【転置行列】 ♪〜 簡単に復習1 〜♪
行列Aの行と列を入れ替えてえられる行列をAの転置行列(Transposed matrix)といいで表す. 転置の英語がTransposeなので,Tやtを付けるのは分かり易いことですが,日本語で書かれた線形代数の教科書では,ほとんどがのように左肩にtの記号が書かれています.(右肩に付けると累乗の記号や逆行列の記号と紛らわしいからかなと推測できますが,手元の教科書・参考書で実際にそのためだと書かれたものは見つからなかった.) 英語で書かれている教科書では,右肩と左肩のいずれもありますが,右肩かつ大文字が多いようです. のとき [重要性質] |
【逆行列】 ♪〜 簡単に復習1 〜♪
正方行列Aについて(正方行列でなければ,逆行列は定義されない),右から掛けても左から掛けても単位行列Eとなる正方行列XをAの逆行列といい,X=A−1で表す. [例] のとき だから [重要性質] |
【T 直行行列の定義】
を満たすn次の正方行列をn次の直交行列という. すなわち が成り立つとき,を直交行列という.
直交行列に関して,Tと以下に述べるU,V,Wとは互いに同値である.したがって,いずれか1つを直交行列の定義とすれば,他は直交行列の性質として導くことができる.ここでは,Tを定義として他を性質とした.
【例】 次の行列は直交行列である.(1) が成り立つから直交行列である が成り立つから直交行列である
【系】
が直交行列であるとき (1) も直交行列である.(も同様)
が直交行列であるときだから
(2) も直交行列である.(も同様)ゆえにが成り立つ だから |
【直行行列の性質】
(解説)が直交行列であるとき (U)
すなわち,直交行列による1次変換は,ベクトルの内積を変えない
(V)
すなわち,直交行列による1次変換は,ベクトルの大きさを変えない
(W)行列の各列をなす列ベクトルは互いに垂直で大きさは1である.
すなわち,直交行列の列ベクトルは,正規直交基底をなす
(T)→(U) ベクトルの内積は,「行ベクトルから成る行列」と「列ベクトルから成る行列」の「行列としての積」で定義される. したがって ここで,転置行列の積については だから は直交行列であるから, したがって ・・・(証明終) (U)→(V) Uにおいての場合を考えると したがって ここで,ベクトルの大きさは正または0だから ・・・(証明終)
(U)(V)により,直交行列による1次変換によって,内積は変わらず,ベクトルの大きさも変わらないから,2つのベクトルのなす角も変化しない.
(V)→(W)直交行列の定義(T)を振り返ってみると 左辺の(i, j)成分は,のi行とのj列を掛けたものだから 右辺は単位行列だから,i=jのとき1,i≠jのとき0になる. したがって したがって, 行列の各列をなす列ベクトルは互いに垂直で大きさは1である.・・・(証明終) |
【直行行列の例】
2次の直交行列は「回転移動」,「軸に関する対称移動」または「それらの合成」になる.
(解説)直交行列の性質(W)により,直交行列の各列をなす列ベクトルは互いに垂直で大きさは1であるから, とおくと,これに垂直と言うことから または 各々の大きさが1であることから,とおくと …(1) または …(2) (1)は により,と移す移動だから,原点の回りに角θだけ回転する移動を表している. このとき,右図のように直交ベクトルの第1列ベクトルを90°だけ正の向きに回転したものが第2列ベクトルになっている. (2)は により,と移す移動は,原点を通り軸となす角がの直線,すなわちとなる直線に関する対称移動を表している.
このページの対称移動の項を参照してください.
とおくと,三角関数の半角公式(倍角公式)により,, 対称移動を表すこの式は,簡単ではないが,次のように考えるともっと簡単な式に読み替えられる.すなわち,軸に関する対称移動 と原点の回りに角θだけ回転する移動 を合成すると となるから,(1)の回転移動と(2)の代わりに軸に関する対称移動を組み合わせると,2次元のすべての直交行列ができることとなる. 右図のように,軸に関する対称移動を行ってから,原点の回りに角θだけ回転すると,となる直線に関する対称移動と同じ結果が得られる. |
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