《テーマ:同様な確からしさ》
(自然現象や社会現象と数学/文章読解力)
《解説》(問題は下にあります.)
■実験や観察を繰り返し行うことのできる事柄については,相対度数が近づいていく値を確率といいます.
例 さいころを1回投げて,1の目が出る確率はです.
  10円硬貨を1回投げて,表が出る確率はです.
■上に述べた2つの例では,「多数回の実験・観察」によっても,「数学的な考察」によっても確率を求めることができます.「多数回の実験・観察」から求まる確率を,ここでは実験的確率(統計的確率,後天的確率という人もいます.),「数学的な考察」で求められる確率を数学的確率(先験的確率ともいいます.)と呼ぶことにします.

■日常生活で出会う多くの事柄は,複雑な要因がからんでいますので,前もって予測するときは,実験的確率で考えます.

<例> 
明日,雨が降る確率(降水確率)
明日は一生に1回しかないので,厳密に考えると,「多数回の観察」ができるようには思えませんが,過去の観測データからよく似た気圧配置の日を探したり,ひまわり(気象観測の人工衛星),アメダス(気象庁の地域気象観測システム)のデータをもとに雨雲の移動を予想すれば,各地域ごとの降水確率が予想できます.なお,雨が降るか降らないかで分けているのでなく,1mm以上の雨または雪が降るか降らないかで表示されています.
<確率でない例>
インチキとばく,天体の運行
結果が偶然によって左右され,やってみないと分からない事柄についてだけ確率という考え方をします.
正確に作られたサイコロを用いて,賭け事(かけごと)をするのは,確率に関係し「とばく罪」となります.正確に作られていないサイコロを用いて,賭け事をするのは(インチキとばくは),一方の人にとっては結果が予想できますので「とばく罪」ではなく「さぎ罪(人をだまして金を巻き上げる罪)」となります.
ハレー彗星が76年で1周し,「次は2061年に太陽に近づく」というようなことは,力学の計算によってほぼ確実だとみなされますので,確率の考え方をしません(あえて言えば確率99.9%以上です).
■さいころや10円硬貨を投げた結果のように,特別な性質を持っているものは,実験なしで「数学的な考察」だけでも求められます.この特別な性質とは「同様に確からしい」という性質です.
正確に作られたサイコロでは,1,2,3,4,5,6のどの目が出ることも「同様に確からしい」といえます.サイコロを1回投げたときに,目の出方は全部でN=6通りあります.そのうち,1の目が出るのがn=1通りです.目の出方はどの目も「同様に確からしい」ので,1の目がでる確率はです.
10円硬貨を投げたとき,表が出るか裏が出るか,出方はN=2通りです.このうち,表が出るのは1通りです.表が出るのと裏が出るのは「同様に確からしい」ので,表が出る確率はです.
要点 
起こり得るどの場合も同様に確からしいときは, 
あることがらが起こる確率は 
(あることが起こる場合の数)÷(起こり得るすべての場合の数)
で求められます.

■注意
  が確率になるのは,どの場合も「同様に確からしい」ときだけです.(部分の数)÷(全体の数)がいつでも確率になるわけではありません.



《問題》次の各文について{ }内から適当な方を選びなさい.

■クラスで人気者のA君は,総理大臣になるか,総理大臣にならないかのいずれかである.だから,A君が総理大臣になる確率はである.

正しい正しくない
□サイコロを投げて出る目は,1か1でないのどちらかである.だから,サイコロを投げて1が出ない確率はである.
正しい正しくない
■明日の天気は,雨か雨が降らないかの2通りある.雨が降るのは2つのうちの1つだから,確率である.
正しい正しくない
■人の性別には,男子と女子の2通りある(N=2).そのうち女子である場合の数は1通り(n=1)だから,生まれてくる子どもが女子である確率がだということは,新生児の男女比を調査しなくても,数学的な考察だけで分かる.
正しい正しくない
■人の血液型をABO方式で分ければ,血液型はA型,B型,AB型,O型の4通りある(N=4).このうち,A型は1通り(n=1)だから,抽選で人を選んだとき,その人の血液型がA型である確率はである.
正しい正しくない
■クラスで人気者のA君は,B高校を受験した.B高校の競争率が2倍のとき,A君がB高校に合格する確率はになる.
正しい正しくない
□10円硬貨を2枚投げたとき,表裏の出方は,表が2枚の場合,表と裏が1枚ずつの場合,裏が2枚の3通りあるから,2枚投げて2枚とも表となる確率はである
正しい正しくない
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