■三角関数の定積分(絶対値付き)
【基本の公式】
(解説)sinx dx=1…(1) sinx dx=2…(2) sinx dx=0…(3) sinnx dx=0 (n=1,2,3,...)…(4)
図で示せば:
(1)←Aの部分の面積が1 計算で示せば: sinx dx=−cosx =(−0)−(−1)=1
図で示せば:
(2)←AとBの面積は等しいから合計は2 計算で示せば: sinx dx=−cosx ={−(−1) }−(−1)=2
図で示せば:
(3)←A,B,C,Dの面積は等しいが,符号が逆になっておりC=D=−A=−Bだから,これらを単純に足せば0になる 計算で示せば: sinx dx=−cosx ={−(−1) }−{−(−1) }=0 右に続く→ |
(4)← はじめに,y=sinnxのグラフはy=sinxのグラフを横方向にn倍に引き延ばしたものではなく,n分の1に縮めたものになることに注意しましょう.
この点について,高校生には思い違いが多いので,詳しく述べると
(4)式に戻ると,−π≦x≦πの区間にn=2の場合は,山と谷が2つずつでき,n=3の場合は,山と谷が3つずつできるので,定積分の値は0になります.一般に,y=sinnxとなっているときも同様です.
x=のときsinx=1で山に達しますが x=のとき2x= , sin2x=1となって山に達します さらに x=のとき3x= , sin3x=1となって山に達します 計算で示せば: sinnx dx=−
nが偶数のとき:(−)−(−)=0
となって,いずれの場合も0になります.
nが奇数のとき:()−()=0 |
【基本の公式】
(解説)cosx dx=1…(5) cosx dx=0…(6) cosx dx=0…(7) cosnx dx=0 (n=1,2,3,...)…(8)
図で示せば:
(1)←Aの部分の面積が1 計算で示せば: cosx dx=sinx =(1)−(0)=1
図で示せば:
(2)←B=−Aだから和は0 計算で示せば: cosx dx=sinx =(0)−(0)=0 右に続く→ |
図で示せば:
(3)←B=D=−A=−Cだから,これらを単純に足せば0になる 計算で示せば: cosx dx=sinx =(0)−(0)=0 (4)← 図で示せば
一般に,y=cosnxとなっている場合には,nxという角度がn倍速く進むので,y=cosxのグラフを横にn分の1に縮めたものになります.
計算で示せば:
cosnx dx==0−0=0 |
■絶対値付きの定積分■
【例1】
(解答)|cosx|dxの値を求めてください.
被積分関数に絶対値が付いているときは,区間を場合分けして絶対値記号を外して計算するのが基本です.
0≦x≦→cosx≧0≦x≦π→cosx≦0 だから |cosx|dx=|cosx|dx+|cosx|dx
図のA=1 , B=−1
=cosxdx+(−cosx)dxBの部分を上にひっくり返してB'=1を使うと,A+B'=2になる. =sinx+−sinx =(1−0)+(0−(−1))=2
※高校生のごく初歩的な間違いとして
cosxdxを計算してから絶対値を付けようとする 答案がよくありますが,上記の(6)で示したように,これでは0になって消えてしまいます. ※一般に|f(x)|dx と|f(x)dx|は違うので注意 |
【例2】
(解答)|sinx−cosx|dxの値を求めてください. sin=cos= 0≦x≦→cosx≧sinx ≦x≦→cosx≦sinx |sinx−cosx|dx = (cosx−sinx)dx+ (sinx−cosx)dx =sinx−cosx+−cosx−sinx =(+)−(1)+{ (−1)−(−−) } =2−2 |
【例3】
(解答)|3sinx−4cosx|dxの値を求めてください.
既知の角度を用いてx>, x<
のように書くことができないときでも,その角度を記号定数αなどで表して計算し,結果が出てから戻せばよい.1 ◇三角関数の合成とグラフの平行移動が分かる場合 3sinx−4cosx=(sinx×−cosx×) =5(sinx×−cosx×) と変形する.ここで右図1のような角αを考えると sinα= , cosα= となるから 3sinx−4cosx=5(sinxcosα−cosxsinα) =5sin(x−α) このグラフは,y=5sinxのグラフを右にαだけ平行移動したものだから,右図2(を縦に5倍に引き延ばしたもの)のようになる.
x=α→5sin(x−α)=0
|3sinx−4cosx|dx0≦x≦α→5sin(x−α)≦0 α≦x≦→5sin(x−α)≧0 = |5sin(x−α)|dx =−5 sin(x−α)dx+5 sin(x−α)dx =5cos(x−α)−5cos(x−α) =5{cos0−cos(−α)}−5{cos(−α)−cos0} ここで cos0=1,cos(−α)=cosα=,cos(−α)=sinα= だから (原式)=5{1−}−5{−1}=5−3−4+5=3 右に続く→ |
図1
◇三角関数の合成やグラフの平行移動に自信がない場合 それぞれ右図のようなグラフになるから 交点のx座標をαとおくと 3sinα=4cosαから tanα= 上の図1のような三角形で考えると, sinα= , cosα=
x=α→3sinx=4cosx
(原式)= (−3sinx+4cosx)dx+ (3sinx−4cosx)dx0≦x≦α→3sinx≦4cosx α≦x≦→3sinx≧4cosx =3cosx+4sinx+−3cosx−4sinx ={(3cosα+4sinα)−(3+0)}+{(0−4)−(−3cosα−4sinα)} =6cosα+8sinα−7=6×+8×−7=3 |
次の定積分の値を求めてください.
※正しい選択肢の番号をクリックしてください.
なお,暗算ではできませんので,別途計算用紙と筆記用具が必要です. |
x=→sinx=
0≦x≦→sinx≦ ≦x≦→sinx≧ だからsinxとは右図のような上下関係になる. |sinx−|dx = (−sinx)dx+ (sinx−)dx =x+cosx+−cosx−x
={(+)−(0+1)}+{(−0−)−(−−)}
=−−1 → 3 |
y=sinxとy=sin2xの概形は右図のようになるので,交点を求めて上下関係を調べる.
sinx=sin2x→sinx=2sinxcosx sinx(2cosx−1)=0 cosx=→x=(矢印の場所) 0≦x≦→sinx≦sin2x ≦x≦→sinx≧sin2x だから |sinx−sin2x|dx = (sin2x−sinx)dx+ (sinx−sin2x)dx =−cos2x+cosx+−cosx+cos2x
= → 1
|
|
y=2sinxとy=cosxの概形は右図のようになるので,交点を求めて上下関係を調べる.
2sinx=cosx→tanx= (tanα=,cosα=,sinα=) 0≦x≦α→2sinx≦cosx α≦x≦→2sinx≧cosx だから |2sinx−cosx|dx = (cosx−2sinx)dx+ (2sinx−cosx)dx =sinx+2cosx+−2cosx−sinx ={(sinα+2cosα)−(0+2)} +{(−0−)−(−2cosα−sinα)} =2sinα+4cosα−2−
=2×+4×−2−
=4− → 4 |
次のプログラムは,台形公式を使った数値積分によって,コンピュータを使って定積分の値を計算するものです. 結果は小数第4位までの近似値で示されますが,各自の解答と近い値になれば,よい裏付けと見なせます.
≪付録1≫
|asinx−bcosx|dx の値を計算します.a, b (≠0)の値を入力して,[計算する]ボタンを押してください. (分数は 1/3, -2/3のように記入.平方根の場合は,例えば,なら2.236のように近似値で記入)
≪付録2≫
|asinx−bcosx|dx の値を計算します.(使用方法は1と同様) |
≪付録3≫
|asinmx+bcosnx|dx の値を計算します.(使用方法は1と同様)
≪付録4≫
|asinmx+bsinnx|dx の値を計算します.(使用方法は1と同様)
≪付録5≫
|acosmx+bcosnx|dx の値を計算します.(使用方法は1と同様) |
■[個別の頁からの質問に対する回答][三角関数の定積分(絶対値付き)について/18.8.6]
問題1の解説で、積分されていないです。
=>[作者]:連絡ありがとう.訂正しました. |