるxの値に対して,対応するyの値が「ない場合=0個の場合」も関数の定義に合わないことになりますが,定義域を絞ることにより,各々のxに対して唯1つのyができる場合は,関数として扱います.
 例えば,y=は,x<0のとき対応する実数yがないので,すべての実数xに対しては関数とは言えませんが,定義域をx≧0とかx>1とすると,実数yが唯1つ定まるので,その定義域では関数になります.
 また,y=は,x=1のとき定義されないので
すべての実数xに対しては関数とは言えませんが,定義域をx≠1とすると,実数yが唯1つ定まるので,その定義域では関数になります.
 このように,関数といえるためには,対応するyの値は1個でなければなりませんが,0個(ない)となる部分があるときは,その関数が定義される(1つは対応する値がある)範囲で考える(定義域を絞る)ことにします.

【要点】
[簡単チェック問題1]
 次のグラフ(青色)で表される対応f:x→yのうちで関数とはいえないものを選んでください(番号をクリック).なお,関数が定義されないxの値の範囲を除外すれば,関数とみなせるものは,関数に含めてください.
1 2
3 4


[簡単チェック問題2]
 次のグラフ(青色)で表される対応f:x→yのうちで関数とはいえないものを選んでください(番号をクリック).なお,関数が定義されないxの値の範囲を除外すれば,関数とみなせるものは,関数に含めてください.
1 2
3 4


(2) 1対1の関数
 関数のうちで,異なるxには異なるyが対応しているものを,1対1の関数といいます.
「1対1の関数」 ⇔ 「x1≠x2 → f(x1)≠f(x2)
対偶をとって,次のように考えることもできます.
x1=x2 ← f(x1)=f(x2)
あるいは
x1=x2 ← y1=y2
1対1では,こんなことは起こらない

【要点】 1対1の関数であるかどうかを
○ 式で調べるには 「y1=y2 → x1=x2」のとき1対1といえる
○ 連続関数について,グラフで調べるには 「単調増加」または「単調減少」のとき,1対1といえる
※ 1対1の関数であるかどうかは,各々のyに対するxの個数の性質
◎すべてのyに対してxは1個→1対1
○あるyに対してxは0個(なし)→値域に属するyだけを考えればよいことにすると,この場合は考えなくてもよい
○あるyに対してxが2個(またはそれ以上)→1対1でない

[簡単チェック問題3]
 次のうちで,1対1の関数でないものを選んでください(番号をクリック).
1y=2x−1 2y=
3y=x2−1 4y=x2−1 (x≦0)


《参考》
連続な関数で1対1の関数となるのは,単調増加関数単調減少関数だけ
 
山や谷があると,横線(1つのy)で切ったときに,2つの交点で交わることになる(異なるxがあることになる)
⇒次のようなものは1対1の関数ではない
[簡単チェック問題4]
 次のグラフ(青で示したもの)のうちで,1対1の関数でないものを選んでください(番号をクリック).
1 2
3 4


《ここまでのまとめ》
○ 「関数である」ことによって,どのxにも,1つのyが対応することになります.
○ 次に「1対1の関数である」ことによって,どのyにも1つのxが対応するようになります.
○ 「1対1の関数」であれば,yからxへの「逆向きの対応」を唯1通りに定めることができます.
もし,元の関数が1対1の関数でなければ,逆向きの対応を考えようとすると,1つのyに対して,2つ(またはそれ以上の)xがあることになり,逆向きの対応が関数ではなくなります.
○ 以上により,元の関数y=f(x)が1対1の関数であれば,その逆向きの対応となる関数を考えることができます.
1対1の関数であるかどうかを
○ 式で調べる:「y1=y2 → x1=x2
○ (連続関数の場合に)グラフで調べる:「単調増加」または「単調減少」
(3) 定義域と値域
 関数y=f(x)が定義されるxの値の範囲を定義域といいます.
 また,独立変数xが定義域のすべての値をとって変化するとき,従属変数yの取り得る値の範囲を値域といいます.
【例】
 y=f(x)=x2−2x (x≧1)のとき,
xの値の範囲を指定しているx≧1が定義域です.
 このとき,y=f(x)=(−1)x2−1となることに注意すると,右図のグラフの青で示した部分になり,yの値の範囲はy≧−1となり,これが値域です.
 この同じ関数y=f(x)=x2−2xでも,定義域をx≦0とすると,値域はy≧0になります.
 連続関数については,その定義域を単調増加または単調減少な区間に絞ることによって,1対1の関数にすることができます.
【例】
 上記の関数y=f(x)=x2−2xについて
定義域をx≧1とすれば,1対1の関数となります.
定義域をx≧2, x≧3, x≧4, ...あるいはx≦1, x≦0, x≦−1, ...としても1対1の関数となりますが,定義域をx≧0, −1≦x, 0≦x≦2などとすると1対1の関数にはなりません.また,定義域を指定しない場合(これは−∞<x<∞の略と解される)も1対1の関数にはなりません.上のグラフを見ると,谷の右側か左側(の一部)だけからなる区間を定義域とすると1対1の関数になることがわかります.
[簡単チェック問題5]
 次の関数の値域を求めてください(番号をクリック).
y=sin x (0≦x≦)
1−1≦y≦0 2−1≦y≦1
30≦y≦1 40≦y≦



[簡単チェック問題6]
 次うちで1対1の関数でないものを選んでください(番号をクリック).
1y=(x−1)2+2 (x≦0) 2y= (x≧0)
3y= (x≦1) 4y= (−1≦x≦1)




(1) 逆関数の定義
 関数y=f(x)によって,xの値にyの値が対応しているときに,その逆の対応をf(x)の逆関数といいy=f−1(x)で表します.
【例】
 y=f(x)=2xのとき,
これに対する逆の対応はx=
となります.対応関係としてはこれでもわかります(2を掛けるという操作の逆は,2で割るということ)が, 「通常,独立変数をxで表し,従属変数をyで表す習慣に従って、文字を入れ替えて」
y=f−1(x)=を逆関数とします.

○ 上の解説で,関数y=f(x)に対して逆関数が定義されるためには,元の関数の段階でyからxへの対応が唯1通りに定まらなければなりません.したがって,元の関数y=f(x)が1対1の関数である場合だけ,逆関数が定義できるということになります.
○ 逆関数を求めるときに,文字xyを入れ替えると,定義域と値域も入れ替わります.
【例】
元の関数,定義域,値域がf(x)=x2 (x≧2, y≧4)のとき
(*) 準備:f(x)yとする
y=x2 (x≧2, y≧4)
(1) 文字xyを入れ替えると,その文字に付着してる値の範囲,すなわち,定義域と値域も入れ替わります.
(2) yについて解きます.
y2=x (y≧2, x≧4)
y=± (y≧2, x≧4)
y≧2>0により
y= (y≧2, x≧4)
(*) 後始末:yf−1(x)とする
f−1(x)= (y≧2, x≧4)

※ 逆関数を求める手順は,「逆に解くこと」と「習慣に従って文字を入れ替えること」の2つから成り立っています.どちらを先に行っても同じ結果が出ますが,「定義域」や「値域」も考えるときは,先に文字を入れ替える方がわかりやすいようです.
【逆関数の求め方(まとめ)】
○ 元の関数が1対1の関数であれば,逆関数が存在する.
○ 逆関数の定義域と値域は,元の関数の定義域と値域を入れ替えたものになる.

[例題1]
f(x)=−x+3の逆関数f−1(x)を求めてください.
(解説)
(*) 準備:f(x)yとする
y=−x+3
(1) 文字xyを入れ替える.
x=−y+3
(2) yについて解く.
4x=−3y+12
3y=−4x+12
y=−x+4
(*) 後始末:yf−1(x)とする
f−1(x)=−x+4
[例題2]
f(x)=1− (1≦x≦9)の逆関数f−1(x)を求めてください.
(解説)
元の関数,定義域,値域は
f(x)=1− (1≦x≦9, −2≦f(x)≦0)
(*) 準備:f(x)yとする
y=1− (1≦x≦9, −2≦y≦0)
(1) 文字xyを入れ替える.そのとき,定義域と値域も入れ替える.
x=1− (1≦y≦9, −2≦x≦0)
(2) yについて解く.
=1−x (1≦y≦9, −2≦x≦0)
y=(1−x)2=(x−1)2 (1≦y≦9, −2≦x≦0)
(*) 後始末:yf−1(x)とする
f−1(x)=(1−x)2=(x−1)2 (−2≦x≦0)
[例題3]
f(x)=x2+2x−1 (x≦−2)の逆関数f−1(x)を求めてください.
(解説)
元の関数,定義域は
f(x)=x2+2x−1 (x≦−2)
f(x)yとする
y=x2+2x−2=(x+1)2−2 (x≦−2)
右図のように,頂点の左側の区間になるから
y=(x+1)2−2 (x≦−2, y≧−1)
文字xyを入れ替える.
x=(y+1)2−2 (y≦−2, x≧−1)
yについて解く.
(y+1)2=x+2 (y≦−2, x≧−1)
y+1=± (y≦−2, x≧−1)
y=−1± (y≦−2, x≧−1) …(*)
y≦−2<(−1)だから
y=−1− (y≦−2, x≧−1)
yf−1(x)で表すと
f−1(x)=−1− (x≧−1)
(*) の部分は,y2+2y−2=xより,「解の公式を用いて解く」と考えると,もっと多くの問題に対応できる.
y2+2y−(x+2)=0
y=−1±
[例題4]
 f(x)= (x≧0)の逆関数f−1(x)を求めてください.
(解説)
f(x)yで表すと
y==1+
右図のように漸近線がx=2, y=1の直角双曲線になる.(x≧0の区間のうち,実際にはx=2では定義されない)
定義域は0≦x<2, 2<x
値域はy≦0, 1<y
文字xyを入れ替える.
x= (0≦y<2, 2<y, x≦0, 1<x)
yについて解く.
yx−2x=y (0≦y<2, 2<y, x≦0, 1<x)
(x−1)y=2x (0≦y<2, 2<y, x≦0, 1<x)
y= (0≦y<2, 2<y, x≦0, 1<x)
したがって
f−1(x)= (x≦0, 1<x)

[問題1]
f(x)=2x+1の逆関数f−1(x)を求めてください.

1 2 3−1 4+1


[問題2]
f(x)=x2−2x (x≦1)の逆関数f−1(x)を求めてください.

11+ (x≧0) 21+ (x≧−1)
31− (x≧0) 41− (x≧−1)


[問題3]
f(x)=ex−1+2 (x≧1)の逆関数f−1(x)とその定義域,値域を求めてください.

12+log(x−1) (x≧3, y≧1)
22+log(x−1) (x≧1, y≧3)
31+log(x−2) (x≧3, y≧1)
41+log(x−2) (x≧1, y≧3)


[問題4]
f(x)= (x≧0)の逆関数f−1(x)とその定義域
を求めてください.

11− (x>0) 22− (x<2)
3 (−1≦x<2) 4 (−1≦x<2)


(2) 逆関数の性質
(1) ある関数f(x)とその逆関数f−1(x)のグラフとは,y=xの直線に関して対称に折り曲げたものになる.
(2) ある関数f(x)とその逆関数f−1(x)のグラフとは,増加,減少が一致する.
(解説)
(1)
 y=xということにこだわり過ぎると難しく見えますが,次のように簡単な話です.
 逆関数を求めるときに,文字xyを入れ替えますが,このときに縦と横が逆になります.だから,45°の線を折り目として折り返したものになります.(なお,方程式を逆に解く変形をしても,グラフには何も影響なく,全く同じグラフです.グラフが変わるのは,文字を入れ替えたためです.)
(2)
 関数f(x)について,xが増えればyが増えるとき,その逆関数f−1(x)ではyが増えればxが増えることになり,増加関数⇒増加関数となります.減少関数のときも同様です.
[問題5]
次のグラフで表される関数に対する逆関数のグラフを下から選んでください.

1 2
3 4


[問題6]
次のグラフで表される関数に対する逆関数のグラフを下から選んでください.

1 2
3 4


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